翌日。
私達は再び、昨日の山道を走っていました。昨日と違うのは、歩いていないことです。車というものは素晴らしい。文明万歳。車輪万歳。
「しぐれちゃん、昨日のこと根に持ってる?」
運転席のこむぎさんが聞いてきました。
「別に」
「絶対持ってる!」
「前見てください」
「はい」
今回の目的は、昨日置いてきたケイちゃん二号の回収です。
メンバーは四人。運転担当のこむぎさん。整備と回収担当のくるみさん。護衛担当のあずきさん。そして私。
「なんで私も来たんでしょう」
「昨日二号を置いた場所知ってるからじゃない?」
助手席のくるみさんが答えます。
「こむぎさんも知ってますよ」
「念のためだよ」
「信用されてませんね」
「昨日ガス欠した人だからね」
「まだ言う!?」
「昨日の今日だよ?」
「反省してます!」
こむぎさんはそう言いながら運転しています。
ちなみに今回は荷台に予備のガソリンが積まれています。十リットルの携行缶三本です。
「多くない?」
こむぎさんが出発前に言っていました。
「誰のせいだと思ってるの?」
くるみさんにそう返されていました。
当然ですね。ガス欠を起こした人の目分量は信頼できません。昨日学びました。
「今日は楽しみだな」
荷台からあずきさんの声がします。
「久しぶりの遠征だ」
「遠征を楽しみにする人、初めて見ました」
「最近留守番ばかりだったからな」
「学校を守る大事な仕事ですよ」
「分かってる」
分かってはいるようです。ただ声が妙に弾んでいます。嫌な予感がします。
「……ん?」
そのとき、こむぎさんが速度を落としました。
「何です?」
「前見てみて」
道路の先に何かがいます。
「ゾンビかい?」
くるみさんが目を細めます。道路いっぱいに広がるように、ゾンビ達が歩いています。
十体ぐらいかと思ったらその背後にもたくさんいます。ぱっと見三十体くらいです。なんでこんなたくさん歩いているのでしょう。
「うわぁ……」
こむぎさんが顔をしかめました。
「多いね」
「徘徊の群れか」
荷台から道路を見ていたあずきさんが言いました。
「久しぶりに見たな」
「徘徊?」
私は聞き返します。
「知らないのか?」
「聞いたことはありますけど、見るのは初めてです」
この世界のゾンビは、基本的に一定の範囲をふらふらと歩き回っています。
建物の中や道路、住宅地など、人がいた場所。そして倒されても、しばらくすると何処からともなく再び現れます。いわゆるリポップです。
ですがたまに普段とは違う行動をするゾンビ達が現れます。
「定着せずに、群れでずっと移動してる奴らだ」
あずきさんが言います。
「何処かから現れて、そのまま同じ方向へ歩いていく」
「目的地は?」
「知らん」
「何しに行くんです?」
「知らん」
「何も知らないじゃないですか」
「ゾンビに聞け」
「まだゾンビ化したことないので会話できません」
道路を歩くゾンビ達は、こちらに気付いていません。三十体ほどがゆっくりと同じ方向へ進んでいます。
「どうする?」
くるみさんが聞きます。
「一本道だね」
こむぎさんが周囲を確認します。
右は山。
左も山。
そして道路の正面にはゾンビ。
「……轢いてく?」
「駄目!」
くるみさんが即答しました。
「早い!」
「絶対駄目!」
「三十体くらい行けるって!」
「壊れるから!」
「でも車だよ!?」
「車はゾンビを轢くために作られてないの!」
「そうなの!?」
「そうだよ!」
当然でしょう。というか。
「ケイちゃん一号、やっと直したばかりですよね」
「そう!」
くるみさんが強く頷きました。
「昨日やっと走るようになったんだから!」
「じゃあ二号で」
「今から回収しに行くんだよ!」
「そうだった!」
こむぎさん、もう忘れていました。誰のせいで回収に行く羽目になっていると思っているのでしょうか。
「仕方ないな」
あずきさんが荷台から飛び降ります。手にはいつもの武器のスレッジハンマー。
「片付けてくる」
「一人で?」
「三十体程度だろ?」
「三十体ですよ?」
「問題ない」
言葉が通じません。まだゴリラさんのほうが言葉が通じそうです。
「まあ、あずきなら大丈夫か」
くるみさんが言いました。
「僕達も出る?」
「一応出ましょう」
車を道路脇へ停めます。私達三人も武器を持って降りました。その間にあずきさんはゾンビの群れに突撃していきます。雄叫びを上げて、もはや狂戦士です。
