スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜 作:有本カズヒロ
せっかく手に入れたのだから、次に出会う魔物には『酸』を使ってみよう。
そう決めてから、歩き回ること数分後。
三方向に分かれた道の中から、一番広い道を選んで進んでいくと、目の前に突如黒い影が躍り出る。
反射的に剣を構えると、相手もそれを警戒してか、少し距離をとってきた。
「ブラック・バットか」
数メートル先では、三体の巨大なコウモリ……ブラック・バットがこちらに牙を剥いていた。
高校ではダンジョンについての授業があるが、そこではこのブラック・バットはじめ、コウモリ系の魔物についても詳しく教えられた。
両足の先にある、鋭い2本の爪が武器となっているらしい。
爪による斬撃は、一般的なロングソード以上の切れ味と威力を誇る。
「あんまり近づいて戦いたくない相手だな」
俺は右手をバットたちに向ける。
今こそ、スライムから手に入れたスキルを使う時だ。
「いけ! 『酸』!!」
俺の右手には、瞬時にスライムと同じような薄青色の粘液が集まり、バットたちへ向いて飛び散った。
あまり絵面として格好良くはないが、それでも触れればタダではすまない。
「ギャアッ!」
飛び散った酸は焼けるような音を立て、バットたちの羽を溶かしていった。
体勢を崩し地面に落ちるバットたちへ向け、俺はすかさず剣を振るう。
あっという間に、三体のブラック・バットは魔石へと姿を変えた。
「ふぅ。お前らのスキルも頂くとするかな」
俺は全ての魔石に手を触れる。
すると、バットたちの魔力が流れ込んできた。
『斬撃・弱×3を獲得しました。現在各Lv.1です』
……なるほど、同じスキルを複数獲得しても、それぞれ単体で手に入るのか。
つまり、現在自分が持っているスキルは『酸・弱』が1つ、『斬撃・弱』が3つ。
同じスキルを複数所持するメリットはあるのだろうか。
固有スキルは、使い続けていくことで新たな力が解放される。
高校のダンジョン学で何度も学んだことだ。
恐らく、魔物と戦っていくうちに新しい機能や技が解放されていくのだろう。
早くスキルを使いこなせるようになりたければ、より多くの魔物を狩ればいい。
単純な話だ。
「……じゃ、とりあえず次はお前らだな」
俺の目の前には、再び数匹のスライムとブラック・バットが現れていた。
千里の道も一歩から。
俺は剣を構えつつ、新しく手に入れた『斬撃』を繰り出した。
― ― ― ― ―
『新たな機能、『強化』が追加されました。同名スキルを合体させることで、スキルのレベルを上げることが出来ます』
今までとは一味違った脳内音声に、俺は思わず動きを止めた。
さっきからスライムとブラック・バットを狩り続けること、約30分。
最下級の魔物たちなので、探索者となった俺には雑草駆除に毛が生えた程度の作業ではあったが、これだけ続けると息も上がってくる。
しかし、その分スキルの数は溜まった。
そんな折に『強化』獲得のお知らせと来た。
何というか、報酬を貰えたみたいだ。
とりあえず脳内音声に従い、両手に同じスキル・酸を発現し、それをくっつけてみる。
「これ……でいいのか?」
『酸・弱がLv.2になりました』
「おお……?」
実際に魔物へ使ってみないことには強化の度合いはわからないが、とりあえずレベルは上げるだけ上げておいた方が得だろう。
俺は両手に酸や斬撃を次々と出現させ、強化していった。
『酸・弱がLv.10になりました』
『斬撃・弱がLv.12になりました』
ひとまず、手持ちの同名スキルは全て一つにまとめた。
しかし、レベルの上限ってどれほどなんだろうか。99か100か。
名称に弱、とついてるということは、中や強もあるのだろう。
そこら辺も強化し続ければ、やがて詳しくわかるはずだ。
「それにしても、だな」
少しずつ自分が強くなっていってるのはわかるが、なにぶん敵はビギナーダンジョンの魔物。どれだけ強くなっても、倒した時の手ごたえがほぼ同じだ。
正直、今のところ『収集癖』で集めたスキルを使わなくても魔物を倒せているし、もう少し歯ごたえのある戦いがしたいところである。
「……あれ。行き止まりか」
そんなことを考えつつ進んでいたが、外れの道に辿り着いてしまったようだ。
俺の目の前は今、無愛想な茶色い壁に道を塞がれている。
「はぁ~クソ、戻るかぁ」
ビギナーダンジョンの攻略に飽き始めていた俺は、裏拳で軽く壁を殴ると、来た道を戻ろうとした。
しかし。
「っ!?」
突然、立っていた地面が崩落し、俺は暗い穴の中へと吸い込まれた。
暗闇の中へ落ちた俺は、瞬時に体勢を立て直し、辺りを見回す。
何だ、何が起きた。
ビギナーダンジョンにトラップの類は一切ない。
ただ低級の魔物が道に沿って出続けるだけだ。
そう受付嬢のお姉さんから教わっている。
