我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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黒崎一護(くろさき いちご)
死神代行。朝起きたら婚約者と同じベッドにおり、その数分後には中央四十六室から罪人扱いされることになった本日の受難担当。「死神の力の違法略奪」と「霊圧の異常行使」を理由に捕縛命令を出されるが、家族や仲間へ累が及ぶことを避けるため、自ら尸魂界へ向かうことを選ぶ。

朽木ルキア(くちき ルキア)
十三番隊所属。一護の婚約者。朽木家からの圧力によって一護との同衾生活がすっかり日常化しているものの、前夜は接吻すら達成できなかった。一護の捕縛命令に激しく反発するが、最終的には彼の決断を受け入れ、帰還後に「昨日の続き」をする約束を交わす。

朽木白哉(くちき びゃくや)
六番隊隊長にして朽木家当主。一護へ出された不自然な捕縛命令に疑念を抱き、本来派遣される予定だった刑軍を止め、自ら一護を尸魂界へ連れていく役目を引き受けた。一護を中央へ差し出すためではなく、中央から一護を守るために同行している。ついでにコン用の兎のぬいぐるみまで準備していた。

志波一心(しば いっしん)黒崎一心
一護の父。死神としての正体をすでに家族へ明かしており、中央四十六室による息子の捕縛命令へ激怒する。尸魂界という場所が「強ければ何とかなる」世界ではないことを知っているため、一護本人以上に今回の命令を危険視している。

コン
改造魂魄。一護の旅へ同行することになった巻き込まれ担当。普段使用しているライオンのぬいぐるみでは目立つため、白哉が用意した兎のぬいぐるみへ入り、死覇装の懐へ潜伏する。ルキアから真剣に頼まれたため、文句を言いながらも一護を助ける覚悟を決めた。

砕蜂(ソイフォン)/梢綾(しゃおりー)
二番隊隊長にして隠密機動総司令。刑軍から一護捕縛と白哉監視の密命を知らされ、命令そのものに強い不信感を抱く。直ちに尸魂界へ戻り、隠密機動内部から真相を探ることを決断する。

戸川古男(とがわ ふるお)
八番隊五席。一護の捕縛命令を聞き、貴族間の権力争いから中央四十六室そのものの暴走まで可能性を検討するが、最終的に「推測するより元柳斎本人へ聞く方が早い」という結論へ到達する。午後の授業を自習にして尸魂界へ帰ろうとして砕蜂に怒られた。

四楓院夜一(しほういん よるいち)
元四楓院家当主。現在は正体を隠して黒猫「タマ」として行動している。当然ながら一護の一件へ同行する気満々だったが、猫語が周囲へ通じないため、古男から単なる飼い猫として留守番を命じられる。四大貴族陰謀説が議論されている横で、当の元五大貴族当主本人は砕蜂の腕の中から古男を蹴ろうとしていた。


尸魂界編
黒崎一護捕縛命令――尸魂界動乱、開幕


「……なんと。今、なんと仰せになりましたか」

 

白哉が聞き返したのは、総隊長の言葉を聞き取れなかったからではなかった。

 

中央四十六室から届けられた命令書が広げられている。署名と封蝋はどこにも欠けておらず、読み違えも偽造も期待できない。

幾度も見てきた正式な命令書が、今日に限って白哉の理解を拒んでいた。

 

「もう一度言う。中央四十六室の決定じゃ。直ちに刑軍が現世へ赴き、黒崎一護を捕縛する」

 

山本元柳斎重國は杖の頭へ両手を重ね、目を閉じたまま命令を繰り返した。声には疑義を差し挟む余地がない。

 

黒崎一護は、虚から現世を護った死神代行である。朽木ルキアから死神の力を得た経緯にも、志波一心の子である血筋にも、すでに護廷十三隊の複数の隊長格が関わっていた。

それを今になって事情聴取でも召喚でもなく、最初から捕縛と定めている。

 

「……罪状は」

 

