スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜 作:有本カズヒロ
『
合成が終わると、いつものように脳内音声が流れて来た。
酸と斬撃を合わせると、酸性斬撃になる……割とそのままの名前だな。
だが酸や斬撃の時に付いていた、『弱』が無くなっている。
レベルによる強化のみに統一されたのか?
「とりあえず撃ってみるか。『酸性斬撃』!」
俺は壁に向けて、スキルを放った。
酸性斬撃を当てた壁は、まず斬撃によりピシリと亀裂が走る。
そして、その亀裂からジワジワと酸が侵食していった。
一度に二つのスキルを放てるようなものらしい。
結構便利だな。威力も合体させてから上がってる気がする。
一瞬、『手持ちのスキルを全て合成すれば、より強くなるんじゃないか?』という考えが浮かぶ。
しかし、合成を繰り返したキメラスキル1つを持つのみでは、それが効かない相手に出会った時に詰んでしまう。
合成や強化は積極的に使うべきだが、やたらめったら1つに統合するのは避けておこう。
― ― ― ― ―
酸性斬撃を獲得したのち、俺はダンジョンで出会う魔物全てを倒し、それぞれの魔石を拾っていった。
結果、手に入れたスキルは以下の通り。
レッド・スネークの『火炎・弱(Lv.5)』。
ブルー・スネークの『氷結・弱(Lv.5)』。
ヘビー・バットの『重力・弱(Lv.7)』。
ウィーク・フロッグの『弱体化・弱(Lv.3)』。
そして、スライムとブラック・バットにも何体か遭遇したため、スキルを回収。
『酸・弱(Lv.4)』と『斬撃・弱(Lv.5)』を再び手に入れた。
酸性斬撃を持っている俺には不要だと思っていたが、どうやら酸性斬撃の強化に使えるらしい。
ということで、全て強化につぎ込み『酸性斬撃(Lv.15)』を獲得した。
「いや~、大分強くなったんじゃないか?」
俺は両手に次々スキルを出現させながら、使用感を確かめる。
身体能力だけでは、部長のようなB級探索者には及ばないが、スキル込みならあまり負ける気がしない。
明日また、部長に組手を頼みに行ってもいいかも……そんなことを考えていると、奥から少女の悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ!?」
魔物にやられたのか?と悲鳴のする方向へ急ぐと、同時に数人の男が恫喝するような声も聞こえてきた。
嫌な予感がする。
視界が開けると、そこには一人の少女探索者を囲み、五人の男性探索者の姿があった。
まさか、ダンジョンの中で少女を襲おうとしているのか?
「おい!! 何やってんだよお前ら!!」
ギロリとこちらを睨んでくる男たちに、俺は嫌な気分になるが、ここで少女を見捨てるわけにはいかない。
そんな風に思ってると、探索者のうち一人……大柄な三十代ぐらいの男が、ニヤニヤと笑いながらこちらへ歩いてきた。
「何だお前? お前もE級か?」
「E級だったらなんだよ」
「いいこと教えてやるよ。俺らはな……E級狩りだ」
E級狩り……いや、探索者狩り。
初心者講習で少し聞いた話だ。
探索者の中には、ランクに似合わず高級な装備を持つ人間がたまに存在する。
元々金を持っていたり、ベテランの探索者から装備を受け継ぐ人もいるからだ。
探索者狩りは、そんな人間を集団で襲う下種な探索者のことだ。
確かに、よくよく見てみれば、少女の装備はシンプルながら高級感溢れる作りだった。
ぱっと見ゴージャスな感じではないが、周囲の男たちが装備しているものとは輝きが違う。黒を基調とした上品なものだった。
「た、助けてくださ……っ!」
少女はこちらに手を伸ばすが、それを男たちに睨まれ、怯えたように縮こまる。
探索者狩りに襲われ、装備を剝ぎ取られた探索者は殺されてしまう。
口封じのためだ。
この場で男たちを倒し、少女を助けなければならない。
剣を構えた俺を見て、男たちはバカにしたように笑う。
「俺たちは全員D級だぜ!? E級一人が何をしようが勝てねぇ……よッ!!」
大柄な男は斧を片手で操り、俺の首を刎ね飛ばさんと振るってくる。
しかし、攻撃自体は緩慢だ。
既にC級を倒せる俺からすれば、容易く避けられる。
そのまま、剣の柄を利用して男の横っ面を思い切り殴り飛ばした。
「ぐへあっ!?」
空中をきりもみ回転した男は、後方に吹き飛んでいく。
凶悪な犯罪者といえど、自分の手で殺すのはやはり忌避感がある。
魔物と人間は違う。それが俺の線引きだ。
殺さない程度に無力化して、探索者協会まで連絡する。
「てめぇ!」
残りの四人が、一斉に襲い掛かって来る。
しかし、今度は避けるまでもない。