つまり、これは明らかな
そして、ダンジョン内での異常事態と言えば、とある有名なものを思い出す。
「ユニークモンスター……!」
俺が異常事態の正体に気付くと同時、暗闇が一気に明るくなり、視界が開けた。
体育館ほどの整地された空間。
そこには俺の読み通り、ユニークモンスター……ゴルド・ゴーレムが待ち構えていた。
ユニークモンスターとは、ダンジョンに一定確率で出現するレアな魔物のことである。
レアな魔物なだけに、発生するダンジョンのランクからは1,2段ランクが上だ。
ゴルド・ゴーレムもそのうちの1体だ。金色の岩を組み合わせて出来た、巨人型の魔物。推定C級。
通常、ビギナーダンジョンではユニークモンスターは現れないとされている。
ダンジョンの性質が著しく変わったのだろうか。
とにかく、これは探索者協会に報告しなければいけない事案だ。
……だが、その前に。
「どうやら、お前とタイマンで戦わないといけないみたいだな」
監視員の待機地点からただでさえ離れていた上、そこからさらに深く落ちた場所に俺はいる。
助けを求める声を上げても届かないだろう。
しかし、これは正直願ってもないチャンスだ。
今まで強化し続けたスキルを、存分に試すことが出来る。
「やってやろうじゃねぇの……!」
心臓がドクドクと脈打つ音が聞こえる。
目の前には今までにない強敵。
俺の手には、ロングソードと強化されたスキルが2つ。
『収集癖』の真価を試す時だ。
「オオオオオオオオオオ!!」
ゴルド・ゴーレムは雄たけびを上げると、俺を屠るため、一直線に突進してくる。
「『斬撃』!!」
俺はゴーレムへ向けて指をさすと、魔力を存分に充填して斬撃を放った。
一発。
二発。
三発。
俺がゴーレムの突進をギリギリで回避すると同時、斬撃を受けたゴーレムの右腕は木っ端みじんに吹き飛んだ。
通用する。
俺のスキルは、C級魔物を倒せる。
強化したことで、魔物自身が使ってた時より格段に威力が上がっているらしい。
片腕が吹き飛んだゴーレムは、俺のことを本格的に脅威とみなしたようだ。
なりふり構わず腕を振るってくる。
俺は紙一重で回避し続けていたが、やがて一撃を食らってしまった。
「ぐぅッ!?」
魔力を込めた剣でガードはしたものの、とてつもなく重い一撃。
立っていることもままならず、数メートルほどゴロゴロと床を転がっていく。
喉元からせり上がったモノを吐くと、それは血だった。
このまま回復せずに戦い続ければ、俺の命はない。
こちらの攻撃はゴーレムに通用するが、ゴーレムの攻撃は俺を一撃で屠る可能性がある。
油断すれば、次の一撃で倒されかねない……これはそういう戦いだった。
しかし、頭に過る『死』の文字とは裏腹に、俺は当然だとも考えていた。
「そうだよな……探索者になったばかりのE級と、C級魔物だったらこれぐらいの差は当然だ」
よろよろと立ち上がりながら、俺は再び剣を構える。
ここで死ぬ可能性もある。
そんな状況なのに、俺はただゴーレムだけを見据えていた。
探索者は、血生臭い職業だと覚悟していたのはある。
しかし、それ以上に俺は、ゴーレムを倒す方法を探ることで『生き延びる道』を得たかった。
死に怯えるよりも、目前の脅威を切り抜ける事を考えたかった。
俺が憧れていたカッコいい探索者は、そんな人たちだったから。
ビギナーダンジョンでこんな経験が出来たのは、僥倖とさえ思う。
改めて、探索者という仕事に対して覚悟を持てた。
「さぁ……いくぜ!!」
俺はありったけの力を足に込め、ゴーレムへ向けて駆け出す。
そんな俺を迎え撃たんと、ゴーレムは岩を生成し飛ばしてくる。
「『斬撃』!!」
右から二つ、左から一つ、正面から二つ。
俺を押し潰さんと迫る岩石を、斬撃で粉々にする。
「『酸』!!」
高水圧の水鉄砲のように右手から酸を撃ちだし、ゴーレムの頭部へ当てた。
酸によって急速に頭部が溶けていくが、ゴーレムはそれでも倒れない。
ゴーレムの弱点は頭部だったはずだ。
となると、酸で溶かした程度では致命傷たりえないのだろう。
「だったら!」
ゴーレムの迫りくる殴打をギリギリで流しつつ、跳躍する。
「『斬撃』!!」
斬撃を発射しながら、俺はゴーレムの頭部を両断せんと剣を振りかぶった。
「うおおおおおおおお!!」
一閃。
俺が地面に着地すると同時、ゴーレムは粉々に破壊された。
荒い息をつき、痛む体を何とか立たせながらも俺はゆっくりと笑う。
「……はは」
『収集癖』があったからこそ、勝つことができた。
それぐらいの、ギリギリの戦いだった。
E級探索者として初めて潜ったダンジョンで、C級魔物を倒す大金星。
自分がやったとは思えないような華々しい戦果を、俺は今日手にした。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
<保有スキル>
■酸・弱(Lv.10)
■斬撃・弱(Lv.12)