ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者―   作:最上 イズモ

6 / 6
∅6 ノイズではない

 

 

 信号は。

 

 一度だけだった。

 

 短い。

 

 規則的。

 

 偶然と呼ぶには。

 

 整いすぎている。

 

カー博士『もう一度拡大してください』

 

イズモ「はい」

 

 七日分の観測ログ。

 

 元素消失量。

 

 QEX活動量。

 

 ネガアース側元素濃度。

 

 そのすべての底に。

 

 微かな周期波形が埋もれていた。

 

ユノ「以前から存在しています」

 

レン「ずっと?」

 

ユノ「少なくとも、今回取得した全期間」

 

キアラ「じゃあ今まで気づかなかっただけ?」

 

イズモ「ノイズ扱いされてた」

 

 イズモは波形を並べる。

 

 一日目。

 

 二日目。

 

 三日目。

 

 同じ。

 

 だが。

 

 四日目。

 

 変化。

 

 五日目。

 

 さらに変化。

 

 そして。

 

 七日目。

 

 明確なパルス。

 

イズモ「こっちが回収を止めたタイミングと合ってる」

 

カー博士『偶然では?』

 

イズモ「可能性はあります」

 

 イズモは即答した。

 

イズモ「なので」

 

 一拍。

 

イズモ「地球側の過去ログを全部見たいです」

 

カー博士『全部?』

 

イズモ「元素消失が始まった時期から」

 

カー博士『相当な量になりますよ』

 

イズモ「四人連れて行きます」

 

綾音『決まりね』

 

イズモ「司令」

 

綾音『現地は中隊に任せる』

 

イズモ「了解」

 

綾音『イズモは地球側へ』

 

     *

 

 数時間後。

 

 地球側研究施設。

 

 イズモとピースギア技術班四名は。

 

 長大な記録の前に立っていた。

 

カー博士「君たちがピースギアですか」

 

イズモ「最上イズモです」

 

カー博士「本当に全部見るつもりで?」

 

イズモ「はい」

 

カー博士「数十年分あります」

 

イズモ「大丈夫です」

 

技術士官「大丈夫ではないです」

 

イズモ「分担すれば」

 

技術士官「そういう問題では」

 

 カー博士が少し笑う。

 

カー博士「では始めましょう」

 

     *

 

 古いログ。

 

 元素消失。

 

 回収量。

 

 QEX出現。

 

 環境変動。

 

 そして。

 

 未分類ノイズ。

 

イズモ「これ」

 

カー博士「何か?」

 

イズモ「同じ波形」

 

 現在ネガアース側で観測している信号。

 

 それと。

 

 数十年前。

 

 地球で最初期に観測された。

 

 微細な揺らぎ。

 

カー博士「……似ていますね」

 

イズモ「似てるどころじゃない」

 

 重ねる。

 

 位相。

 

 周期。

 

 振幅比。

 

技術士官「一致率、八十八パーセント」

 

カー博士「そんなに?」

 

イズモ「これ、本当にノイズですか?」

 

カー博士「当時は再現性がなく」

 

イズモ「今はある」

 

     *

 

 さらに。

 

 時間を揃える。

 

 元素消失発生時刻。

 

 同期波形。

 

イズモ「……逆だ」

 

カー博士「何が?」

 

イズモ「順番」

 

 画面。

 

 波形。

 

 その後。

 

 元素消失。

 

イズモ「元素が消えてから信号が出るんじゃない」

 

ユノ『地球側ログ、受信しました』

 

イズモ「先に同期が始まってる」

 

 数秒。

 

 全員。

 

 黙った。

 

カー博士「つまり」

 

イズモ「元素消失は」

 

 イズモは。

 

 画面を指した。

 

イズモ「現象の原因じゃない」

 

 一拍。

 

イズモ「結果です」

 

     *

 

 その日の深夜。

 

 ピースギアと地球側研究班は。

 

 新しい監視条件を組んだ。

 

 元素消失ではなく。

 

 同期波形。

 

 その変化を。

 

 先に見る。

 

技術士官「次の大規模同期予測」

 

イズモ「いつ?」

 

「約四十三時間後」

 

カー博士「予測できるんですか」

 

イズモ「今まで地震みたいに結果だけ見てた」

 

カー博士「地震?」

 

イズモ「揺れてから調べてた」

 

 イズモは波形を見る。

 

イズモ「でも」

 

 次の同期予定。

 

 カウントダウン。

 

イズモ「前兆があるなら」

 

 一拍。

 

イズモ「来る前に観測できる」

 

     *

 

 ネガアース側。

 

 ユノが。

 

 遠くのQEXを見る。

 

 複数の個体が。

 

 同じ方向へ。

 

 顔を向けていた。

 

ユノ「……イズモ」

 

イズモ『はい』

 

ユノ「QEXの行動に変化」

 

イズモ『何してます?』

 

ユノ「全個体が」

 

 方向を測る。

 

 地上ではない。

 

 空でもない。

 

ユノ「同じ場所を見ています」

 

イズモ『座標は?』

 

 ユノは。

 

 測定値を見る。

 

 そして。

 

 僅かに停止した。

 

ユノ「存在しません」

 

イズモ『……え?』

 

ユノ「三次元座標上には」

 

 一拍。

 

ユノ「その場所がありません」

 

 四十三時間後。

 

 来るのは。

 

 元素消失ではない。

 

 その前に。

 

 何かが。

 

 世界を。

 

 同期させる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。