Fate/OverBORDER 三門聖杯大戦   作:宇津木 沙坂

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 鎌倉殿の13人。
 私の好きな大河です。


ルーラー①

 聖杯大戦において、必ず召喚されるクラスがある。

 裁定者(ルーラー)のサーヴァント。

 あらゆる英霊に対して、二画の令呪を持ち、聖杯大戦を円滑に進める為に、常に絶対中立であり続けるサーヴァント。

 

 そのルーラーが、ボーダー本部を訪れた。

 酷く現代的な黒スーツの、清潔感のある顎鬚を生やした、仏頂面の成年男性。

 

「失礼。この組織の長と話がしたいのですが」

 

 突然そんなことを言われても。

 沢村響子は心からそう思った。

 

「───城戸司令は忙しいので。アポイントメントを取ってからお願いします」

「聖杯大戦と言えば、伝わるでしょうか」

「───っ、何故それを⁉︎」

 

 その英霊は、姿勢を正した。

 背筋を伸ばし、美しくもありながら、どこか力強さも感じる所作で。

 

「私は此度の聖杯大戦において、ルーラーのクラスで召喚されたサーヴァント。

 真名を、北条小四郎義時と申します。

 既に『バシレウス』の方々とは面会しましたが故、ボーダー本部にも面会したいので、宜しくお願いします」

 

 北条義時。

 鎌倉幕府二代執権にして、朝敵となりながらも、朝廷を討ち倒した、唯一の男。

 一つの組織の長であり、現人神であった上皇を真正面から討ち倒した、神殺しに限りなく近い英霊。

 故に彼は、この、神霊蔓延る聖杯大戦に呼び出されたのだ。

 

「────改めまして自己紹介を。

 私は、サーヴァント、ルーラー。

 北条小四郎義時と申します」

 

 会議室では、ボーダー幹部陣とライネス。ライダーとランサーと、ランサーのマスター風間蒼也。キャスターのマスターである空閑、キャスター、迅悠一が、向かい合っていた。

 

「こちらも自己紹介を。

 私は城戸正宗。本部司令であり、最高司令官だ」

「忍田真史。本部長を務めている」

「唐沢克己。営業部長です」

「鬼怒田本吉。開発室長だ」

「根付栄蔵。メディア対策室長です」

「林藤匠。玉狛支部長。そこの、キャスターのマスターと、アサシンのマスターの所属する支部さ」

「ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。特別外部顧問で、ライダーのマスターだ。こちらが、私のサーヴァント、ライダー」

「お初にお目にかかる。ライダーである」

「………風間蒼也。ランサーのマスターを務めている」

「ランサーだ。ルーラーっていうなら、俺の真名もわかんのか?」

 

 ルーラー、北条義時は、スーツ姿のそのサーヴァントを、数秒見つめて。

 

「────円卓の騎士が一人、ボールス卿とお見受けする」

「わお、こりゃ、ルーラー確定かね」

「そのようですね。ランサーさんは、一度も表には出ていないので───。改めまして、わたしはキャスター、カッサンドラ」

「キャスターのマスター、空閑遊真。よろしく」

「アサシンのマスター、迅悠一だ。───アサシン、取り敢えずは大丈夫だ」 

 

 ルーラーの背後に、いつの間にかいたアサシンは、右手に握っていた理想薄刃(ザバーニーヤ)の刃を影へと戻し、迅の傍へといつのまにか移動していた。

 

「────失礼、ルーラー殿。我らはこの都市を守る砦だ。このような対応を取ったことを、どうかご容赦願いたい」

「構いませぬ。組織の長とは、そう言ったものであることを知っております故」

 

 鎌倉幕府。

 かつてこの国に存在していた、三つの幕府の中で、最も古い幕府。

 源頼朝が初代であり、その後、執権が権力を握り、やがて、北条守時の代で滅びた幕府。

 その二代目執権にして、尼将軍北条政子に隠れがちだが、非常に重要な役割を果たした、北条義時。

 彼は組織の長であったが故に、この対応も、予測済みであるし、理解もする。

 