「死神の力の違法略奪、および霊圧の異常行使による現世への悪影響。先日の空座町における大規模な霊圧反応と、周辺一帯へ生じた損壊も根拠に挙げられておる」

 

先日の騒ぎで道路や建物が壊れたことは事実だった。ただし、その大半を壊したのは一護ではなく、勝手に競技へ参加した人間たちである。

 

「黒崎一護殿が死神の力を得た一件については、朽木家当主たる私も把握しております。本人の弁明も求めず刑軍を差し向ける理由を、お聞かせ願いたい」

 

「理由を知りたいのは儂も同じじゃ。決定は昨夜下され、異例の速さで執行を命じられた。四十六室は審理の詳細を開示せず、極秘に処理せよとの一点を崩しておらぬ」

 

「本来は隠密機動刑軍が出る任務じゃ。お主を呼んだのは、対象が貴族社会とも浅からぬ縁を持つため、朽木家当主の立会いを求められたからにすぎぬ」

 

「ならば、捕縛の任も私にお任せください」

 

白哉の答えは、元柳斎にも予想できていた。閉じていた片目が開き、白い眉の下から顔を射抜く。

 

「刑軍の出動を止め、おぬしが身柄を預かると申すか」

 

「黒崎一護殿は、命令の内容を説明すれば逃亡する人物ではありません。武力をもって住居へ踏み込み、家族へ危害を及ぼす必要はないと判断いたします。私が必ず同行させます」

 

白哉は一護が素直に従うと信じていた。その信頼を利用して一護を連れて来る以上、尸魂界へ着いた後は自分が盾になる。

 

それを口にすれば中央への反意と取られるため、朽木家当主は任務の効率だけを理由として差し出した。

元柳斎はしばらく白哉を見据え、やがて杖で床を打った。

 

「……よかろう。ただし、これは中央四十六室の命じゃ。情に流され、みすみす逃がすことは許されぬぞ」

 

「承知しております」

 

白哉は命令書を受け取り、一番隊の執務室を辞した。背筋も歩調も普段と変わらなかったが、握られた紙だけが、廊下へ出る前から音を立てていた。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「…………おはよう、ルキア」

 

翌朝、一護が目を覚ますと、ルキアは彼の胸元へ顔を埋めていた。

朽木家から届いた同衾の圧力に従って同じベッドで眠るようになって以来、この程度の密着ではどちらも慌てなくなっている。

 

「ん……おはよう、一護……」

 

寝ぼけた声とともにルキアの腕が背中へ回り、一護の身体を抱き枕の位置へ戻した。昨夜までなら、そのまま二度寝へ移るところだった。

 

しかし、二人は昨夜、兄から届いた『手を出さないのも不健全』という圧力へ正面から立ち向かおうとした。互いに覚悟を決め、部屋の明かりを落とし、それらしい空気を作り、顔を近づけたところまではよかったのである。

 

そこから先へ進むための経験値が、二人合わせても足りなかった。

 

唇の距離が指一本分まで縮まった段階で、一護は心臓の音がルキアへ聞こえているのではないかと考え、ルキアは鼻がぶつかった場合の立て直し方を考え、互いの顔が赤いことに気づいてさらに熱を上げた。

やがて額まで本当に熱くなり、二人は接吻へ至る前に力尽き、そのまま朝まで眠り込んでいた。

 

偽装婚約から始まった同衾生活は大胆な速度で既成事実を積み上げているが、当事者は正真正銘のチェリーとバージンである。

白哉が期待するような不健全さへ到達するには、まず手を繋ぐ以外の場面でも呼吸ができるようになる必要があった。

 

一護は昨夜の敗北を思い出して顔を熱くし、ルキアの肩を揺らした。

 

「……着替えて、下に降りるか」

 

「うむ……。昨日のことは、朝食が終わるまで互いに口にせぬと誓え」

 

「こっちもそのつもりだ。つーか、朝メシが終わった後なら話すのかよ」

 

