作戦会議室として改造された校長室の中に、学校のメンバー全員が集まっていました。今回の議題は前回救援物資の中から出てきた『工場の鍵(SSR)』の件についてです。
「この鍵は町外れにある工場の鍵だと思う」
あずきさんがテーブルの上に置いた地図と鍵を指差して言います。
「その根拠はあるのかい?」
腕組みをしながらくるみさんが言います。「はいはい!」とこむぎさんが手を上げます。
「ここの工場だけど大きい工場のくせに、入口のドアが一つしかないんだよ! 搬入口や搬出口のシャッターは溶接されてるし、その上あずきちゃんがスレッジハンマーでドアを何回もぶっ叩いても傷一つ付かなかったんだよ!」
「それはおかしいなぁ」
こむぎさんの言葉にさおりさんがやんわり同意します。
「ねー。メスゴリラのあずきちゃんが破れないなら誰にも無理だよねー!」
「こむぎ。次メスゴリラって言ったらリスポーンすると思え」
「ひえっ」
こむぎさんがさおりさんの後ろに隠れます。ゴリラさんは見た目のムキムキさと違って非交戦的で、戦いを避けようとする賢い生き物です。ゾンビを見たら殲滅したがるあずきさんと比べるのは失礼です。
「馬鹿なことしてないで話を進めましょう。その鍵を使えばその工場に入れるとして、何かメリットが有るのかしら」
「確かに。別に物資に困っているわけじゃねえしなぁ」
きなこさんの言葉になめこさんが同意します。
「そこはロマンだよ! プレイヤー未踏の地! レアリティの高い物資!」
こむぎさんが大げさに言います。レアリティの高い物資とか言われてもいまいちピンと来ません。今の生活で満足しています。完全に衣食住のない孤島のサバイバルならまだしも、そのすべてが揃っている状態で危険は冒したくありません。
「私は別に行かなくてもいいと思います」
私は自分の意見を言います。
「私もだ。何があるかわからん」
「うちもやねーリスクとリターンが合わなそうやわぁ」
「僕も……と言いたいところだけど工場を手に入れたら出来ることは増えるよ」
「あたしも別に興味ねえなあ」
「賛成ね。一つの工場に固執しなくても物資はいろんなところにあるわ」
「うげー!? また多数決!? 二対五じゃーん! つまんなーい!」
こむぎさんが皆の意見に憤慨してひっくり返ってジタバタします。しかしこれが民主主義なのです。民主主義万歳。
「決まりだね。それじゃ僕がこの鍵を破棄す――なんだこれ」
鍵を持ったくるみさんが固まります。
「どうした?」
あずきさんがくるみさんに近づきます。くるみさんは鍵ではなく鍵についていたネームタグの裏側を指さします。皆が「なんだなんだ」と集まってそれを見ます。
「『この鍵は残り六日と四時間十七分で使えなくなります』だって」
「うお。タグにタイマーついてたんだな」
「使えなくなるってどういうことかしら」
「鍵が消えるか工場の鍵穴が変わるのかもしれん」
新しい情報に皆がざわざわします。
「ほら! 時間制限があるってことはお宝があるってことだよ!」
ひっくり返っていたこむぎさんが起き上がります。興奮している様子です。
「根拠になってない」
あずきさんが即座に切り捨てます。
「でもさ、逆に考えてみてよ。七日で使えなくなるような鍵をわざわざ救援物資に入れるって、運営も『行ってね!』って言ってるようなものでしょ?」
「運営って誰だよおい」
なめこさんが突っ込みます。確かに誰なんでしょう。神様とか。いやないですね。
「ゲームならそういうもんなんだよ!」
「……それは否定できないわね」
意外にもきなこさんが頷きました。
「イベントキーみたいなものなら、期限付きなのは納得できるわ」
「うーん……」
空気が少しだけ変わります。そこでくるみさんが咳払いをしました。
「じゃあ折衷案にしよう」
くるみさんに皆の視線が集まります。
「全員で行く必要はない。偵察だけ。危険そうならその場で帰る。中に入れると確認できたら改めて皆で作戦会議」
