我こそは十四番隊隊長(自称) 作:かなりゆっくりめ
五番隊三席・特異型破面。年上の巨乳(松本乱菊)に癒やしを求めて日番谷の逆鱗に触れる。自身の斬魄刀『漂泊』で応戦するも相性の悪さで氷漬けにされ、お仕置きとして瀞霊廷通信のショタグラビアを飾る羽目になる。
日番谷冬獅郎(ひつがや とうしろう)
十番隊隊長。霊術院同期である雷太の不敬かつ破廉恥な言動にキレて『氷輪丸』を解放。雷太共々、山本総隊長から理不尽なグラビア撮影の刑に処される。
松本乱菊(まつもと らんぎく)
十番隊副隊長。お酒欲しさに胸を揉ませようとした張本人。騒動を笑顔で観戦する。
山本元柳斎重國(やまもと げんりゅうさい しげくに)
護廷十三隊総隊長。隊舎内で私闘を繰り広げた日番谷と雷太を鎮圧し、罰として『瀞霊廷通信』の特別企画グラビアへ強制送還する。
朽木ルキア(くちき るきあ)
十三番隊隊士。短期間で『卍解』を習得して現世組と合流するが、全身血まみれで狂気の「ゼロ再生風呂」を語る仲間たちの異様さにドン引きし、思考停止でスルーする。
井上織姫(いのうえ おりひめ)
「半分は自分の血だから大丈夫」と笑顔で言い放つ狂気のヒロイン。一護の正妻の座を賭けたバトルロイヤルを勝手に開催し、石田とチャドにも側室枠を勧める。
有沢たつき(ありさわ たつき)
織姫の『双天帰盾』で肉体をゼロから再構築することで「風呂に入らずに汚れをリセットできる」という恐るべき新概念をルキアに布教する。
茶渡泰虎(チャド)& 石田雨竜(いしだ うりゅう)
全身血まみれのまま尸魂界へ殴り込む歴戦の高校生たち。織姫からの「側室枠」の誘いを秒で拒絶する。
浦原喜助(うらはら きすけ)
現世組が「山本総隊長をサシで倒す」ことを目標に修行していた事実をルキアに告げる。
中庭へ、冬が落ちてきた。
「――霜天に坐せ、『氷輪丸』ッッッ!!!!」
日番谷が斬魄刀を抜き放つと、刀身から噴き上がった冷気が巨大な氷龍となり、庭木と石灯籠の間を抉りながら雷太へ襲いかかった。
隊舎の屋根へ逃げていた雷太は瓦を蹴って庭へ降り、着地した場所まで凍結されたため、そのまま地面を転がって白い牙を避けた。
「のおおおおおおっっ!!!! 隊舎内で帯刀許可も始解許可も出てねえだろうがァァッ!! てめえ、自分が隊長だからって規則を好き勝手に曲げやがって!!」
「他隊へ押しかけて副隊長を買おうとした奴が規則を語るんじゃねえ!!」
雷太が飛び越えた縁側を氷の爪が掠め、乱菊が座っていた場所ごと分厚い氷壁へ変えた。当の乱菊は徳利を抱えて早々に屋根へ退避し、二人を止める気配もなく他人事のように手を振っている。
――やあ、みんな! 俺の名は緋山雷太――そしてガルムルド・ジュードスタイン!! 現在、絶賛氷の刃を避けまくっているところだ!!
――ここで、この眉間に皺を寄せまくった不機嫌白髪ボーイを紹介しよう! 名は日番谷冬獅郎!! 俺の真央霊術院時代の同期にして、永遠のライバル!! ところがこいつは、俺を差し置いて史上最年少で隊長になりやがった抜け駆けの裏切り者なのである!!
日番谷が氷輪丸を薙ぐと、雷太の進路へ氷柱が連続して突き上がった。
右へ跳べば右が凍り、屋根へ逃げれば氷の尾が瓦を砕く。
雷太は氷柱の側面を蹴り、空中で身体を捻りながら、読者への解説は途切れさせない。
――ついでに、『死神と融合して俺は強くなったのか』という疑問にも答えてやろう! 結論から言うと、ほんのちょびっとしか強くなってない!!
ここで、死神と虚が混ざったのなら圧倒的に強くなるはずだろう、と考えた読者もいるだろう。
――チッチッチ、読者諸君。その認識は甘いぜ。チョコラテのようにな!!
俺は完全融合したのであって、死神が虚化したわけでも、虚が死神化したわけでもない! 藍染サマによれば虚と死神の双方の因子は揃っているらしいから、将来何かに目覚める可能性はある。
だが現状では、死神だった緋山雷太の霊圧が元から強すぎて、はっきり言えばガルムルド側の霊圧なんてゴミみたいなもんなんだよ!!
