スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜 作:有本カズヒロ
未知の遺跡『ダンジョン』がこの世界に現れて、はや70年。
ダンジョンのある世界に適応した人々は、ダンジョン探索に適性がある人間……『探索者』を少年少女の内から判定する制度を作り出した。
俺、
体育館にはズラッとパイプ椅子が並べられており、その奥には軽自動車ほどの大きさがある、物々しい機械が設置されている。
機械の真ん中には、浮遊する透明な球体……あの球体こそが探索者適性を判定する、ダンジョン原産の特殊水晶だ。
パイプ椅子に座っている生徒たちは、先生に順番に名前を呼ばれ、水晶に触れて探索者適性判定を受ける。
なんてことはない、いつもの健康診断と似たようなものだ。
日本では、探索者適性を判定するために、こうやって毎年5月に体育館へ高校一年生を集める。
俺の目の前では、探索者判定に受かった人間が諸手を上げて喜び、落ちた人間がガックリとうなだれて教室に戻っていく光景が、かれこれ30分以上続いていた。
ダンジョンがあるこの世界にとって、『ダンジョン探索者』は花形の職業だ。
少年漫画の主人公みたいな異能の力を振るい、魔物を倒していく。
そのスター的な姿は、俺たち未成年にとてもカッコよく見えた。
……かく言う俺も、探索者に興味が無いフリをしながらも、この日をずっと待ち望んでいた。
働く姿に憧れる上に、実力によっては富と名声が得られる職業なんて、なりたくない訳がない。
「142番、揃合ハジメ君!」
やがて、俺の番が回って来た。
先生に呼ばれるといそいそと立ち上がり、小走りで水晶の前へと移動する。
先生の視線を気にしながらも、おずおずと右手で水晶に触れた。
「! おお……!」
眩く光る水晶。
これは……適性アリだ!
俺は探索者になれる!
そんな喜びも束の間、突然頭の中に未知の音声が流れ込んできた。
『揃合ハジメさんの固有スキルは、
この水晶は、適性のある人間には『固有スキル』の情報も教えてくれるらしい。
固有スキルというのは、探索者それぞれの特性や必殺技みたいなものだ。
俺の固有スキルは……収集癖?
『収集癖は、倒した魔物からスキルを獲得できる能力です』
少しダサい名前だが、能力は中々面白そうだ。
恐らく、魔物を倒せば倒すほど使えるスキルが増えていくのだろう。
「結構いいスキルじゃんか……!」
自分の拳を見つめつつ、ニマニマしながら体育館を後にする。
今日の授業が終わったら、早速探索者としてダンジョンに潜りにいこう。
この日のために、俺は探索者ライセンスの取得方法を何度も何度も調べて来た。
授業が終わったら、すぐに探索者協会へ行くぞ。
『収集癖』をゲットした俺の未来は、なんだか希望に満ち溢れている気がした。
― ― ― ― ―
半ば夢うつつ状態で授業を終えると、俺は制服姿のまま探索者協会へ向かった。
協会の受付に直行し、受付嬢のお姉さんに探索者になりたい旨を話す。
お姉さんは「毎年あなたみたいに、適性を受けてからすぐ来る人が多いのよねぇ」と言いつつ、探索者ライセンスについて大まかな説明をしてくれた。
その後、簡単な初心者講習を受講してライセンスを支給してもらった。
探索者ライセンスとは、探索者にとっての身分証明書。
紛失厳禁の大事なカードだ。
ライセンスも取得して、俺は晴れてE級探索者として認定された。
探索者は最下位のE級から最上位のS級まで、6段階ある。
皆、日々研鑽を積んでS級を目指すのが一般的だ。
もっとも、日本全体でもS級探索者は10人もいないが……それだけ、S級探索者は奇跡のような存在なのだ。
探索者となった俺は、早速レンタル武器と防具を借り、近場で難易度の一番低い『ビギナーダンジョン』へ行った。
