ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
巨大な生物は、こちらへ向かってこなかった。
岩のような外殻。
半透明の器官。
内部には複数の元素反応が集中している。
技術士官「鉄、カルシウム、炭素……まだあります」
イズモ「生物なんですよね?」
技術士官「生体反応あり。ですが元素濃度が異常です」
生物は地面へ頭部を近づける。
何かを探している。
イズモ「武器下げて」
「しかし――」
イズモ「襲われてからでいい」
直後。
別方向から声が飛んだ。
レン「そこから離れろ!」
イズモたちが振り向く。
三人。
少年。
少女。
そして、もう一人。
青を基調とした少女。
少年の腕には、見慣れない装置が装着されていた。
キアラ「QEXの近くで何してるの!?」
イズモ「QEX?」
レン「説明は後! そいつは危険なんだ!」
少年――レンが装置を構える。
イズモ「待ってください」
レン「何!?」
イズモ「今、何をするつもりです?」
キアラ「何って、元素を回収するのよ!」
元素。
イズモはもう一度、生物を見る。
確かに大量の元素を含んでいる。
だが。
イズモ「回収すると、これはどうなるんです?」
レン「QEXから元素を取り出すんだ」
イズモ「生物は?」
レン「……」
イズモ「死ぬ?」
キアラ「ちょっと、今そんな話してる場合?」
QEXが動く。
全員が身構えた。
だが。
こちらには来ない。
地面を掘った。
前脚で岩を砕き。
露出した鉱石を口へ運ぶ。
イズモ「……食べてる」
レン「え?」
技術士官が測定器を向ける。
技術士官「QEX内部、鉄濃度上昇」
イズモ「今の鉱石から?」
技術士官「その可能性が高いです」
キアラ「だから何?」
イズモ「いや」
イズモは少し考えた。
イズモ「元素を持っている生物じゃなくて」
QEXを見る。
イズモ「元素を使って生きてる生物なのかな、と」
*
結局。
そのQEXは攻撃してこなかった。
岩をいくつか食べた後。
森の奥へ消えた。
レン「……逃げた」
イズモ「追います?」
レン「本当なら」
レンはイズモたちを見る。
レン「というか、あなたたち誰なんだ?」
イズモ「それ、こちらも聞こうと思ってました」
キアラ「私たちはエレメントハンター」
イズモ「元素の?」
レン「地球から消えた元素を取り戻してる」
イズモ「地球?」
イズモの表情が変わる。
イズモ「ここは地球じゃない?」
キアラ「ネガアースよ」
技術班が一斉に記録を始める。
イズモ「なるほど」
レン「なるほどで終わるの?」
イズモ「地球型惑星だと思ってたので、一個疑問が減りました」
キアラ「増えてると思うけど」
イズモ「それはそう」
*
青い少女が一歩前へ出た。
先ほどから。
ほとんど話していない。
その代わり。
ずっとイズモを観察している。
ユノ「質問があります」
イズモ「どうぞ」
ユノ「あなたたちの所属」
イズモ「超銀河平和維持機構ピースギア」
ユノ「該当データなし」
イズモ「こちらもエレメントハンターという組織は知りません」
ユノ「使用している転移技術は?」
イズモ「ポータル」
ユノの目が僅かに動く。
ユノ「詳細を」
イズモ「初対面なので嫌です」
レン「そこは普通に警戒するんだ……」
イズモ「技術情報なので」
ユノはしばらく黙った。
ユノ「合理的です」
イズモは改めてユノを見る。
皮膚。
関節。
視線制御。
呼吸運動に見える微細な動作。
かなり人間に近い。
だが。
人工物特有の制御癖がある。
ユノ「もう一つ」
イズモ「はい」
ユノ「私はアンドロイドです」
イズモ「はい」
沈黙。
ユノ「……それだけですか?」
イズモ「何がです?」
ユノ「普通は、もう少し反応があります」
イズモ「ああ」
イズモは納得したように頷いた。
イズモ「私のところでは珍しくないので」
ユノ「……」
キアラ「ユノが固まった」
レン「珍しいな」
ユノ「停止していません」
数秒。
今度はユノがイズモを見る。
ユノ「では」
イズモ「はい」
ユノ「あなたは人間ですか?」
イズモは少し考えた。
イズモ「分類によります」
ユノ「……」
キアラ「今度は何その答え」
イズモ「正確に答えただけです」
レン「この人たち絶対面倒だ……」
その背後。
森の奥から。
先ほどとは別のQEXの声が響いた。
そして。
イズモの測定器に。
一瞬だけ。
不可解な数値が表示された。
現在時刻。
同期エラー。
誤差。
――三百二十一年。
イズモ「……は?」
ネガアース。
最初の異常は。
元素ではなかった。