ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
十一次元側が。
こちらを見ている。
その仮説が立った翌日。
イズモは。
一つの実験を提案した。
カー博士「返事をする?」
イズモ「はい」
ユノ「以前準備していた」
イズモ「『こちらが見えていますか』」
通信装置。
ポータル。
同期波形。
三系統。
同じ意味を。
別々の方法で送る。
綾音『刺激しない程度に』
イズモ「了解」
綾音『あと』
イズモ「はい」
綾音『質問は一個だけ』
イズモ「分かってます」
*
送信。
短い信号。
それだけ。
返答。
なし。
一分。
五分。
三十分。
カー博士「無反応ですね」
イズモ「待ちます」
一時間。
何も起こらない。
だが。
ネガアース側。
ユノ『イズモ』
イズモ「はい」
ユノ『QEXが』
映像。
巨大個体。
小型個体。
全て。
以前のように。
三次元上には存在しない場所を。
見ている。
ただし。
今回は。
鳴かなかった。
逃げなかった。
ただ。
静かに。
見ている。
*
三時間後。
技術士官「元素消失率、低下」
カー博士「また?」
「はい」
イズモ「どれくらい?」
「昨日比十二パーセント」
ユノ『ネガアース側流入も同率で減少』
イズモ「同期波形は?」
「弱くなっています」
イズモは。
椅子へ深く座る。
カー博士「返答でしょうか」
イズモ「分かりません」
一拍。
イズモ「でも」
こちらが。
問いかけた。
向こうが。
世界への干渉を。
弱めた。
イズモ「少なくとも」
一拍。
イズモ「無関係とは思いにくい」
*
その日の夜。
新しい信号が。
観測された。
三回。
等間隔。
四回目。
長い。
以前と同じ。
そして。
五回目。
今度は。
短かった。
技術士官「パターン変化」
イズモ「記録」
ユノ『意味は?』
イズモ「直接見ない」
ユノ『了解』
機械解析。
言語化。
禁止。
まず。
構造だけを見る。
カー博士「返信形式を模倣している?」
イズモ「多分」
こちらが。
三方式で。
一つの意味を送った。
向こうも。
以前のパターンを。
少しだけ変えた。
イズモ「学習してる」
*
綾音『こっちの通信方式を?』
イズモ「それだけじゃないと思います」
活動記録。
QEXを撃たなかった。
回収を止めた。
元素流入を観測した。
地球だけでなく。
ネガアースも守ろうとした。
未知を。
敵と決めなかった。
イズモ「行動も見てる」
綾音『……なら』
少し。
間。
綾音『向こうにとって』
一拍。
綾音『私たちは通信してたつもりがなくても』
イズモ「ずっと答えてた」
*
ユノは。
その言葉を。
静かに聞いていた。
ユノ「救済の方法を」
イズモ「はい」
ユノ「私たちから学んでいる?」
イズモ「可能性はあります」
カー博士「文明が?」
イズモ「文明かどうかも分からない」
システム。
生命。
現象。
意思。
その境界。
何も分からない。
ただ。
変化する。
観測し。
結果に合わせて。
行動を変える。
それだけは。
明確だった。
*
ユノ「イズモ」
イズモ「はい」
ユノ「もし」
一拍。
ユノ「すべてを救える力があったとして」
地球。
ネガアース。
別世界。
失われる可能性。
ユノ「使わないことは」
少し。
考える。
ユノ「見捨てることになりますか?」
イズモは。
すぐには答えなかった。
イズモ「何もしないのと」
一拍。
イズモ「任せるのは違うと思います」
ユノ「任せる」
イズモ「助けを求められた時に」
ユノを見る。
イズモ「手を出せる距離にはいる」
でも。
イズモ「勝手に人生を決めない」
*
その瞬間。
観測装置が。
小さく鳴った。
技術士官「信号」
全員が。
画面を見る。
短い。
一度。
それだけ。
カー博士「偶然?」
イズモ「……さあ」
だが。
元素消失率は。
さらに。
下がっていた。
十一次元側は。
世界を救うために。
世界へ触れていた。
そして今。
初めて。
触れないという選択を。
学び始めていた。
観測者は。
ただ見るだけではない。
見たものによって。
変わることもある。