「『岩石破』!!」
それぞれに一発ずつ、岩石を発射する。
途端に吹き飛んでいく、四人の探索者たち。
「集団で1人を襲うような奴らなんか、たかが知れてるな」
俺は倒れた男たちを見てため息をつくと、少女まで駆け寄った。
「大丈夫か?」
近くで見ると、ユイカ先輩に負けず劣らず可愛い。
ボブカットの金髪に、エメラルドのような緑の眼を持っていた。海外の人だろうか。
しかし、手を差し伸べる俺を少女は恐怖の目で見つめている。
男たちをボコボコにしたことで、怖がらせてしまっただろうか。
「ま、まだ、終わって……」
少女が言いかけた言葉と、背後から立ち上る殺気に俺は戦慄する。
振り向くと、先ほどの五人とは違う、長身でやつれた男がそこにいた。
倒れた男たちを抱き起し、状況を確かめている。
「だ、誰だよお前」
男は倒れている奴らの顔を丁寧に見ていくと、立ち上がってこちらを睨んできた。
「こいつら、さ。俺の後輩なんだよ」
「……はぁ?」
「探索者狩りをしたがるような、しょうもない奴らだけどさ。俺はコイツらとバカやってる時が一番楽しいんだ」
「……」
「ちょっと用を足してる間に、俺の楽しみを奪ったんだ。相応の報いを受けてもらう」
「お前が、探索者狩りのリーダーってことかよ」
「ああ。B級の力で、今からお前をねじ伏せる」
瞬間。
やつれた男は俺の視界から消えていた。
同時に、俺の顔が殴り飛ばされる。
「ッ!」
痛みと共に、俺は少し緊張していた。
B級、この男はB級と言った。何より、スピードがソウ部長と全く同じだ。
ソウ部長と再戦する前に、B級との戦闘機会が訪れたのだ。
相手がB級レベルなら、剣で戦おうとしても、太刀打ちできずに追い込まれるだろう。
なら……スキルを使う。
よろめいた俺を追撃と言わんばかりに、男は連続で蹴りを放ってくる。
それを俺は、逆に地面に倒れ込んで回避し、同時に掌を向けた。
「『酸性斬撃』!!」
男が反応し避けるまで、とにかくありったけの量の斬撃を叩き込む。
「チッ」
男はすぐに距離をとってくるが、既に防御の薄い部分に斬撃は叩き込まれている。
斬撃によってできた傷から、ジワジワと酸のダメージが広がっていくはずだ。
酸性斬撃は傷口に塩を塗るがごとく、裂傷をさらに酸で重傷化させられる点が強みだった。
だが、B級の男はそれだけでは止まらない。
再び距離を詰め、俺の体に大量の打撃を浴びせてくる。
男の拳に白い光が灯っているのを見るに、相手は恐らく身体強化系のスキルだ。
飛び道具的な能力だと厄介だったが、これなら俺の『収集癖』で押し切れる。
「『火炎』『氷結』『岩石破』!!」
出せるものをありったけ放出して、男に叩き込む。
至近距離にいた男は、それらをモロに喰らい、よろめいた。
「ッ……属性攻撃のデパートかよ、お前!」
男は体勢を立て直しながら吠える。
しかし、もう会話には取り合わない。
とにかく僅かでも隙をついて、最善手を叩き込んでやる。
「『重力』!!『弱体化』!!」
男の周囲、半径3メートル程度の空間に重力を付与し、さらに男にデバフ能力の『弱体化』をかけた。
これでその場からほぼ動けないだろう。
「ぐっ……何なんだよ……!?」
それでも男は、地面に亀裂を走らせながらゆっくりとこちらへ向かってくる。
だが、それももう終わりだ。
「俺はただのE級探索者だよ……今はな!!」
両掌を合わせ、魔力出力を最大にする。
「『岩石破』!!」
俺の身長よりも巨大な、2メートル四方ほどある岩石が、男へ向かって発射される。
「ぐあッ!?」
男を捉えたまま壁へ突撃し、ぐしゃりと押しつぶした。
「はぁ、はぁ……」
魔力を大量に消費しつつ、俺は勝利をもぎ取った。
岩に押しつぶされた男に歩み寄り、一応生きてるかを確認する。
「……なんとか無事か」
流石はB級。こんなデカい岩の攻撃を受けても、辛うじて生きてるようだ。
まあ、これから生きて罪を償ってもらおう。
「さて、これで終わりか?」
俺は少女の方を向くと、微かに笑った。
少女は涙で瞳を滲ませながら、俺に駆け寄った。
「あ、ありがとうございまずう……!」
「はは」
抱きつかんばかりに近寄り、両手でぶんぶんとお礼の握手をしてくる少女に、俺は何だか照れくさくなるのだった。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
<保有スキル>
■酸性斬撃(Lv.15)
■岩石破・中(Lv.1)
■火炎・弱(Lv.5)
■氷結・弱(Lv.5)
■重力・弱(Lv.7)
■弱体化・弱(Lv.3)
<保有武器・アイテム>
■ゴルド・ゴーレムの宝石(固有スキルの能力上昇)