耳の横を氷刃が通り過ぎ、髪が数本まとめて凍りついた。雷太が頭を振ると、白く固まった毛先が砕けて地面へ落ちる。
「うおっっ!! 今のは本気で首が飛ぶところだったぞ!! 同期に向ける殺意じゃねえだろ!!」
「てめえも腰に刀を差してんだろうが!! 逃げ回ってねえで戦え! それから松本に二度と近づかないと誓って、大人しく凍りつけェッ!!」
氷輪丸から生まれた翼を広げ、日番谷が上空から雷太へ迫った。
「この野郎……いい加減にしろ!! 俺は松本さんのたわわな胸を揉みたいだけなんだよォォォッッ!!!!」
それは緋山雷太の欲望であり、ガルムルド・ジュードスタインの欲望でもあった。
死神と虚の魂が融合した時、記憶、感情、誇り、戦闘経験は互いの境界を失ったが、年上の豊満な女性を好む嗜好に関しては最初から衝突さえ起きなかった。
乱菊を副隊長として毎日そばに置いている日番谷への嫉妬まで、混じり気なく一つに統合されている。
逃げ続けても、日番谷の怒りも氷も尽きない。雷太は腹を括り、腰に差した斬魄刀の柄を握った。
「やってやろうじゃねえか!! 同期だからって手加減してもらえると思うなよ! ――天地悉く我が白に染まれ、万象遍く彼の朱に還れ――『漂泊』ッッ!!」
鞘から走った光が、抜き放たれた刀身を包んだ。
始解した漂泊は峰まで研ぎ澄まされ、切っ先から鍔元まで左右対称の刃を持つ両刃刀へ姿を変える。反りを残した外見は馴染み深い斬魄刀でありながら、どちらから触れても斬れる異様な姿だ。
日番谷が放った氷龍の顎へ、雷太は漂泊を差し込んだ。
激突音は鳴らなかった。刃が氷へ触れた箇所から白い亀裂に似た筋が走り、巨大な顎、首、胴体を構成していた霊圧と霊子の結び目がほどけていく。氷龍は砕かれたのではなく、形を保つ理由そのものを失い、白い霧となって中庭の空気へ還った。
――どうだ! これが俺の斬魄刀、漂泊だ!! 刀身へ直接触れた霊圧と霊子の結合をほどき、構造を解体して大気へ還元する! 敵の刀を受ければ霊子構造を崩してナマクラへ変え、鬼道を斬れば術式の結合をほどいて消し、結界も霊圧の鎧も触れた場所から分解する!! なかなかオサレでチートな能力だろう!?
日番谷は氷輪丸を振り下ろしていた。霧散した氷龍の背後から二頭目が現れ、左右の地面からも氷柱が雷太を挟むように伸びる。
漂泊が氷の結合をほどいた先へ新しい氷が重なり、解体された空間を冷気が埋めていった。
――ただし!! この能力、日番谷とは致命的に相性が悪い!! 俺が刃でほどいて解体する速さより、こいつが新しい氷を追加する速さの方が圧倒的に上だからだッッ!!
「もう逃げ場はねえ。歯を食いしばれ」
冷え切った眼差しのまま氷輪丸を雷太へ向け、逃げ道を埋め尽くす氷の奔流へ命令を下す。
「――死ね」
「あまり強い言葉を使うなよ。弱く見え――」
漂泊が正面の氷を霧へ変えた直後、その左右と足元から伸びた氷が雷太の腕と脚を呑み込んだ。刀を振るうための関節が固定され、最後に顔だけが氷の外へ残る。
「ギャーーーーーーッッッ!!!!」
悲鳴ごと氷が閉じ、緋山雷太は中庭の中央で見事な氷像となった。
突き出した両刃刀だけが氷を分解し続けているが、右手を動かせないため、刃の周囲に細い霧の隙間を作ることしかできない。
勝負は決した。ただし、十番隊隊舎も決して無事ではなかった。
庭木はへし折れ、縁側は凍りつき、隊舎の屋根には雷太が逃げ回った跡と氷龍が噛みついた穴が並んでいる。
被害報告を誰が書くのかという現実に気づいた乱菊が、屋根の上で空の徳利を抱えたまま顔を逸らした。
騒ぎを聞いて駆けつけた山本元柳斎重國は、半壊した中庭と刀を構えた日番谷と氷像になった雷太を順に眺めた。問いただすより先に杖が二度振り下ろされ、日番谷は頭から地面へ沈み、雷太の氷像にも大きな亀裂が入る。
こうして二人の私闘は、総隊長による公平な物理的鎮圧によって終結した。
翌日、修繕費の見積書を見た元柳斎は、減給だけでは足りぬと判断した。