「もう行ったよ」
「元気だねぇ」
「久しぶりの遠征ですからね」
ゾンビ達があずきさんに気付きます。一斉に振り返りました。
「来い!」
最初の一体目。あずきさんが武器を振り抜きます。頭部が吹っ飛んでいきました。頭部を失ったゾンビが倒れます。二体目。あずきさんの攻撃。倒れます。三体目。あずきさんの会心の一撃。吹っ飛びます。
私達は車の横で眺めていました。
「これ」
こむぎさんが言います。
「私達いらなくない?」
「僕も今そう思った」
「私もです」
なおもあずきさんがゾンビの群れへ突っ込んでいきます。次々とゾンビが倒れていきます。返り血と脳漿を浴びつつ前進していきます。その顔には笑みが浮かんでいます。はっきり言ってゾンビより恐ろしいです。工場のボスとタイマン張れるのではないでしょうか。
「楽しそうですね」
「楽しそうだね」
「ちょっと怖いよね」
「本人に言わないほうがいいですよ」
「分かってる」
私達は平和です。
「ん?」
一体だけ群れから外れたゾンビがこちらへ歩いてきました。
「あ」
こむぎさんが指差します。
「一体来た」
「僕達の分かな」
くるみさんが言いました。
「せっかくですし」
私は槍を構えます。
「倒しますか」
「よし!」
こむぎさんがバールを構えました。
三人でゾンビを囲みます。
「それ!」
くるみさんがゾンビの目に改造ネイルガンを数発打ち込みます。
「えいっ!」
こむぎさんがゾンビの膝の皿を叩き割りました。ゾンビが倒れます。
「はい」
倒れたところに私が後頭部に槍を突き立てました。ゾンビが動かなくなりました。
私達は倒れたゾンビを見ます。
「三人でやる必要あった?」
くるみさんが聞きました。
「ありませんでしたね」
「なんかかわいそう」
「ゾンビですよ」
「でも三対一だよ?」
「向こうはさっき三十対一でしたよ」
「あずきちゃんだからノーカウント!」
なんですかその理屈。
「終わったぞ」
あずきさんの声がしました。振り返ります。
「え?」
道路の上に三十体ほどいたゾンビが全部倒れていました。その真ん中に、あずきさんが仁王立ちしています。セーラー服が血まみれです。黒いセーラー服なので目立ちませんが、白のセーラー服なら大量殺人鬼に見えたことでしょう。
「早っ」
こむぎさんが呟きました。
「もう終わったんですか?」
「ああ」
「疲れてません?」
「全然」
「そうですか」
聞いた私が馬鹿でした。
「久しぶりに身体動かせたな」
あずきさんが満足そうに言います。
「よかったですね」
「次はもっと多くてもいいな」
「よくないです」
「今なら五十くらいなら――」
「増やさないでください」
話を強引に切りました。こうして道路掃除はあっという間に終わりました。
私達は車に乗り込み、再びケイちゃん二号を目指して走り始めました。
♢
それから、しばらくして。
「……また?」
こむぎさんが速度を落としました。
前方、道路の先に、またゾンビ達がいます。
「徘徊の群れだね」
くるみさんが言います。
「今日多くない?」
「たまたまだろ」
あずきさんは嬉しそうです。
「また片付けるか?」
「待ってください」
私は道路の先を見ました。今度の群れも同じ方向に向かっています。
「どうしたの?」
くるみさんが聞きます。
「このゾンビ達、何処に向かってるんでしょう」
「さあ?」
「さっきの群れも、こっちの方向でしたよね」
「そうだね」
「偶然でしょうか」
私は少し考えます。ゾンビは基本的に、意味もなく歩き回っています。なのに徘徊ゾンビは、群れで同じ方向へ移動します。
「もしかして理由があるんじゃないですか?」
「理由?」
こむぎさんが首を傾げます。
「ゾンビにも旅行したい時あるんじゃない?」
「あなたと一緒にしないでください」
「酷い!」
くるみさんが顎に手を当てました。
「理由か……」
「はい」
「例えば?」
こむぎさんが聞きます。
「分かりません」
「何も考えてなかった!」
失礼な。
「今から考えるんです」
「なるほど」
くるみさんも道路を歩くゾンビ達を見ます。
「……補充とか?」
「補充?」
「ゾンビが減った場所に移動してるとか」
「ゾンビの補充ですか?」
「この世界、ゾンビがリポップするでしょ」
「はい」
「でも全部その場で突然出現するとは限らないんじゃない?」
「なるほど」
ゾンビが大量に倒された地域。そこへ別の場所からゾンビが移動する。
