ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅12 地球になった私

 

 

 二号機の映像は。

 

 その後も。

 

 解析室の端末に残されていた。

 

 直接閲覧は制限。

 

 だが。

 

 完全隔離には。

 

 まだ至っていない。

 

     *

 

 ユノが。

 

 モニターの前で。

 

 立ち止まった。

 

 誰かに呼ばれたわけではない。

 

 用事があったわけでもない。

 

 ただ。

 

 気づけば。

 

 画面を見ていた。

 

 白いノイズ。

 

 その中に。

 

 自分。

 

 ユノ自身が。

 

 立っている。

 

ユノ「……」

 

 映像は停止している。

 

 それなのに。

 

 目が離れない。

 

 一歩。

 

 近づく。

 

 もう一歩。

 

イズモ「ユノ?」

 

 返事がない。

 

 イズモが。

 

 顔を上げる。

 

 ユノは。

 

 まるで。

 

 画面の奥へ。

 

 吸い込まれるように。

 

 歩いている。

 

イズモ「ユノ」

 

 反応。

 

 なし。

 

 手が伸びる。

 

 画面へ。

 

イズモ「映像落として」

 

技術士官「え?」

 

イズモ「今すぐ」

 

 暗転。

 

 同時に。

 

 イズモは。

 

 二号機映像への接続を。

 

 物理的に遮断する。

 

イズモ「ネットワーク切断」

 

技術士官「了解」

 

イズモ「バックアップも」

 

「はい」

 

イズモ「閲覧権限全部停止」

 

 ユノの指が。

 

 黒いモニターの直前で。

 

 止まった。

 

     *

 

ユノ「……?」

 

 瞬き。

 

 周囲を見る。

 

ユノ「私」

 

 自分の位置を確認する。

 

ユノ「何を?」

 

イズモ「覚えてます?」

 

ユノ「二号機の映像を」

 

イズモ「その後」

 

 ユノは。

 

 内部ログを検索する。

 

ユノ「……もう一度」

 

 一拍。

 

ユノ「見ようと思いました」

 

イズモ「理由は?」

 

 沈黙。

 

ユノ「分かりません」

 

 イズモの表情が。

 

 変わった。

 

イズモ「認識汚染を疑います」

 

カー博士「映像だけで?」

 

イズモ「理由の説明できない閲覧欲求」

 

 暗転したモニター。

 

イズモ「それも」

 

 一拍。

 

イズモ「直前まで本人が自覚してない」

 

     *

 

 診断。

 

 外部コード。

 

 なし。

 

 異常プロセス。

 

 なし。

 

 記憶破損。

 

 なし。

 

 運動制御。

 

 正常。

 

カー博士「機械的には問題ありません」

 

イズモ「だから嫌なんですよ」

 

カー博士「なぜ?」

 

イズモ「壊れてないのに」

 

 ユノを見る。

 

イズモ「行動だけ変わってる」

 

     *

 

イズモ「ユノ」

 

ユノ「はい」

 

イズモ「映像」

 

 一拍。

 

イズモ「何が見えてました?」

 

ユノ「私です」

 

イズモ「ずっと?」

 

 ユノが。

 

 止まる。

 

ユノ「……いいえ」

 

イズモ「途中から?」

 

ユノ「変わりました」

 

カー博士「何に?」

 

 ユノは。

 

 言葉を探す。

 

 長い。

 

 演算ではなく。

 

 感覚を。

 

 翻訳している。

 

ユノ「輪郭が」

 

イズモ「輪郭?」

 

ユノ「なくなりました」

 

イズモ「人型じゃなくなった?」

 

ユノ「はい」

 

 一拍。

 

ユノ「でも」

 

 ユノは。

 

 自分の胸へ。

 

 手を置く。

 

ユノ「大きくなった、ではありません」

 

イズモ「じゃあ?」

 

 ユノは。

 

 少し。

 

 困ったように。

 

 首を傾けた。

 

ユノ「私が」

 

 一拍。

 

ユノ「地球になってた……?」

 

 誰も。

 

 笑わなかった。

 

     *

 

ユノ「海がありました」

 

ユノ「大気がありました」

 

ユノ「大陸がありました」

 

ユノ「人がいました」

 

カー博士「地球を外から見ていた?」

 

ユノ「違います」

 

 即答。

 

ユノ「全部」

 

 一拍。

 

ユノ「私でした」

 

 イズモは。

 

 何も言わない。

 

ユノ「海の温度」

 

ユノ「大気の組成」

 

ユノ「地中の元素」

 

ユノ「全部」

 

ユノ「自分の身体みたいに」

 

イズモ「元素が消えた時は?」

 

 ユノの表情が。

 

 僅かに。

 

 歪んだ。

 

ユノ「……痛かった」

 

イズモ「どこが?」

 

ユノ「全部です」

 

 そして。

 

 少し間を置いて。

 

ユノ「でも」

 

イズモ「何?」

 

ユノ「ネガアースも」

 

 全員が。

 

 ユノを見る。

 

ユノ「私でした」

 

ユノ「QEXも」

 

ユノ「流れていく元素も」

 

ユノ「全部」

 

 自分の手を見る。

 

ユノ「自分の中を移動しているように」

 

     *

 

 イズモは。

 

 暗転したモニターを見る。

 

 綾音は。

 

 別の自分。

 

 ユノは。

 

 地球そのものになった自分。

 

 そして。

 

 自身が。

 

 以前観測した。

 

 一つの可能性。

 

 十一次元に残った。

 

 最上イズモ。

 

イズモ「……待って」

 

カー博士「何です?」

 

イズモ「これ」

 

 一拍。

 

イズモ「映像が、自分を見せてるんじゃない」

 

ユノ「では?」

 

 イズモは。

 

 十一次元モデルを開く。

 

 無数の線。

 

 無数の分岐。

 

 そして。

 

 観測者。

 

イズモ「自分を基準に」

 

 一本。

 

 枝を選ぶ。

 

イズモ「別の可能性を」

 

 線が。

 

 別世界へ。

 

 伸びる。

 

イズモ「映してる?」

 

 鏡。

 

 ではない。

 

 そこに映っていたのは。

 

 現在の自分ではない。

 

 存在し得た。

 

 別の自分。

 

 イズモは。

 

 ゆっくり。

 

 表示を拡大した。

 

イズモ「パラレルワールドの」

 

 一拍。

 

イズモ「投影……?」

 

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