二人へ命じられた罰は、『瀞霊廷通信』の特別企画へ身体を張って協力し、売上の全額を十番隊隊舎の修繕費へ充てることだった。
企画名は、『ショタ枠ぶち抜きグラビア』
日番谷はスクール水着風の際どい競泳水着、雷太はびしょ濡れの半被にふんどし一丁で、二人が氷の上で絡み合っているという意味不明な構図であった。
何を表現したい写真なのかは撮影者にも説明できなかったが、女性死神協会と一部の貴族層から予約が殺到し、特別号は『瀞霊廷通信』史上最高の発行部数を記録した。
売上によって中庭の修繕費は全額賄われ、追加の庭木を購入できるほどの利益まで出た。日番谷と雷太の尊厳以外は、誰も損をしない結末であった。
◇◇
数日後 浦原商店 地下訓練場
穿界門の建造は完了している。鉄斎とジン太と雨が最終確認を行い、白い門の向こうに霊子の流れが渦巻いていた。
ルキアが姿を見せると、織姫は血に染まった服のまま駆け寄った。
「あっ、朽木さん!! 卍解できたの?」
「ああ、ばっちりだ! 私の卍解――白霞罰の基礎は完全にものにしたぞ。実戦でどこまで扱えるかは未知数だが、始解だけで隊長格へ挑むより勝機はある!」
ルキアは両肩を起こし、自信に満ちた笑みを浮かべた。
しかし織姫の目の前まで来たところで、喜びより先に別の疑問が表情へ現れる。
織姫の肌には切り傷一つなく、いつもと変わらぬ笑顔を見せているにもかかわらず、服は上から下まで赤黒く染まっていた。
「……しかし井上。なぜお前は無傷なのに、着ている服がそこまで血まみれなのだ。返り血だけで、その色になるほど斬ったのか?」
少なくとも服一着を染められる量である。ルキアが恐る恐る周囲を見れば、チャドのシャツも破れ、石田が誇りとしている純白の滅却師装束まで赤黒く汚れていた。
チャドは裂けた袖口を確かめ、いつもの低い声で答えた。
「問題ない。傷は全部治っている」
石田は自分のマントを摘まみ、乾いて固くなった箇所を見て眉を寄せた。
「確かに、このまま街中を歩くのは目立ちすぎるね。一度家へ戻って着替えを取ってくるべきかな」
「大丈夫だよ、朽木さん!」
織姫は笑顔で手を振り、安心させる材料を提示した。
「服についた血の半分くらいは、自分の血だから!!」
「自分の血なら良いという問題では断じてないぞ……!?」
後ずさる横で、たつきは固まった首を鳴らしていた。彼女も衣服の各所に血痕を残しているが、本人は汚れを気にするより身体の動きを確かめる方を優先している。
「それより朽木、知ってるか? 織姫の双天帰盾で、失った肉体を何もないところから再構築してもらうだろ。あれを私たちは『ゼロ再生』って呼んでるんだけどさ、完全に作り直された部分は毛穴の垢も皮脂もなくて、生まれたてみたいなスベスベの状態で戻るんだよ」
「……は?」
「だから修行中、汗と泥で身体が汚れたら、チャドか石田に適度に吹き飛ばしてもらって、織姫にゼロ再生してもらってたんだ。わざわざ山を下りて風呂へ行かなくても、全身を新品みたいにピカピカにして修行を続けられる。水も薪も使わないし、超エコだろ!」
エコロジーとは、本来、人間の身体を破壊して新品へ交換する思想ではない。
誰か一人でも冗談だと笑ってくれることを期待したが、全員が山籠りで得た有用な知恵を共有する顔をしていた。
「石田……お前も止めなかったのか?」
「僕は最初に反対したよ。ただ、実際に左脚を再生してもらった後、泥も汗も完全に消えていた。合理性を実証されては、滅却師として認めざるを得ないだろう」
ルキアは青ざめた顔で浦原へ歩み寄り、仲間たちに聞こえないよう声を落とした。
「……浦原。こやつらは、瀞霊廷でいったい誰と戦うつもりで、こんな狂気の修行をしてきたのだ?」
浦原は扇子で口元を隠した。笑みを作ろうとしているが、扇子の上に出ている目は笑えていない。
「夜一さんの報告によりますと、最終目標を『山本総隊長と一対一で戦い、正面から勝ち切ること』に設定して鍛えたそうッスよ。夜一さんは、総隊長と更木隊長以外なら戦い方次第で勝負になると言っただけらしいんですが……皆さん、そこを最低ラインにしちゃったみたいで」
