我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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黒崎一護(くろさき いちご)
死神代行・滅却師。石田と50体同点で並び、決着をつけるべく突如現れた巨大虚(メノスグランデ)を「51体目の獲物」として狙うが、まさかの敵前逃亡を喰らう。

石田雨竜(いしだ うりゅう)
「最後の滅却師」。一護に勝つためメノスへ全力の神聖滅矢を放つが空振りに終わり、勝負は引き分けに終わる。

ガルムルド・ジュードスタイン
確固たる「個我」を保つギリアン級大虚。あと一人間の魂を喰えば中級大虚(アジューカス)へ進化できる直前だったが、空座町の異常すぎる霊圧の嵐に生命の危機を感じて即座に逃亡。虚圏へ帰還した直後、謎の人物と運命の邂逅を果たす。

朽木ルキア(くちき るきあ)
十三番隊隊士。メノスの出現よりも、暴走する織姫・たつき・チャドによる街の器物損壊と壊滅危機に頭を抱える。

白鷹光四郎(しろたか こうしろう)
六番隊四席。メノスを斬りに行こうとするが、街が廃墟になりかけている惨状を冷静に分析する。

浦原喜助(うらはら きすけ)
浦原商店店主。若者たちの実戦経験のため静観を促すが、想定外の街の損壊規模に内心冷や汗を流す。

オッサン(精神世界のユーハバッハ)
一護の内なる滅却師。メノスグランデ(ギリアン級)を一瞥して「雑魚だ」と切り捨てる。

???
自作の「崩玉」の実験と試行錯誤を重ねる死神。恐怖で逃げ帰ってきた進化寸前の特異なギリアン(ガルムルド)に興味を示す。


恐怖の空座町と逃走のギリアン

「石田…………テメエ、今何体だ??」

 

瓦礫の積もったビル屋上で、一護と石田は背中を合わせていた。息を整える間にも周囲の建物が揺れ、遠くの道路から新しい陥没音が届いてくる。

 

「……五十体だ。……黒崎、君は?」

 

「俺も五十だ…………」

 

たつきの霊圧がビル街を銀色に染め、別の区画ではチャドの拳が道路を沈めた。その上を六本の光刃が走り、織姫の周囲から逃げた虚を空中で刻んでいく。

 

三人は競技参加者ではないため、倒した数を一護と石田の得点へ加算する制度がなかった。

 

「見てのとおりの状態でよ……。虚が湧いた瞬間にアイツらに消し飛ばされて、もう一匹も残ってねえ」

 

「ああ…………。これ以上は獲物がいないな……」

 

「「………………どうするよ?」」

 

同点のまま競技対象が絶滅した場合の規定を、石田は決めていなかった。

開始方法は撒き餌を砕くだけで済んだが、終了手続きには準備不足が表れている。

 

空座町の上空へ亀裂が走り、月明かりを映した夜空が硝子の形に割れた。破片の向こうから黒い指が縁を掴み、ビル数棟分の高さを持つ顔が押し出される。白い仮面から伸びた鼻が地上へ向き、裂け目が左右へ押し広げられるたび、漆黒の巨体が空座町の空を塞いでいく。

 

霊感のない住民にも空の異常までは隠せず、道路へ出た者たちが月の消えた方角を見上げている。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

「なっ……!? 大虚が現世に直接出現するとは……!!」

 

「私が仕留めて参りましょうか、若奥様?」

 

「ダメですよ〜。若旦那や石田クンたちにやってもらわないと。これからのためにも、良い実戦経験になりますからねぇ」

 

浦原の杖が白鷹の前へ差し込まれた。大虚を教材として利用する判断は早く、教材側の同意は今回も不要とされた。

 

「いや……浦原。我々が今、心底から気に病んでいるのは、そんな大虚ごときのことではなくてだな……」

 