ベッドから下りた二人が部屋を出て、階段へ向かったところで、一階から一心の怒鳴り声が突き上がってきた。

 

「何だと!! ふざけんじゃねえ!! 俺が死神の力を取り戻した途端にこれかよ! いったいどうなってやがる!!」

 

朝は一心が子どもへ飛び蹴りを仕掛けることも、夏梨に床へ沈められることも珍しくない。ただし、今日の怒声には家族向けの芝居が一切混じっていなかった。

 

「落ち着かれよ、志波一心殿。私の方でも、いまだ詳細な状況が掴めておらんのだ。ことが済み次第、私も全力で動く」

 

「白哉の……兄貴の声だ。現世に来てるのか?」

 

一護が階段を駆け下り、リビングの扉を開くと白哉が座っていた。向かい側では一心が両手を卓上へ叩きつけ、今にも身を乗り出そうとしている。

 

「おはよう……ございます、兄貴。どうしたんすか、いきなり朝っぱらから……」

 

白哉は一護の姿を認めると、伏せた目を上げなかった。

 

「…………黒崎一護殿。貴殿に、中央四十六室から出頭命令が届いている。私とともに、尸魂界へ来てほしい」

 

「何の容疑だ!!」

 

一心の拳が卓を鳴らした。湯呑みの茶が縁からこぼれ、白哉の前で波打つ。

 

「理由も言わねえで連行するなら、従う必要はねえ!! 帰れ!! 中央のジジイどもが話を聞きてえってんなら、先にこっちへ頭を下げに来やがれ!!」

 

「…………『死神の力の違法略奪』、および『霊圧の異常行使による現世への悪影響』罪状として私が聞かされたのは、それだけだ」

 

「俺が、罪人に……?」

 

一護には、違法に力を奪った覚えなどなかった。

死神の力を渡した本人は後ろに立ち、兄の言葉を聞いた途端に眠気を失っている。

 

「兄様!!! 一護は何も悪いことなどしておりません!! 現世を護るために戦っていただけです!!」

 

「……わかっている」

 

白哉の返答は静かでありながら揺るぎがなかった。

 

「本来ならば、刑軍が武力行使による捕縛へ向かう手筈であった。私が総隊長へ願い出て、規則の内側で貴殿の身柄を預かるところまでは認められたのだ。ここで同行を拒めば、次に来る者は私ではない」

 

刑軍が黒崎家へ踏み込めば、一心は間違いなく迎え撃つ。ルキアも刀を抜き、夏梨や遊子まで巻き込まれる。一護が逃げれば、浦原、光四郎、織姫、チャド、たつき、石田にも追及の手が伸びるだろう。

 

白哉は命令を運んできたのではない。命令が最悪の形で黒崎家へ届く前に、自分で持ってきたのだ。

 

「どうか、おとなしく同行してはくれぬか。貴殿が悪いようにはならぬよう、朽木家当主として全力を尽くそう」

 

「…………わかった」

 

「一護!?」

 

ルキアが振り返り、一心の顔からも怒りとは別の色が浮かんだ。

 

「俺がここで暴れて逃げ回ったら、ルキアや光四郎、親父たちにまで迷惑がかかる。それに、兄貴が俺を守るためにわざわざ来てくれたんだろ?」

 

「兄貴、信用していいんだな?」

 

「……任せてくれ」

 

白哉が朽木家当主としてではなく、一人の兄として交わした約束だ。

中央四十六室の命令書には、その立場で発言する欄など用意されていない。

 

一護はその手を開かせる代わりに頭へ手を置き、髪を乱すように撫でた。

 

「心配すんな!! 話つけたらすぐ戻るっての!!! それで……戻ったら、今度こそ………………」

 

そこまで勢いよく言った一護の声が、急に行き場を失った。

ルキアが顔を上げると、昨夜と同じ速度で互いの頬が赤くなる。

 

「…………昨日の『続き』を…………だな」

 

「バ、バカモノめ……! こんな時に何を……!」

 