ルキアの瞳から光が消えた。
彼らは自分の手足が飛ぶことを戦闘不能と数えず、織姫が生きている限り何度でも新品の肉体へ戻って立ち上がる。総隊長に勝てるかは別として、敵に回した隊長が精神的に疲弊することだけは確実だった。
ルキアは考えることをやめ、穿界門へ顔を向けた。
「…………そうか。よし、行こう!! 一護が処刑されるまで時間がない。細かいことは、あやつを救い出してから考えるぞ!」
「うん!」と織姫は拳を握り、救出部隊の目的を高らかに宣言した。
「じゃあ今回の尸魂界救出戦で、誰が黒崎くんの正妻になって、誰が側室になるのか、一番活躍した人で勝負だよ!!」
ルキアは踏み出しかけた足を止め、首が鳴りそうな勢いで織姫へ振り返った。
「はあッッ!!?? 何の話だ、貴様ッッ!! なぜ正妻を決める戦いへ変わっている!?」
「だって、助けられた黒崎くんは一番頑張った人に感動すると思うの。正妻が朽木さんで決まってるなら、私は一番活躍して第一側室を目指すよ! でも私が朽木さんより活躍したら、正妻と側室を交代しても公平だよね?」
公平という言葉が、婚約者の知らない場所で一護の重婚を前提として使われている。
中央四十六室の裁判にも劣らぬ一方的な決定だ。
たつきは頭を掻き、織姫とルキアを見比べた。
「まあ、勝負なら仕方ないか。受けて立つよ。誰か一人に全部任せるより、全員が一番活躍する気で行った方が一護を助けられる確率も上がるだろ」
「有沢まで受けるな!! お前は何の座を目指しているのだ!?」
「そこは勝ってから考える」と答えを保留したことにより、たつきも正妻争いから降りてはいなかった。ルキアが頭を抱える一方、織姫は満足そうに頷き、残る二人へ期待の目を向ける。
「石田くんと茶渡くんも、負けずに頑張って黒崎くんの側室を目指してね!!」
石田が「絶対に嫌だ」と即答し、チャドも「断固拒否する」と続けた。二人の意見は、この日初めて完璧に一致した。
浦原が扇子を閉じ、穿界門の前へ立つ。笑い話を続けていられる時間は終わり、門の奥では尸魂界へ至る断界が荒々しい霊子の流れを見せていた。
「皆さん、準備はいいッスね。門が安定している時間には限りがあります。中へ入った後は立ち止まらず、走り続けてください。目的地は瀞霊廷――黒崎さんが囚われている、敵の本拠地っス」
ルキアが先頭に立ち、織姫、たつき、チャド、石田が並んだ。塀の上では夜一が尻尾を揺らし、人間の領域から大きく踏み外した修行の成果をどこへ向けるべきか考えている。
浦原が門を開くと、白い光が地下訓練場を呑み込んだ。
かくして、最強の現世突入部隊は、囚われた男の平穏な将来を先回りで破壊しながら、尸魂界へ足を踏み入れたのであった。
緋山雷太
【挿絵表示】
斬魄刀『漂泊(ひょうはく)』
緋山雷太の斬魄刀。
解号:「天地悉く我が白に染まれ、万象遍く彼の朱に還れ――」
始解形態:刀身が両刃の美しい日本刀へと変形する。
能力特性:刀身に触れた霊圧・霊子の「結び目(構造)」を強制的にほどき、大気へと還元・分解する。鬼道、結界、霊子武装などを無力化できるが、日番谷のように「ほどく速度を上回る物量」で攻撃してくる相手とは相性が悪い。
瀞霊廷通信ショタ枠グラビア(大重版)
私闘の罰として山本総隊長が日番谷と雷太に下した屈辱の処罰。水着の日番谷と濡れ法被・ふんどし姿の雷太が絡み合うピンナップポスターが掲載され、瀞霊廷の女性層を中心に爆発的なヒットを記録した。
ゼロ再生入浴法
織姫の『事象の拒絶(双天帰盾)』による極限の応用。致命傷を負った肉体を分子レベルで「傷つく前の状態」へ巻き戻す際、皮膚の垢や汚れまで完全にリセットされるため、「定期的に四肢を吹き飛ばされれば入浴不要」という狂気のサバイバル理論。
正妻・側室決定戦
一護救出作戦の裏で、織姫によって突如として開幕が宣言された非公式バトルロイヤル。瀞霊廷での戦果に応じて一護の正妻および側室の序列が決まるという謎ルール。石田とチャドは当然のように辞退した。