ルキアが示した先で、たつきの閃光が電柱を根元から薙ぎ、チャドの拳に押された衝撃波がアスファルトを裏返した。織姫の光刃は虚だけを追っていたが、逃げた虚が看板へぶつかったため、結果として商店の屋号が二文字消えている。

 

「左様でございますな。……このままあの三人に暴れ続けられますと、大虚に襲われる前に空座町そのものが廃墟と化す可能性が極めて濃厚でございます」

 

「……………………ノーコメントっス」

 

浦原の顔は扇子の陰へ隠れた。修理費を朽木家へ回せる地下訓練場とは違い、空座町には請求先を選べない公共物が多い。

 

明日の朝には、道路管理者と電力会社と建物所有者が、原因不明の局地災害について別々の報告書を書くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

『……おいオッサン、空から出てきたあのバカデカいのは何だ?』

 

『……メノス・グランデと言う。無数の虚が共食いの果てに折り重なって生まれた巨像だ。……あれは下級の「ギリアン級」だな。――雑魚だ』

 

分類より、最後の二文字が一護の耳へ強く残った。

 

「……………雑魚か……! だが、あれを倒せば『五十一体目』だ!!」

 

「確かに!! 五十一体目を仕留めた方の勝ちだ!!」

 

一護の左手で神聖弓が形を得る横で、石田も弦へ霊子を集めた。空座町へ現れた大虚は、侵略者として認識されるより先に同点決勝用の標的へ登録された。

 

「「そこを動くなよ!!! 俺の獲物ォォォォッッッ!!!!」」

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

俺の名はガルムルド・ジュードスタイン。

 

メノスグランデだ。何? なんで無個性なギリアン級の分際で、こんなに鮮明な意識と名前を持っているのかって?

そりゃあ俺が、数万の虚の魂の中でも『選ばれし者』だからに決まっているだろうが!

 

中級大虚(アジューカス)や最上大虚(ヴァストローデ)へ進化していく奴らも、こうして俺のように強烈な「個我」を保った虚が他を喰らい尽くして成り上がるものさ。

俺もいずれは虚圏(ウェコムンド)の頂点、最強の虚を目指して突き進んでいく男よ。そのための第一歩として、脆弱な現世の人間どもの魂をたらふく補給しに来たってわけだ。美味そうな匂いもプンプン漂っているしな!!

 

それに………確信めいた予感がある!!

あと一人、霊力の高い生きた人間の魂を喰らえば、俺はこの巨躯を脱ぎ捨てて『アジューカス』へと劇的な進化を遂げるのだ!!

 

よし!! ここが現世か!! 久しぶりの娑婆の空気は美味い――

 

「ビクゥゥゥッッ!!???」

 

裂け目から出した顔が止まった。破廉恥な銀色の鎧をまとった女が拳を振るたび、虚が悲鳴を残す場所ごと消えている。別の通りでは、両腕を異形へ変えた巨漢が中級虚を路面へ叩き込み、そのまま砕けた道路ごと押し流した。

 

妖精を飛ばす女は、六本の光で逃走先を塞いでから虚を細切れにした。治療用らしい黄金の盾まで同時に出ている。殺傷と救護が同じ担当者から提供されるが、相手だけが救護対象から外されていた。

 

最後に屋上へ顔を向けると、死神の巨大な刀を背負った男と、白装束の滅却師が弓を引いていた。二人とも俺を見ている。あれは飢えた獣が一つの肉を取り合う顔だ。

 

な、なんだこの町は…………!? なんでこんな狭い区画に、隊長格クラスのイカれた霊圧のバケモノがゴロゴロ湧いてやがるんだ…………!? 帰ろう。今すぐおうちに帰ろう

 

ガルムルドは裂け目の縁を掴み、出しかけた頭を戻した。

開いた黒腔が、侵攻者自身の手で端から閉じられていく。

 

「逃がすかこの野郎ォォッ!! ――『神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)』ッッ!!」

 

「僕の獲物だァァッ!! ――うおおおおおおっっ!!!!」

 

