我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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緋山雷太
五番隊三席。旅禍確保のため、雛森を伴って志波家本邸へ踏み込む。

雛森桃
五番隊副隊長。本人の意思とは無関係に、雷太の強引な捜査へ巻き込まれている。

有沢たつき
志波家へ匿われている現世組。一護救出の機会を窺っている。

茶渡泰虎
たつきとともに志波家に滞在中。雷太と正面から激突する。

志波都
十三番隊三席にして海燕の妻。穏やかな物腰とは裏腹に、交渉材料の扱いには抜け目がない。

志波空鶴
十三番隊三席。志波家へ殴り込んできた雷太たちを迎え撃つ。

志波岩鷲
十三番隊六席。姉の命令を受け、たつき・茶渡とともに懺罪宮へ向かう。


志波家奇襲と恋文の脅迫

「よし……雛森副隊長。海燕と浮竹隊長の二人が屋敷から離れた今が絶好の好機だ。一気に本邸へ奇襲をかけるぞ。いいな?」

 

返事を求められても、頷けるわけがない。

旅禍を捜すところまでは付き合った。居場所も突き止めた。

 

そこで報告に戻れば、今日もよく働いたと胸を張れたはずなのに、どうして塀の陰で奇襲の相談をしているのか。

目の前には志波家の門。逃げ帰るなら今だが、隣の三席が帰してくれない。

 

「うう…………何で私が他隊の大貴族の屋敷を襲撃なんてしなきゃいけないのよぉ……」

 

「じゃあ戻るか。朝礼で昨夜の話でもしてよ。――『ああ……昨夜の雛森副隊長の腰突きは、実に貪欲で淫らな乱れっぷりであり……』」

 

「そこまで激しくしてないわよバカァァッッ!! わかった! やるから!! その話を五番隊でバラすのだけは絶対にやめてェェッッ!!」

 

「よし……行くぞッ!!」

 

そこまで激しくはしていない。雛森はそう訂正した。何もしていないとは言わなかった。雷太にとっては朝礼で朗読する材料が一行増えたが、今は黙っておく。

 

門の壊れる音に、雛森の悲鳴も掻き消える。止めるなら蹴る前でなければならなかった。破片を拾って立て直したところで、今さら何事もなかった顔で帰れるはずもない。

 

「待たれよッ!! ここを五大貴族・志波家の本邸と知っての狼藉かッ――」

 

「護廷十三隊五番隊副隊長・雛森桃、および三席・緋山雷太だ! 凶悪な旅禍を匿った内乱幇助の現行犯により、これより家宅捜索を行う!!」

 

「なっ……家宅捜索だと!? 戯言を――」

 

「うるせえッ!!」

 

眉間へ一発。見張りの抗議はそこで途切れ、刀を握ったまま膝から崩れる。

 

副隊長の名を先に出すあたり、序列をよく心得た三席である。

門を壊す時にも、そうした慎みを発揮していただきたかった。

 

「よし、今だ突入ッ!!」

 

「うう……もうどうにでもなれぇぇぇッッ!!」

 

こうなったら早く終わらせたい。捕まえて、謝って、藍染隊長に事情を説明して――謝る順番はどこが先なのだろう。

 

その声を聞きつけたたつきにしてみれば、たまったものではない。

部屋の戸が吹き飛んでくる。客を待たせておいて、ずいぶんな催し物だ。

 

「うおおおッ!? なんだなんだ!? ショタとロリが揃って突撃してきやがったぞッッ!!」

 

「誰がショタだコラァァッッ!! 俺は護廷十三隊が誇る超絶天才美少年だッッ!!」

 

「誰がロリよこのアマァァッッ!! 私は立派な五番隊副隊長よォォッッ!!」

 

「…………的確だ…………」

 

「的確って言うなァァァッッ!!」

 

訓練の成果であろうか。先ほどまで同士討ちになりかけていた二人とは思えない。

 