「それで、ルーラー殿は、なぜボーダーに?」

「先も申し上げました通り、『バシレウス』の方々へご挨拶をしたので、ボーダーの方々にも、と」

 

 遊真は、すぐさま内部通話で城戸に繋げた。

 

『全部じゃないけど部分的に嘘。多分、ご挨拶ってところが嘘だと思う』

 

 なるほど。

 ルーラーの役割も踏まえたのならば。

 

「────『バシレウス』へは、警告に向ったのでは?」

「…………お見事、と言っておきましょう」

 

 ルーラーとは、聖杯大戦を円滑に進行する為のサーヴァント。

 つまり。

 

「────イレギュラー(ゲート)事件は、目に余るものであったと?」

「当然です。

 聖杯大戦、或いは聖杯戦争において、無辜の民を襲うのは本来御法度です。

 キャスターとそのマスターが鎮圧していたので、私は何もしませんでしたが、この地を守る為に、手を貸す選択肢もありました故」

『嘘はついていないね。

 味方につけるのも、難しくはない、かも』

 

 元々、『バシレウス』は侵略者側だ。

 こちらの役割としては、都市を守る防衛側。

 ────ルーラーが、民間人を巻き込みたくないのなら、味方につけるのも、難しくないかもしれない。

 唐沢が、積極的に話しかけた。

 

「────無辜の民を巻き込めば、あなたは手を出す。

 で、あるならば、我々が市民を守る為に戦う限りは、あなたは、実質的な私たちの味方である、と?」

「味方というのは少し違います。ただ、あなたたちには、介入する理由がないだけです」

「ふむ。なるほど」

 

 明確に味方になる事はないと言ってきた、という事は、その辺りの線引きはしっかりするぐらいしっかりしているルーラー、という事だろうが。

 市民を狙えば敵に回るルーラーというのは、コチラにとっても都合が良い。

 何せ、防衛機関側としては、市民を巻き込む理由などないのだから。

 

「だとしたら、我々と組むという選択もあるのでは?」

「それは無いですね。私はあくまで、聖杯大戦を円滑に進めるサーヴァント。

 私自身から動く事は、基本的にありません」

 

 剣を使うから剣士(セイバー)、槍を使うから槍兵(ランサー)、物を飛ばすから弓兵(アーチャー)と言ったように。

 裁定者(ルーラー)とは、ルールを守り、守らせるもの。

 北条義時は、その権化だ。

 彼がこの聖杯大戦に定めた絶対のルールの一つ。

 市民を巻き込まないこと、無用の殺しは避けること。

 これを破るものには、ルーラーとしての全てをもって処罰にあたり、逆に、これを守る限り、決してコチラに介入する事はない。

 それが、ルーラー、北条義時である。

 

「ふむ。ですが、あなた個人では、情報収集に問題があるときもあるでしょう。どうです?我々と協力して、この聖杯大戦を、より秩序だったルールの元、運営するというのは」

 

 防衛機関が市民を巻き込むことなど考えられない。

 であるが故に、大目標は一致している。

 味方となる事は出来なくとも、協力は出来るはずだ。

 そこが、唐沢の誤算の一つ。

 

「それはなりません。私は決して、あなたたちから力を借りる事はない。無論、私からも力を貸す事はない。

 例外を除いて、ですが」

「ふむ。その例外とは?」

「彼らが市民を巻き込み、その対処が、あなた達だけでは絶対に不可能であると判断した時は、力を貸すこともあるでしょう。

 ですがそれは、あなた達が完全に敗北した後、私が白の陣営を殲滅する、ということです。

 どれほど市民を巻き込んだとしても、あなた達ならば対処可能な範囲であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私が動く事はありません」

 

 市民を巻き込む事、それは確かに、ルール違反の一つである、が。

 彼は、武士でもある。

 守るべき人々を尊びこそすれ、それよりも勝利を目指すことを容認することは、彼にとって矛盾しない。

 

「────即ち、私たちだけでは対処が困難であり、あなた単独でも対処出来ないのならば、その限りではない、と」

「それが、戦の勝利という目的から外れたものであるならば、ですが」

 

