ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅4 回収対象

 

 

 翌日。

 

 ネガアース側の観測拠点に、新しい転移反応が出た。

 

技術士官「接近反応。こちらのポータルではありません」

 

イズモ「現地側?」

 

ユノ「コロニー側の転送反応です」

 

レン「エレメントハンターが来る」

 

 数秒後。

 

 空間が歪む。

 

 複数の人影が現れた。

 

 装備。

 

 元素回収機器。

 

 目的は明確だった。

 

「QEX反応を確認。回収を開始する」

 

イズモ「少し待ってください」

 

 視線が集まる。

 

「あなたは?」

 

イズモ「ピースギア、最上イズモです」

 

「こちらは地球の元素回収任務中です。妨害しないでいただきたい」

 

イズモ「妨害するつもりはありません」

 

 イズモは一歩下がった。

 

 武装解除も要求しない。

 

 進路も塞がない。

 

イズモ「ただ、回収を始める前に見てほしいものがあります」

 

     *

 

 表示されたのは。

 

 昨日までの調査結果。

 

 QEXの摂食行動。

 

 数百年前の地層から検出されたQEX由来物質。

 

 複数回存在する高元素濃度層。

 

 そして。

 

 地球とネガアースの時間同期誤差。

 

「つまり何が言いたい?」

 

イズモ「QEXが、あなたたちの元素を盗んだ存在とは限らない」

 

「だが体内に地球由来元素がある」

 

イズモ「あります」

 

「なら回収対象だ」

 

 イズモは少し黙った。

 

イズモ「その呼び方、一旦やめません?」

 

「何?」

 

イズモ「回収対象」

 

 QEXの映像を拡大する。

 

 鉱石を食べる。

 

 移動する。

 

 小型個体が大型個体の後ろをついて歩いている。

 

イズモ「少なくとも生きてます」

 

「危険生物だ」

 

イズモ「危険と敵は別です」

 

 レンが。

 

 昨日と同じ言葉だ、と気づいたようにイズモを見る。

 

イズモ「ここで何世代も生きてるなら」

 

 一拍。

 

イズモ「こちらから見れば、現地生物です」

 

     *

 

 通信越しに。

 

 綾音も会話を聞いていた。

 

綾音『記録分類変更』

 

イズモ「もう?」

 

綾音『言葉って扱いを変えるから』

 

 端末の表示。

 

 《QEX/元素回収対象》

 

 その文字が消える。

 

 新しい分類。

 

 《QEX/ネガアース現地生物》

 

綾音『少なくとも調査中はこれで』

 

「しかし地球では元素消失が続いている!」

 

綾音『知ってます』

 

「なら!」

 

綾音『だからこそ』

 

 声は静かだった。

 

綾音『原因が分からない状態で、現地生物を片端から分解する許可は出せません』

 

 短い沈黙。

 

イズモ「ピースギア側から強制停止はしません」

 

綾音『ただしデータを見て判断してほしい』

 

     *

 

 ユノが。

 

 回収済み元素のサンプルを持ってきた。

 

ユノ「一つ確認したいことがあります」

 

イズモ「何?」

 

ユノ「この元素」

 

 分析結果が表示される。

 

ユノ「地球由来であることは間違いありません」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「ですが」

 

 環境付着物。

 

 微量同位体。

 

 化学的変質。

 

ユノ「現在の地球環境と一致しない痕跡があります」

 

カー博士『どういう意味です?』

 

ユノ「地球の元素ですが」

 

 少し間。

 

ユノ「私たちが知っている現在の地球を通過した痕跡ではありません」

 

 イズモが画面を見る。

 

イズモ「年代は?」

 

技術士官「推定不能。ただし」

 

 解析値が更新される。

 

「現在環境よりも、未来予測モデルの方が近いです」

 

 誰も喋らない。

 

レン「……未来?」

 

キアラ「待って」

 

 キアラが顔をしかめる。

 

キアラ「じゃあ私たちが回収してるのって」

 

 ユノが答える。

 

ユノ「現在の地球から失われた元素ではない可能性があります」

 

イズモ「あるいは」

 

 地球。

 

 ネガアース。

 

 時間軸。

 

 三本の線が表示される。

 

イズモ「未来の地球から流れた元素が」

 

 線が。

 

 ネガアースの過去へ落ちる。

 

イズモ「こっちでQEXに取り込まれて」

 

 そこから。

 

 回収。

 

イズモ「現在の地球へ戻されてる」

 

 レンの表情が固まった。

 

レン「それって……」

 

イズモ「まだ仮説です」

 

 即座に付け加える。

 

イズモ「でも」

 

 回収された元素量。

 

 地球の元素消失量。

 

 双方のグラフを見る。

 

イズモ「もしそうなら」

 

 イズモは。

 

 静かに言った。

 

イズモ「私たちは、失ったものを取り戻してるんじゃない」

 

 一拍。

 

イズモ「まだ失ってないものを、先に持ち帰ってる可能性がある」

 

 ネガアースの風が。

 

 観測拠点の外を抜けていく。

 

 元素回収。

 

 それは。

 

 これまで。

 

 地球を救うための行為だった。

 

 だが。

 

 初めて。

 

 その行為そのものに。

 

 疑問符が付いた。

 

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