我こそは十四番隊隊長(自称) 作:かなりゆっくりめ
十三番隊隊士。一護が連行された後、クラスメイトから一護の記憶が消えている異常事態と、閉ざされた穿界門に絶望しかけるが、一護を救うため浦原の元へ駆け込む。
黒崎一護(くろさき いちご)
死神代行・志波家血統。尸魂界へ到着早々、裁判もなく「一月後に極刑」を言い渡され理不尽に激怒する。
山本元柳斎重國(やまもと げんりゅうさい しげくに)
護廷十三隊総隊長。中央四十六室の決定として、一護の死刑宣告を非情に下す。
朽木白哉(くちき びゃくや)
六番隊隊長。義弟となるはずの一護への不当な死刑判決に納得できず、総隊長に真っ向から抗議する。
志波海燕(しば かいえん)
十三番隊副隊長・志波家当主。分家の身内である一護の不当拘束に激怒し、一番隊へ怒鳴り込む。
戸川古男(とがわ ふるお)
八番隊五席。珍しく真面目なトーンで元柳斎の冷徹さに苦言を呈する。
四楓院夜一(タマ)
黒猫の姿で現世に潜伏中。取り乱すルキアたちを導き、浦原商店へ誘導する。
浦原喜助(うらはら きすけ)
浦原商店店主。現世組の覚悟を受け止め、尸魂界への突入準備を開始する。
井上織姫、有沢たつき、茶渡泰虎
一護のクラスメイトたち。一護の死刑宣告に衝撃を受け、命がけの救出を決意する。
石田雨竜(いしだ うりゅう)
滅却師。「決着をつける前に死なれては困る」と極上のツンデレを発揮して救出隊に合流する。
学校に来ている実感が、朝からひどく薄かった。
ルキアは自分の席に座り、昨日までと変わらない教室を眺めていた。窓から日が入り、登校した生徒たちが机を囲み、テレビの話や宿題の答えを笑いながら交わしている。
始業前の騒がしさも、黒板に残った日直の名前も、教卓へ積まれた提出物も普段どおりだった。
一護がいないのに、世界は何事もなかった顔で回っている。
しかし、教室にいる誰も黒崎一護の名を口にしない。啓吾は水色と二人で話し、いつもなら一護へ投げる朝の挨拶を最初から必要としていなかった。
教師の出席簿が開かれても、一護の名がある位置で指は止まらず、欠席者として数えられることもない。
異常は記憶だけではなく、机まで消えていることだった。昨日まではルキアの隣にあったはずの机がなくなり、その穴を埋めるように左右の列が詰められている。椅子の脚が残した床の傷だけが、そこに誰かの席があったことを覚えていた。
尸魂界の者が現世で長く活動し、目撃者の記憶を処理しなければならない場合、記換神機によって別の記憶を与えることがある。状況によっては思念へ直接干渉し、死神や虚に関する出来事だけを認識から外す処置も行われる。
だが、一護は義骸で生活していた派遣死神ではない。
空座町で生まれ、人間として過ごし、家族と友人と学校の記録を持つ生身の人間である。
一夜の処置でその存在を消そうとすれば、教室の記憶だけでは足りない。出席簿、写真、試験の答案、近所の記録、家族以外の何百人もの記憶へ同時に手を入れる必要があった。
誰かがそれを実行しており、しかも忘れられたのは一護だけだった。
昨夜のうちに尸魂界へ緊急帰還した戸川五席は、今日も生徒たちの会話へ『戸川先生』として出てくる。砕蜂が現世で名乗っていたシャオ先生も同じであり、二人の急な欠勤について不満をこぼす者までいた。
――なぜ、一護だけなのだ。
二人が帰還したことは、井上の家へ預けられた黒猫の首輪に挟まれていた走り書きで知った。『急用で尸魂界へ戻る。タマを頼む』という古男の字の横に、砕蜂が『勝手に魚を与えるな』と追記していたため、連れ去られた形ではないらしい。
それ以外の情報は、何も届いていなかった。
今朝になって現世側の穿界門は閉鎖され、呼びかけても地獄蝶は一匹も現れない。
兄からも、光四郎からも、瀞霊廷へ戻ったはずの二人からも音沙汰がない。
尸魂界との連絡を断ち、一護の痕跡を消しているのであれば、出頭命令を下した者は最初から彼を現世へ返すつもりがないのではないか。
「……朽木さん」