 ルーラー、北条義時の絶対のルールの一つにして、最大のルール。

 勝利の為に戦を進める事。

 この聖杯大戦で、それが守られる限り、彼が動く事はない。

 無論、手の届く範囲の市民は、全力で守護するが。

 

「────ルーラーでこそありますが、私は善人というわけではない。

 どれほどの外道を働こうとも、それが勝利のための行いであれば、私は容認しましょう。

 ────無論、勝利したのち、その代償は払っていただきますが」

 

 願いを叶える事は、確かに容認する。

 その為に、無辜の市民すらも巻き込むのなら、まぁ、良いだろう。

 だが、願いを叶えたあと、勝利ののち、必ずその代償は払わせる。

 

「─────成程、あなたの大目標は、どちらの陣営も、勝利のために戦うこと。

 それが守られているのなら、市民への多少の被害も許容する。

 ただし、勝利した後、それ相応の代償を払ってもらう、と」

「この都市は例外ですが、基本的に、現代とは平和な時代です。

 命を賭けて戦わずとも、明日の食事は保障され、無為に殺される事は、基本的に無い。

 それでも尚、勝利の為に命を賭けて戦うのなら、それは可能な限り尊重しましょう。どのような外道であったとしても、ね。

 ──────しかし、その外道で巻き込まれ、死した市民達への責任は、取ってもらいますが」

 

 聖杯大戦を、命懸けで名誉を求めることを、願いを叶えることを、決して否定はしないし、尊重する。

 しかし、関係ない市民を巻き込み、あろうことか殺したのならば。

 名誉を得て、願いを叶えたのち、必ず殺す。

 それが、ルーラー、北条義時である。

 

「しかしですねぇ。我々としては、宣戦布告されたから、戦っているだけなんですが」

「うむ。こんな戦争、やりたくてやってる訳が無かろう」

 

 根付と鬼怒田の言葉は、確かに事実だ。

 そこに嘘はない。

 そう、この二人は、やりたくてやっているのではない。

 林道もまた、同じように。

 

「───ですが、唐沢殿と、忍田殿、城戸殿に、迅殿、空閑殿には、別の思惑があるようですが」

 

 この五人は、別の目的がある。

 無論、サーヴァントは例外だ。彼らは目的があるから呼ばれたのだから。

 

「まぁ、認めましょう。

 私としては、英霊達に受肉してもらい、今後も都市の防衛に力を貸して頂きたい、という目的もあります」

「私も唐沢と同意見だ。英霊の力は、今後も都市の防衛に大きく役に立つだろう。

 (ブラック)トリガーすらも上回る実力、そして何より、これは、()()()()()()()()()()近界(ネイバーフット)には()()()()()()

 防衛力として、非常に魅力的だ」

「私も、二人と同じ目的だ。

 英霊達の受肉、その為に、大聖杯を手に入れる。

 あなたの言う通り、私達は、この聖杯大戦に、勝利したい理由がある」

 

 ボーダーの持つ力であるトリガーは、基本的にあちら側の後追いだ。

 だが、英霊は違う。

 あちら側には存在しない力であるが故に、向こう側が、同じ戦力、技術を使えるものではない。

 ガロプラに緊急脱出(ベイルアウト)を真似されたように、あちらとコチラでの、技術開発競争という戦争から、一歩抜け出せる。

 だからこそ、唐沢と忍田と、そして城戸は、英霊を恒常的に、ボーダーの戦力として迎え入れたい。

 その為に、(マザー)トリガーから半永久的にトリオンを供給するのではなく、大聖杯を手に入れて、英霊達を受肉させたいのだ。

 

「その目的も理解しましょう。

 しかし同時に、その目的のために戦う以上、それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 故に、ルーラーは手を貸さない。

 

「ふーむ。おれは城戸さん達みたいに、都市の防衛の為とかじゃなくて、レプリカを初期化せずに再起動させたいっていう、個人の願いなわけで」

「…………そんなことを考えておったのか」

 

