我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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戸川古男
八番隊五席。砕蜂暗殺事件についての説明と、黒崎一護に下された処刑命令の撤回を求め、中央四十六室へ直接直訴する。

藍染惣右介
五番隊隊長。古男から随行を求められ、中央四十六室の議事堂へ同行する。

日番谷冬獅郎
十番隊隊長。砕蜂暗殺事件の捜査に参加しており、古男からもう一人の随行者として指名された。

中央四十六室
尸魂界の司法・立法を担う最高司法機関。四十人の賢者と六人の裁判官によって構成される。


直訴の席と預けられた斬魄刀

「――恐れ入ります。この先は神聖なる議事堂。隊長格といえども、斬魄刀はこちらでお預けください」

 

「わかった。ご苦労様だね」

 

鏡花水月に続き、氷輪丸も衛兵の手へ渡る。

 

「これでいいだろ」

 

最後に預けられたのは、漆黒の魁湛。目の前の大扉を睨む古男には、衛兵への挨拶すら惜しいらしい。

 

「うむ………。行くぞ」

 

議事堂へ入るなり、頭上から声が降ってきた。

 

「……戸川古男よ。本来であれば、一介の席官に過ぎぬ貴様の如き男のために、我々が直々にこのような場を設ける必要など一切ないのだ。だが、山本元柳斎重國のたっての希望であること、そして状況が種々重なったため、特別に設けてやった。まずはその温情に感謝してもらおうか」

 

「当然の主張をするにあたり、当然の場を設けただけのこと。それを『感謝せよ』とは……相も変わらず度し難い老害どもよ」

 

「な………っ、無礼な!! 貴様の首など、我々の判断一つで明日には胴体と泣き別れになっているのだぞ!!」

 

日番谷には、早くも帰りたい気持ちが湧いていた。

古男も、少しくらい言い方を選べないものか。

 

「………無礼は俺から謝罪します。しかし、いきなり頭ごなしに感謝を強要するのは、あまりに話の筋が通っていないのではありませんか?」

 

「まずは確定事項からだ。黒崎一護の処刑はすでに決定している。それは決して覆らん」

 

日番谷を一瞥したきり、賢者の視線は古男へ戻った。

 

「……なるほど。たとえ、貴様らが『邪魔な砕蜂を消すために暗殺を企てた』と、世間に喧伝されてもか?」

 

「む……? 何を馬鹿な。そのような根も葉もない事件など、我々には一切関わりないことだ」

 

「現在、朽木家と志波家という大貴族が正式に処刑中止を訴え、護廷十三隊のほぼ全ての隊長格もそれに同調している。……その矢先の、隠密機動総司令の暗殺事件だ。状況証拠は完全に真っ黒だぞ。それを世間がどう思うかな?」

 

「ふん!! 愚民の世論など関係あるまい!! 我々が『白』と言えば、この尸魂界においては全てが『白』なのだ!!」

 

「なるほど……しかし賢者殿。それでは今後の統治において、貴方方にとっても都合が悪くなるのではありませんか?」

 

「――貴様も同罪として処刑することも可能なのだぞ!! この、『■■■』よ!!!」

 

怒声は古男へ向けられていた。藍染の問いには、返事もない。

 

この私を、ここまで完全に無視するとはね。

 

伏せた目元に笑みを残し、藍染は口を閉ざした。

 

「……クックック……。その強引な論理、そして……俺を『その名』で呼ぶ命知らずな無礼……。必ず後悔するぞ、老いぼれ共」

 

「ふん!! やれるものならやってみるがいい!!」

 

古男の指先に、一枚の記録素子が挟まれている。

 

「時に……お前たちを蹴落として、その『席』を狙っている貴族たちは大勢いるのではないか?」

 

「……何だと??」

 

「この件……貴様らが以前の会議で『砕蜂の存在が目障りだ』『隠密機動をどうにかせねば』と話している記録がここにある。……これを、貴様らの後釜を狙う政敵どもにそっくりそのまま提供すれば……果たしてどうなるかな?」

 

「な…………っ!! や、やめろ!! 貴様、この場で即刻処刑するぞ!! いや! そうだ、ここで始末してしまえば良いのだ!! ……衛兵!! 衛兵はいないか!!」

 

「無駄だ。俺がもしこの議事堂から生きて戻らなければ……自然な形で、そのデータが自動的に渡るように手配してある」

 

「ぐむううう…………ッ」

 

先ほどまでの威勢はどこへ行ったのか。

愚民に何を言われても構わないが、自分の席を奪われるのは困るらしい。

声も随分と小さくなっている。

 

「さて……どうする? これでもまだ初志貫徹して、意地を張って処刑を続行するかね?」

 

返答はない。議席から歯ぎしりが聞こえる。

 

「まあ……その場合は、先の手を実施して世論と政敵を煽り、無様に引きずり下ろされていく貴様らを、腹の底から嘲笑ってやるとしよう」

 

「おのれ………ッ!! どこまでも舐めた口を……!!」

 

「そもそも、なぜそれほどまでに黒崎一護を処刑したい? ……どうしても殺さねばならない『何の理由』がある??」

 

「くっ………」

 

「特にないのだろう?」

 

「いや!! 罪の理由など、我らが後から適当に考えればよいのだ!! 問題はそこではない!! ――志波の分家(一護)が、尸魂界へ帰ってくることそのものが困るのだ!! このまま理由をつけて志波家を潰してしまえば、残る四大貴族すら我らには逆らえなくなるのだからな!!」

 

罪など、初めからどうでもよかったのか。

日番谷の握った拳に爪が食い込む。一護を殺すと決めてから罪を探す。

そんな命令のために、護廷の隊士たちは戦わされていた。

 