「徘徊ホード自体が、ゾンビの数を均等にする仕組み?」
「ただの予想だけどね」
「ゲームっぽいですね」
「世界自体ゲームっぽいからね」
否定できません。
「でも」
こむぎさんが言います。
「それなら、この先でゾンビ減ってるってこと?」
「そうなるな」
あずきさんが答えます。
「誰かが倒したとか?」
「それか」
くるみさんが続けます。
「何か大きなイベントが起きたとか」
嫌な予感がします。その時でした。
「あれ」
こむぎさんが前方を指差します。道路の向こうの山を下った先。そこには小さな街があります。
「……何です、あれ」
道路脇。林の中。建物の影。様々な場所からゾンビが姿を現しています。それぞれ別の場所から現れたゾンビ達がゆっくりと同じ場所へ向かっています。
「街?」
くるみさんが呟きました。
間違いありません。大量のゾンビが街へ向かって歩いています。
「……もしかして当たり?」
こむぎさんが聞きました。
「分かりません」
私は答えます。ゾンビ達の進む先を見ます。
「でも何かありそうですね」
「じゃあ行くか」
あずきさんが言いました。
「なんで嬉しそうなんですか」
「ゾンビが多そうだから」
「目的変わってますよ」
私達の目的はケイちゃん二号の回収。ただそれだけだったはずです。なのにどうやらまた面倒なことに巻き込まれそうなのでした。
♢
「この先の街さ」
くるみさんが、ゾンビ達の向かう先を見ながら言いました。
「中学校があるんだよね」
「中学校?」
私は聞き返します。
「うん。そんなに大きくないけど」
「じゃあ」
こむぎさんが反応しました。
「私達の高校と同じで、プレイヤーがいるかもしれないってこと?」
「可能性はあるね」
私達の学校にも、生き残ったプレイヤーが集まっていました。ならば中学校にも集まっている可能性は十分あります。
「行ってみます?」
「そうだな」
あずきさんが言いました。
「二号の回収は?」
こむぎさんが聞きます。
「中学校を確認してからでいいんじゃない?」
くるみさんが答えました。
「すぐそこだし」
「賛成!」
そんなわけで私達は予定を少し変更して、街へ向かうことになりました。
♢
「多いですね」
「多いな!」
あずきさんが嬉しそうです。やっぱこのひと、狂戦士です。
「なんで喜んでるんですか」
「久しぶりだからな!」
街へ入るにつれて、ゾンビの数は増えていきました。数体という程度ではありません。道路のあちこちを、十体以上のゾンビが歩いています。
「本当に補充されてるみたいだね」
くるみさんが言いました。
「昨日とか一昨日くらいに、かなり倒されたのかも」
「でも誰が?」
「それを確認しに行くんだよ」
なるほど。
「来たぞ!」
あずきさんが前へ出ます。ゾンビ達がこちらへ向かってきました。
「おらぁ!」
あずきさんの一撃で一体が吹き飛びます。人間ってあんな風に飛ぶものなのでしょうか。漫画じゃあるまいし。いや、ゲームではありますけど。
「やっぱり元気ですね」
「留守番続きだったからねぇ」
くるみさんが苦笑しています。
「私達も行くよ!」
こむぎさんがバールを構えます。
「はい」
私は槍を構えました。今度はさすがに、あずきさん一人へ全部任せるわけにはいきません。道路を塞ぐゾンビを倒しながら。少しずつ街の中心へ進んでいきます。
「右!」
「分かってる!」
こむぎさんがバールを振り下ろします。
「しぐれちゃん!」
「はい!」
こちらへ来た一体の足を槍で払います。転倒しました。
「いただき!」
こむぎさんが頭へ一撃。ゾンビは動かなくなりました。
「一体!」
「数えなくていいです!」
「ゲームっぽいじゃん!」
「今さらでしょう!」
さらに前では。
「十七!」
あずきさんが叫びました。
「数えてる人いた!」
「負けないよ!」
「張り合わないでください!」
「十八!」
「こっちは二!」
「勝負になってませんよ!」
どうしてゾンビ退治で競争が始まるのでしょう。
「二人とも前見て!」
くるみさんが注意します。
数十分後。私達はようやく目的の中学校へ辿り着きました。
「……これは」
正門の前で、私は足を止めました。
学校の周囲には大量のゾンビの死体が転がっています。新しいもの。少し古いもの。フェンスの一部は壊れ。校門には机や椅子が積み上げられていました。
「防戦した跡だね」
くるみさんが言います。
「窓も塞いである」
