この場所の全ての部屋を回る。あちこちに斬撃の跡が残ってる。血もうっすら。親指の部屋は多くの酒瓶が砕け散ってる。中指の部屋には片腕が落っこちてた。薬指の部屋は作品がボロボロ。そして小指の部屋には一つの死体。それは私たちの母のもの。でも、これと言って何とも思わない。
「頭が飛ばされなかっただけ、マシだね…。」
階段を降りて向かった先は人差し指の部屋。一番斬撃が酷いんじゃないかな。そこに大人たちがいた。
「小指の親方が死んだ。」
「何?じゃあこの蜘蛛の巣も終わるってことか…?」
「その可能性が高いな。」
「クソが!」
「ヨシヒデ、どうして…。」
私は見つからないように聞き耳を立てる。
「あのガキのせいだろ。即刻処刑で決まりだ…!」
「ふむ。」
あのガキ…アラヤのことか。大人たちの間ではさっさと殺してしまおうという話になっている。残念だけど背に腹は変えられない。私は大人たちの前に現れる。
「紙クズか… 、殺されにきたか。」
「いえ、提案をしにきたんですよ。」
アラヤが殺されないためには…。
「私が小指の親方になる、というのはどうでしょうか。」
「ほざけ。言うのは簡単だがな、それを聞いてはいそうですかって頷けると思ってんのか。」
「ここが崩壊すれば、私たちを殺せば、姉は二度とここに戻ってくることはないでしょう。取り返しにくるものが、場所がなくなれば用はない。」
「は、殺さないでくださいと言えばすぐにはやらなかったろうが…。」
親指の大人が刀を抜こうとする。私も携えている刀を抜こうと……。
ピピピ
「…指令が許可したようだ、もう一人の娘。」
「良かったです。指令の方にも納得していただいて。」
指令に決められたと感じるのは些か不満だ、役割がない、期待されていない私が初めて自分で決めた役割。姉にとって憎まれ役だけどアラヤを生かすため、姉との約束を守るため。
「(これが私が生まれた意味、私の役割。)」
母が姉によく言っていた『私のようになるな』。まさかその妹があなたを真似るとは思いもしなかっただろう。
「準備は良いか、もう一人の娘。」
「良いですよ。その間、アラヤを頼みました。」
「ああ、わかった。」
姉が嫌なことがあった時によく隠れていた金庫、それよりも大きいものが置かれる。その中へ入り、座る。
「では、後ほど。」
扉が閉じた途端、いくつもの記憶が流れてくる。。長いようで短く、短いようで長い曖昧な時間を感じたけど、体に変化は感じない。
「……。」
いや、変化があった。私の手が、いや体全体にノイズが走っている。姉はなんともなかったけど、私はそうはいかないらしい。
「はは、流石は姉さんだなぁ。」
「ふむ、どうやら適性はなかったらしい。だが、顔ぶれは変わっていないな。」
どうやら私は過去、未来の私がもつれ、現在の私に収束して歪な状態になったらしい。現に子供の姿になったり、元の姿より少しだけ成長した姿に変化したりする。
「いくら待ってみても、年老いた姿にはならないな。」
「そうですね。」
精神も安定。体も時々変わること以外は問題なし。だけど、私の年老いた姿だけは現れることはなかった。
「これからより厳しい訓練が課されることになるが、問題はないな?」
「問題ないですよ。姉さんとの約束を守るためですから。」
部屋に戻り、アラヤの無事を確認した。どうやら守ってはいてくれたらしい。アラヤを眠らせて、一人で思い耽る。
「年老いた私がいない…か。なんでだろう……。」
私が辿るはずだった未来は今より少し歳をとった姿。特に老けてもないすぐ追いつくはずの未来。
「私が…辿るはずだった……。」
ああ、簡単なことか。一つの考えだが、正解に近いだろう。
「(私の運命はすぐに終わるってことか。)」
かなり妄想激しめです。時間金庫はこれであってるのか?