ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
元素消失率。
翌日。
さらに低下。
二日後。
測定限界付近。
三日後。
技術士官「……ゼロ」
カー博士「ゼロ?」
「少なくとも」
一拍。
「観測可能な元素消失はありません」
研究室が。
静まり返る。
誰も。
すぐには。
喜ばなかった。
イズモ「ネガアース側」
ユノ『新規流入なし』
イズモ「QEXは?」
ユノ『正常』
大型個体。
小型個体。
群れ。
捕食。
移動。
以前のような。
異常な元素蓄積も。
ない。
レン『……終わった?』
イズモ「分かりません」
キアラ『そこで分からないって言う?』
イズモ「止まったことは分かる」
一拍。
イズモ「なぜ止めたかは」
十一次元モデルを見る。
イズモ「本人に聞いてない」
*
そして。
最後の信号が。
届いた。
これまでより。
遥かに弱い。
だが。
明確。
機械解析。
直接映像なし。
複数人。
独立解釈。
カー博士「私は」
一拍。
カー博士「『維持』」
ユノ「私は」
少し。
目を閉じる。
ユノ「『別々』」
綾音『私は』
通信越し。
綾音『「選択」』
全員が。
イズモを見る。
イズモ「……」
カー博士「あなたは?」
イズモ「『任せる』」
四つ。
違う言葉。
だが。
意味は。
驚くほど。
近かった。
*
十一次元側。
それは。
地球を。
ネガアースを。
QEXを。
人を。
人工生命を。
おそらく。
すべて。
一つの大きな系として。
見ていた。
失われれば。
別の可能性から補う。
死ぬなら。
生きる可能性へ繋ぐ。
不足すれば。
別の世界から移す。
それが。
救済だった。
少なくとも。
向こうにとっては。
ユノ「でも」
ユノは。
静かに言う。
ユノ「私たちは」
一拍。
ユノ「一つではない」
イズモ「はい」
ユノ「地球も」
ユノ「ネガアースも」
ユノ「QEXも」
ユノ「私も」
一つずつ。
別。
だからこそ。
痛みも。
選択も。
それぞれのもの。
*
綾音『つまり』
イズモ「はい」
綾音『救うのをやめた?』
イズモは。
少し考える。
イズモ「違うと思います」
綾音『じゃあ?』
イズモ「勝手に」
一拍。
イズモ「救うのをやめた」
通信の向こうで。
綾音が。
僅かに笑った。
綾音『それなら』
一拍。
綾音『少しは話が通じたみたいね』
*
QEX回収活動。
全面見直し。
今後。
必要な場合のみ。
生態調査と。
地球側への影響評価を。
両立させる。
ネガアースは。
ただの資源回収地点ではなく。
一つの世界として。
扱われる。
そして。
ユノは。
遠くを歩くQEXを。
静かに見ていた。
レン「追わなくていいの」
ユノ「はい」
キアラ「変な感じ」
ユノ「私もです」
少し。
間。
ユノ「ですが」
QEXは。
こちらを見ない。
ただ。
自分の世界を。
歩いていく。
ユノ「悪くありません」
*
ピースギア。
最終報告。
《元素消失現象:停止》
《ネガアース高濃度元素流入:停止》
《十一次元中間領域:存続》
《意思存在判定:保留》
《敵対判定:なし》
そして。
最後。
イズモ「備考」
少し考え。
入力する。
《観測対象は、観測者を観測している可能性あり》
送信。
端末を閉じる。
*
その瞬間。
誰も操作していない。
観測装置の。
最下段に。
一行だけ。
新しい記録が追加された。
発信元。
不明。
形式。
不明。
翻訳。
不能。
ただ。
ピースギアの解析系は。
それを。
一つの意味として。
表示した。
《OBSERVATION CONTINUES》
――観測は、続く。