レンとアルビナが姉たちと戦い始めるが、いかんせん仲はよろしくない。主にアルビナが動いてレンは眺めることが多い。アルビナもレンも大人が教えた戦い方にはまだ到達していない。
「計画にない行動は慎むように…小生が幾度となく申し上げたではありませんか。」
アルビナの装甲が脱げる。大剣から覗く肉肉しいもの"ファシア"の脈動が大きくなる。アルビナは計画が気に入らず、レンの堪忍袋の緒が切れたようだ。
「(本当に、子方も子方だな。)」
しかし重要なのは姉の記憶を多少は戻すこと。レンはわざとらしくアルビナの攻撃を防ぐ。私は黄金の枝を持ち去り、外に出るエレベーターへ向かう。道中の化け物どもを解放し、足止めを狙う。
「塩見さん。ボ、ボクは準備ができました。」
「……。」
死体が着ているものを剥ぎ取り、身につけたソラが私に近づく。
『作戦通りに。上手くやれ。』
持っている紙で言いたいことを伝える。これを見たソラは嬉しそうだった。誰かに頼られるという事が大切なんだろうな。
「は、はい!期待に応えられるように、ボク、が、頑張ります。」
ソラの上にある天井を崩す。もちろんソラが生きているように工夫はしているけど。
エレベーターは動いていない。作戦通りだ。
「あっ、あ、あそこの角さえ曲がれば、エレベーターです。」
ソラの声が聞こえた。ソラの後ろには姉と他の人もいた。
「どうしてそれをご存知なんですか…?」
ソラが放った言葉に一人が食いつく。他の奴らは気づいているだろうけど。
「ぐっ……。」
ソラが一人の体を裂き、こちらに飛び出す。私の前に来たソラは戦闘体制をとる。
ソラの拘束具が外れ、黒い角と巨大な手が現れる。あれを発動したソラは強力で、姉たちを追い詰めていく。
「いつかお目にかかることがあれば、より丁寧にご挨拶を申し上げたかったです。」
遥か後方から黄色い閃光が放たれ、ソラに銛が放たれる。…あちらのほうがソラより上だろうね。私の予想通り、現れた人物はソラの攻撃を受け流して、姉たちの攻撃が通るようにもした。
「最も短く、致命的な攻撃は直線だとしても…、その直線を流せるのは、曲線であるように。」
「わぁ…それ…。リアンさんが…言ってくださった言葉ですか?」
床に倒れたソラが姉の言葉に呟く。負けはしたけど、記憶を思い出させることはできたようだ。姉の方を見ると何やら乱入した人物と話し合っていた。
「教えてくださり、ありがとうございます。それでは失礼いたします。」
乱入した人物が去っていった。
『ボーーーーーン!!!!』
突然、頭部に時計を付けた人が頭部から炎を出したと思うと何処からともなく人が現れる。姉の仲間かな。十二人が私に向かって歩き始める。
「(さてと…。)」
腐っても私は地慧星。心を発動する。
「(やるよ、姉さん。)」
姉の仲間たちは正直に言えばそんなに強くない。都市の武器を使ったり、明らかに普通の人が使えない武器を使用してたりはしてたけど。突然現れた人は意思がない、と言えばいいのかな。動きが単調だった。
『電力の完全復旧が完了しました。』
エレベーターが動くようになった。私は負傷した姉を見続ける。
「それを持って…また蜘蛛の巣へ這い戻るつもりか?」
「……。」
私は何も言わない。
「ふぅ…やっぱりその口。舌・切されたのは、見てて気分がいい。」
姉の言葉を聞いて私の沈んだ気持ちが少し上がるのを感じる。パッと出てこない変な略し方。あの子を忘れていても長く使った言葉はまだ染み付いていたんだ。
「…到底見ていられないな。」
でも完全じゃない。
「その細い糸のような、記憶の一筋を…。未だに握りしめている姿。」
何かを忘れ、それを知るために記憶を呼び起こす。でもそれはあの子のためじゃない。あなたの記憶のためだ。
「…!てめぇ、どうやって、喋って…。」
「さぁ、どうしてだろうな。」
私は姉の、あの子の記憶をできるだけ思い出させるように話す。
「その子の顔は覚えてるのか?口調は?背丈は?何をして時間を過ごしていた?」
その事を言う私に姉は怒りを向けている。
「ヴァレンチーナの野郎が来た時にも思ったが、てめぇら全員、昔と何も変わっていないようで…満足だ。」
それを聞いて私も安心する。あなたが心変わりをして、あの大人たちに情が湧いていたら気持ち悪いから。その安心が私の口を滑らす。
「あの時、あの子を蜘蛛の巣に置いて私たちを切り裂いたのは…、あの頃のお前にできた最善の判断だったのかもしれないな。」
「……!」
「あそこに子供一人でいて、どうにでもならないだろうけど。」
…余計なことを話しちゃったな。できるなら私のことも思い出して欲しいって…思っちゃったから。
「あの子がよく言ってたよ。『約束だ』と。」
姉の方を見ながらエレベーターに乗る。
「お前はその約束を覚えているのか?」
エレベーターの扉が閉じ、姉の姿が見えなくなる。
多分もう一度何処かで良秀の記憶編作りますかね。