ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
四十三時間後。
地球側研究施設。
観測室の空気は、異様なほど静かだった。
全員が。
同じ数字を見ている。
同期予測時刻。
残り。
三十秒。
カー博士「本当に来ますかね」
イズモ「来なかったら予測モデル修正です」
カー博士「緊張感ないですね」
イズモ「外した方が平和なので」
十秒。
五秒。
三。
二。
一。
――何も起きない。
技術士官「予測時刻通過」
カー博士「外れた?」
イズモ「待って」
十秒。
二十秒。
三十秒。
そして。
三十四秒後。
技術士官「同期波形上昇!」
イズモ「来た」
複数の計器が一斉に動く。
元素量。
空間位相。
重力。
電磁場。
だが。
まだ。
元素は消えていない。
イズモ「順番を記録」
技術士官「同期開始から三・八秒――」
警告。
技術士官「元素消失確認!」
カー博士「ネガアース側は?」
ユノ『流入なし』
イズモが顔を上げた。
イズモ「まだ来てない?」
ユノ『はい』
五秒。
十秒。
二十秒。
地球からは。
すでに元素が消えている。
なのに。
ネガアースには。
何も現れない。
イズモ「……どこ行った?」
*
二十七・四秒。
ユノ『流入開始!』
ネガアース側の元素濃度が跳ね上がる。
レン『来た!』
キアラ『QEXも反応してる!』
全個体。
同時に。
例の。
三次元上には存在しない座標を見る。
イズモ「地球から消失」
表示。
イズモ「二十七・四秒」
別表示。
イズモ「その後、ネガアースへ流入」
カー博士「移動時間?」
イズモ「多分」
地球。
ネガアース。
その間に。
空白を置く。
イズモ「直接繋がってない」
*
技術士官「流出量計測終了」
イズモ「どれくらい?」
「地球側を百とした場合――」
一瞬。
技術士官の手が止まる。
イズモ「何?」
「ネガアース側」
再計算。
「百十二・一」
カー博士「……は?」
イズモ「再測定」
「済んでます」
カー博士「保存則は?」
イズモ「合わない」
地球から百。
ネガアースに百十二。
十二。
増えている。
カー博士「途中で生成された?」
イズモ「何から?」
答えはない。
核反応。
質量変換。
未知粒子。
どれを当てても。
観測値と合わない。
イズモ「単純な物質輸送じゃない」
*
その時。
QEX側に。
もう一つの変化。
ユノ『発声反応』
イズモ「発声?」
ネガアース全域。
大小。
種類を問わず。
QEXが。
低い音を出している。
まるで。
何かに。
応答するように。
技術士官「三佐」
イズモ「何?」
「信号を検出」
今までの周期波。
とは違う。
三回。
等間隔。
沈黙。
四回目。
少し長い。
そして。
一拍。
五回目。
長音。
カー博士「人工信号?」
イズモ「まだ分からない」
カー博士「返しますか?」
イズモ「返さない」
カー博士「なぜ?」
イズモ「相手が何か分からない」
一号信号。
二号。
三号。
全部。
保存。
イズモ「まず記録」
ネガアース側。
QEXは。
まだ。
存在しない座標を見ている。
ユノ『イズモ』
イズモ「はい」
ユノ『これ』
一拍。
ユノ『私たちに送っているのでしょうか』
イズモは。
信号を見る。
地球から元素が消える。
二十七秒。
ネガアースへ現れる。
その途中。
何かがある。
イズモ「分かりません」
そして。
小さく付け加えた。
イズモ「でも」
五つ目の長音が。
再び。
観測室へ表示される。
イズモ「地震なら」
一拍。
イズモ「向こうから返事はしない」
地球とネガアース。
二つの世界の間。
今まで。
誰も。
見ていなかった場所。
そこに。
何かがいる。