ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
同じ映像。
三人。
三つの答え。
イズモ。
ユノ。
カー博士。
全員。
自分を見ている。
まるで。
カメラではなく。
鏡を見ているように。
*
カー博士「待ってください」
映像を停止。
カー博士「生データは?」
技術士官「一つです」
イズモ「観測者ごとに別ファイルじゃない?」
技術士官「違います。同一ストリーム」
ユノ『私の受信データも一致しています』
画素。
座標。
光量。
全て。
同じ。
なのに。
見える人物だけが違う。
イズモ「スクリーンショット」
「保存しました」
イズモ「機械認識にかけて」
技術士官「人物検出……不能」
カー博士「不能?」
「人型らしい輪郭はありますが、顔認識対象として成立していません」
イズモが画面を見る。
そこには。
どう見ても。
自分がいる。
イズモ「じゃあこれは」
ユノ『映像に存在する人物ではない?』
イズモ「見る側が補完してる」
*
再生。
画面の中のイズモが。
こちらを見る。
いや。
イズモには。
イズモに見える何かが。
唇を動かす。
音声。
なし。
字幕。
なし。
それでも。
イズモ「……見えてる」
カー博士「え?」
ユノ『私は』
一拍。
ユノ『「認識した」に感じます』
カー博士「私は『来た』ですね」
イズモが。
映像を止める。
イズモ「同じ口の動き?」
技術士官「映像上は同一です」
カー博士「言葉まで違う」
ユノ『言語ではなく意味を送っている?』
イズモ「こっちが理解できる形に変換されてる」
カー博士「誰が?」
イズモ「分かりません」
少し間。
イズモ「向こうか」
映像を見る。
イズモ「こっちの認識機構か」
*
再生。
像が。
自分の胸元へ手を置く。
次に。
画面の外。
何もない場所を指す。
そして。
映像終了。
技術士官「二号機内部時間、十秒」
イズモ「帰還命令」
「UNKNOWN」
また。
外部から。
返されている。
カー博士「何を示したのでしょう」
イズモ「自分」
ユノ『外』
イズモ「……それだけなら」
少し考える。
イズモ「『こちらとそちら』?」
ユノ『あるいは』
ユノが続ける。
ユノ『「自分を見ろ」』
イズモ「それは嫌だな」
カー博士「なぜ?」
イズモ「哲学始まりそうなので」
*
だが。
冗談で済ませるには。
変だった。
相手は。
一号機を壊さなかった。
二号機も。
返した。
そして。
今回は。
明確に。
何かを。
見せてきた。
イズモ「敵意があるとは思わない」
カー博士「友好的?」
イズモ「そこまでは言いません」
ユノ『配慮している可能性は?』
イズモ「ある」
十一次元の何かを。
そのまま人間へ見せれば。
理解できない。
だから。
一番理解しやすいもの。
自分自身。
それを。
翻訳用の器にする。
イズモ「もしそうなら」
カー博士「はい」
イズモ「かなり慎重に接触してきてる」
*
通信。
司令部。
綾音『二号機も返された』
イズモ「はい」
綾音『映像は?』
イズモ「変です」
綾音『今さら?』
イズモ「全員、自分が見えます」
数秒。
綾音『……自分?』
イズモ「鏡みたいに」
綾音『録画送って』
イズモ「直接見ます?」
綾音『そのための記録でしょ』
イズモ「一応、観測者によって見え方変わります」
綾音『分かった』
イズモは。
一瞬だけ。
迷った。
イズモ「長時間は見ないでください」
綾音『何かあるの?』
イズモ「まだ分からない」
その言葉に。
綾音が少しだけ。
表情を変える。
綾音『了解』
*
カー博士「次は何を?」
イズモ「返事」
カー博士「ついに?」
イズモ「はい」
イズモは。
受信信号を表示する。
こちらを見た。
認識した。
来た。
意味は違う。
だが。
共通しているのは。
接触が成立したということ。
カー博士「何と送ります?」
イズモ「『あなたは誰ですか』は」
一拍。
イズモ「まだ早い」
ユノ『では?』
イズモは。
二号機の最後のフレームを見る。
こちらを。
見ている。
何か。
イズモ「こちらが見えていますか」
最初の返答としては。
それで十分だった。
だが。
その頃。
司令部では。
綾音が。
二号機の記録を。
再生していた。