呼ばれて顔を上げると、石田が席の横に立っていた。
眼鏡の奥から教室を見回し、誰にも聞かれない声へ落として続ける。
「クラスの皆が黒崎のことを忘れている。教師の出席簿からも名前が消えていたけれど、君は覚えているんだね。これは、死神の仕業なのかい?」
「石田……お前は一護を覚えているのか」
「忘れられるわけがないだろう。僕が勝負を挑み、引き分けたままの相手だ。井上さん、有沢さん、茶渡君も覚えている」
滅却師が一護の名を口にしただけで、張り詰めていたルキアの呼吸が戻った。
ここでは自分だけが世界から取り残されたのではないという安堵が、言葉を止められなくした。
「実は昨日、一護は中央四十六室の出頭命令を受け、兄様とともに尸魂界へ向かった。死神の力を違法に奪ったことと、霊圧の行使で現世へ被害を与えたことが罪状だという」
「黒崎が、尸魂界へ……罪人として連行された、だと……?」
「兄様が刑軍に代わって身柄を預かってくださった。一護を悪いようにはせぬと約束してくれたが、中央四十六室が相手では、兄様でもどこまで抗えるか分からぬ。石田……一護は大丈夫だろうか……?」
ルキアは助けを求める目で石田を見た。自分が何を期待しているかも分かっている。
尸魂界へ連れていかれた死神代行を心配してくれと頼んでいるのだ。
石田は視線を外し、ルキアへ背を向けた。
「…………悪いけれど、僕には関係のない話だよ。死神がどうなろうと、滅却師の僕の知ったことじゃない」
「…………そうか。すまん。滅却師のお前にすがるようなことを言って……」
ルキアは鞄を持ち、教室を出ていった。足取りに力がなく、廊下を曲がるまで誰とも目を合わせない。その背中を見送った石田は、眼鏡を押さえていた手を下ろし、反対の拳を教室の壁へ叩きつけた。
周囲の生徒が驚いて振り返ったが、石田は構わなかった。
「……くそっ……! 黒崎の奴め……! 女の子を泣かせるなんて……! あいつに勝つために必死で特訓していた僕が、まるで馬鹿みたいじゃないか……!!」
直後から、石田の頭は尸魂界へ行く方法を探し始めていた。
滅却師の誇りは死神を見捨てる理由にもなったが、勝負の相手を他人の判決へ渡さない理由として使う方が、本人には都合がよかったのだ。
◇◇
放課後、裏路地に、ルキア、織姫、たつき、チャドが集まっていた。
四人とも一護の記憶を失っていない。
家族以外の人間へ一護のことを尋ねると、誰も名前と顔を結びつけられなかった。
記憶の空白を不思議がる者さえおらず、最初から黒崎家には息子がいなかったという前提で話が進んでしまう。
「学校だけじゃない。近所の人も、道場の連中も覚えてなかった。アタシが一護のことを説明しても、黒崎先生の親戚かって聞き返された」
「商店街の人も同じだったよ。黒崎くんの家まで案内してくれたのに、黒崎くんだけ知らないの。なんだか……みんなの中から、黒崎くんのところだけ切り取られたみたいだった」
織姫は胸元で指を組み、一護の名を繰り返した。自分まで忘れないための確認だったが、六花は呼びかけに応じて髪留めの内側から声を返している。
「一護の父親たちは覚えている。俺たちも覚えている。消された範囲には、霊力の強さが関係しているのかもしれない」
チャドの言葉へ、ルキアが頷いた。
「おそらくな。だが、問題は記憶改変だけではない。穿界門が閉じられ、現世から尸魂界へ通じる経路が使えなくなっている。一護を追おうにも、今の私たちには入口すらない」
「やれやれ…………お主ら、全員で一護を助けに行きたいのか?」
頭上から声が降ってきた。
塀の上に黒猫が座り、前脚を揃えて四人を見下ろしている。
「ね、猫が喋ったァァッ!?」
たつきが路地の反対側まで飛び退き、隣ではチャドの胸筋が硬くなった。
虚や死神を目にしてきた男も、人間の言葉を使う飼い猫までは想定していない。
「………しゃべ……った……!」
「そうなの、タマちゃん! 黒崎くんが連れて行かれちゃって……どうにか助けに行けないかなー?」
