スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜 作:有本カズヒロ
「まさか、ポーション飲むことになるとはな」
俺は、ウエストポーチから緑色の液体が入った小瓶……ポーションを取り出すと、キャップを開けて一気に口へ流し込んだ。
化学調味料で構成された甘味をほのかに感じた後、スッと体の痛みが引いていく。
ポーション一本分では全快とまではいかないが、先ほどの戦いで負った傷もある程度癒えるらしい。
……それにしても、落ち着いて考えると今の俺がC級のゴーレムを倒せたのは奇跡としか言いようがない。
探索者適性判定を受けるまでの俺は、高校で探索者の実技授業など受けることもなかった。
「探索者になったらこういう風に戦えればいいな~」みたいな妄想をしたことはあっても、それぐらいだ。
むしろ、その妄想に近い動きが出来たので、俺に探索者の才能があるということなのかもしれない。
俺は探索者を始めたばかりなので、今は当然最下級のE級だ。
だが、これからは積極的に昇級試験を受けていきたい。
本当にS級探索者になれるのも夢ではなさそうだ。ワクワクする。
「……と、そうだ。ゴーレムのスキルも頂いてかないとな」
俺はゴーレムの残骸に歩み寄り、中から魔石を拾い出す。
手に持つと、スライムやバットと同じように、ゴーレムの魔力が体に流れ込んできた。
『
「お、初めて『中』が出たな。やっぱC級ともなるとスキルも強くなるか」
また新たなスキルをゲットして達成感に浸っていると、ふと残骸の中に一際光る黄色の宝石を見つけた。
「なんだコレ」
かがんで拾い上げてみる。
イチゴ一粒ほどの大きさのそれを見ていると、ふと授業で習ったことを思い出した。
『ユニークモンスターを倒すと、特別なアイテムや武器を落とすことがある』
「これがその特別なアイテム、ってやつか?」
スキルを手に入れた時とは違い、脳内音声は流れてくれない。
これは探索者協会で効果を調べてもらおう。
俺はウエストポーチに宝石をしまうと、来た道を戻るため崩落部分を慎重に登り始めた。
― ― ― ― ―
「ビギナーダンジョンでユニークモンスターが出たぁ!?」
ダンジョンから戻り、探索者協会でユニークモンスターの報告をすると、受付嬢のお姉さんは目玉が飛び出さんばかりに身を乗り出してきた。
「え、え、それマジで言ってるの!? ゴルド・ゴーレムが!? 初心者向けダンジョンに!?」
「俺もマジでビビりましたよ。初探索でいきなりC級魔物と戦うことになるなんて」
「戦って……ここまで帰って来たってことは、もしかして勝ったの……!?」
「はい。ギリギリでしたけどね」
「す、すごいわキミ。とんでもない逸材だわ」
お姉さんはどうやら相当ショックを受けたらしく、へなへなと椅子に座り込むと俺の顔を凝視してきた。
俺自身もC級を討伐出来てかなりラッキーだったな、とは思ってたけど、探索者に関わる人間からするとラッキーどころの話ではないらしい。
それだけ、ランク間の力の差は大きいのだろう。
というワケで、ユニークモンスターが出るようなダンジョンに、初心者は入れられない。
俺が入ったビギナーダンジョンをしばらく封鎖するため、お姉さんは上層部へと連絡を取った。
その後、俺は大事なことを思い出す。
ポーチから宝石を取り出し、お姉さんに渡した。
「そうだ。ゴーレム倒したら、中からこんな宝石が出てきたんですけど、どういう能力か調べてもらえませんか?」
「ゴルド・ゴーレムから出た黄色い宝石ね。了解。ちょっとデータ参照してみるわ」
パソコンで調べてもらう間、近くで座って待つこと5分。
「わかった。この宝石は……固有スキルを強化する効果があるみたい。指輪とかに加工してもらったらいいんじゃないかしら」
「なるほど」
固有スキル強化か。レベルを上げたスキルに更にバフが乗ると考えたら、結構良いかもしれない。
「とりあえず、今回の探索で得た魔石を引き取るわね。さっきの講習でも説明した通り、魔石は探索者協会専用のポイントに変換できる。現金に替えたい場合は、それ用の換金所に行ってね」
