ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅17 それでも残るもの

 

 

 元素消失停止から。

 

 三週間。

 

 地球。

 

 失われた元素のすべてが。

 

 戻ったわけではない。

 

 不足した資源。

 

 壊れた設備。

 

 変化した環境。

 

 それらは。

 

 何事もなかったようには。

 

 ならなかった。

 

カー博士「停止したなら、元に戻してくれてもよさそうなものですが」

 

イズモ「それやったら」

 

 一拍。

 

イズモ「何も学んでないことになるので」

 

カー博士「……確かに」

 

 十一次元側から。

 

 元素が降ってくることはない。

 

 過去を。

 

 書き換えることもない。

 

 地球は。

 

 残った問題を。

 

 地球自身で。

 

 直し始めていた。

 

     *

 

 ネガアース。

 

 以前。

 

 QEXを見つければ。

 

 追跡が始まった場所。

 

 今は。

 

 レンたちが。

 

 一頭の大型QEXを。

 

 遠くから観察していた。

 

レン「元素濃度正常」

 

キアラ「活動も正常」

 

ユノ「記録しました」

 

レン「……終わり?」

 

ユノ「はい」

 

キアラ「ほんとに見るだけなのね」

 

 QEXは。

 

 地面を掘り。

 

 鉱物を口へ運ぶ。

 

 そして。

 

 ゆっくり。

 

 森の奥へ消える。

 

レン「前だったら追いかけてた」

 

ユノ「はい」

 

レン「なんか」

 

 一拍。

 

レン「すごいことしてない感じするな」

 

ユノ「それでいいのでは?」

 

レン「そうかな」

 

ユノ「何も起きなかった」

 

 ユノは。

 

 QEXが消えた方向を見る。

 

ユノ「それは」

 

 一拍。

 

ユノ「成功です」

 

     *

 

 ピースギアの現地拠点も。

 

 縮小が始まっていた。

 

 一個中隊。

 

 から。

 

 観測班。

 

 そして。

 

 最終的には。

 

 定期調査だけになる。

 

綾音『帰還予定、明後日』

 

イズモ「了解」

 

綾音『本当に何も持って帰ってないでしょうね』

 

イズモ「石くらいなら」

 

綾音『検疫通して』

 

イズモ「通します」

 

綾音『QEXとか連れてこないでよ』

 

イズモ「無理ですよ」

 

綾音『あなたなら拾いかねない』

 

イズモ「犬猫じゃないんだから」

 

     *

 

 通信終了後。

 

ユノ「イズモ」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「一つ」

 

イズモ「何でしょう」

 

ユノ「聞いても?」

 

イズモ「どうぞ」

 

 ユノは。

 

 少し考えてから。

 

ユノ「元素消失は止まりました」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「QEXも安定しました」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「それでも」

 

 一拍。

 

ユノ「痛かったという記憶は残ります」

 

 イズモは。

 

 黙って聞く。

 

ユノ「それは」

 

 一拍。

 

ユノ「失敗でしょうか」

 

イズモ「いや」

 

 即答だった。

 

ユノ「なぜ?」

 

イズモ「痛くなかったことにする方が」

 

 一拍。

 

イズモ「多分、怖い」

 

 失ったもの。

 

 選べなかったもの。

 

 間違えたこと。

 

 全部。

 

 消せるなら。

 

 綺麗にはなる。

 

イズモ「でも」

 

 遠く。

 

 ネガアースの空を見る。

 

イズモ「痛かったから」

 

 一拍。

 

イズモ「次は同じことをしないって決められる」

 

 ユノは。

 

 しばらく。

 

 その言葉を。

 

 処理していた。

 

ユノ「痛みは」

 

イズモ「うん」

 

ユノ「消さなくていい」

 

イズモ「消したい時もあるけどね」

 

 ユノが。

 

 ほんの少し。

 

 笑ったように見えた。

 

     *

 

 帰還前日。

 

 十一次元観測装置。

 

 異常なし。

 

 同期信号。

 

 なし。

 

 元素移動。

 

 なし。

 

 最後に。

 

 イズモが。

 

 端末を閉じようとした時。

 

 表示が。

 

 一瞬だけ。

 

 乱れた。

 

イズモ「……?」

 

 文字。

 

 ではない。

 

 映像でもない。

 

 ただ。

 

 意味だけ。

 

 残る。

 

 《別々》

 

 そして。

 

 もう一つ。

 

 《続ける》

 

 イズモは。

 

 しばらく。

 

 画面を見る。

 

ユノ「何か?」

 

イズモ「いや」

 

 一拍。

 

イズモ「観測されてるなあと思って」

 

ユノ「今も?」

 

イズモ「多分」

 

ユノ「では」

 

 ユノも。

 

 空を見る。

 

ユノ「私たちも観測を続けますか?」

 

イズモ「もちろん」

 

 二つの世界。

 

 その間。

 

 見えない場所。

 

 誰かが。

 

 誰かを見る。

 

 見るだけで。

 

 変えてしまうこともある。

 

 だから。

 

 観測する側も。

 

 観測される側も。

 

 選び続ける。

 

 世界は。

 

 救われて。

 

 終わるのではない。

 

 そこから。

 

 また。

 

 続いていく。

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