織姫だけは驚く手順を飛ばし、塀から黒猫を抱き上げた。頬を擦りつけ、両手で柔らかな胴を揉んでいる。
「井上……お前は本当に、どのような状況でも受け入れるのが早いな……」
「ええい、放せ! 揉みしだくでない!! せっかくの毛並みが乱れるわ! お主の抱き方は愛情の圧が強すぎる!」
黒猫は織姫の腕から頭を出し、乱れた毛を前脚で直した。
「打開策が知りたいなら、浦原のところへ行くがよい。正規の穿界門が封じられても、あやつなら別の道を探せる。尸魂界の情報も、こちらより多く掴んでおるはずじゃ」
「…………浦原喜助か……!」
選択肢が生まれると、ルキアの目へ力が戻った。四人は黒猫を先頭に裏路地を出て、浦原商店へ向かった。
◇◇
浦原商店の地下座敷で事情を聞き終えた浦原は、扇子で口元を隠したまま黙っていた。
いつもの下駄と縞模様の帽子は変わらない。
目元からは客をからかう気配が消えている。店の奥では鉄斎が結界の術式を確認し、甚太と雨が声を潜めていた。
「……それで、ウチに来たわけですか」
「浦原!! お前なら尸魂界の情報を何か掴んでいるのではないか!? 一護はどうなっている!?」
ルキアは座ることも忘れ、卓を挟んで浦原へ詰め寄った。浦原は扇子を閉じ、畳の上へ置いた。
「正規の通信は遮断されていますが、ウチにも独自の連絡手段はあるんス。断片的ではありますけど、今朝、一番隊で黒崎さんに対する処分が言い渡されました」
「処分……?」
浦原は答える前に息を吐いた。知らせれば、この場の全員が尸魂界へ向かうと分かっている。それでも隠したところで、ルキアが諦める可能性は最初からなかった。
「残念ながら、あまりいいニュースはないっスよ」
◇◇
一番隊隊舎にて、左右へ並んだ隊士の中央に一護が立たされていた。
両足には霊力を封じる枷が嵌められ、鎖が床の金具へ繋がれている。罪状を読み上げる者も、弁護を許す者もいない。正面へ座す山本元柳斎重國の手には、中央四十六室から下された判決書だけがあった。
「なに……!? 死刑だとォォッ!!?」
一護の怒声が天井へ反響した。護廷十三隊の総隊長を前にして声を抑える理由など、一方的に殺される本人には存在しない。
「そうじゃ。第一級の重罪人として、黒崎一護を一月後、双殛の丘にて極刑に処す」
「どういうことだ!! 審理も裁判も何もねえのかよ!! 昨日、言われたとおりに自分から来たんだぞ! それを最初から聞く気もなく、一方的に殺すつもりだったのか!!」
「これは中央四十六室の……尸魂界の絶対なる決定じゃ」
元柳斎の声は重かったが、納得している者の声ではない。
総隊長は決定を読み上げる立場にあり、その決定へ公然と逆らえば、護廷十三隊そのものを中央へ反旗を翻させることになる。
杖の下で割れた床だけが、命令を伝える者の怒りを表していた。
「納得できかねます、総隊長」
白哉が列から踏み出した。現世で一護を連れてきた時から崩さなかった冷静さが消え、隊長羽織の袖が霊圧に押されて広がっている。
「これでは、私が何のために現世へ赴き、彼を連れて参ったのか分かりませぬ! 黒崎一護殿は逃亡も抵抗もせず、釈明の機会が与えられると信じて同行したのです。それに彼は、いずれ我が朽木家の義弟となる男であり、分家とはいえ名門・志波家の血を引く者。それを碌な審議もなく処刑するなど、朽木家当主としても到底受け入れられません!」
「そんなことは百も承知でおる……! じゃが、四十六室の決定は絶対――」
元柳斎の言葉を、正面の扉が砕ける音が遮った。
木板が蝶番から外れ、床を滑って隊士の列へ突っ込む。開いた入口から海燕が駆け込み、呼吸を整えるより先に一護の名を叫んだ。
「一護ォォォォォッッ!!!!」
「海燕……!!」
足枷をつけられてはいるが、身体に傷はない。一護の姿を確認した海燕は息を吐き、直後に元柳斎へ鋭い目を向けた。
「どうなってやがる!! 身内を極秘に連れてきた挙げ句、死刑にするって話まで聞こえて――」