ルキアの拳が一護の胸を叩いた。痛みを与える力は入っておらず、離れたくない気持ちだけが掴んでいる。

 

「……わかった。必ず戻れ。昨日より先へ進むかどうかは、その後で私が決める」

 

「お、おう……!」

 

「親父もそう目くじら立てんなよ。俺の力なら何とかなるって」

 

「力がありゃ何とかなる場所なら、俺もここまで怒ってねえんだよ。いいか一護、中央の連中は刀を抜かずに人を殺す。白哉、もしこいつに傷一つでも――」

 

「その時は、貴殿の刃を受けよう」

 

一心の言葉を白哉が遮った。互いに隊長を務めた男たちは、それ以上の保証が存在しないことを知っていた。

 

重くなった空気の下、部屋の隅に置かれたライオンのぬいぐるみが、床を擦りながら這い出してきた。

 

「姐さん…………。一護が連行されちまうぞ……」

 

「うむ。コン、一護について行ってやってくれ」

 

「ええええええ!!!! なんで俺がそんな危ねえ所へ行かなきゃなんねえんだよ!!! 俺は現世で平和に、姐さんや女子高生たちに囲まれて――」

 

「頼む」

 

ルキアがコンの前へ膝をついた。

からかいも命令もない目を向けられ、コンの口から残りの逃亡理由が消えていく。

 

「お前なら、尸魂界に紛れても何とか動けるはずだ。私がそばにいられぬ間、あいつを助けてやってくれ」

 

白哉は二人のやり取りを見下ろし、ライオンのぬいぐるみへ入った魂魄の気配を確かめた。

 

「…………改造魂魄か。見なかったことにしよう」

 

「兄様……」

 

「ただし、その姿では目立つ」

 

白哉が懐から取り出したのは、手のひらに収まる布製の兎だった。

 

「そのライオンのぬいぐるみを尸魂界へ持ち込めば、検査で止められる。この人形に入れ。それならば、一護殿の死覇装の懐へ忍ばせても見つかるまい」

 

「……兄貴、まさか最初からコンを連れてくつもりで、それ用の人形まで用意してきたのか?」

 

「任務には万全の備えが必要だ」

 

答えになっているようで、兎を選んだ理由には触れていない。

ルキアは兎の出来へ目を輝かせかけ、現在が兄の趣味を追及する場面ではないと思い直した。

 

コンは義魂丸となってライオンから抜け、兎へ入った。床へ着地して長い耳を確かめると、覚悟を決めた顔で一護を見上げる。

 

「………わーったよ!! しょうがねえ!! 一護!!! 一緒に行くぜ!!! ただし、向こうでヤバくなったら俺を置いて逃げるんじゃねえぞ!」

 

「お前が俺を助ける話じゃなかったのかよ。……まあいい、頼むぞ、コン」

 

「おう!!」

 

一護は代行証を使って肉体から抜け、死覇装の懐へ兎のコンを収めた。残された身体は一心が受け止める。

 

白哉が穿界門を開くと、黒い空間の奥へ白い道が伸びた。

 

「一護!!」

 

「約束を忘れるな!!」

 

「忘れるかよ!! すぐ帰ってくる!!」

 

一護が笑って歩き出し、白哉もその横へ並んだ。穿界門が二人の背後で閉じるまで、ルキアは一度も目を逸らさなかった。

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

同じ頃、空座高校の教務室裏では、黒装束の男が梢綾の前へ膝をついていた。

登校してくる生徒の声は校舎の表側を流れているが、結界で隔てられた一角だけは現世の学校から切り離されている。

 

「――はっ。中央四十六室の決定により、黒崎一護の捕縛が実行されました。当初は我々刑軍の出動が要請されておりましたが、朽木隊長のたっての願いで同行者の交代が認められました。しかし、中央からは我々にも『朽木隊長と黒崎一護を監視せよ』との密命が下っております」

 

「何だと!! 黒崎一護を逮捕!? 中央は何を考えておるのだ!! 志波家の血を引く御曹司に手を出すなど……十三番隊の海燕副隊長は、この事態を知っているのか!?」

 

