迅が運転する車が玉狛支部へ向かう道中。
迅はブレーキを踏み、街に目を向けて。
キャスターも、同じく街に目を向けていた。
『────なるほど、恐らく、わたしたちは同じものが見えているのでしょうね』
『────みたいだね』
迅は連絡用端末を取り出して、忍田に連絡した。
『市街地に
アサシンは、静かに、主人の命令を待ち。
セイバーは、ただ瞑目した。
『────その件、わたしとマスターで対処させていただけませんか』
キャスターは、忍田にそう具申する。
『敵の狙いは、わたしたちの戦力を図ること。出すべきサーヴァントは一騎まで。
わたしならば、図られても問題ありません』
彼女の本領は後方支援。妨害できるような類の能力ではなく。
彼女が正面戦闘しなければならない状況は、即ち詰みであるが故に。
そして何より。キャスターと遊真。
この二人ならば、市街地への被害を限りなく0に抑えながら、トリオン兵を全滅させられる。
「さて、まずは移動だな。しっかり捕まってくれ。キャスター」
二年前なら、
この二年で、より便利な『印』を入手した。
「
ボーダーのトリガーのひとつ、『テレポーター』を学習した『印』。
視線の方角だけではなく、予め仕込んでおいた『印』へと、瞬時に移動できる。
「………これは、実に便利な『印』ね」
市街地の中でも、最も高いビルの屋上。
予めそこに仕込んでおいた
「───マスター、『宝具』解放の許可をお願い」
「OKキャスター。『宝具』、解放していいぞ」
「始めるわ」
一度瞑目し、自身の両眼に確かに存在する、アポロン・クリロノミアを活性化させる。
「神眼、起動。
彼女のそれは、迅悠一の未来視とは違う。
迅悠一のそれが、未来の観測ならば。彼女のそれは、未来の予測である。
彼女自身の類稀なる頭脳を完全に覚醒させ、アポロン・クリロノミアが観測する世界全域の情報を瞬時に計算、予測し、実質的な未来視を可能とする。
───故に、彼女は、
その『宝具』の真名は。
「
未来視のパラドクス。
未来を見たから、その未来になったのか、その未来になったから、未来を見たのか。
分かりやすく言えば、卵が先か鶏が先かというやつだ。
彼女の逸話はよく哲学的にそう評される。
故に、彼女の瞳は、矛盾を生み出す。
未だ来ないものと書いて未来。しかし彼女にとっては、それは全て既に来たものであるが故に。
戦闘は二十秒で終わる。
それが、彼女の観た未来であり、これから起きる未来である。
「わたしと視覚を共有してちょうだい。それが最短最高率よ」
「了解。相棒」
「まずは
すぐさま多重印を形成。
本来なら、レプリカのサポートが無ければここまでスムーズには作れないが、レプリカの代わりにキャスターが調整することで、多重印の高速形成を可能となった。
「
わずか六秒で、遥か上空まで飛び上がった遊真は、街を丸ごと視界に収めた。
「んで、ここからどうするんだ?」
『今視界にラインを示します。このラインに沿って、
「了解。
スコーピオンを学習した印、
投げられた六本のブレードは、キャスターの誘導した軌道で飛んで、
『緊急性が高い箇所から、三秒以内に殲滅して。倒す順番は、こっちの指示通りに。奴らの胸の中央を狙って』
「────了解、相棒」
最も緊急性の高い
投擲したブレードが突き立てられたトリオン魔獣にテレポートした遊真は、キャスターに言われた通りに、胸の中央を一閃。
魔獣の肉体に埋め込まれていたトリオン兵のコアが割れる。
(───なるほど。ここが弱点なわけね)
すぐさま、市民を襲おうとしているトリオン魔獣の元まで移動。
嘗て、空閑遊真が訓練室で見せた戦闘記録は、0.4秒。
キャスターとの視界共有により、理想的なヴィジョンを共有するが故に、それよりもより速く、より効率的に。
その、戦闘時間は、0.2秒。
12体のトリオン魔獣を、2.4秒で完全に殲滅。
市民の目には、何が起きたのか、一切わからなかった。
彼らの目に映った光景は、自分たちを襲おうとしてくる
(次は、───あそこか」
空閑は、次に緊急性の高い箇所に瞬時にテレポート。