ビギナーダンジョンでは、探索者をサポートする監視員が一定間隔に配置されているので、基本的にダンジョンの魔物に殺されることはない。
初心者講習も受けたし、準備万端。
恐れるものは何もない。
俺は改めて自分の格好を見る。
制服の上から軽装の鎧を付け、腰にはロングソードを差している。
持ち物は最小限に、と鞄の代わりにウエストポーチを支給してもらった。
中には回復のポーションが入っている。
ビギナーダンジョンで使うことはないだろうが、あった方が心強い。
「よし、それじゃあ行くか!」
ぽっかりと虚空を映すダンジョンゲートの中へと進み、俺はビギナーダンジョンへ入った。
― ― ― ― ―
ビギナーダンジョンは、極めてオーソドックスな作りのダンジョンだ。
洞窟のような見た目をしていて、等間隔に松明が設置されている。
普通、ダンジョンはボスを倒すと一定期間後に崩壊していく。
しかし、ビギナーダンジョンはボスの量産に成功したため、こうやって初心者向けに解放されているらしい。
初めてのダンジョン探索に緊張しながら、俺は慎重に歩を進める。
……と言っても、約200メートル間隔で監視員さんがいるので、そんなに気を張ることはないが。
「おっ、早速お出ましだな」
ゲートが見えなくなる程度に潜った頃、目の前にスライムが現れた。
魔物は周囲の魔力がモヤとなって収束していき、その場に姿を現す。
だから、一見何もないような空間からいきなり現れたように見えるのだ。
雑魚魔物の代名詞でもあるスライムだが、それでも一般人ではとても太刀打ちできない。
俺を敵とみなしたスライムは、いきなり自分の体の一部……酸を飛ばしてきた。
「おっと!」
探索者適性アリの俺は、ゲートを潜ったことで肉体が超強化されている。
普段の数倍の速度で酸を避け、ロングソードを引き抜くとスライムへ振り下ろした。
スライムの体が剣によって真っ二つになる……が、惜しい。
まだ倒せてない。
スライムの体は流動体だ。
炎などのスキルで焼き切るか、物理攻撃なら核を破壊しなければならない。
攻撃を受けて焦ったのか、スライムは次々に酸を飛ばしてくる。
何とか避けきれてるが、これでは決め手にかける。
一瞬、スライムが動きを止めた瞬間、核が見えた。
「そこだッ!」
素早く振り下ろした一太刀は、俺の予想通りに核を斬った。
するとスライムは崩壊していき、核のみがそこに残った。
初めての魔物討伐、成功。
ジワジワと喜びが溢れてくる。
固有スキルを試すため、俺は早速スライムの核……『魔石』を拾い上げた。
『収集癖』を発動するためには、どうやら魔石に触れる必要があるらしい。
力強く握った瞬間、俺の中にスライムの魔力が流れ込んできた。
魔力。
それは、スキルを操るために消費する特殊な力だ。
身体能力の強化などにも応用できる。
と、同時に頭の中に音声が流れる。
『酸・弱を獲得しました。現在Lv.1です』
ゆっくりと手を払ってみると、俺の手の中から先のスライムと同じ、酸が飛び出した。
地面に着弾すると、ジワジワと土を焦がしている。
「すごい、ホントにゲット出来てる!」
スキルについては脳内で語り掛けられるだけだったので、こうやって実際に使えるまで正直、半信半疑だった。
でも、今の俺はスライムのスキルを使いこなしている。
他の探索者は固有スキルを1つしか持てないが、俺は複数所持できる。
それだけ成長の余地・幅があるということだ。
このまま少しずつ、他の魔物のスキルもゲットしつつ鍛錬すれば、探索者の上位ランカーも夢じゃないかもしれない。
楽しみになってきた。
「よし、目指すぞ。A級……いや、S級探索者!」
俺は気合を入れると、次なる魔物へ出会うために駆け出した。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
<保有スキル>
■酸・弱(Lv.1)