「いえ……。『極秘に処理せよ』とのことです。志波海燕副隊長をはじめ、十三番隊には情報を伏せるよう命じられております」

 

「…………キナ臭いどころの話ではないな。明らかに何者かの思惑が働いている」

 

命令そのものが不自然であり、執行を担う六番隊隊長まで監視させる念の入れ方は、中央が白哉の反発を予想している証拠でもあった。

正当な裁きを行うだけなら、被疑者の婚約者の実兄と父方の従兄に知られて困る理由もない。

 

古男は壁際で腕を組み、報告を聞いていた。普段なら砕蜂が壊した壁を校長へどう説明するかで三十分は遊ぶ男が、今日は亀裂へ目も向けない。

 

「シャオ、とりあえず我々も尸魂界へ戻るぞ。事態が急すぎる。白哉が同行しているなら道中で一護を害する者はおらんだろうが、瀞霊廷へ着いた後まで同じとは限らん」

 

「ああ。しかし、この『タマ』はどうする? 尸魂界へ連れて行くには危険が高いが……」

 

砕蜂の肩に乗っていた黒猫が、当然のように前脚を上げた。

 

「にやーん」

 

本人は『アタシも行くぞ』と宣言したつもりだったが、周囲には可愛らしい鳴き声しか届かない。

正体を隠して飼い猫の地位へ収まった四楓院夜一は、重要な会議へ参加するたび通訳不在という弱点に直面していた。

 

「クックック…………織姫たちに預けるとしようか。所詮はただの飼い猫だ。連れて行っても足手まといになるし、何より心配だからな」

 

「しゃーーーーーー!!!!」

 

「おお、元気があってよろしい。だが留守番だ」

 

「タマ、落ち着け。今はこやつの顔を刻んでいる場合ではない」

 

砕蜂が黒猫を抱き上げると、夜一は腕の中からも古男へ後脚を伸ばした。

 

「別の貴族の横槍か? 朽木家と志波家の繋がりが深まることを警戒した者たちが、婚姻の話まで進む前に一護を排除しようとしているのではないか」

 

「綱彌代家や四楓院家が、このタイミングで不自然に動くとも思えんがな。朽木家を正面から敵へ回すには名分が弱すぎる。志波家へ恨みを持つ下級貴族を集めたところで、中央四十六室をこれほど早く動かす力はない」

 

古男の口から四楓院家の名が出ると、砕蜂の腕の中で夜一の耳が動いた。

現当主の弟が何かを企んでいる可能性まで否定はできないが、少なくとも元当主は昨夜から黒崎家の近くで魚を食べていただけである。

四大貴族の陰謀にしては、活動内容が平和すぎた。

 

「ならば、中央四十六室そのものが動いたと考えるか?」

 

「それならば、なおさら理由が要る。連中は腐っておるが、腐ったなりに古い秩序と前例を愛している。一護一人を裁くため、朽木、志波、十三番隊、現世駐在組のすべてへ喧嘩を売る決定を、夜のうちに揃って下したというのは不自然だ」

 

「何かがおかしい。誰が糸を引いているにせよ、一護を裁くことだけが目的ではなく、この騒ぎで別の何かを動かそうとしていると考えた方がよいだろう」

 

「……罠か」

 

「罠なら踏んだ者の足元を見るより、仕掛けた者の顔を拝みに行く方が早い。下手に推測を重ねるより、まずはあのハゲジジイに直接聞いてみるとしよう。元柳斎が何も知らぬなら、知らぬまま護廷十三隊を動かされたということになる」

 

砕蜂は隠密機動隊員へ、中央から届いた命令系統と四十六室周辺の出入りを洗うよう命じた。

黒装束の姿が結界の外へ消えると、彼女は職員用の上着を脱ぎ、内側に隠していた死覇装を現す。

 

「わかった。すぐに出立の準備を整える。戸川、貴様は八番隊へ戻り、京楽隊長にも話を通せ。私は隠密機動の内部を押さえる」

 

