我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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志波空鶴
十三番隊三席。志波家当主・海燕の妹。豪快な性格に違わず、戦い方もかなり派手。

志波都
十三番隊三席。海燕の妻。穏やかな物腰ながら、対人戦では非常に手強い。

緋山雷太
五番隊三席。志波家へ強行突入した結果、空鶴と都を同時に相手取ることになる。

雛森桃
五番隊副隊長。雷太とともに志波家本邸へ突入したが、愛刀「飛梅」と空鶴の能力との相性に悩まされる。


見えない火薬庫と触れてはいけない刀

「おらッッ!! オレに勝てるかよ!! 弾けて爆ぜろ――『薬丹火花』ッッ!!」

 

そっちかよ。てっきり煙管が斬魄刀だと思っていた。

 

「あ、あんた、ちゃんと斬魄刀なんて持ってやがったのかよォォッッ!?」

 

「そりゃあ現役の席官だぞ!!持ってるに決まってんだろォがッッ!! 舐めてんのか小僧ォッ!!」

 

言われてみれば、その通り。

柄頭から何かを噴き出す音がする。……何だ? 火も煙も出てこない。壊れているならありがたいが、空鶴に限ってそんな親切はしてくれまい。

 

隣では雛森が飛梅を握り直していた。これ以上、好き勝手に言わせてたまるものか。

 

「くっ……!! ――『飛梅』ッッ!!」

 

火球は空鶴へ届かなかった。

途中で膨れ上がり、視界が真っ白になる。雷太には床を蹴る暇すらない。

 

「くわあああああっっ!!??」

 

「きゃああああああっっ!!」

 

壁に叩きつけられ、その壁ごと吹き飛ぶ。痛い。息ができない。口の中は血と煤の味で、吐こうにも次の衝撃が来る。

 

重い。上に何か乗っている。どうにか梁を押し退けると、さっきまで天井のあった場所に空が見えた。

 

屋根まで飛ばしたのかよ。

 

しかも、こっちはまだ中にいる。退去を求めるにしても乱暴すぎるだろう。

 

煤を拭った手まで血で汚れ、雷太は舌打ちしかけて咳き込んだ。

 

「ゴホッ……ゲホッ……! じ、自分の屋敷ごと……躊躇なく爆破するなんて……頭おかしいのかよ、あの女……!!」

 

「………でも………火薬や爆薬の匂いなんて……どこにもしなかったのに……どうして……?」

 

雛森も生きている。ひとまず、それでよしとするしかない。

 

中庭の二人には傷も見えず、雷太は腹が立ってくる。せめて一緒に咳き込め。この有様で向こうだけ無事では、文句を言うにも。

 

「あーあ。本邸をここまで派手に爆破しちまうなんて、とんでもねえ凶悪犯共だな。まあ……これで兄貴への言い訳は立つか」

 

「ですが、後で現場を検証されれば、空鶴さんの斬魄刀だと海燕様に気づかれるのでは?」

 

「最初に火をつけたのは、雛森だ。オレはただの正当防衛で刀を抜いただけだぜ」

 

「ふふ、違いないですね。その筋書きでいきましょう」

 

違う。大いに違う。

 

抗議しようにも咳が邪魔で、雛森は声を出せない。待って。せめて息が整うまで、犯人を決めるのを待ってほしい。

 

そんな貯金はない。仮にあっても、この二人のために使いたくない。

 

漂泊に体重を預けながら、雷太は火球の消えた場所を睨む。空鶴に届く前だった。あそこで何に触れた? 思い当たるのは、柄頭から噴き出す音しかない。

 

「……それが、空鶴さんの斬魄刀の能力か……!」

 

「御名答。オレの『薬丹火花』はな、無色・無臭・無味の、極めて可燃性と起爆性の高い特殊な粉末を噴霧できる。――オレの前に立つってことはな、小僧。テメエ自身が『火薬庫のド真ん中』に踏み入るのと同じことなんだよッッ!!」

 

今も撒かれているのかもしれない。

刀を収めたい。だが、収めた途端に斬り込まれたらどうする。

 

雛森には、さっきまで頼りにしていた飛梅を持て余すことが悔しかった。火を出せばよい時には何度も助けられた。

 

縛道ならどうか。相手を捕まえてから――いや、詠唱を待ってくれるとも思えない。

飛梅を構えるのが怖い。足元か、顔の前か。逃げようにも、どちらなら安全なのか分からなかった。

 

「………そ、そんな……! じゃあ、炎熱系の私の斬魄刀は……火の粉を散らしただけで自滅する……!?」

 

「――違うッ!! 雛森、構うな!! むしろ炎をどんどん撃ちまくれッッ!!」

 

「でも雷太くん!! またさっきみたいに爆発に巻き込まれたら――」

 

「あいつは『粉末を散布する』と言った!! 自分が爆発に巻き込まれねえように立ち回るなら、自分の周囲や近距離には粉末を撒けねえはずだ!! 遠距離から炎を撃ちまくって、粉末を撒く隙そのものを与えないように制圧するんだよッッ!!」

 

それなら撃てる。雛森にもようやく狙いが定まった。

 

空鶴の近くで燃やしてしまえばよい。撒くそばから火をつけてやる。先ほどの大広間の分も、たっぷりお返ししたい。

 

もう少し早く息を合わせられれば、門も屋根も無事だったかもしれない。いや、門は最初から蹴るつもりだったので手遅れである。

 

「――ッ!! わかった!! 弾けッ――」

 

「遍く大地に疾く伏せよ――『轟』」

 

都まで来るのか。そっちは通さねえぞ。

 