藍染には、老人たちの狙いが読めた。

五大貴族が一致し、霊王の許諾を得れば、四十六室を上回る決定権を行使できる。

志波家を潰せば、その五家が揃わなくなる。

なるほど。浅知恵ではあるが、理にはかなっている。

 

「その前に、貴様らが失脚するがな」

 

「ぐう………! な、ならば……処刑を少し延期してやろう。それで手を打て!」

 

「馬鹿か? 貴様ら。……ああ、心底からの馬鹿なのだったな。延期など認めん、今すぐ『中止』だ」

 

「ならばその証拠を渡せ!! そうすれば、中止を検討することを、前向きに検討することを約束してやらんでもない!!」

 

日番谷の手が額へ上がる。

検討することを検討する。

四十六人もいて、誰もこの提案を止めないのか。

こんな交渉が通るなら、借金も返済を検討することを検討しているうちに踏み倒せる。

 

「……話にならん。では、直ちにデータを一斉拡散して――」

 

伝令神機を取り出すように、古男の手が懐へ入る。

 

「わかった!! 中止だ!! 中止にしてやるからやめろォォッッ!!!」

 

「ほう………では、この場で直ちに『正式な中止命令の書類』を発行してもらおう」

 

「なぜだ!! 我々がこうして直接そう言ったのだから良かろう!!」

 

「貴様らの姑息なやり口などとうに分かっている。口約束だけして、後から『処刑が早まって中止の命令伝達が間に合わなかった』などと、しらばっくれる気だろう」

 

「むぐっ…!!!! なぜそれを……」

 

否定すらしない。

日番谷には、先ほど古男の無礼を謝ったことまで馬鹿らしく思えてきた。

 

「いい加減に自分の立場を認めて、さっさとハンコを押すんだな」

 

「…………………、わかった」

 

数分後、裁判官の手から布告書が差し出された。

黒崎一護の処刑中止、および完全赦免。古男の手元へ渡った紙面には、正式な印もある。

 

日番谷も文面を確かめた。延期ではない。これでもう、一護を牢へ戻す必要はない。

散々怒鳴られたが、ようやく終わった。扉へ向かいながら、前を行く背中へ声を落とす。

 

「……やったな、戸川。これで一護も助かるし、丸く収まるぜ」

 

「……ああ。だが、あの老人たちの腐敗ぶりはあまりに目に余るね……」

 

その声に、耳障りな雑音が重なった。

 

ジジッ、ザザザッ。

 

「……!? な…………なんだ!!? これは………」

 

議席がぶれている。

目を凝らすと、老人の顔にも細かな横筋が走っていた。壁も床も、視界の端から崩れるように剥がれていく。

 

何だ、これは。

足を止めた途端、腐臭に喉が詰まった。

 

先ほどまで人のいた席には、首のない遺体。

床へ続く血痕は黒く乾き、その先に転がる顔には見覚えがあった。つい今しがた、中止にしてやると怒鳴っていた裁判官。

 

「な…………ッ!? 殺されて……!!」

 

奥の席も、その隣も。

四十人の賢者と六人の裁判官。生きている者は、一人も見当たらない。遺体の傷も血の乾き方も、今ここで殺された状態ではなかった。

 

では、さっきまで話していた相手は何なのか。

 

古男の手には、まだ布告書がある。

確かに受け取ったはず。声を聞き、顔を見て、書類へ印が押されるのを待っていた。

どこからおかしかった。

 

考えるより先に、腰へ手が伸びる。

柄がない。

 

「ッ! そうだ、刀は入り口で……!!」

 

背中から右肩へ、刃が抜けた。

 

「――がはッッ……!!!??」

 

膝が折れ、床へ血を吐く。

右腕が動かない。傷口が熱い。息を吸おうとしても喉に血が絡み、声にならなかった。

 

後ろから斬られた。

古男は前にいる。背後にいたのは――。

 

振り向こうとするだけで、肩に激痛が走る。視界が暗くなる前に、どうにかその顔を捉えた。

 

「あ………………藍……………染……?」

 

血に濡れた斬魄刀。

入口で預けたはずなのに、なぜ。

 

刃から血を払い落とす藍染の顔には、いつもの温和な微笑が浮かんでいた。




■ 中央四十六室

尸魂界における最高司法機関。

四十人の賢者と六人の裁判官、計四十六名によって構成され、護廷十三隊とは独立した立場から法と裁定を司る。

護廷十三隊総隊長である山本元柳斎重國であっても、原則としてその裁定を自由に覆すことはできない。

■ 五大貴族と中央四十六室

五大貴族は中央四十六室とは別系統の強大な政治的権威を持つ。

特定の条件下では、五家が一致した意思を示すことで中央四十六室にも非常に大きな政治的圧力を加えることが可能。

そのため、一家が失われ五家の足並みが揃わなくなることは、尸魂界全体の権力構造にも影響する。

■ 議事堂内への斬魄刀持ち込み

中央四十六室への正式な直訴に際しては、警備上の理由から随行する死神も斬魄刀を預ける。

今回は藍染の鏡花水月、日番谷の氷輪丸、古男の魁湛が入口で預けられている。

■ 正式布告書

中央四十六室の裁定を公式な命令として成立させる文書。

口頭での約束とは異なり、正式な印と所定の形式を備えた文書は各組織へ命令を伝達する根拠となる。

今回発行された書類について、今後どのように扱われるかは現時点では不明。

■ 『■■■』

古男が遥か昔に使用していた名。

現在の本人はこの名で呼ばれることを強く嫌っている。

卯ノ花烈をはじめ、古男の非常に古い時代を知る一部の人物だけが、この名と現在の戸川古男が同一人物であることを知っている。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
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