記憶がなくなった後でも覚えている忌々しい声。
「本社が襲撃を受けた…?」
「それに誰だよだあの声は。」
思わず笑みが浮かぶ。
<良秀……?>
「あれほど待ち望んでいた時が、ついに自分から歩いてやって来た。」
天井から何度も物音がする。だが、これくらいの壁は親方のやつなら最初の音で粉砕するだろう。
「見たことがないやつだな。」
二つの剣を持った奴と人形がバスの中に入る。襲撃者は気絶した運転手を連れていた。
「カロン!」
「わざわざ連れてくるとはな。」
鞘に手を置く。
「人質は価値がある。だからこそお前はそいつを傷つけることはできない。あの赤い案内人の怒りを買いたくはないだろう?」
予想通り、こいつは俺の攻撃を防ぐだけだ。
『愚図が。腕はもっと真っ直ぐ伸ばせって。何度…いったい何度言えば分かりやがるんだ?』
記憶から吐き出される無線から聞こえた声とは違う声、そして…。
「お前…、この剣術を知っているな。」
『パレルモ』。親指の親方が使っている剣術。
「ヴァレンチーナ、いつも酒浸りしているあの野郎から学んだのか?」
「そんな低俗な単語で、あのお方を汚さないでいただきたい。」
角度、剣の速さ、重心。
「ただの模倣か。どれか一つでも狂ったなら…。」
全てが粗末。
「いつ崩れるか分からん、綱渡りのような剣術。決まった動きしか出来ないお前も、そこにいる人形と変わらんな。」
「…ぜんまい仕掛けの人形でも構いません。」
決まった動きしかしないただの言いなり、気に入らないな。
「お前みたいな、ガキの学習教本は俺には要らない。俺だけの芸術で…。」
一気に距離を詰める。
「形すら残らぬよう、裂いてやらないとな。」
「ここで合ってるな、アタシたちのチケットがいる場所。」
刀が塞がれただと?…そしてこの声は……。
「ヴァレンチーナ…。親指の親方……!」
「あれが…。」
あの野郎は俺に向かって、気さくな挨拶をして来やがった。
「おう。元気にしてたか、チケット。」
「チケットか。」
お前が変わらなくて俺は、心底安心したさ。
「てめぇも相変わらず、あのどん底から抜け出せてないようだな。」
あの野郎が俺に向かおうとしたが、外から気配が近づいてくる。
「……!」
赤い案内人が来た。ヴァレンチーナの野郎は俺を殺すことが目的じゃない。あいつ…いや、あいつらは俺が蜘蛛の糸に引っかかるのを待っているだけだ。
『LCE部署です。』
ポータルに入ると機械音声が聞こえる。
「制圧中か…少なくとも交戦中だと予想してたんだけど…。」
そこにあったのは床に転がって動かない奴らだけ。あいつらにここの奴らが制圧できるなら苦労はしない。
「…柔らかいな。」
死体から抜けていた螺旋状の棒を拾い、それを見て過去を思い浮かべる。記憶ではナニかがこれに刺されていたことだけが分かる。
「お前は…誰だ。」
呟く。これに刺されてナニかに向かって。
「雑談はここまでにしろ。研究員を殺害した武器は…統一されておらず、様々な武器が用いられたように見える。」
様々な武器…。無線から聞こえた声が思い浮かぶ。
「…あいつらしく絡まっているな。」
しばらく進むとアリサが死にかけながらいた。体にはあの螺旋が突き刺さっている。
「とりあえず早く抜いてすぐに治療を…。」
「無駄だ。」
他のやつが引き抜く前に止める。
「もしかして、抜けない仕掛けなんですか?」
「いや、抜くのは簡単だ。だが、そうしない方がいいだけ。」
「無理矢理抜いたら…廊下にあったあの死体みてぇになんのか?」
「そうだ。もし抜いたのなら…。」
『愛しい娘よ。これは…螺旋だ。一度刺さったら少しでも動くと食い込むから、その場でじっとしているしかないんだよ。』
男の声。
『解除する方法は分かるな?もし@#$%#$もないまま抜こうとしたら…。』
女の声。
「食い込み、絡みついた全てのものが引き抜かれるだろう。」
その場面を想像した奴らの顔色が悪くなる。
「だから生きたいなら、今まで通りじっとしてろ。」
刺さっている螺旋の番号を見つける。
「c-485。」
他の螺旋の解除番号が違うかもしれない以上、こいつのやつだけでも聞く必要がある。
幻想体を鎮圧し、着いた先にはホーエンハイムなどがいた。三組に分かれ、俺たちは黄金の枝の回収に向かった。道中薬指の親方の野郎が作った人形を相手にしなきゃならなかったのは面倒だが。
「見ゆるや?彼奴らの…身に…文字の記されいるように見ゆ。」
『愛しい我らの娘。』
諭すような機械音声。何度も気に食わない芸術作品とやらを見せられたか。
『あー、あー…、聞こえるかね。』
ホーエンハイムが言うにはどうやら俺たちの区間にLCAが着いたようだ。遮断壁の向こうに見える。だが、誰も気づいていないクソみたいな気配がした。
「正面。」
照明が瞬く間にアイツは遮断壁の向こうにいた。三方向を警戒していたLCAの奴ら三人が同時に倒れる。
「蜘蛛の巣に入っていることを忘れるとあのザマになる。」
アイツがこちらに向く。まるで俺たちが見ていることをずっと知っているように。気持ち悪い笑った顔に殺気立つ。
『む す め、 ふ く し ゅ う は ど う だ っ た ?』
<ここから先に黄金の枝を感じる。>
アイツらが見逃すはずがない、誘われている。部屋に入ると匂いがした。
「この先に…嗅ぎ覚えがあるどころか、うんざりする匂いがする。」
記憶が蘇る。アイツの舌を切り裂いた瞬間が。
「…過・悪・蔓・延。」
俺の記憶の中の気配が、白いシルエットとなってそのままでできたようだ。
良秀の記憶は一旦ここまで。またやるかどうかは…多分やらないかな。原作と同じなので。