先ずは、
二刀流で、キャスターの示した未来視通りに、トリオン魔獣達を最高効率で切り伏せていく。
市民を襲う直前のトリオン魔獣もいたが、それを優先するよりも、キャスターの
結果的に、市民が襲われる寸前で、そのトリオン魔獣を撃破。
こちらも2.4秒。
「さて、次は、と」
次に緊急性の高い箇所にテレポート。
ブレードを突き立てられたトリオン魔獣を撃破。
回収した三本目のブレードを投擲、市民を襲おうとしていたトリオン魔獣の弱点を破壊する。
回転しながら、彼方此方をピンボールよろしく跳ね回り、弱点を破壊していく。
さっきよりも速い、2.2秒。
「次行くか」
最後の一体を撃破するのと同時にテレポート。
ブレードを突き立てられたトリオン魔獣を撃破。
飛び回りながら弱点を破壊していく。ここも2.4秒で終わり。
「よし次」
慣れて来たので、さっきよりも速い2.3秒で終わり。
「で、ラストか」
2.3秒。合計で、20秒。
聖杯大戦初戦。『イレギュラー
「────流石キャスター。予知通りだ」
「こちらのセリフです。マスター」
戦闘終了と同時に、再びビルの屋上にテレポート。
キャスターの
流石は未来視と言ったところ。
「ありがとう。キャスター。キャスターの力が無かったら、この結果にはならなかった」
「………………調子狂うわね」
素直に真っ直ぐお礼を言ってくる遊真に、キャスターは、少し照れ臭そうにそう返した。
薄らとした暗がりの中でも、仄かに、キャスターの頬が赤く染まっていることに気付いた。
「────逸話が逸話なのに、よく最後まで、わたしの
市民を襲う寸前だったトリオン魔獣もいたのに、それよりも、わたしの
目の前で市民が襲われる寸前なら、
この人は最後まで、わたしの
「─────だって、キャスターは、嘘ついていなかったし」
「嘘ついていないとしても、わたしの
「キャスターを信じるって決めたからな」
本当に、あっさり、そんなことばっかり。
「わたしのこと、信じてくれるのは、嬉しいんだけど。話したばっかでしょ?わたしは、間違えたから、国も家族もわたし自身も守れなかった」
なのに、わたしが間違えないと、そう信じていた。
わたしが、嘘をつかないと。
「──────キャスターを信じるって決めたからな。
──────おれが、そうするべきだと思ったし」
ほんっと、馬鹿な人。
異次元に存在する、ある場所で。
大聖杯と化した
「すごい!すごいすごいすごいすごーい‼︎あたしと
白のアサシンのマスターにして、トリオン兵工学の天才。『ポイエイン』。
彼女は、白じみた銀色の短い髪を、飛び上がりながら大暴れさせて、自身とアサシンの合作であるトリオン魔獣を、こうもあっさりと倒してみせた、
それにしても、このトリガー出力。
「
『バシレウス』の王にして、白のセイバーのマスター。『ポメレオ』。
『バシレウス』の騎士団長にして、白のランサーのマスター。『ディナン』。
「ねぇねぇアサシン!次はどんなの作ろっか‼︎」
「そうだなマスター。今度は毒とか持たせてみようか」
「毒‼︎良いね‼︎」
どこまでも無邪気に、どこまでも楽しそうに、自身がやっていることが戦争行為であることなど、一切考えていないように。
実際、彼女はそんなことまでわかっていない。
だって、どれだけ天才でも、彼女はまだ、幼い少女なのだから。
「────しかし、このキャスターの索敵、凄まじいな。この短時間で、これほどの精度で、とは」
「だねぇ。うちのキャスターとは大違い」
「彼女も彼女で、凄まじいキャスターだがな」
それにしても、アーチャーとライダーは、キャスターの能力に、あまり動揺はしていなかったな。
まぁ、同じ時代、同じ地域、なんだったら同じ
「…………あの悲劇の王女が、これほどに信を置けるマスターに巡り合うとはな」
マスターの能力を完全に信頼しているからこそ、未来視の力を、ここまで積極的に使っているのだろう。
「脩が教えてくれたよ」
三導脩。
大聖杯と化した
自身のサーヴァント、バーサーカーも、幼い子供の英霊である。
「悲劇の王女、カッサンドラだっけ?
