我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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茶渡泰虎
一護救出のため尸魂界へ侵入した現世組の一人。寡黙ながら、一護への友情は誰よりも深い。

狛村左陣
護廷十三隊七番隊隊長。義理と忠義を何より重んじる実直な武人。

黒崎一護
懺罪宮に囚われている死刑囚。救出に現れた仲間たちの戦いを牢から見守る。


勝利の悪魔と四十路の忠臣

……デカいな。

俺より頭一つは高い。向かい合うと、自然に顎が上がる。霊圧も強い。まだ刀を振られてもいないのに、体が身構えてしまう。

だが、この先に一護がいる。

 

「儂の相手は貴殿か。名を聞いておこう。儂は護廷十三隊七番隊隊長、狛村左陣」

 

「……茶渡……泰虎だ」

 

「ふむ……では来られよ!!」

 

名乗るまで待ってくれるのか。

律儀な人だ。できれば、戦わずに通してほしい。

 

……駄目そうだな。

正面に据えられた刀を見ながら、右足を引く。こちらが動くのを待っている。準備する時間をくれるなら、遠慮なく使わせてもらおう。

 

最初から、全部だ。

 

「……勝利の悪魔《ディアブロ・デ・ラ・ビクトリア》」

 

両拳を握り、腕に集めた霊力を全身へ巡らせる。

肩から胸へ。背中へ。肌が硬く変わっていく。首を覆い、頬までせり上がってくる感触に、少し顎を引く。

 

指を開き、もう一度握る。よし。動く。

 

これも俺の肌だ。殴るにも走るにも、遠慮する必要はない。

一護には、随分変わって見えるだろうな。

 

あとで感想を聞こう。今は、頼れると思ってもらえれば十分だ。

 

「これは俺の覚悟、一護への想いがカタチになった姿だ。俺はアンタを倒して……一護を救い出す」

 

「貴殿の忠義……見事だ。ならば受けてみよ!! ――轟け! 天譴!!」

 

狛村が刀を振り上げる。その背後に現れた腕を見て、思わず目を見張った。

 

……何だ、あの大きさは。

腕だけで俺の体より大きい。握っている刀も、とても受け止められそうな寸法ではない。

 

来る。

右腕を頭上へ掲げ、両足を踏ん張る。刃の下から逃げるつもりはない。

 

「――転化変転・巨人の右腕《トランスムタシオン・デル・ヒガンテ》」

 

ぐっ……!

巨刃を受けた腕が、肩まで押し下げられる。肘を支えるように左手を添え、腰を落とす。

 

重い。歯を食いしばっても息が漏れる。

だが、斬られてはいない。右腕は潰れていない。打撃へ変えられている。

 

あとは俺が耐える番だ。

足元が割れ、踵が沈む。膝まで折れそうになるのを、腹に力を込めて押し戻す。

 

止まれ。

ここから、一歩も退くな。

 

……よし。

刀はまだ腕に触れているが、もう押し下げられてはいない。顔を上げ、狛村を見返す。

 

「なんと!! 儂の天譴の直撃を受け、小揺るぎもせんとは……!!」

 

内側では、かなり揺れた。

刀が離れたところで右腕を下ろす。指を曲げると、肘まで痺れが走る。

 

だが、動く。次も受けられる。

一護も見ているのだから、痛がるのは後にしておこう。

 

「俺の一護への想いは、その程度の攻撃では揺らがない……端的に言って……友情だ」

 

「ち……チャド……お前……! そこまで俺のことを想ってくれてたのかよ……!!」

 

声の方へ顔を向けると、一護が格子を握っている。

 

当たり前だろう。

 

俺が捕まったら、お前も来る。来るなと言っても聞かない。

だったら、俺にも同じことをさせてくれ。

 

一つ頷いて、狛村へ向き直る。

 

「……おおお……!! なんと見事な心意気よ!! 主君に対する忠義!!! 己が命を投げ打つ至高の忠義!!! その真っ直ぐな魂……儂の元柳斎殿へ捧げる忠義に酷似しておる……!!」

 

……主君?

俺は友情と言ったはずだ。

 

言い方が悪かったのか。いや、端的に言った。これ以上短くすると、単語しか残らない。

感動してくれるのはありがたいが、そこは違う。

 

「俺と一護は……」

 

「隠しておく必要はない!」

 

隠してはいない。

正しく知ってほしくて話している。

 

だが、狛村は刀を下げ、兜の留め金へ手をかけている。外した兜を放り捨てると、狼の顔が現れた。

 

……なるほど。

そういう顔だったのか。耳まで兜に収めるのは、窮屈ではないのだろうか。

 

「こ……狛村!? 自ら素顔を……!?」

 

東仙も驚いている。

普段は隠しているのか。だったら、あまりじっと見ない方がいい。

 

俺も、珍しがられて顔を覗き込まれるのは好きではない。

 

