ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

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∅5 未回収期間

 

 

 元素を回収しない。

 

 その提案に、最初に反応したのはレンだった。

 

レン「……本気?」

 

イズモ「一週間だけ」

 

キアラ「一週間“だけ”って言うけど、地球では今も元素が消えてるのよ?」

 

イズモ「だから期間を区切ります」

 

 観測拠点中央。

 

 地球側。

 

 ネガアース側。

 

 ピースギア。

 

 三つの通信窓が並ぶ。

 

カー博士『私は反対です』

 

イズモ「理由は?」

 

カー博士『現在の回収活動は、地球の元素不足を補う唯一の手段です』

 

イズモ「唯一だからこそです」

 

カー博士『何?』

 

イズモ「今まで一度も止めてない」

 

 イズモは過去の回収記録を表示した。

 

 QEX出現。

 

 回収。

 

 元素返還。

 

 その繰り返し。

 

イズモ「元素消失量と回収量には相関がある」

 

カー博士『当然でしょう。元素が多く消えれば回収対象も増える』

 

イズモ「逆方向の影響がない証明は?」

 

 沈黙。

 

イズモ「回収したことで、何かが追加流出を起こしてる可能性」

 

カー博士『推測です』

 

イズモ「はい」

 

 イズモは頷く。

 

イズモ「だから実験します」

 

     *

 

 条件は厳しく設定された。

 

イズモ「地球側」

 

 画面に基準値が並ぶ。

 

イズモ「元素消失速度が一定値を超えた場合、中止」

 

ユノ「生命維持に重要な元素が危険域へ近づいた場合も即時中止」

 

カー博士『二次災害発生時も追加してください』

 

イズモ「了解」

 

 次。

 

 ネガアース。

 

綾音『そっちも同じように』

 

イズモ「はい」

 

綾音『QEXの大量死』

 

ユノ「監視項目へ追加」

 

綾音『異常な大移動。急激な元素欠乏。食物網の崩壊』

 

イズモ「全部入れます」

 

レン「食物網まで見るの?」

 

イズモ「QEXが生態系の一部なら必要です」

 

キアラ「まだそこまで確定してないでしょ」

 

イズモ「だから見るんです」

 

     *

 

 問題は。

 

 信用だった。

 

カー博士『こちらの測定値はリアルタイムで共有します』

 

イズモ「測定方法も」

 

カー博士『方法まで?』

 

イズモ「はい」

 

 ピースギア側の端末からデータが送られる。

 

イズモ「こっちも観測機器の仕様、補正方法、解析コードを公開します」

 

レン「そこまでやる必要ある?」

 

イズモ「数字だけ渡されても」

 

 一拍。

 

イズモ「相手を信用するしかない」

 

ユノ「検証可能な状態なら」

 

イズモ「信用しなくても確認できる」

 

カー博士『……徹底していますね』

 

イズモ「未知現象なので」

 

     *

 

 未回収期間。

 

 一日目。

 

 QEXは通常通り活動。

 

 地球側。

 

 元素消失量、変化なし。

 

 二日目。

 

 変化なし。

 

 三日目。

 

キアラ「暇ね」

 

レン「QEXを見つけても追いかけないからな」

 

 丘の向こう。

 

 小型QEXが群れで移動していた。

 

 エレメントハンターたちは。

 

 それをただ見る。

 

キアラ「なんか変な感じ」

 

イズモ「何が?」

 

キアラ「今までなら、見つけた瞬間に回収対象だったから」

 

 小型個体の一匹が立ち止まる。

 

 地面を掘る。

 

 鉱物を食べる。

 

 別の個体が同じ場所へ寄ってくる。

 

レン「……普通に暮らしてるだけに見えるな」

 

イズモ「今はそう見えます」

 

レン「今は?」

 

イズモ「一日見ただけで決めない」

 

     *

 

 四日目。

 

ユノ「イズモ」

 

イズモ「はい」

 

ユノ「QEXの攻撃行動発生率が低下しています」

 

イズモ「どれくらい?」

 

ユノ「観測範囲内で約三十パーセント」

 

キアラ「回収しないだけで?」

 

イズモ「偶然の可能性もある」

 

 五日目。

 

 カー博士から通信。

 

カー博士『……少し見てもらえますか』

 

イズモ「何かありました?」

 

 グラフ。

 

 地球側元素消失量。

 

 僅かに。

 

 しかし明確に。

 

 下がり始めている。

 

カー博士『計測異常を疑いました』

 

イズモ「結果は?」

 

カー博士『正常です』

 

 ユノが別のグラフを重ねる。

 

ユノ「ネガアース側の高濃度元素領域も減少傾向」

 

レン「待って」

 

 レンが画面を見る。

 

レン「回収してないのに?」

 

イズモ「……そう」

 

 六日目。

 

 QEX体内の元素濃度。

 

 低下。

 

 しかし。

 

技術士官「健康指標、改善しています」

 

キアラ「元素が減ってるのに元気になってる?」

 

イズモ「逆かも」

 

レン「逆?」

 

イズモ「元素が多すぎた」

 

 ネガアース。

 

 過剰流入。

 

 QEX。

 

 摂取。

 

 蓄積。

 

イズモ「こいつら」

 

 遠くを歩く巨大QEXを見る。

 

イズモ「元素を奪ってるんじゃなくて」

 

 一拍。

 

イズモ「処理してたのかもしれない」

 

     *

 

 七日目。

 

 地球側元素消失。

 

 ほぼ基準値。

 

 ネガアース。

 

 QEX異常行動。

 

 大幅減少。

 

 誰も。

 

 すぐには喜ばなかった。

 

カー博士『……止めた方が、安定した』

 

イズモ「そう見えます」

 

レン「じゃあ今まで俺たちが回収してたのって」

 

イズモ「まだ結論は出さない」

 

キアラ「でも」

 

イズモ「うん」

 

 イズモはグラフを見た。

 

 滑らかすぎる。

 

 まるで。

 

 何かがこちらの変更を見て。

 

 調整したような。

 

イズモ「……これ」

 

ユノ「何か?」

 

イズモ「おかしい」

 

カー博士『改善したのに?』

 

イズモ「改善の仕方が綺麗すぎる」

 

 元素消失。

 

 少しずつ。

 

 段階的に。

 

 減っている。

 

イズモ「回収を止めたから安定したんじゃない」

 

 イズモは。

 

 微細な周期波形を拡大した。

 

イズモ「何かが」

 

 一拍。

 

イズモ「回収を止めたことを検知した」

 

 その瞬間。

 

 グラフの底で。

 

 今までノイズとして埋もれていた信号が。

 

 規則正しく。

 

 一度。

 

 脈打った。

 

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