一階の窓には板や机が打ち付けられています。校舎の入口にも、机やロッカーで作った簡単なバリケードがあります。
「誰かいたんだな」
あずきさんが周囲を見回します。
「今もいるかな?」
「分かりません」
人の姿は見えません。
代わりに校庭を歩くゾンビ達がこちらへ気付きました。
「とりあえず片付けるか」
あずきさんが武器を構えます。
「そうだね」
くるみさんも頷きます。
中学校に人が残っているなら、ゾンビを放置するわけにもいきません。
「行きますよ!」
「おー!」
掃除開始です。
♢
「これで最後?」
こむぎさんが倒れたゾンビをバールで確認します。
「多分」
私は周囲を見ました。動いているゾンビはいません。
「意外と少なかったな」
あずきさんが残念そうに言います。
「十分いましたよ」
「もっといてもよかった」
「よくありません」
「……ん?」
くるみさんが何かに気付きました。
「どうしました?」
「あれ」
指差した先。校舎の脇に、二体のゾンビが倒れています。まだ動いていました。
「生き残りですね」
「いや」
くるみさんが近づきます。
「ちょっと違う」
「何が?」
こむぎさんも覗き込みます。二体とも、女子中学生くらいでしょうか。一人は赤い髪。もう一人は金髪です。服は噛まれてボロボロですが。皮膚は、他のゾンビほど腐敗していません。むしろ人間寄りの皮膚です。
「新しくない?」
「新しいですね」
周囲に転がっているゾンビとは明らかに状態が違います。
「……もしかして」
こむぎさんが言いました。
「この子らプレイヤーじゃない?」
「あり得るね」
くるみさんが二人を観察します。
「最近ゾンビになったプレイヤー」
「じゃあ」
私は槍を構えました。
「倒せばリスポーンします?」
「多分」
「試してみるか」
あずきさんが武器を持ち上げます。
「待ってください」
「なんだ?」
「もっと優しく殺してあげてください」
「ゾンビだぞ?」
「元人間ですよ」
「全部元人間だろ」
「そうでした」
「とりあえず」
私は槍を構えます。
「私がとどめ刺しますね」
二体のゾンビを手早く確実に倒しました。
そして数十秒後、校舎の二階の窓が開きました。誰かがいます。二人のようです。
「いた!」
こむぎさんが指差しました。
赤髪の女の子。そして金髪の女の子。二人とも生まれたままの姿でした。私達は黙って目を逸らします。
「リスポーンしたばかりですね」
「そうだね」
「服まで復活しないんだ」
「私達もそうじゃん」
「早く着てください!」
窓の向こうから声がしました。
「ちょっと待ってクダサーイ!」
外国人らしい女の子が叫びます。
「予備の服、着マース!」
「待ってます!」
「絶対見ないでクダサーイ!」
「見ませんよ!」
窓が勢いよく閉まりました。
「……外国人?」
こむぎさんが首を傾げます。
「みたいですね」
「日本の中学校に?」
「いてもおかしくはないでしょ」
くるみさんが言います。
「まあ、そうですね」
私達はしばらく校庭で待つことになりました。
♢
「お待たせしまシタ!」
数分後、校舎の入口から二人の女の子が出てきました。
「……ギター」
赤髪の少女が自分の死体へ近づきました。
「あ」
背負っていたエレキギターを回収します。
一方、外国人の少女も自分の死体から日本刀を拾い上げました。
「愛刀との再会デス!」
「自分の死体から拾う光景、すごいですね」
二人が自分の死体から武器を回収すると、自己紹介が始まります。
一人目は赤髪のボブカット。すごい猫背です。右耳にはいくつものピアス。白いセーラー服にカーディガンを羽織っています。背中にはエレキギターを担いでいます。
「……いちご」
赤髪の女の子あらためいちごさんが言いました。
「中二。よろしく」
「エレキギター?」
こむぎさんが聞きます。
「これ、武器」
「武器!?」
「殴ると結構強い」
「ギターってそういう楽器じゃないと思います」
「……ロック」
そういっていちごさんはサムズアップします。
「ロックって便利ですね」
そしてもう一人。金髪のサイドテールのセーラー服。こちらは、腰に日本刀を差しています。なんというか典型的な日本かぶれって感じです。
「私はカヌレと申しマス!」
胸に手を当て、頭を下げます。
「フランスから参りマシタ!」
「カヌレ」
「ハイ!」
「日本語上手ですね」
「日本、大好きデス!」
「なるほど」
「サムライ! ニンジャ! ブシドー! セップク!」
