アラヤが小学生くらいになった。姉と私でランドセルを送り、学校に通わせることになった。友達もできてるようでなにより。
「こ・略。」
「なんて?」
「もー違うよお母さん。そう言う時はこれ葉って言うんだよ!」
「二人とも、なんて言ってるの?」
「あ、お姉ちゃん。これはね…。」
どうやら学校で流行ってる略し言葉らしい。二人のセンスが独特で何を言ってるのかさっぱり。
「フッ、気に入った。」
「あーあ、変なの気に入っちゃった…。」
ま、楽しそうなら良いか。
それからアラヤと姉の仲は深まっていった。お弁当を作ったり、プラネタリウムを見たり。姉の優しさがアラヤに向かっているのは少し寂しかったけど、アラヤの無邪気さは私も気に入ってる。
「末那、俺のことは"ヨシヒデ"じゃなくて"良秀"と呼べ。」
「自分で考えたの?」
「アラヤが考えた。こっちの方がしっくりくる。」
「良いじゃん。可愛い名前。まあ、私は姉さんって呼ぶけど。」
アラヤにとって人の死は馴染みがない。けれど私たちにとってはよくあることだ。私も外で大人たちの手伝いをするようになった。都市ではこんなことはよくある。
「テメェ、ここではやるなって言ったはずだ。」
「私はこの芸術をその子供にも見てもらおうと、理解してもらおうとしただけですよヨシヒデ。」
「黙れ。」
アラヤが薬指の大人の作品を見て怖がっている様子だ。幸いトラウマにはならずには済んだ。けど、しばらく姉とアラヤと一緒に川の字になって寝なくちゃいけなかったけど。
「なあ末那、アラヤは大きくなったらどんなことをするだろうか。」
「唐突にどうしたの。」
「ふと思った。」
「そうだね、姉さんに似てすごく美人になっちゃうかもね。」
「もっと大きくなったら音楽の道に行くのも悪くない。」
「いいね。」
私たちはアラヤが成長したらどんな感じになるかを想像してた。多少のトラブルはありつつも、そんな日常が過ごせたらなってずっと思ってた。
でも大人たちはアラヤすらも姉をこの場所に留めておくだけのものだった。
「アラヤが…俺の首輪だと…!」
外から来た親指の大人がそう言う。
「テメェ、一体どういう…!」
「ま、俺っちはどうでも良いんやが、この場所の連中はよー頭が回るわ。」
戻った後、姉は考えた。アラヤの利用価値がなくなれば殺される。ならば先に大人たちに損傷を出して手出しさせないようにするって。母からも『お前が暴れればアラヤと共にここを抜け出すことができる』と言われたらしい。
「末那、お前は俺のサポートを。アラヤ、この中に入ってろ。俺が戻ってくるまで待っていられるか?」
「うん!」
絶対見つからない確証はない。大人たちが見逃すはずがない。アラヤが殺されないようにするには誰かが守らなくてはいけない。ならば…。
「私は残るよ、姉さん。」
「何?」
「私がアラヤを守る。」
「あいつらに勝てる可能性があるのか?」
「ないけど。」
姉は大反対。わざわざ妹を殺されるかもしれない場所に留めたくはないって。
「それはアラヤも同じだよ。」
「……。」
「それに、アラヤにとって信用できる人はこの場所には姉さんしかいない。その姉さんがいなくなった時、アラヤは誰を信じれば良いの?」
「それは………。」
「心配しないで、これでもあの大人たちに散々鍛えられたから。多少の足止めはできるよ。」
姉は渋々、嫌々ながら作戦を遂行していった。親指は眼を、人差し指は顔を、中指は片腕を、薬指は愛剣を、そして小指はその命を切り取られていった。
「お姉ちゃん、お母さんはいつ帰ってきてくれるかな。」
「長い時間がかかるかもしれない。でも、忘れることはないよ。」
ちなみに"末那"という名前は"阿頼耶識"の一つ前の"末那識"からとっています。なぜそこからとったかというと、名前っぽいからです。
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