「これほどの覚悟と忠義を前にして、顔を隠したまま刀を交えるなど無礼千万!!! ゆくぞ、茶渡泰虎!!! 儂の命懸けの忠義を受けてみろ!!!」

 

狛村が両手で刀を構え直す。

 

……待ってほしい。

先ほどの一撃でも十分に礼は伝わった。俺としては、あれ以上丁寧に殴ってもらう必要はないのだが。

 

「――卍解!!! 黒縄天譴明王ッッ!!!!」

 

地面が揺れる。

足を開いて踏みとどまり、せり上がってくる巨体を見上げる。腕に肩が続き、鎧を着た胴体と頭が現れる。

 

……全部出てきた。

しかも、さっきより大きい。

 

刀の先まで見るには、首をかなり上げなければならない。あれが頭に落ちてくるのか。

ここまで強い相手を呼び出してしまった。

俺は何と答えればよかったのだろう。嘘は言いたくないが、もう少し穏やかに済む答えがあるなら教えてほしい。

 

「何があろうと俺は退かない。避けずに受け止め、勝つのみだ」

 

狛村の踏み込みに合わせ、明王も刀を持ち上げる。

……振り下ろしてくる。

 

右腕で受けるか。

いや、今度はこちらからだ。

左手が届けば壊せる。両脚を曲げ、刀へ向かって跳び上がる。

 

近づくと、ますます大きい。だが、その分だけ拳を当てる場所には困らない。

振り下ろされる刃の腹へ、左腕を伸ばす。

 

届く。

拳圧では駄目だ。直接、この手で触れろ。

 

「――終幕変転・悪魔の左腕《デセンラセ・デル・ディアブロ》ッッ!!!!」

 

左拳が刀身に食い込む。

硬い感触が砕け、拳の先から亀裂が走る。折れた刃が傾くのを見て、思わず息を吐いた。

よし、壊せた。

 

……上か!

明王の空いた拳が、もう頭上に迫っている。右腕を差し入れようとするが、間に合わない。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおッッ!!!! 一護おおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」

 

息が……!

背中から押し潰される。地面が近い。足を下へ。

 

どうにか両足で着くと、靴底が石畳を削る。膝を曲げて堪え、後ろへ滑る体を止める。

 

……止まった。

喉に詰まった血を吐き出す。息を吸うと胸が痛い。

刀を壊して気を抜いた。

 

拳があることくらい分かっていたのに。

左手を握る。握れる。右腕も上がる。

なら、まだ戦える。

 

「チャドッ!!」

 

「……問題ない」

 

少し、嘘だ。

だが、ここで駄目だと言ったら、お前が飛び出してこようとするだろう。

 

無茶をしてほしくなくて助けに来たのに、俺のせいで無茶をさせるわけにはいかない。

背筋を伸ばし、もう一度拳を構える。

 

……できれば、次の一撃まで少し待ってほしい。

 

「むううううっ!! なんという打たれ強さ、なんという不屈の魂……!!」

 

また感動している。

今度は何が出てくる。

 

卍解の次もあるのか。あったら困る。俺はもう、これ以上変身できない。

褒めるだけにしてくれれば、それで十分なのだが。

 

「――ところで茶渡泰虎よ。お主、一体いつから一護殿の臣下になったのだ? 見るに、年は優に四十は超えておろう。幼き頃より一護殿を見守り育ててきた傅役とお見受けするが……!」

 

……何だと?

 

四十。

四十は超えていると、そう言ったのか。

 

しかも、一護を育てた?

待ってくれ。どこから訂正すればいい。

 

臣下でもない。教育係でもない。年齢も違う。短い質問の中に、間違いが多すぎる。

……まずは年だな。

 

「……俺は……十五だ」

 

格子の向こうで、一護が折れるようにしゃがみ込む。

……おい。

 

「ぎゃっはっはっはっはァァッッ!!!! チャドォォッッ!!!! ぶははははっ、四十路ッッ!! お前四十路に見られてんぞォォッッ!!!!」

 

聞こえている。

目の前で言われたのだから、わざわざ知らせなくても分かる。

 

「四十超えッッ!!?? ひぃーーーっ、やべえッッ!! 腹がよじれるッッ、死ぬッッ!! ぎゃははははっっ!!」

 

たつきまで腹を抱えている。

お前は東仙と戦っているのではなかったのか。膝をついて笑っていていい相手ではないだろう。

 

……二人とも。

俺は今、殴られて血を吐いたところだ。腹が痛いなら、こちらの方がずっと痛いはずだ。

助けた後で殴る。

 

友情については、もちろん取り消さない。友人でも殴りたくなる時はあるということを、あとで分かってもらおう。

 

「じゅ……十五……?」

 

「……ああ」

 

「では、一護殿とは……」

 

「同い年だ」

 

「ぶはっ!! 同い年ッ……そうなんだよ、そいつ同い年なんだよッ!!」

 

