ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅14 救済

 

 

 失われるものを。

 

 手放したくない。

 

 イズモは。

 

 その仮説を。

 

 しばらく。

 

 口に出さなかった。

 

     *

 

カー博士「世界線を切り替える理由」

 

 画面。

 

 一つの世界。

 

 元素が失われる。

 

 別の世界。

 

 元素が残る。

 

カー博士「不足を補っている?」

 

イズモ「それだけなら」

 

 さらに。

 

 別の記録を出す。

 

 一号機。

 

 本来なら。

 

 帰還不能だった可能性。

 

 しかし。

 

 UNKNOWNからの命令で。

 

 戻された。

 

イズモ「探査機まで返す理由がない」

 

ユノ「破壊もされなかった」

 

イズモ「うん」

 

 次。

 

 綾音が見た。

 

 別世界の自分。

 

 十一次元に取り込まれ。

 

 イズモに帰還させられた。

 

 綾音。

 

 次。

 

 ユノが見た。

 

 地球そのものとなった。

 

 自分。

 

イズモ「全部」

 

 一拍。

 

イズモ「残す方向に動いてる」

 

     *

 

 ユノが。

 

 画面を見ながら。

 

 静かに言った。

 

ユノ「救済」

 

カー博士「救済?」

 

ユノ「失われる存在を」

 

 一拍。

 

ユノ「失われない可能性へ移す」

 

 イズモは。

 

 否定しなかった。

 

イズモ「あり得る」

 

カー博士「なら」

 

 カー博士が。

 

 少し身を乗り出す。

 

カー博士「敵ではない?」

 

イズモ「それは別です」

 

カー博士「別?」

 

イズモ「善意なら安全」

 

 一拍。

 

イズモ「とは限らない」

 

     *

 

 通信。

 

 司令部。

 

綾音『救済ね』

 

イズモ「仮説です」

 

綾音『でも筋は通る』

 

イズモ「はい」

 

綾音『元素が足りない世界がある』

 

 世界線。

 

綾音『なら別の世界から補う』

 

イズモ「向こうからすれば」

 

 一拍。

 

イズモ「移動させてる感覚すらないかもしれない」

 

ユノ「すべてを一つの系として認識しているなら」

 

 ユノは。

 

 以前見た感覚を。

 

 思い出す。

 

ユノ「右手から左手へ」

 

イズモ「そう」

 

 地球。

 

 ネガアース。

 

 別々の世界。

 

 だが。

 

 十一次元側から見れば。

 

 一つ。

 

綾音『でも』

 

 声が。

 

 少し低くなる。

 

綾音『右手と左手には』

 

 一拍。

 

綾音『それぞれ人が住んでる』

 

イズモ「そこなんですよね」

 

     *

 

 イズモは。

 

 ピースギアの活動記録を。

 

 一つ。

 

 表示した。

 

 災害。

 

 救難。

 

 紛争。

 

 文明崩壊。

 

 避難。

 

イズモ「私たちも」

 

 一拍。

 

イズモ「放っておけば失われるものに手を出します」

 

カー博士「では同じでは?」

 

イズモ「似てます」

 

ユノ「違いは?」

 

 イズモは。

 

 少し考える。

 

イズモ「聞くこと」

 

ユノ「何を?」

 

イズモ「助けてほしいか」

 

 短い。

 

 それだけ。

 

イズモ「少なくとも」

 

 一拍。

 

イズモ「聞ける相手には聞く」

 

     *

 

 ユノは。

 

 しばらく。

 

 黙った。

 

ユノ「私が」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「地球になった時」

 

 海。

 

 大気。

 

 QEX。

 

 人間。

 

 元素。

 

 全部。

 

 自分だった。

 

ユノ「何かが失われるたび」

 

 一拍。

 

ユノ「痛かった」

 

カー博士「だから保存したくなる」

 

ユノ「はい」

 

 しかし。

 

ユノ「全部が私なら」

 

 自分の手を見る。

 

ユノ「他人がいなくなる」

 

イズモ「……」

 

ユノ「誰かが」

 

 一拍。

 

ユノ「私はこれを望んでいない、と言っても」

 

 少し。

 

 眉を寄せる。

 

ユノ「それを」

 

 一拍。

 

ユノ「自分の痛みとして処理してしまう」

 

綾音『相手の意思じゃなく』

 

ユノ「自分の判断で」

 

 静かに。

 

ユノ「救ってしまう」

 

     *

 

 イズモが。

 

 十一次元モデルを見る。

 

イズモ「向こうも」

 

 一拍。

 

イズモ「ピースギアとやってることは、さほど変わらないのかもしれない」

 

カー博士「同じ?」

 

イズモ「目的は」

 

 無数の世界。

 

イズモ「失わせたくない」

 

 そして。

 

 少しだけ。

 

 苦笑する。

 

イズモ「やり方はかなり間違ってるけど」

 

     *

 

 その時。

 

技術士官「三佐」

 

イズモ「何?」

 

「元素消失率」

 

 新しいグラフ。

 

 七日間の未回収実験。

 

 その後。

 

 さらに。

 

 僅かずつ。

 

 下がっている。

 

カー博士「また減ってる?」

 

技術士官「はい」

 

イズモ「何もしてない」

 

ユノ「正確には」

 

 ユノが。

 

 活動ログを表示する。

 

 QEX保護。

 

 回収停止。

 

 地球側観測。

 

 ネガアース側観測。

 

 双方の安全基準。

 

ユノ「私たちは」

 

 一拍。

 

ユノ「行動を続けています」

 

 イズモが。

 

 止まる。

 

     *

 

イズモ「……向こう」

 

カー博士「はい?」

 

イズモ「見てる?」

 

 活動ログ。

 

 その直後。

 

 元素消失量が。

 

 少し下がる。

 

 別の日。

 

 QEXへの強制回収を停止。

 

 また。

 

 下がる。

 

イズモ「こっちが向こうを観測してると思ってた」

 

ユノ「逆も?」

 

イズモ「多分」

 

 十一次元側。

 

 そこから。

 

 地球。

 

 ネガアース。

 

 ピースギア。

 

 三つへ。

 

 線を引く。

 

イズモ「向こうも」

 

 一拍。

 

イズモ「私たちを観測してる」

 

     *

 

綾音『それなら』

 

 通信越し。

 

 綾音が。

 

 静かに言う。

 

綾音『少しずつ元素消失を止めてる理由も』

 

イズモ「試してる」

 

カー博士「何を?」

 

イズモ「自分が手を出さなくても」

 

 一拍。

 

イズモ「世界が壊れないか」

 

 誰も。

 

 すぐには。

 

 言葉を出さなかった。

 

 ピースギアは。

 

 十一次元を調べていた。

 

 だが。

 

 その間。

 

 十一次元側も。

 

 ピースギアを。

 

 見ていた。

 

 観測していたのは。

 

 一方だけではなかった。

 

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