「うむ。午後の授業は自習と黒板に書いておけばよかろう」

 

「よいわけがあるか!! 教頭へ連絡してから行け!!」

 

のちに尸魂界全土を巻き込み、護廷十三隊の秩序と、その陰で笑う者の企みを暴く騒乱は、朝の出頭命令から始まった。

 

尸魂界編、開幕である。




黒崎一護捕縛命令

中央四十六室から突然発令された命令。

罪状は、

「死神の力の違法略奪」
「霊圧の異常行使による現世への悪影響」

の二点。

しかし一護が死神の力を得た経緯は護廷十三隊側でもすでに把握されており、空座町で発生した被害についても一護だけへ責任を負わせるには無理がある。

さらに通常の事情聴取や召喚を飛ばして刑軍による捕縛が命じられ、審理内容まで極秘扱いされているため、白哉・一心・砕蜂・古男の全員が不自然さを感じている。

今回の尸魂界編を始動させる最初の事件。




中央四十六室

尸魂界における最高司法機関。

護廷十三隊より上位から命令を下す権限を持ち、今回の一護捕縛も中央四十六室から直接発令された。

ただし今回は、

決定から執行までが異常に早い
審理内容を開示しない
十三番隊へ情報を伏せている
一護を連行する白哉自身まで監視対象としている

など、通常の司法判断としては不自然な点が多い。

古男曰く、

「連中は腐っておるが、腐ったなりに古い秩序と前例を愛している」

とのこと。

褒めてはいない。




刑軍

隠密機動第一分隊。

罪人の処刑・捕縛などを担当する実働部隊であり、本来は一護を武力によって拘束するため現世へ派遣される予定だった。

白哉が総隊長へ直談判したことで直接の捕縛任務からは外されたが、中央四十六室からは別途、

「朽木白哉と黒崎一護を監視せよ」

という密命を受けている。




タマ

黒猫となった四楓院夜一が現世で与えられている呼び名。

周囲には普通の猫として扱われているため、本人が重要な意見を述べても、

「にゃーん」

としか認識されない。

今回も一護について尸魂界へ行く意思を表明したが、古男から、

「所詮はただの飼い猫だ」

として織姫たちへ預けられることになった。

元隠密機動総司令に対する扱いとしては非常に雑。







志波家

黒崎一護は父・志波一心を通じて、その分家の血を引いている。

そのため一護の問題は単なる「現世の死神代行一人」の処遇では済まず、志波家だけでなく、一護と婚約関係にある朽木家へも影響する政治問題となる。

古男たちが「別の貴族による横槍」を疑ったのも、この血筋が理由の一つ。



改造魂魄

コンの正体。

本来は人間離れした身体能力を発揮させるため開発された特殊な魂魄。

現在のコンはライオンのぬいぐるみを主な身体としているが、今回は潜入のため白哉が用意した兎のぬいぐるみへ移された。

白哉は、

「任務には万全の備えが必要だ」

と説明している。

なぜ数ある動物の中から兎を選んだのかについては説明していない。




穿界門(せんかいもん)

現世と尸魂界を結ぶ門。

今回、一護は逃亡や抵抗をせず、白哉とともにこの門を通って自ら尸魂界へ向かった。

原作における「ルキアを救出するため尸魂界へ侵入する一護」とは立場が大きく異なり、この物語では、

「罪人として連れて行かれた一護を巡って尸魂界全体が動き始める」

ことになる。





尸魂界編

ここから本格的に始まる新章。

発端となるのは黒崎一護への不自然な捕縛命令。

一護と白哉が中央四十六室へ向かう一方、現世にいた砕蜂と古男も異変を察知して尸魂界へ帰還する。

十三番隊には一護捕縛の事実そのものが伏せられており、刑軍には白哉監視の密命まで出されている。

誰が何のために一護を罪人へ仕立てたのか。

そして、この騒動によって何を動かそうとしているのか。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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