ピースギア×エレメントハンター ―11次元の観測者― 作:最上 イズモ
探査機一号は。
壊れていなかった。
外装。
通信装置。
内部時計。
構造材。
すべて。
正常。
技術士官「再構築率、九十九・九九七パーセント」
カー博士「誤差範囲?」
技術士官「はい」
イズモ「じゃあ」
探査機を見下ろす。
イズモ「壊して返したんじゃない」
映像記録を開く。
最初。
ノイズ。
次。
光。
色。
ではない。
明るさのような。
何か。
カー博士「見えませんね」
イズモ「センサー飽和してる」
技術士官「映像補正します」
輪郭が。
少しずつ。
浮かぶ。
だが。
人間の目では。
形に見えない。
見る角度によって。
線。
球。
人影。
巨大な構造物。
それらが。
同時に存在しているように見える。
レン『何あれ』
キアラ『気持ち悪い……』
ユノ『形状認識不能』
イズモ「無理に形にしないで」
ユノ『なぜ?』
イズモ「こっちの脳が勝手に知ってる形へ寄せる可能性がある」
そして。
映像の最後。
一フレーム。
光のような何かが。
探査機へ伸びる。
カー博士「触っている?」
イズモ「多分」
次。
暗転。
帰還。
*
帰還命令ログ。
もう一度。
解析。
技術士官「命令形式が」
イズモ「何?」
「こちらのプロトコルに近いです」
カー博士「ピースギアの?」
「完全一致ではありません」
イズモ「どれくらい?」
「概念構造で七十一パーセント」
イズモの表情が変わる。
座標。
同期。
帰還優先。
境界再接続。
思想が。
近い。
イズモ「誰かが解析した?」
技術士官「十秒で?」
イズモ「……ですよね」
ユノ『向こう側に、同種の技術体系が存在する可能性』
イズモ「あるいは」
少し考える。
イズモ「同じ物理現象を使えば、似た設計になるだけ」
偶然。
収束。
模倣。
まだ。
どれも捨てられない。
*
綾音へ。
報告。
綾音『帰還命令を外部から?』
イズモ「はい」
綾音『敵意は?』
イズモ「確認できません」
綾音『友好的?』
イズモ「それも分かりません」
綾音『でも壊してない』
イズモ「はい」
綾音は。
少し黙る。
綾音『探査機を』
一拍。
綾音『返す必要はなかった』
イズモ「そうなんですよね」
綾音『閉じ込めることも』
イズモ「できたはず」
綾音『壊すことも』
イズモ「多分」
綾音『なのに返した』
イズモは。
一号機を見る。
イズモ「最低限」
一拍。
イズモ「こちらの存在を認識した」
*
その夜。
解析班は。
一号機のデータを。
別方式で処理した。
映像ではなく。
空間変化。
位置関係。
センサー入力の順番。
その結果。
奇妙なパターンが出た。
技術士官「三佐」
イズモ「はい」
「これ」
時間軸。
探査機が入る。
空間変動。
光。
接触。
その後。
帰還。
イズモ「反応してる」
カー博士「何に?」
イズモ「探査機が来たことに」
探査機が。
侵入する。
空間側が。
変化する。
イズモ「最初から待ってたわけじゃない」
ユノ『侵入を検知して』
イズモ「近づいて」
カー博士「触って」
イズモ「返した」
意図。
という言葉を。
使うには。
まだ早い。
だが。
自然現象。
という説明は。
少しずつ。
苦しくなっていた。
*
イズモは。
次の探査機仕様を開く。
カー博士「もう二号機?」
イズモ「一号機で帰還できた」
カー博士「だから?」
イズモ「次は」
映像。
補正。
認識変換。
イズモ「何があるかじゃなく」
一拍。
イズモ「どう見せられてるかを取る」
ユノ『観測者依存性』
イズモ「うん」
同じ空間。
同じ対象。
でも。
見る側によって。
意味が変わるなら。
そこを測る。
イズモ「二号機は」
設計欄。
知覚補正ログ。
視覚情報分離。
受動観測。
イズモ「こっちからは何も話さない」
カー博士「返事は?」
イズモ「まだ」
イズモは。
一号機の最後のフレームを見る。
探査機へ。
触れている。
何か。
イズモ「向こうが」
一拍。
イズモ「最初に何を見せるか確認する」
*
二号機投入。
三日後。
同じ場所。
同じ条件。
同じ十秒。
イズモ「投入」
消える。
今度は。
二分を待たなかった。
四十七秒。
空間が。
開く。
二号機が戻る。
技術士官「回収!」
イズモ「内部時計」
「十秒」
また。
十秒。
帰還命令。
外部。
UNKNOWN。
カー博士「同じですね」
イズモ「映像」
再生。
ノイズ。
白い空間。
少しずつ。
像が。
結ばれる。
人。
だった。
イズモ「……」
イズモの前に。
イズモが立っている。
正面から。
こちらを。
見ている。
イズモ「自分?」
ユノ『……私です』
イズモ「え?」
カー博士「いや」
カー博士が。
画面へ近づく。
カー博士「私ですよ」
同じ映像。
三人。
三つの答え。
イズモ。
ユノ。
カー博士。
全員。
自分を見ている。
まるで。
カメラではなく。
鏡を見ているように。