小鳥遊ホシノの作り方 短編リメイク用一次置き場 作:ベジがぐてー
「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩」
私の知ってるホシノはこんなことを言わない。
「そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!」
誰よりも現実を見てないくせにリアリストぶるその顔が嫌い。それでも、
「ただ、こうやってホシノちゃんと一緒にいられることが私にとっては奇跡みたいなものなの」
「奇跡というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ」
これ以上にすごくて、珍しいものなんてない。
「……ううん、ホシノちゃん。私はそうは思わないよ」
あの小鳥遊ホシノと同じ空気を吸えることが奇跡でないことがあろうか。
多分、ない。
*
「はぁ……」
生徒会長室の椅子でパラパラとバナナの手帳のページをめくる。
――そろそろホシノちゃんが入学届を持ってくるはず。早く会いたいな。
――今日も来なかった。もしかしてアビドスには来ないかもしれない。
――そして……。
入学届を持ったホシノがやってきた。その足音が気配が、ノックの音がひどく愛おしかった。
けれども一目見た瞬間こいつは嫌いだと、脳が震えた。
その時になって初めて気づいた。私は小鳥遊ホシノだから好きなんじゃない。好みの態度で、好みの見た目なのが小鳥遊ホシノだから好きだということに。
あの瞬間まで小鳥遊ホシノという存在が好きなのだと信じて生きてきたというのに。
私の好きなホシノはこんなに髪が短くない。
私が好きなホシノはあんなに冷たいことを言わない。
私の好きな……。
その後入学届を受け取った私は自然に笑えていただろうか、今となっては確かめるすべはない。
「先輩?」
何度も繰り返したであろう強めのノックとともに私を呼ぶ声に意識が現実に引き戻される。そして私は梔子ユメになる。
「ホシノちゃん?入って入って!」
「失礼します」
少し緊張したようすで入ってくるホシノに満面の笑みを作って見せ、両手で手を取りぶんぶんと振る。記憶の中の梔子ユメのように。
「入学おめでとう!よろしくねホシノちゃん」
「よろしく……お願いします。梔子先輩」
「ユメって呼んでほしいな?」
「……ユメ先輩」
記憶の中にあるその呼び方に久しぶりに心からの笑顔を浮かべられた気がする。
そうだ……簡単なことじゃないか。少しずつ彼女を私の知っている小鳥遊ホシノに直していけばいいのだ。何故今まで思いつかなかったのか。
決めた。私の好きな小鳥遊ホシノを完成させる。そのためなら何だってしてみせる。
まずは考えよう、私の大好きな小鳥遊ホシノの作り方について。