ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
翌日。
ネガアース側の観測拠点に、新しい転移反応が出た。
技術士官「接近反応。こちらのポータルではありません」
イズモ「現地側?」
ユノ「コロニー側の転送反応です」
レン「エレメントハンターが来る」
数秒後。
空間が歪む。
複数の人影が現れた。
装備。
元素回収機器。
目的は明確だった。
「QEX反応を確認。回収を開始する」
イズモ「少し待ってください」
視線が集まる。
「あなたは?」
イズモ「ピースギア、最上イズモです」
「こちらは地球の元素回収任務中です。妨害しないでいただきたい」
イズモ「妨害するつもりはありません」
イズモは一歩下がった。
武装解除も要求しない。
進路も塞がない。
イズモ「ただ、回収を始める前に見てほしいものがあります」
*
表示されたのは。
昨日までの調査結果。
QEXの摂食行動。
数百年前の地層から検出されたQEX由来物質。
複数回存在する高元素濃度層。
そして。
地球とネガアースの時間同期誤差。
「つまり何が言いたい?」
イズモ「QEXが、あなたたちの元素を盗んだ存在とは限らない」
「だが体内に地球由来元素がある」
イズモ「あります」
「なら回収対象だ」
イズモは少し黙った。
イズモ「その呼び方、一旦やめません?」
「何?」
イズモ「回収対象」
QEXの映像を拡大する。
鉱石を食べる。
移動する。
小型個体が大型個体の後ろをついて歩いている。
イズモ「少なくとも生きてます」
「危険生物だ」
イズモ「危険と敵は別です」
レンが。
昨日と同じ言葉だ、と気づいたようにイズモを見る。
イズモ「ここで何世代も生きてるなら」
一拍。
イズモ「こちらから見れば、現地生物です」
*
通信越しに。
綾音も会話を聞いていた。
綾音『記録分類変更』
イズモ「もう?」
綾音『言葉って扱いを変えるから』
端末の表示。
《QEX/元素回収対象》
その文字が消える。
新しい分類。
《QEX/ネガアース現地生物》
綾音『少なくとも調査中はこれで』
「しかし地球では元素消失が続いている!」
綾音『知ってます』
「なら!」
綾音『だからこそ』
声は静かだった。
綾音『原因が分からない状態で、現地生物を片端から分解する許可は出せません』
短い沈黙。
イズモ「ピースギア側から強制停止はしません」
綾音『ただしデータを見て判断してほしい』
*
ユノが。
回収済み元素のサンプルを持ってきた。
ユノ「一つ確認したいことがあります」
イズモ「何?」
ユノ「この元素」
分析結果が表示される。
ユノ「地球由来であることは間違いありません」
イズモ「はい」
ユノ「ですが」
環境付着物。
微量同位体。
化学的変質。
ユノ「現在の地球環境と一致しない痕跡があります」
カー博士『どういう意味です?』
ユノ「地球の元素ですが」
少し間。
ユノ「私たちが知っている現在の地球を通過した痕跡ではありません」
イズモが画面を見る。
イズモ「年代は?」
技術士官「推定不能。ただし」
解析値が更新される。
「現在環境よりも、未来予測モデルの方が近いです」
誰も喋らない。
レン「……未来?」
キアラ「待って」
キアラが顔をしかめる。
キアラ「じゃあ私たちが回収してるのって」
ユノが答える。
ユノ「現在の地球から失われた元素ではない可能性があります」
イズモ「あるいは」
地球。
ネガアース。
時間軸。
三本の線が表示される。
イズモ「未来の地球から流れた元素が」
線が。
ネガアースの過去へ落ちる。
イズモ「こっちでQEXに取り込まれて」
そこから。
回収。
イズモ「現在の地球へ戻されてる」
レンの表情が固まった。
レン「それって……」
イズモ「まだ仮説です」
即座に付け加える。
イズモ「でも」
回収された元素量。
地球の元素消失量。
双方のグラフを見る。
イズモ「もしそうなら」
イズモは。
静かに言った。
イズモ「私たちは、失ったものを取り戻してるんじゃない」
一拍。
イズモ「まだ失ってないものを、先に持ち帰ってる可能性がある」
ネガアースの風が。
観測拠点の外を抜けていく。
元素回収。
それは。
これまで。
地球を救うための行為だった。
だが。
初めて。
その行為そのものに。
疑問符が付いた。