ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
帰還当日。
ネガアース側拠点。
ほとんどの機材は。
すでに撤収済みだった。
残っているのは。
観測端末。
簡易通信機。
そして。
一基のポータル。
レン「本当に帰るんだな」
イズモ「任務終わったので」
キアラ「なんかあっさりしてる」
イズモ「長居すると」
一拍。
イズモ「こっちの生活に混ざりすぎる」
それは。
ピースギアが。
異世界で活動する時に。
いつも気にすることだった。
助ける。
観測する。
必要なら。
介入する。
でも。
居場所まで。
奪わない。
*
遠く。
QEXの群れ。
以前なら。
元素反応を検知した瞬間。
警報が鳴っていた。
今は。
誰も。
武器へ手を伸ばさない。
レン「最初に会った時」
イズモ「はい」
レン「撃とうとしなかったよな」
イズモ「襲われてなかったので」
キアラ「普通は警戒するでしょ」
イズモ「警戒はしてました」
キアラ「全然そう見えなかった」
イズモ「見せる必要ないので」
レン「……変な人」
イズモ「よく言われます」
*
撤収確認。
最後の機材が。
ポータルへ送られる。
ユノは。
少し離れた場所で。
空を見ていた。
イズモ「ユノ」
ユノ「はい」
イズモ「何かあります?」
ユノ「いえ」
数秒。
ユノ「ただ」
一拍。
ユノ「少し」
言葉を探す。
ユノ「惜しい」
イズモ「何が?」
ユノ「分かりません」
イズモは。
少し笑う。
イズモ「それでいいと思います」
ユノ「分からないのに?」
イズモ「後から分かることもある」
ユノ「分からないままの場合は?」
イズモ「それもある」
ユノ「不便ですね」
イズモ「感情ってそんなもんです」
*
ユノは。
イズモを見る。
ユノ「また会えますか?」
イズモ「可能性はあります」
ユノ「可能性」
イズモ「今回それで散々な目に遭ったけど」
ユノが。
僅かに笑う。
ユノ「では」
一拍。
ユノ「未来を見ますか?」
イズモ「見ません」
即答。
ユノ「なぜ?」
イズモ「未来を見たからそこへ向かうんじゃない」
一拍。
イズモ「同じ失敗をしないために見るんです」
そして。
ポータルを見る。
イズモ「会えるかどうかは」
一拍。
イズモ「その時決めればいい」
*
綾音『イズモ』
イズモ「はい」
綾音『そろそろ帰ってきて』
イズモ「今行きます」
綾音『本当に?』
イズモ「本当に」
綾音『寄り道禁止』
イズモ「十一次元とか?」
綾音『特にそこ』
イズモ「しませんよ」
綾音『……よろしい』
通信が切れる。
キアラ「信用されてないの?」
イズモ「されてます」
レン「今ので?」
イズモ「多分」
*
イズモが。
ポータル前へ。
立つ。
レン。
キアラ。
ユノ。
そして。
遠くのQEX。
一つの世界。
もう。
元素回収地点ではない。
誰かが。
生きている場所。
イズモ「じゃあ」
レン「またな」
キアラ「今度来る時は変な事件持ってこないでよ」
イズモ「私が持ってきたわけじゃない」
最後に。
ユノ。
ユノ「イズモ」
イズモ「はい」
少し。
考えて。
ユノ「さようなら」
イズモは。
首を横に振った。
イズモ「それは」
一拍。
イズモ「まだ早いかな」
ユノ「では」
ユノも。
少し考える。
そして。
ユノ「また巡り合うときまで」
イズモが。
一瞬。
目を見開く。
それから。
静かに。
頷いた。
イズモ「また巡り合うときまで」
*
光。
転移。
ネガアースが。
消える。
次の瞬間。
ピースギア帰還区画。
綾音「おかえり」
イズモ「ただいま」
綾音「全員?」
イズモ「全員」
綾音が。
一度。
人数表示を見る。
欠員。
ゼロ。
そして。
ようやく。
肩の力を抜いた。
綾音「今回は」
一拍。
綾音「ちゃんと帰ってきたね」
イズモ「今回はって」
綾音「今回は」
イズモは。
何も言わなかった。
*
その頃。
ネガアース。
撤去された観測拠点跡。
誰もいない場所で。
一瞬だけ。
空間が。
揺れる。
信号。
一回。
短い。
そして。
消える。
誰にも。
観測されなかった。
ただ。
記録だけが。
遠く。
十一次元のどこかに。
残っていた。
《SEPARATE》
《ALIVE》
《CONTINUE》
別々に。
生きて。
続ける。