「これならどう?」
そう言ってくるみさんが大きな胸を潰すように腕組します。
「賛成だ」
真っ先にあずきさんが頷きました。
「情報だけなら欲しい」
「無茶せぇへんならええよー」
「まあ、そのくらいなら構わないわ」
「やったぁ!」
数人の賛成に、こむぎさんがガッツポーズを決めます。本当に嬉しそうです。そんなにも工場へ行きたいと思うものなのでしょうか。放置された工場なんてなんだか埃っぽそうで嫌です。
「じゃあ誰が行く?」
くるみさんが言います。一瞬だけ校長室が静かになります。
「私は止めとくわ」
きなこさんが真っ先に手を引きました。
「学校を空ける人が多いのは危険だもの」
「うちも留守番組やね」
「私も残る」
きなこさん、さおりさん、あずきさんが留守番組になりました。暴の化身、あずきさんが残るなら大丈夫でしょう。
「なら決まりだね」
くるみさんが地図を丸める。
「工場偵察組は――」
こむぎさんが勢いよく手を上げた。
「はいはいはい!」
「言葉を遮らないでよ。僕も行くよ。工場なら興味ある」
「三人が留守番ならあたしの出番か。後の一人は――」
なめこさんが血の気の多い笑顔を浮かべて言います。
三人の視線が、一斉に私へ向きました。
「え」
「もちろんしぐれちゃんも来るよねー?」
「え、ちょ。な、なんでですか!? 私小学生ですよ!?」
「だってしぐれちゃんもプレイヤーなんだから! 経験値稼ぎしないと!」
「メタ発言やめてください!」
♢
「結局前回のメンバーと同じだね」
運転席のくるみさんが言います。
「あー……そういえばそうだな」
助手席にいるなめこさんが退屈そうに返事します。
「しぐれちゃんは今回は槍なんだね!」
「はい。中衛から前衛の皆さんの隙を援護しろとあずきさんに」
一緒に荷台に乗っている、こむぎさんの言葉に肯定します。ほうきの柄にナイフをダクトテープでぐるぐる巻きにしたあずきさんお手製短槍です。以前ゾンビを殺した経験がある武器なので、感覚はなんとなく掴めています。
軽トラックは県道をゆっくりと走ります。今回行く、工場のある町外れエリアは偵察だけでゾンビの掃討はしてないそうなので、不意のゾンビの群れとの遭遇戦を警戒しなければなりません。ケイちゃん一号が未だに戦線復帰できていないので、この軽トラックを壊したら遠出する足がなくなります。なのでなるべくぶつけないように走らなければいけません。
「あと数分で到着するよ。皆、心の準備をしておいてね」
「おう」
「はーい!」
「はい」
皆がバラバラに返事をします。まとまりのないメンバーだなぁと私は思いました。
♢
目的地の工場にたどり着きました。現在時刻は午後二時頃です。
工場の周りは点々と数体のゾンビがいるだけでした。これならあっという間に片が付きそうです。
車を降りるとなめこさんとくるみさんのコンビは、くるみさんが改造ネイルガンでゾンビの足や目を集中攻撃して、体勢が崩れたところをなめこさんが釘バットで頭部を叩き潰すという戦法で前進していきます。ナイスコンビネーションです。
「私達もいくよ! しぐれちゃん!」
「は、はい!」
私達も車を降ります。私達の戦法は私がこむぎさんの右後方について、こむぎさんが仕留め損なったところに私がとどめを刺すという戦法です。
早速こむぎさんのバールがゾンビの頭部に刺さり、抜けなくなりました。ゾンビはまだ動いています。私はゾンビの口めがけて槍を突き出します。前回と同じ手応えを感じました。ゾンビは倒れてすぐに動かなくなりました。バールと槍を引き抜きます。
「ナイスしぐれちゃん!」
「こむぎさん。バールの尖ったところで殴るの危なくないですか? 抜けなくなったの二回目ですよね」
「こっちのほうが攻撃力は高いんだよ。でも流石にゾンビが多いところではもうしないよ。しぐれちゃんのフォローにも限界はあるしね」