二条の矢が屋上から放たれた時、黒腔は最後の細い線を閉じた。矢は夜空を貫き、何もいない雲の中で霊子へほどける。

 

一護と石田は弦を引いた姿勢で止まった。ギリアンは咆哮も攻撃もせず、顔を出して周囲を確認し、鼻を引っ込めて帰った。

現世へ滞在した時間の大半は、撤退作業に使われている。

 

「………………逃げやがった」

 

「………………ああ。逃げ去ったね」

 

一護五十体、石田五十体。決勝用の五十一体目が試合会場から逃亡したため、死神と滅却師の殲滅戦は完全な引き分けで終了した。勝者はいなかったが、空座町の住民は知らないうちに生存していた。

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……! な、なんだあいつらは…………!? まさか………現世の人間というのは、あんな化け物染みた強さの奴らばかりなのか……!? いや……俺が生前、人間だった時にはあんなバケモノはいなかったはず……。いや、待てよ……俺が生前ド田舎暮らしだったせいで知らなかっただけか……?? 現世の都会ってあんなに治安悪いのか……??」

 

虚圏へ転がり出たガルムルドは、胸の孔を押さえて呼吸を繰り返した。空座町で見た戦力が現世の標準なのか、あの地区だけが異常なのか、比較できる都会の知識を持っていない。生前の居住地が田舎だったことまで、今夜になって不利な経歴へ変わった。

 

「と、とにかく……命からがら虚圏に帰ってこられただけでも儲け物だ……。地道に砂漠の虚を喰って進化を――」

 

「――ほう……………。実に興味深いね」

 

背後から声が届いた。白砂の丘に死神が立っている。隊長羽織を着け、眼鏡の奥からガルムルドを観察していた。

 

町の者たちは霊圧を隠さず、殺す意志も叫び声へ乗せていた。男からは何も流れてこない。その穏やかさが、獲物を奪い合っていた二人より危険だと、数万の魂が揃ってガルムルドへ警告している。

 

「なっ……!?」

 

男の手には、青紫色の光を放つ球体があった。完成には届いていない自作の崩玉が、掌の上でガルムルドの霊圧へ脈を合わせている。

 

「恐怖によって自らの意思で撤退を選び、なおかつ……あと一歩で中級大虚へと至る強固な『個我』の器……。フフ……試作品の適合体として、試してみる価値は大いにありそうだ……」

 

男の指が上がり、崩玉の光が白砂を青紫色に染めた。逃げようとしたガルムルドの体へ光が回り込み、仮面の内側から魂を掴む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、俺は運命に出会った。これは、この俺が最高の『破面』になるまでの物語だ!!

 

続く!!!




ガルムルド・ジュードスタイン
ギリアン級でありながら強固な個我と知性、名前を保持する特異な大虚。あと一人間の魂を喰らえばアジューカスへ進化できる直前だったが、空座町の魔境ぶりにドン引きして瞬時に敵前逃亡した。逃げ足の速さと生存本能の高さが幸いし、実験体としてスカウトされる。

空座町の魔境判定
ガルムルド視点における現世の評価。生前が田舎暮らしだったため激しい勘違いを起こした。

自作崩玉(試行錯誤段階)
とある男が死神と虚の境界を取り払うために独自に開発・研究を進めている宝玉。浦原喜助の完成品(本物)には及ばないものの、虚の破面化実験を繰り返すためのプロトタイプとして機能している。

神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)
滅却師が放つ霊子の矢の正式名称。一護はオッサンの指導により、自然と高威力の神聖滅矢を放てるようになっていたが、敵が逃げたため不発に終わった。

空座町の器物損壊危機
虚の被害よりも、新技の試し撃ちでヒートアップしたたつき(魔人烈光殺)、チャド(エル・ディレクト)、織姫(六ツ星)の攻撃によるインフラ破壊の方が深刻化していた現象。浦原商店の修繕費請求がさらに嵩む要因となる。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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