 現在、開発室で、研究個体として、丁重に保管されているレプリカを思い出しながら、鬼怒田は、初めて知った空閑の願いに、驚きの声を漏らしていた。

 

「…………まぁ、おれもそんな感じかな。英霊の受肉も目的の一つだけど」

 

 迅はそっと、『風刃』に手を添えた。

 

「────少しだけ、師匠と話したいってのは、あるかな。別に、蘇って欲しいわけじゃないんだけどね」

 

 ただ、一度だけで良い。

 (ブラック)トリガーとなった最上宗一と話したい。

 迅悠一の聖杯に賭ける願いは、それだけだ。

 

「あなた達の願いは尊重しましょう。

 そして、だからこそ。

 尊重するが故に、私は決して手を貸しません」

 

 それだけは、ご了承を。

 

 

 そうして、ルーラー北条義時は、ボーダー本部を去った。

 

 会議室から出てすぐの廊下で、風間は迅を呼び止めた。

 

「───お前が、そう言う願いを持っているとは、意外だったな」

「風間さんの方こそ、お兄さんのことは、もう良いの?」

「既に割り切っている。態々話したいという程のことじゃない」

「クールだねぇ」

「まぁ、それくらいの願いなら、別に良いとは思うがな」

「うん。『風刃』の力は、これから先も絶対に必要だから、出来ることなら残しておきたい。

 それはそれとして、最上さんと、少しで良いから話したい。

 ま、これくらいの我儘は、ね」

 

 我儘、か。

 そうだ。風間蒼也も迅も、ほとんど我儘を言ったことはない。

 都市の防衛の為にこそ、彼らは戦ってきた。

 後にも先にも、迅が我儘を言ったのは、そして、行動したのは、『風刃』争奪戦ぐらいだろう。

 迅悠一にとって、師匠は、それだけ大切なのだ。

 

 気分転換も兼ねて、迅は屋上に出た。

 傍に仕えるアサシンに、詫びる。

 

「悪いなアサシン。おれ、ちゃんと願い話してなかったな」

「別に構わん。私を一度殺したあなただからこそ、手を貸そうと思ったのだから。

 ……………だが、私があなたに召喚されたのは、運命だったのかもな」

 

 迅は、屋上の縁に座って、片膝を立てて、肘を立て、頭を支える。

 アサシンもまた、迅の隣に足を丁寧に揃えて座って、夕陽を眺める。

 

「─────私もあなたも、師匠と話したいという願いを持っていた。だからこそ、十八人いる『山の翁』のうち、私が呼ばれたのだろう」

 

 聖杯とは、触媒とは別に、その英霊との相性も加味した選定も行う。

 触媒が特定の英霊を確定させるものであるなら、話は別だが。

 円卓の欠片や、アルゴー号の破片などの、様々な英霊に縁を持つものならば、そのマスターとの相性も加味した召喚となる。

 

「なんかマッチングアプリみたい」

「その例えは俗物的にすぎるだろう」

 

 他に無いのか?

 いやまぁ、現代に重ね合わせれば、その例えはよく分かるのだが。

 

「お互いに、この大戦、勝つ理由があった訳だけど。まぁ、改めてよろしく、アサシン」

「あぁ、こちらこそ、改めて、よろしく頼む。ジン」

 

 令呪の刻まれた左拳差し出した迅と、隣り合って左拳をぶつけ合ったアサシンは、笑い合った。

 

「あ、愛車の復活も願いに加わったわ」

「そうだな。アーチャーにも、落とし前をつけさせないと」




 カバー裏風キャラ紹介。

 声優は杉田智和希望  ルーラー

 聖杯大戦の監督者で、神殺しに限りなく近い英霊で、ルーラー適正ありだなってなった人。この人の外見イメージは大体小栗旬。アニメ絵で脳内再生してるので声優は杉田さん。まぁ二人とも銀さんだし。真面目な時の杉田さんイメージ。割と頭が硬いようで柔らかい。共闘するかは今後に期待。ビジネスマンみたいな人だと思ってるので、黒スーツを着てもらった。二宮隊にいても違和感ないだろう。
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