森には、もう十分だった。せめて最後の一件には、自分で文句をつけてもよいはずだ。

 

「弾けッ!! 『飛梅』ッッ!!」

 

畳を焦がす火球にも、たつきの踏み込みは鈍らない。掌へ集めた霊力で殴り飛ばせば、熱風が頬を撫でて抜ける。

 

隣にいた茶渡を狙うつもりなら、まず自分をどうにかしてもらおう。

 

「――甘いッ!!」

 

「天地悉く我が白に染まれ、万象遍く彼の朱に還れ――『漂泊』ッッ!!」

 

白い両刃が見えたが、そちらは茶渡に任せてよい。飛梅を構え直す雛森の腹へ、回し蹴りを叩き込む。手応えに続いて、足先の霊力が弾けた。

 

「え? ……ぐうううううッッ!?」

 

障子の向こうまで飛んでいく姿に、雷太も口を開けかける。副隊長を一人でうろつかせるな、という命令は守っている。だが、敵に一人で飛ばされた場合はどうなるのか。隊長へ確認する暇はなかった。

 

茶渡の左腕が迫る。漂泊へ触れればほどける、それは確かだ。確かではあるが。

 

「いかに強固な腕だろうと……俺の『漂泊』に触れちまえば、存在の結び目ごと分解して消し去るまでよ――」

 

「――はああああっっ!!」

 

言い終える前に来やがった。

白刃を振り下ろす。柄を握る指に力が入る。間に合え。氷輪丸の時のように押し込まれれば、今回は凍って済むとは思えない。

 

頬を打っていた圧が消え、ようやく息を吐ける。床には踵で擦った跡。後退した分を見られるのも癪で、切っ先を上げて茶渡へ笑ってみせる。

 

「おっと……あぶねえあぶねえ! 触れた端からほどかなきゃ、腕ごと持っていかれるところだったぜ」

 

笑って誤魔化しているが、踵は畳を二枚分も滑っている。茶渡は無言。

 

「おい旅禍!! 志波家と結託して瀞霊廷に内乱を起こすなんざ万死に値する重罪だぞ!! ここで大人しくお縄につけ!! 俺が上層部に掛け合って、極刑を『無間の牢で幽閉三百年』くらいには減刑してやるからよォッ!!」

 

「ふざけんなッ!! 三百年も閉じ込められてたまるかッ!!」

 

三百年。人間としては、ほとんど終身刑である。雷太としては大幅な減刑なので、交渉がまとまるはずもなかった。

 

「…………そうですね。ふざけないでいただきたいものです」

 

まずい。

都の声を聞いた途端、雷太には逃した見落としが分かる。海燕と浮竹がいない。それで安心していたが、この家には留守番もいるのである。

 

中庭から這い戻ってきた雛森も、口を開けたまま奥を見ている。片肌を脱いだ空鶴の煙管に、都の微笑み。その後ろには岩鷲まで控えていた。

 

「おい緋山ァ!! てめえ……この志波家の本邸に正面から殴り込みをかけるたあ、いい度胸してんじゃねえかッ!! ああン!?」

 

「く、空鶴さん……!!」

 

「『三席』と呼べ、三席とッ!!!!」

 

同じ三席同士ではある。あるのだが、ここで対等を主張する度胸は雷太にもない。

助けを求めたい雛森の方も、都の手元を見たきり固まっている。

 

「雛森副隊長……ここは大人しく引いてくれないと……この『藍染隊長への熱烈な愛の恋文・未投函の第十七通目』……今ここで、全員の前で感情を込めて朗読いたしますよ?」

 

「ッッ!!?? な、何でそれを貴女が持ってるんですかァァッッ、都三席ィィィッッ!!??」

 

紙の端の折り目にも覚えがある。捨てられず、送れず、机へしまい込んだあの手紙だ。

なぜここにあるのか。十六通目までの所在も気になるが、質問すればそちらまで出てきそうで怖い。

 