「わかりました、ありがとうございます」
魔石→ポイント→現金の変換方法は回りくどいと思ってたけど、講習曰く『探索者装備を現金よりもポイントで買った方が、安く済むシステムが世界的に出来上がっている。そのため、魔石の取得と探索をより高速度で回せるようになってる』らしい。
もらったポイントカードを懐に仕舞っていると、お姉さんが話しかけてくる。
「ねえ、あなた
「どうする、って今日はもう帰ろうと思ってますけど」
「違う違う。探索活動についてよ。初めての探索でC級魔物を倒せる人なんてそうそういない。高校生でその実力なら、将来は有名クランに入れる可能性だってある」
「そんなにですか? 俺としては、ビギナーズラック程度にしか思ってないんですけど」
「ただの幸運で初心者がC級狩れないわよ。私の方から、すぐにでもランク昇格試験を受けられるように打診しておきましょうか? 今のE級状態では、高ランクのダンジョンにはまだ入れないし」
「マジですか! ありがとうございます、よろしくお願いします!」
俺が笑顔になると、お姉さんも微笑する。
「実力のある探索者が増えてくれるのは、私も嬉しいからね。ただ、すぐと言っても許可をもらうまで時間はかかるから、2週間ぐらいは覚悟してね」
「いやいや、勿論! 2週間はめちゃくちゃ早いですよ!」
ひとしきりお姉さんにお礼を言った後、俺は探索者協会を後にした。
初めての探索で、まさかここまで順調にいくとは。
気付けばすっかり夜になっている。
「しまった、母さんに連絡するの忘れてた……!」
もう夕飯の用意なんてとっくに済んでる時間だ。
怒ってるに違いない。
俺は慌てて、自宅への道を急いだ。
― ― ― ― ―
「探索者適性アリだとわかって、そのままダンジョンに直行した!?」
俺が家に帰ると、案の定母さんはカンカンに怒っていた。
リビングで正座させられ、漫画のようなお説教状態に突入している。
「ま、前から探索者には憧れてたからさ……母さんだって知ってるだろ?」
「そりゃそうだけど、家に帰って一言ぐらい言ってから行きなさいよ!」
魔物と戦うより肉親に怒られる方がよっぽど怖いと、俺は痛感する。
しかし、母さんも母さんだ。
俺が探索者として魔物と戦うことを怒るより、何も言わず外をほっつき歩いてたことの方を怒るなんて。
「俺が探索で怪我したことについては……怒らない?」
「? そりゃ、探索者に怪我はつきものでしょ。死ななきゃいいわよ」
「ご、豪胆だなあ」
「まあ、お父さんもアンタと似たところがあったからね。もう慣れっこ」
母さんはそう言うと、俺の近くにあった仏壇を見る。
そこには、父さんの写真が飾られている。
「とにかく、次からはちゃんとどこに行くか、何時には帰るか連絡してから行きなさいよ。電話か何かでもいいから。わかった!?」
「わかりました……」
そんな俺と母さんを、テーブルに座っていた妹のミサはうんざりした目で見ていた。
「ねぇもう早く食べようよー。ただでさえ遅いんだからさ、もうお腹ペコペコだよ」
「……そうね。じゃあ食べましょうか」
ホッと一息つき、俺は夕飯の卓に座る。
三人で頂きますと手を合わせ、食べ始める。
ダンジョンで存分に動いた俺にとって、夕飯のシチューは何よりのご馳走だった。
シチューをバクバク食べながら、俺は今日の探索を思い返す。
今回は珍しくユニークモンスターと出会えたが、こんなことはそうそう起こらないはずだ。
お姉さんにお願いした昇格試験の許可が出るまで、しばらくは大人しく手持ちスキルのレベル上げでもしよう。
そんなことを呑気に考えていた。
しかし、予想とは裏腹に怒涛の日々が始まるとは……この時の俺は思ってもみなかった。
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<保有スキル>
■酸・弱(Lv.10)
■斬撃・弱(Lv.12)
■岩石破・中(Lv.1)
<保有武器・アイテム>
■ゴルド・ゴーレムの宝石(固有スキルの能力上昇)