怒鳴りながら壇上まで進みかけ、相手が総隊長であることを思い出した海燕の足が止まった。
「……って、総隊長!! 取り込み中に失礼しました!! ですが、これは黙って引き下がれる話じゃありません!」
「控えよ、志波副隊長。ここは貴様のような下席が、みだりに立ち入る場ではない」
「十三番隊副隊長としてなら、そのとおりです。ですが、今ここにいる俺は副隊長じゃない!」
海燕は死覇装の胸にある志波家の紋を叩いた。
「志波家現当主として申し上げます!! 我が家の縁者を、当主である俺へ何の断りもなく拘束し、あまつさえ極刑に処すとは何事ですかッッ!! 正式に五大貴族の一角として抗議します! 判決の根拠と審理記録を開示し、黒崎一護へ弁明の機会を与えていただきたい!!」
副隊長の発言なら総隊長命令で退けられる。
だが、五大貴族当主の正式な抗議となれば、護廷十三隊の階級だけでは封じられない。
元柳斎は目を閉じ、判決書を握った。
「その抗議は儂にではなく、中央四十六室へ直接申し立てるがよい。貴族のお主らには、その権利があろう」
「総隊長は、この判決を正しいと思っておられるのですか」
海燕の問いに、元柳斎は答えなかった。中央四十六室へ抗議しろという言葉そのものが、総隊長として許される限界まで示した道だった。
白哉は奥歯を噛み、袖の内側で拳を握った。朽木家と志波家が同時に異議を申し立てれば、審理のやり直しを求めることはできる。ただし、それには四十六室が正常に応答するという前提が必要だった。
「――元柳斎。それはあまりに道理の通らぬ、厳しい言いようではないか」
声は隊士の列ではなく、隅から届いた。
柱の影に立っていた古男が進み出る。誰から入室を許されたのか、いつからそこにいたのかを説明する者はいない。
いつもの笑いも芝居がかった身振りも消え、冷えた目が判決書へ向けられていた。
「…………お主まで口を挟むか、戸川」
「戸川先生……!」
一護が見上げても、古男は笑わなかった。
「中央四十六室の決定が絶対であることと、決定に至る過程を問うてはならぬことは同じではない。罪状を示し、被告の言葉を聞き、証拠と記録を残したうえで判決を下す。それが俺たちの守ってきた法ではなかったのか」
「……判決書には、審理を終えたと記されておる」
「ならば、その審理に出席した者を一人でもここへ呼んでみせよ。昨日まで現世にいた男の弁明を、誰がいつ聞いた。証人として朽木白哉も志波一心も呼ばれず、霊圧被害の調査報告すら照合されておらん。法の形を借りておるだけで、中身は判決より先に刑を決めた私刑ではないか」
古男の指摘へ反論する声は上がらなかった。総隊長の周囲へ控える一番隊士たちも、判決の異常さを理解している。命令に従っている者と、命令を正しいと信じている者は同じではなかった。
中央四十六室の思惑どおりに進んでいるものがあるとすれば、判決の日付だけだった。
◇◇
「一護が…………極刑……」
昨夜、自分の頭を撫でた顔が浮かび、処刑の日まで決められている。
「死刑…………? 黒崎くんが……?」
目に溜まった涙が頬へ落ちても、言葉の意味を受け入れられずにいる。
「嘘だろ…………!!! なんでアイツが死ななきゃならねえんだよッッ!!!!」
たつきの拳が壁へ突き刺さり、土と石の欠片が床へ落ちた。
浦原は修理費を口にせず、帽子のつばで目元を隠している。
チャドは拳を握り、掌へ爪を食い込ませた。
「一護は、俺たちを守るために戦った。あいつが罪人なら、同じ場所で戦った俺たちも同じだ。一護だけに刑を受けさせる理由はない」
ルキアは畳を押して立ち上がり、卓を回り込んで浦原の胸元を掴んだ。
「こうしてはおれん!!! 浦原、頼む!! 今すぐ何とかして穿界門を開けてくれ! 拘突が来ようが、中央四十六室に逆賊と見なされようが構わん!! 私を一護のそばへ行かせてくれ……!!」
声の終わりが震えていた。一護を助けられると言い切る余裕はなくとも、処刑の日まで現世で待つという選択だけはできなかった。
