ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅15 観測者

 十一次元側が。

 

 こちらを見ている。

 

 その仮説が立った翌日。

 

 イズモは。

 

 一つの実験を提案した。

 

カー博士「返事をする?」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「以前準備していた」

 

イズモ「『こちらが見えていますか』」

 

 通信装置。

 

 ポータル。

 

 同期波形。

 

 三系統。

 

 同じ意味を。

 

 別々の方法で送る。

 

綾音『刺激しない程度に』

 

イズモ「了解」

 

綾音『あと』

 

イズモ「はい」

 

綾音『質問は一個だけ』

 

イズモ「分かってます」

 

     *

 

 送信。

 

 短い信号。

 

 それだけ。

 

 返答。

 

 なし。

 

 一分。

 

 五分。

 

 三十分。

 

カー博士「無反応ですね」

 

イズモ「待ちます」

 

 一時間。

 

 何も起こらない。

 

 だが。

 

 ネガアース側。

 

ユノ『イズモ』

 

イズモ「はい」

 

ユノ『QEXが』

 

 映像。

 

 巨大個体。

 

 小型個体。

 

 全て。

 

 以前のように。

 

 三次元上には存在しない場所を。

 

 見ている。

 

 ただし。

 

 今回は。

 

 鳴かなかった。

 

 逃げなかった。

 

 ただ。

 

 静かに。

 

 見ている。

 

     *

 

 三時間後。

 

技術士官「元素消失率、低下」

 

カー博士「また?」

 

「はい」

 

イズモ「どれくらい?」

 

「昨日比十二パーセント」

 

ユノ『ネガアース側流入も同率で減少』

 

イズモ「同期波形は?」

 

「弱くなっています」

 

 イズモは。

 

 椅子へ深く座る。

 

カー博士「返答でしょうか」

 

イズモ「分かりません」

 

 一拍。

 

イズモ「でも」

 

 こちらが。

 

 問いかけた。

 

 向こうが。

 

 世界への干渉を。

 

 弱めた。

 

イズモ「少なくとも」

 

 一拍。

 

イズモ「無関係とは思いにくい」

 

     *

 

 その日の夜。

 

 新しい信号が。

 

 観測された。

 

 三回。

 

 等間隔。

 

 四回目。

 

 長い。

 

 以前と同じ。

 

 そして。

 

 五回目。

 

 今度は。

 

 短かった。

 

技術士官「パターン変化」

 

イズモ「記録」

 

ユノ『意味は?』

 

イズモ「直接見ない」

 

ユノ『了解』

 

 機械解析。

 

 言語化。

 

 禁止。

 

 まず。

 

 構造だけを見る。

 

カー博士「返信形式を模倣している?」

 

イズモ「多分」

 

 こちらが。

 

 三方式で。

 

 一つの意味を送った。

 

 向こうも。

 

 以前のパターンを。

 

 少しだけ変えた。

 

イズモ「学習してる」

 

     *

 

綾音『こっちの通信方式を?』

 

イズモ「それだけじゃないと思います」

 

 活動記録。

 

 QEXを撃たなかった。

 

 回収を止めた。

 

 元素流入を観測した。

 

 地球だけでなく。

 

 ネガアースも守ろうとした。

 

 未知を。

 

 敵と決めなかった。

 

イズモ「行動も見てる」

 

綾音『……なら』

 

 少し。

 

 間。

 

綾音『向こうにとって』

 

 一拍。

 

綾音『私たちは通信してたつもりがなくても』

 

イズモ「ずっと答えてた」

 

     *

 

 ユノは。

 

 その言葉を。

 

 静かに聞いていた。

 

ユノ「救済の方法を」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「私たちから学んでいる?」

 

イズモ「可能性はあります」

 

カー博士「文明が?」

 

イズモ「文明かどうかも分からない」

 

 システム。

 

 生命。

 

 現象。

 

 意思。

 

 その境界。

 

 何も分からない。

 

 ただ。

 

 変化する。

 

 観測し。

 

 結果に合わせて。

 

 行動を変える。

 

 それだけは。

 

 明確だった。

 

     *

 

ユノ「イズモ」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「もし」

 

 一拍。

 

ユノ「すべてを救える力があったとして」

 

 地球。

 

 ネガアース。

 

 別世界。

 

 失われる可能性。

 

ユノ「使わないことは」

 

 少し。

 

 考える。

 

ユノ「見捨てることになりますか?」

 

 イズモは。

 

 すぐには答えなかった。

 

イズモ「何もしないのと」

 

 一拍。

 

イズモ「任せるのは違うと思います」

 

ユノ「任せる」

 

イズモ「助けを求められた時に」

 

 ユノを見る。

 

イズモ「手を出せる距離にはいる」

 

 でも。

 

イズモ「勝手に人生を決めない」

 

     *

 

 その瞬間。

 

 観測装置が。

 

 小さく鳴った。

 

技術士官「信号」

 

 全員が。

 

 画面を見る。

 

 短い。

 

 一度。

 

 それだけ。

 

カー博士「偶然?」

 

イズモ「……さあ」

 

 だが。

 

 元素消失率は。

 

 さらに。

 

 下がっていた。

 

 十一次元側は。

 

 世界を救うために。

 

 世界へ触れていた。

 

 そして今。

 

 初めて。

 

 触れないという選択を。

 

 学び始めていた。

 

 観測者は。

 

 ただ見るだけではない。

 

 見たものによって。

 

 変わることもある。

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