「そうだな、マスター。だが、アーチャーの前でそのようなことは言わないように。怒ってしまうからな」
「はーい。ま、怒られるのは勘弁だし」
だが、彼女の、青のキャスターの能力から考えると。
「我々の仕込んだアレも、対処されてしまうだろうな」
「あーあれね。アフト真似したんだけど、上手くいかないかなぁ?」
「ラッドよりは小さくしたが、彼女ならば、容易く見つけられるだろう」
「そっかぁ。残念。あれ、結構自信作だったんだけどなぁ」
だとしても、なんの問題もない。
「一回失敗した事など気にするな。そこから学んだことを活かして、何度でも挑戦し続ければ、いつかは成功するはずだよ」
優しげに、アサシンは教え諭す。
まるで教師のように。あるいは、親のように。
「そうだね‼︎アサシンの言う通り‼︎何度も何度も挑戦して、いつか
どこまでも明るく。
どこまでも楽しそうに。
幼い少女は、戦争を楽しんでいた。
その、何かがおかしい光景を、しかしアサシンは、穏やかに見守っていた。
さて、イレギュラーな
「さてキャスター。何か見つかったか?」
「ええ。今タグ付けたわ。捕まえて来て」
「了解」
「なるほど。これが」
再びビルの屋上に移動。
キャスターに捕まえたネズミを見せた。
「いつかのアフトクラトルと同じ手口ね。使われているのは、トリオン兵じゃ無くてトリオン魔獣のようだけど」
彼女の瞳が輝き、そのトリオン魔獣の全てを解析した。
「───やっぱり、
次に、瞳を輝かせながら、街全体を見渡す。
彼女の瞳は、超高性能の、レーダーでもあるが故に。
「ざっと500体。街中に存在しているわ。わたし達だけで全て見つけ出して壊すのは、無理ね」
「ま、こういう時は、数の力だな」
いつかの大掃討作戦の再現と行こうか。
「一旦、本部まで飛ぶか。捕まってくれ、キャスター」
「………ねぇ、なんでわざわざ横抱きにするわけ?」
「嫌だったか?」
「嫌というわけではないんだけど………」
ちょっと、恥ずかしいし。
「じゃあ、手でも繋ぐ?」
「それ以外に無いの?」
「───さぁ、どうでしょう?」
手を繋ぐか横抱きか。
まぁ、どっちでも良いか。
取り敢えず、そういうことにしておく。
とにかく、本部に行って、解析情報を開発室へ。
赤くなった顔も、高鳴る心臓も、キャスターは一先ず無視しておくことにした。
ボーダー本部で、空閑は。
「ヤッホー鬼怒田さん。お仕事頼みたいんだけど。こいつ、レーダーに映るようにしといて」
「ふん。まぁ良い。すぐに仕事を始めるぞ」
次は、と。
「根付さんは緊急放送お願い!」
「全く、迅くんに似てきたねぇ。君も、三雲くんも」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
仕事が早いし、的確だ。
キャスターは、緩く笑った。
「やっぱり、頼りになるわね。マスター」
「ふふん。お前のマスターはすごいんだぞ?」
「はいはい。すごいすごい」
でも、ところどころ子供っぽい。
そういうところは、ちょっと可愛いかも。
翌日。
『市民の皆様。先日発生したイレギュラー
根付の放送の元、C級まで含めたボーダーの全隊員による、昼夜を徹した掃討作戦が開始された。
迅は、ヒュースと共に掃討作戦をこなしていた。
「おい迅。これは、お前達の極秘任務とやらに、何か関わりがあるのか」
「流石。鋭いね」
昨日から玉狛支部にいる、三人の美女美少女を思い出す。
「あの三人も、極秘任務に関係があるのか?このトリオン兵、明らかに通常のトリオン兵じゃない。
トリオン以外にも、何か別の物質が混ざられているのか?」
「やっぱ優秀だねーヒュースは」
「惚けるな。ちゃんと答えろ」
「─────今はまだその時じゃない。おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
……………コイツがそう言うなら、そうなんだろう。
この二年で、よく学んだ。
「まぁ良い。任務を遂行する。ボーダー隊員としてな」
そんな後輩を見て、迅は、楽しそうに笑った。
『中々、優秀な後輩のようだな。マスター』
『だね。期待の後輩だよ』
『─────今の所、この騒ぎに乗じて、攻めてくるサーヴァントはいない。あなたのサイドエフェクトが捉えていないということは、恐らくは攻めてこないだろうが、念の為』
『ありがと。そのまま待機しといて。おれとキャスターでも、万が一の可能性は、常にあるからね』
そして、迅のサイドエフェクトが、言っている。
本番は、恐らく、今夜から。
その日の夜の防衛任務で、諏訪隊は。
『本部。こちら諏訪隊。恐らくは人型
軽そうな鎧を見に纏い、数多の女性を狂わせるだろう美貌で、長い棍棒を肩に担いだ、白のランサーに遭遇した。
カバー裏風キャラ紹介。
型月定番危ないロリ ポイエイン
倫理観ゆるゆる系マッド幼女。トリオン兵工学のスペシャリスト。使うトリガーもトリオン兵関係のもの。アサシンの宝具の力で、トリオン兵と魔獣の融合体であるトリオン魔獣を生み出すレベルの天才。アサシンとの関係は教師と生徒で親と娘。白の陣営のマスター達から、自分も実験台にされるのでは、と潜在的に恐れられている。幼女なのでAカップ。
正体は内緒 白のアサシン
魔獣を生み出す宝具を持つアサシンのサーヴァント。キャスターのクラス適性も持つし、キャスターとしても運用されている。頑なに姿が描写されないのは、姿が分かれば真名も分かるぐらいには特徴的だから。ポイエインの良き教師で親代わり。メソポタミア出身とだけ。