言ってやった。私の気持ちを、私が思っていた積年の思いを。でも、これで終わりか。切られた後が痛くて熱い。
「………。」
姉の方をふと見ると、白い斬撃を見に纏っていた。あれが大人たちが言っていた"完成形"。姉から伸びている赤い糸がだんだんと切られていく。
「(…あーあ。)」
…足音が聞こえる。
「すべての指が待ち望んでいた蜘蛛の巣の最終作品が、ついにお披露目の時を迎えたのさ。ソラ、見えるか?」
「リアンさん。それじゃ…こ、これがボクの最後の試練なんですか?」
「そうだ。」
人差し指の大人とソラ、そして…。
「主様…。」
ルチオを背負い、アラヤを連れてきたレンが見えた。アルビナは無理だったか。
「…二度と見られない見せ物だとしても、お前が残って見届ける理由はないはずだが。」
人差し指の大人の言う通りだ、レン。私が死ねば地慧星刀をお前が引き継ぐ。念願の地慧星の名を受け取ることができるんだよ?
「地慧星を継がんと、主様と共に在りしことは事実なれど…。まだ死んでもおらぬ主様を置いて、どこに行けましょうや。」
お前は私を置いて行かないように姉に立ち向かおうとしてくれるんだね。でも、いいんだ。そんな事をしなくて。
「………。」
レンに向かって首を横に振り、握っている地慧星刀をレンの方に向かって投げる。
「……主様。」
お前まで切られなくてもいい。それに私はお前に試練を与えた。だから…。
「こ、今回の試練さえ乗り越えられれば、ボクもヨ、ヨシヒデ姉さんみたいに、リアンさんの娘になれるんです。」
ソラには悪いけど、あの刀の力を見せる機会になるだろうね。
あっという間に姉に立ち向かった者は切り刻まれ、白い粒子となって消えていった。
「さあ、お前たちの中で…さっきの奴の顔を覚えている人はいるか?」
憐れだったあの子の顔が、名前が、全てが朧げになる。きっと、完成まで程遠くない。……そろそろ止めないとね。なんとか体を動かして時計頭の人の足首を掴む。
「しっかりと話すのは初めましてだね。」
<君は……。>
チクタクとしか聞こえなかった声が分かる。
「糸は様々な事象で増えていく。」
体のノイズが激しくなって、過去、現在、未来の姿へと変わっていく。
「誰かと話した、遊んだ、食べた、寝た。その一つ一つが糸となって…。」
どれだけ断ち切ろうとも、余計に増えていくだけだった。
「お姉ちゃんは斬ってるつもりなんだろうけど、それだけじゃダメなんだよ。」
せめて今の姉のお友達と、あの子のことだけでも。
「私が行ってあげる。そして姉さんに言うの。」
これだけでも忘れないでって。
<断ち切ろうとする強い力も、すべてを切り裂く刀も…結局は、守ろうとする心から始まっていたはずだ。>
時計から鎖が伸びてくる。
<なら、この鎖を掴んで行って。>
熱せられた鎖と、一つの糸を持って姉の元へ行く。
「道がわからない可哀想な子よ。戻る方向がわからないなら…、一番痛かった最初の結び目を探り、辿り直してごらん。」
体が切られていく。鎖は切れてないけど、細い一本の糸は切れそうだ。
「あの子の事を忘れてはいけない。」
私の手に絡みついている糸をその糸に…あの子と姉の繋がりの糸へと結び直す。
「あの子との約束でしょ。」
すべてが白に染まった世界にいた。
「ここが…終わりなのかな。」
『忘れないで欲しいんだよね?認めて欲しいんだよね?』
どこからか声が聞こえた。寄り添うような、私に向けられる事はなかった優しい声が。
『今なら間に合うよ。あの子たちに刻み込もう。』
刻み込めば忘れないでくれるだろう。忘れないで欲しい、私だけを見ていて欲しい。
『あなたの望む姿を見せて、思い出してもらおう。』
「…嫌だね。」
『……どうして?』
最後の最期で姉に酷い事をした。姉に切り刻まれて、きっと忘れ去られてしまう。でも…。
「これは終わった事なの。これが私の進んだ道だから。末那という人間は最後まできっと、やり遂げることができたから。」
もう姉に苦しまないで欲しい。きっと私を忘れた方が幸せなはず。
『……そっか。』
それっきりあの優しい声が聞こえる事はなかった。瞼が重くなる。
「…お疲れ様、私。」
レンにも酷い事しちゃったかな。情けない師匠でごめんね。
「(でも、最期に一つだけ…我儘を言ってもいいよね。)」
ねえ、お姉ちゃん。色んな思い出をアラヤたちと作ってね。それで、もしすべてが終わったら、…私の所に来て、その物語をお姉ちゃんとアラヤと私でゆっくりと話して、三人で一緒に巡ろう。
「ずっと待っているからね、お姉ちゃん。」
これは私の我儘、私の"エゴ"だから。
E.G.Oはこれでいいのか?Cさん難しすぎるよ。