ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
元素消失停止から。
三週間。
地球。
失われた元素のすべてが。
戻ったわけではない。
不足した資源。
壊れた設備。
変化した環境。
それらは。
何事もなかったようには。
ならなかった。
カー博士「停止したなら、元に戻してくれてもよさそうなものですが」
イズモ「それやったら」
一拍。
イズモ「何も学んでないことになるので」
カー博士「……確かに」
十一次元側から。
元素が降ってくることはない。
過去を。
書き換えることもない。
地球は。
残った問題を。
地球自身で。
直し始めていた。
*
ネガアース。
以前。
QEXを見つければ。
追跡が始まった場所。
今は。
レンたちが。
一頭の大型QEXを。
遠くから観察していた。
レン「元素濃度正常」
キアラ「活動も正常」
ユノ「記録しました」
レン「……終わり?」
ユノ「はい」
キアラ「ほんとに見るだけなのね」
QEXは。
地面を掘り。
鉱物を口へ運ぶ。
そして。
ゆっくり。
森の奥へ消える。
レン「前だったら追いかけてた」
ユノ「はい」
レン「なんか」
一拍。
レン「すごいことしてない感じするな」
ユノ「それでいいのでは?」
レン「そうかな」
ユノ「何も起きなかった」
ユノは。
QEXが消えた方向を見る。
ユノ「それは」
一拍。
ユノ「成功です」
*
ピースギアの現地拠点も。
縮小が始まっていた。
一個中隊。
から。
観測班。
そして。
最終的には。
定期調査だけになる。
綾音『帰還予定、明後日』
イズモ「了解」
綾音『本当に何も持って帰ってないでしょうね』
イズモ「石くらいなら」
綾音『検疫通して』
イズモ「通します」
綾音『QEXとか連れてこないでよ』
イズモ「無理ですよ」
綾音『あなたなら拾いかねない』
イズモ「犬猫じゃないんだから」
*
通信終了後。
ユノ「イズモ」
イズモ「はい」
ユノ「一つ」
イズモ「何でしょう」
ユノ「聞いても?」
イズモ「どうぞ」
ユノは。
少し考えてから。
ユノ「元素消失は止まりました」
イズモ「はい」
ユノ「QEXも安定しました」
イズモ「はい」
ユノ「それでも」
一拍。
ユノ「痛かったという記憶は残ります」
イズモは。
黙って聞く。
ユノ「それは」
一拍。
ユノ「失敗でしょうか」
イズモ「いや」
即答だった。
ユノ「なぜ?」
イズモ「痛くなかったことにする方が」
一拍。
イズモ「多分、怖い」
失ったもの。
選べなかったもの。
間違えたこと。
全部。
消せるなら。
綺麗にはなる。
イズモ「でも」
遠く。
ネガアースの空を見る。
イズモ「痛かったから」
一拍。
イズモ「次は同じことをしないって決められる」
ユノは。
しばらく。
その言葉を。
処理していた。
ユノ「痛みは」
イズモ「うん」
ユノ「消さなくていい」
イズモ「消したい時もあるけどね」
ユノが。
ほんの少し。
笑ったように見えた。
*
帰還前日。
十一次元観測装置。
異常なし。
同期信号。
なし。
元素移動。
なし。
最後に。
イズモが。
端末を閉じようとした時。
表示が。
一瞬だけ。
乱れた。
イズモ「……?」
文字。
ではない。
映像でもない。
ただ。
意味だけ。
残る。
《別々》
そして。
もう一つ。
《続ける》
イズモは。
しばらく。
画面を見る。
ユノ「何か?」
イズモ「いや」
一拍。
イズモ「観測されてるなあと思って」
ユノ「今も?」
イズモ「多分」
ユノ「では」
ユノも。
空を見る。
ユノ「私たちも観測を続けますか?」
イズモ「もちろん」
二つの世界。
その間。
見えない場所。
誰かが。
誰かを見る。
見るだけで。
変えてしまうこともある。
だから。
観測する側も。
観測される側も。
選び続ける。
世界は。
救われて。
終わるのではない。
そこから。
また。
続いていく。