織姫も浦原の前へ膝をつき、畳へ届くまで頭を下げた。
「お願いします、帽子のおじさん!! 私も行きます! 私の……私の飲みかけの激甘メロンソーダもあげますから、一護くんのところへ連れていってください!!」
命を懸ける依頼へ添える対価としては、飲みかけのメロンソーダは恐ろしく軽い。
しかし、織姫が今持っている物の中で、自分が好きなものを差し出そうとした結果だった。浦原は笑わず、真っ直ぐに頭を下げる少女を見ている。
「アタシからもお願いします。穿界門の向こうがどれだけ危険でも、尸魂界全部を敵に回すことになっても行きます。一護がいなくなるなんて、アイツが理不尽に殺されるなんて、アタシたちには絶対に耐えられません!!」
たつきも頭を下げた。チャドはその横へ立ち、一度の言葉へ意思を込める。
「俺も行く。あいつを一人にはさせない」
「…………しょうがないな。なら、僕も行こう」
地下へ続く階段から声がした。
石田が眼鏡を押し上げながら下りてくる。教室でルキアを拒んだ男は、放課後になるまでに浦原商店の場所を突き止め、誰にも呼ばれず救出の相談へ加わっていた。
「石田……!?」
ルキアが振り返ると、石田は彼女と目を合わせず、階段の途中で横を向いた。
「勘違いしないでくれよ。黒崎のために行くんじゃない。僕はまだ、あいつとどちらが優れているかの決着をつけていないんだ。それなのに、あんな理不尽な死刑で逃げられるなんて、僕のプライドが許さないだけだ」
言い訳は長かったが、行くという結論だけは誰より明瞭だった。
「……ありがとう、石田」
「礼を言われる理由はない。黒崎を連れ戻したら、今度こそ僕が勝つ」
浦原は五人と一匹を見回し、閉じた扇子で帽子の脇を掻いた。
「あらあら……黒崎さんは本当にモテモテっスねぇ。本人が聞いたら、誰が一番自分を心配しているかで余計な騒ぎを起こしそうです」
「浦原!!」
ルキアの怒声を受け、浦原は扇子を開いた。口元には笑みが戻っていたが、目は笑っていない。
「分かりました。そこまでの覚悟があるなら、こちらも腹を括りましょう。封鎖された正規門を避けて尸魂界へ入るには、霊子変換機を調整し、侵入地点を固定する必要があります。それに、向こうで護廷十三隊と戦う可能性まで考えるなら、今の皆さんの力を安全に扱えるようにしなければならない」
浦原は扇子の先を地下空間の奥へ向けた。座敷のさらに下には、店の外観からは想像できない広さの訓練場がある。
「処刑までは一月。準備と修業に使える時間は、それより短いと考えてください。尸魂界へ入った後は、ワタシにも皆さんの命を保証できません。それでも行くというなら――尸魂界への殴り込み、全力で準備を始めますよ!!」
誰も退かなかった。
囚われた一護を救い出すため、現世の仲間たちによる尸魂界突入部隊が結成された。
極刑まで、あと一月。
一護の極刑宣告(双殛の刑)
中央四十六室によって下された、死神代行・黒崎一護に対する理不尽な死刑判決。裁判や審理すら行われず、一月後に処刑台「双殛」にて執行されることが決定した。背後には何者かによる意図的な陰謀が強く疑われる。
志波海燕の当主抗議
没落貴族とはいえ、依然として高い霊力と発言力を持つ名門・志波家の現当主として、分家の血筋である一護の不当拘束に激怒した海燕による正式な異議申し立て。
古男の真面目モード
普段の電波・厨二病な態度を完全に封印した八番隊五席・戸川古男の姿。総隊長に対しても物怖じせず筋を通す発言をし、事態の異常性を際立たせた。
記憶改変の違和感
現世において一護の存在だけがクラスメイトの記憶から消去され、霊力の高い仲間(ルキア、石田、織姫、たつき、チャド)だけが覚えている現象。尸魂界側の工作であることが示唆されている。
石田雨竜のツンデレ救出参戦
「滅却師には関係ない」と一度は突き放したものの、ルキアの涙と一護への対抗心から放っておけず、「決着をつけるため」という建前を引っ提げて救出隊の先頭に立った石田の代名詞的ムーブ。