一護、お前は少し黙っていてくれ。

狛村まで俺の顔を覗き込んでくる。疑われても、十五は十五だ。

 

……装甲のせいだろうか。

いや、変身する前に顔は見せている。あの時から四十だと思われていたのか。

聞くのはやめよう。傷つく答えが返ってくる気がする。

 

年齢が伝わったなら、次は主従の話だ。

 

「……俺が一護の臣下になるのは、死後の予定だ」

 

今は学校へ通っている。

死んでこちらへ来て、死神になった後なら、一護の下で働くこともあるかもしれない。臣下と呼ぶなら、その時だ。

 

少なくとも、今の話ではない。

 

「――なんとォォォォッッ!!!! 生前のみならず、死して霊魂となってからもなお仕え続ける覚悟であったとはッッ!!!!」

 

違う。

生前は仕えていない。

訂正するつもりだったのに。

 

「いや、俺は……」

 

「皆まで申すな!!」

 

申させてほしい。

一歩近づいて説明しようとすると、狛村が何度も頷く。その目から涙まで流れてくる。

 

……そんなにか。

これでは強く言いづらい。だが、黙っていたら一護の忠臣だと思われたままだ。

 

友情です、ともう一度言うか。

いや、それは最初に言った。

 

殴り合うより難しいな、この話は。

 

「……儂の負けだ」

 

……え?

刀が鞘へ収まる。見上げると、明王の姿も消え始めている。

 

本当に終わりなのか。

拳を少し下げても、狛村が攻めてくる様子はない。

 

「儂はこれまでの生涯で、ここまでの凄まじい忠義を見たことがない。四十六室の理不尽な命令への義理立てで、このような義士と戦い命を奪うことなど……これ以上は無益の極み」

 

助かった。

正直、もう一度あの拳を受けるのはきつい。

 

……だが、忠義か。

最後までそこは変わらないのだな。

 

今から訂正して、勝負を再開されても困る。俺は一護を助けたいのであって、この人を殴り倒したいわけではない。

 

「おいおい狛村隊長……本当にいいのかい? 職務放棄になっちゃうよ?」

 

「ふん……貴殿こそ、最初から本気で戦う気などありますまい」

 

京楽か。

そのそばにいる岩鷲も、こちらを見ている。無事らしい。あちらも戦わずに終わってくれるといいのだが。

狛村は俺たちへ背を向け、肩を落としてみせる。

 

「……卍解の刀をへし折られてしまい、儂はショックのあまり激しく塞ぎ込んでいるのだ。そういうことにしておく。ゆえに、儂はこれにて戦闘不能だ」

 

……そうか。

これから引き籠もるという話を、これほど堂々と聞かされるのは初めてだ。

 

だが、俺が刀を折ったのは本当だ。そこに嘘はない。

あとは、塞ぎ込んでいるように見えるかどうかだな。

 

……あまり見えないが、黙っておこう。

 

構えを解き、全身へ巡らせていた霊力を鎮める。装甲が肌へ戻ると、殴られたところが改めて痛む。

 

右肩を回すのはやめた方がよさそうだ。脚も、ゆっくりなら動く。

勝ったのだから、今はそれで十分だ。

 

「……感謝する」

 

「礼には及ばん。主君を大切にな」

 

「……友人だ」

 

「うむ。よく分かっておる」

 

……分かっていない。

だが、もういい。

 

去っていく背中を見送り、一護の方へ足を向ける。

まずは助け出す。

 

その後で、一護とたつきを殴る。

ただの友人として。




■ 勝利の悪魔《ディアブロ・デ・ラ・ビクトリア》

茶渡泰虎の能力を全身へ展開した完成形態。

右腕・左腕だけでなく、頭部を含む全身がフルブリングによる装甲へ覆われる。

装甲は外付けの鎧ではなく茶渡自身の肉体の延長であり、通常の身体と同様に動かすことができる。

■ 転化変転・巨人の右腕《トランスムタシオン・デル・ヒガンテ》

勝利の悪魔における右腕の能力。

受けた霊圧攻撃を無効化するのではなく、そのエネルギーを物理的な打撃力へ変換する。

変換後の衝撃そのものは茶渡自身が耐えなければならないため、受け止められる限界は本人の耐久力に左右される。

■ 終幕変転・悪魔の左腕《デセンラセ・デル・ディアブロ》

勝利の悪魔における左腕の能力。

左腕が直接接触した対象を破壊する。

拳圧や衝撃波では発動せず、茶渡自身の左腕が対象へ触れる必要がある。

■ 黒縄天譴明王

狛村左陣の卍解。

巨大な明王を出現させ、狛村自身の動作と連動して攻撃する。

明王と狛村は強く結びついており、明王が受けた損傷は狛村本人にも影響するという、一般的な卍解とは異なる特性を持つ。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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