純人族は天性のタラシ種族 〜純人最後の青年が同胞復活を目論み高位種族を利用しようとするも、生来の善性が覗くし、種族レベルの好相性でヤンデレ量産だし〜 作:んぼんぼ
うだるような暑さに、肌にまとわりつく湿気。
鬱蒼と茂る木々が陽を遮ってるからまだいいけど、そうでなかったら今頃脱水で倒れてたな……。
僕は大きくため息を吐きながら、それでもなんとか足を動かし続ける。
流れ続ける汗。森の中の、見たこともない動植物。
……なんでこの昆虫、こんなでっかいんだ、気持ち悪い。さっきはチラッと角が生えたうさぎみたいなのも見えたし。
僕が知らないうちに世界はいったいどれだけ変わって……なんて、げんなりしながら歩くこと早数時間。
眼前の景色に、僕は思わず口を開く。
「……見えた!」
やっと着いた! よかった、熱中症に着く前に辿り着けて……。
僕が見つめるのは森の開けた場所に作られた――集落。木でできた家屋に、ごく小規模な畑らしきもの。それに、あと見えるのは……。
――獣みたいな耳と尻尾を付けた人がちらほら。
「………………コスプレ?」
こんな原始的な集落の中で……?
いや、生きてる人に会うのが目的だったから、こうして第一村人遭遇は嬉しいんだけど。でも、変態の集団に会いたかったわけじゃないんだよ僕は。
ただ…………もう僕、正直限界なんだよね。
暑い中の慣れない森歩き。失った水分にミネラルが視界を霞ませるし、足はズキズキ痛むし。
そうでなくとも、この森なんかおっきい獣の鳴き声が聞こえたりもした。これ以上ひとりでいると明日には死んでる気がする。
…………。
とりあえず、危険がないかしばらくここから観察してようかな。
なんて、そんなことを思ったその時だった。
ふらつく足が、地面に落ちてた大きな枝を踏みつける。そして、バキッと音が鳴った瞬間。
「ッ!」
――――コスプレ集団と目が合った。
まるで獲物を狙う獣の眼光だ。鋭く光って、体が固まるほどの威圧感を――
「って、うわ!?」
「――敵襲か!?」
「一人です!」
「く、くさい……! 死にかけの老人みたいな臭いッ」
いきなり、目の前に!? けっこうな――それこそ五百メートルくらいはあったよッ?
あっ、ちょっやめ……! なんで拘束しようと――
「確保! とりあえず連れ帰って尋問だ!」
「はいッ! わたし、先に帰ってみなに知らせます!」
「くっさいい! 鼻が曲がるぅ」
「そ、そうですか? 確かに表面的にはちょっとアレですが…………なにやら、奥の方からは素敵な匂いが…………ッい、いえ! それよりわたしは早く情報共有を!」
ぐええ。く、苦しい。とてつもない力で一切の身動きが取れない。
体力なくなってるとこにこれは無理。首も抑えられて、意識が遠のく……。
「ん? ……あっおい、そいつグデっとしてる! 気を失ってるぞ!」
「なにぃ? この程度でそんな……ッ本当だ! ええ、この程度で? どれだけやわなんだ……」
「隊長、もう少し力を緩めたほうが……! なにやら顔も紫になってきたような!」
そんな、どこか慌てた声を遠くに聞きながら。
僕の意識は水の底に沈むように、ゆっくりと落ちていくのだった。