志波家への道は短かったが、脅迫される側へ戻る道はさらに短かった。

いや、雛森は最初からずっと脅される側である。

 

「岩鷲ッ!! たつきたちを連れて今すぐ懺罪宮へ走れッッ!! ここまで本拠地に乗り込まれて、みすみす芋引いてられるかってんだ!! 予定変更だ、力づくで黒崎を奪還するぞッッ!!」

 

「おうよ姉貴ッ!! たつきッ! チャドッ! 俺についてこいッ!!」

 

「おうッ!!」

 

ようやく話の分かる人が現れた。たつきと茶渡は岩鷲の後へ続く。

 

「待てってのォォッッ!! 行かせるか――」

 

空鶴の煙管が行く手を塞ぎ、踏み込もうとした足元へ都の刀が突き立つ。

旅禍の背中は、その向こうへ遠ざかっていく。

 

これはまずい。逃がしたこともまずいが、目の前の二人を押し退ける方法が浮かばない。敵として斬り合う覚悟より先に、普段の付き合いが邪魔をする。

 

「おっと……お前らはここで通行止めだ。なんだ緋山? いつもは『空鶴さん、仕事頑張ったからおっぱい揉ませてくださいよ〜』って鼻の下伸ばして泣きついてくるくせによォ?」

 

「そうですねぇ。いつも熱心に揉みにいらっしゃいますよね」

 

「………………雷太くん…………?」

 

いや、その件で責められる筋合いはないはずだ。

 

「うるせええええッッ!! 極上な巨乳のお姉様方にスキンシップをおねだりするのは、俺が男としてこの世に生を受けた唯一絶対の生きる意味だッッ!!!! 現に二人とも、ちゃんと揉ませてくれるじゃねえかよォォッッ!!!!」

 

「そりゃあ……お前がボロボロになるまで仕事を片付けてくれた時だけは、特別に『ご褒美』として揉ませてやってるがな……」

 

「ええ。それに……雷太くんが私の胸を揉んでいる決定的瞬間の写真は、こうして伝令神機でバッチリ記録してあります。いつか十三番隊や海燕様のために役立つ『脅迫材料』は、たくさん持っておくに越したことはありませんから」

 

揉んだ時は無料だった。代金は今、写真つきの脅迫状となって請求されている。

 

「………………なるほど。よーく分かりました。……薫子ちゃんに全部詳細に報告します。ちなみに雷太くん……『他』には誰の胸を揉んだのかしら……? 正直に吐きなさい」

 

「なんでそこで薫子の名前が出てくるんだよ?? えーと、他には……松本さんと、ネムさんと……あとは卯ノ花隊長に、虎徹に……」

 

「隊長と副隊長まで手籠めにしてるのォォッッ!? 死刑よッ!! アンタ今すぐ死刑執行よォォォッッ!!!!」




■ 漂泊

緋山雷太の斬魄刀。

対象を構成する霊子的な結びつきへ干渉し、接触部分から分解する性質を持つ。

ただし、能力による分解速度を上回るだけの物理・霊圧負荷を受けた場合、術者側も押し負ける可能性がある。

■ 雛森桃の未投函恋文

藍染へ宛てて書いたものの、本人へ渡すことができず保管されていた手紙。

今回登場したものは第十七通目。

残る手紙の所在については、雛森本人にも分かっていない。

■ 志波都と雷太

雷太とは以前から交流があり、彼が働きすぎて疲弊した際などには冗談交じりの「ご褒美」を与えることもある。

ただし都自身は、その際の出来事を将来利用可能な交渉材料として記録する程度には抜け目がない。

■ 志波家本邸

五大貴族・志波家の本拠。

当主の海燕が不在でも、都・空鶴・岩鷲をはじめとした戦力が残っているため、「海燕と浮竹がいない=無人」という意味にはならない。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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