「させねえよッッ!!」

 

白刃を打ち合わせた瞬間、手首が跳ねた。

嫌な音が骨の奥から響く。刀を弾かれたのかと思ったが、違う。腕から胸へ震えが突き抜け、息を吐くことすらできなくなった。

 

「――がはッッ!!」

 

口元から血が落ちる。握っていられない。なのに指が思うように開かず、離したい柄を握り続けている。

 

ほどくより先に、刀身越しの振動を食らってしまった。漂泊を引いても、まだ体の中で暴れている。

 

足元が揺れているのか、自分が震えているのか。膝をついても治まらない。

握り直そうとするたび、指が勝手に跳ねる。こんな手で次の一撃を受けられるのか。

 

なんだよ、それ。

刃を交わすことすら駄目なのか。この家の女は、まともに刀を受けてもろくなことにならない。

 

「雷太くんッッ……!!??」

 

助けに行かなければ。そう思った時には、空鶴を見失っていた。

 

「オレを前にして、意識を逸らしたなァ小娘ッッ!! 縛道の六十一『六杖光牢』ッッ!!」

 

腰の周りを六枚の光が挟む。足を引こうにも動かず、火球を狙い直す間に空鶴の顔が近づいてくる。

 

詠唱もなしで、この強さ。

力を込めても光が緩まない。普段なら術式を探るところだが、今はそんな時間さえ惜しかった。

 

「がっ……!! こ、こんなもの、すぐに霊圧で砕い――」

 

「遅えんだよォォッッ!!」

 

鼻先で、またあの音がする。

嫌だ。ここで火をつけられたら。

 

振りほどこうと力を込める雛森を残し、空鶴の姿が遠のいた。その手には赤い火が灯っている。

 

「――破道の三十一『赤火砲』ッッ!!」

 

届くまでに光牢を砕けば間に合う。砕いて、横へ跳んで、火の届かないところまで――。

 

「いやああああああああっっ!!」

 

爆風の中で、飛梅の感触が手から消える。

雷太の伸ばした腕は届かない。立とうにも脚が言うことを聞かず、手をつかなければ顔から倒れそうだった。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

瓦礫のそばで雛森が動かない。呼吸はあるが、呼んでも返事がなかった。

ふざけんな。これでどうやって、護衛を果たしましたと隊長へ報告しろというのだ。

 

「……五番隊の副隊長と三席……随分とお弱いですね。やはり、藍染隊長の『生ぬるい教育』の賜物でしょうか?」

 

言い返そうとすると、また咳が出る。

隊長のせいにするな。もっとも、今は黙る以外の選択肢もなかった。

 

「いんや……あいつらが弱いんじゃねえ。オレ達志波家の女が、強すぎるだけのことよッ!!」

 

空鶴は、もう煙管をくわえている。

ああ、それは認める。認めるから、今その火を近づけるな。

 

粉末はもう残っていないのか。雷太には、あの小さな火まで怖くて仕方がない。説教も自慢も聞くから、まず消してくれ。

 

空鶴の方は、兄への言い訳を考えていた。門から話せばよい。そこは雷太の仕業なのだから、その勢いで大広間も廊下も、ついでに屋根まで引き受けてもらう。

 

嘘の出だしを事実で固めれば、その先も通りやすい。よい子には教えられない家訓が、また一つ増えそうだった。

 

「……ふふふふ。……ところで、空鶴さん? 海燕様にはこの『本邸半壊の真実』……黙っておいてあげますから。――……わかりますね?」

 

……金を取る気か。

先ほどは一緒に頷いたではないか。その筋書きでいきましょうと、確かに言ったではないか。あれには別途、代金が必要だったのか。

 

断れば兄に喋るだろう。都なら、先ほどと同じ笑顔で残らず喋る。しかも自分が頷いたところは上手に省くに違いない。

 

その金を修繕に回す気はあるのか、と聞きたい。しかし修繕費の話を始めれば、そちらも払えと返されそうだった。

 

黙って払おう。余計なことを言って値上がりしたら目も当てられない。敵にはあれほど威勢よく怒鳴れたのに、財布の前ではずいぶん慎重になるものである。

 

「…………チッ、また金かよ…………。本当に怖いねぇ、兄貴の嫁はよォ……」

 

財布を開くと、都の手が待っていた。まだ額も決めていないのに、受け取る準備は万全である。




■ 薬丹火花(やくたんひばな)

志波空鶴の斬魄刀。

解号は、

「弾けて爆ぜろ――『薬丹火花』」

柄頭から、無味・無臭・無色の特殊な粉末を散布する。

粉末は高い可燃性と起爆性を持つが、空鶴本人にも目視できない。

そのため使用者自身が、散布位置・方向・量・風向き・戦闘中の拡散まで記憶しながら扱わなければならない。

■ 轟(とどろき)

志波都の斬魄刀。

解号は、

「遍く大地に疾く伏せよ――『轟』」

刀身に接触した対象へ振動を発生させる。

武器へ振動を与えて握る相手の肉体へ伝播させる、建物や地面へ振動を送り込むなど、使用法は多岐にわたる。

■ 轟と使用者への影響

都自身は「轟」の能力によって直接振動させられることはない。

ただし、能力によって揺れている地面へ立つ、振動している対象へ触れるなどすれば、その物理的影響までは普通に受ける。

完全な振動無効能力ではない。

■ 空鶴の隻腕

本作では、過去に「薬丹火花」の散布位置を誤り、自ら爆発へ巻き込まれたことが原因。

非常に強力な斬魄刀である一方、使用者にも同じだけ高度な空間把握能力を要求する。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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