「最後のは好きにならなくていいです」
「日本人は学校へ刀を持って行くと聞きマシタ!」
「誰から聞いたんですか」
「インターネット!」
「嘘を教えられてますよ」
「なんト!?」
ものすごくショックを受けています。
「じゃあこの刀は?」
こむぎさんが聞きます。
「学校の近くに武道具のお店がありマシタ!」
「本物?」
「多分!」
「多分で振り回さないでください」
危ない外国人です。
「で」
くるみさんが二人を見ます。
「ここで二人だけで生活してたの?」
「……うん」
いちごさんが答えました。
「最初はもうちょっといた」
「減った?」
「……減った。復活しなかった」
あっさり言いました。リスポーンしなかったということはNPCだったのでしょう。
「……この街、元々人少ないし」
カヌレさんも頷きます。
「学校も生徒少なかったデス」
「だから」
いちごさんが肩をすくめました。
「油断した」
「そしたら?」
「……急に増えた」
「徘徊の群れだね」
くるみさんが言います。
「多分、それで一気に数が増えたんだ」
「最初は余裕」
いちごさんがギターを軽く叩きます。
「……さすがに二人じゃ無理」
「ワタシ達、頑張りマシタ!」
「頑張った結果ゾンビになったけど」
「結果は残念デシタ!」
「明るいですね」
「死んでも復活シマスカラ!」
「この世界に適応しすぎでは?」
私達より逞しいかもしれません。
「……それで」
いちごさんが、私達四人を順番に見ました。
「お願い」
「何?」
くるみさんが聞きます。
「……そっちの拠点、人数いる?」
「七人」
「おお」
「学校に住んでるよ」
「……じゃあさ」
いちごさんが両手を合わせました。
「……仲間に入れて?」
「お願いシマス!」
カヌレさんも頭を下げます。
「二人だけじゃ、また同じことになりそうデス!」
「どうする?」
くるみさんが私達を見ます。
「私はいいぞ」
あずきさんが即答しました。
「戦えるなら問題ない」
「私も賛成!」
こむぎさんも手を挙げます。
「人数多い方が楽しいし!」
「しぐれちゃんは?」
「いいんじゃないですか」
二人だけでここに残してまたゾンビになりました、では後味が悪すぎます。
「じゃあ決まりだね」
くるみさんが言いました。
「今日から一緒に来る?」
「行く」
「行きマス!」
「やったー!」
こむぎさんが喜びます。
「二人増えた!」
「これで九人ですね」
「賑やかになるな」
あずきさんも満足そうです。
そして。
「……あ」
くるみさんが何かに気付きました。
「どうしたの?」
こむぎさんが聞きます。
「ケイちゃん二号」
私達は顔を見合わせました。
そうでした。今日はケイちゃん二号を回収しに来たのです。
「どうする?」
「六人いるね」
「軽トラ一台ですよね」
「二号まで行けば二台になるけど」
「新入りが入った状態で、途中でまた何かあったら困るなぁ」
くるみさんが少し考えます。
そして。
「……今日は帰ろっか」
「また!?」
こむぎさんが叫びました。
「二号また置いてくの!?」
「仕方ないでしょ。二人増えたんだから」
「ケイちゃん二号ぉぉぉ!」
「別に逃げないよ」
「昨日からずっと置き去りだよ!」
「ガス欠させたの誰でしたっけ?」
「私です!」
「じゃあ文句言わない」
「はい!」
素直でよろしい。
「ケイちゃん二号?」
いちごさんが首を傾げます。
「……何それ」
「私達の軽トラです」
「愛車デスカ?」
カヌレさんが聞きます。
「大事な仲間です」
「……車だよね?」
「仲間です」
「……そっか」
納得するんですね。流石プレイヤーは適応が早いです。
こうして、ケイちゃん二号を回収するはずだった遠征は、二人の中学生を回収して終わることになりました。
赤髪。金髪。
エレキギター。日本刀。
私は新しい二人を見ます。濃い。ものすごく濃いです。
「しぐれちゃん!」
「はい?」
「私達、後輩できたね!」
こむぎさんが嬉しそうに言いました。
「私は小学生なので、二人とも先輩です」
「あっ」
「ヨロシク、しぐれチャン!」
「……よろしく」
「……先輩として何でも聞いて」
いちごさんが猫背のまま胸を張ります。意外と胸ありますね。
「では質問です」
「……はい」
「どうしてエレキギターでゾンビと戦ってるんです?」
「ロック」
サムズアップします。
「やっぱり聞く相手を間違えました」
どうやら学校は今まで以上に騒がしくなりそうです。