こむぎさんと軽口を交わしながら他のゾンビを掃討していきます。数分もせずに工場周辺のゾンビは一掃されました。死んだふりをしているゾンビがいないかを確認しながら工場のドアの前に集合しました。随分ゾンビの対処に慣れた気がします。
「よし。じゃあ工場ドアを開けるよ」
そう言ってくるみさんは金色の鍵を取り出します。それを鍵穴に刺し、回します。カチリと解錠する音が聞こえました。どうやらここの鍵で合っていたようです。
「うわっ!?」
くるみさんが飛び退きます。なんと解錠した瞬間に鍵がサラサラと粒子となって消えていきました。ここは本当にゲームの世界なんだなと実感します。
「まったくびっくりさせて……開けるよ」
ドアを開きます。ギィと蝶番が軋む音。どうやらいきなりデストラップとかの要素はなさそうです。少し安心しました。
開けたドアから一人ずつ慎重に入っていきます。私は一番最後です。
私が入った瞬間、勢いよくドアが勝手に閉まりました。突然のことに私はビクッと身体をすくめます。心臓に悪いのでジャンプスケアのようなことは止めて欲しいです。
「み、皆さん! ドアが勝手に閉まりました!」
「開けられるかい?」
私はドアノブを捻ります。びくともしませんでした。
「無理みたいです……」
「はっ。閉じ込められたってわけだ」
なめこさんが好戦的な笑みを浮かべます。
「まあSSRの特別エリアだしね。そうポンポン出入りできたらゲームバランスが崩壊するよ!」
こむぎさんだけは何故か納得したような顔をしています。
「ああもう。偵察だけのつもりだったのに。計画が台無しだ」
くるみさんは辺りにゾンビがいないことを確認してこむぎさんに話しかけます。
「こむぎちゃん。こういう場合どうやったら脱出できると思う?」
こむぎさんが腕組みをして「うーん」と言います。
「ゲームだとギミックを解くか、ボスを倒せば出られるんじゃないかな」
「うげ。ボスとかいるのは勘弁してほしいな」
こむぎさんとの会話でくるみさんがげんなりとした表情を浮かべています。
とりあえずなめこさん、くるみさん、こむぎさん、私の順番で隊列を組んで探索を再開することにしました。周りを警戒しながら歩き始めます。
工場の中は静まり返っています。ゾンビの唸り声も、機械の駆動音もありません。聞こえるのは私たちの足音だけ。その音が高い天井に反響して、思った以上に大きく聞こえます。
天窓から差し込む白い光が、薄暗い工場内を照らしていました。その光の中では数ヶ月の間に積もった埃がふわりふわりと舞っています。
工場の至る所に、見上げるほど巨大な工作機械が何台も並んでいました。私には何に使うものなのかさっぱりわかりません。ただ、日常で使う機械とは比べ物にならない大きさだけは理解できました。
鉄と油と埃の匂いが鼻をつきます。機械は止まっているはずなのに、今にも動き出しそうな圧迫感がありました。
「なんか……ゲームのダンジョンって感じですね」
私はそう言います。私自身はあんまりゲームはしないのですが、実況動画を見たりはします。ここはまるでポストアポカリプスの工場エリアみたいでした。
「まあ、実際ゲームの世界だからね。何が起きるかわからないよ」
くるみさんがそう返事します。
「あー……今のところただの工場って感じだなぁ」
「そうだね。お宝も見当たらないし……」
明らかなハズレ物件になめこさんもこむぎさんもテンションがガタ落ちしています。
「あー!」
突然くるみさんが叫びました。何事かと全員がくるみさんの方を向きます。
「廃盤になったメーカーの高級工具だ! 低騒音の溶接機もある! 発電機も!」
くるみさんが嬉しそうに工具類を物色していました。どうやら工場エリアなだけあって工業製品に関してのレアリティの高い工具や物資は山ほどあるみたいです。
「それはいいものなんですか?」
嬉しそうにリュックへ工具を詰めているくるみさんに尋ねます。
「めちゃくちゃいいものだよ! 一個数万円から数十万円する工具が山ほどある!」
めちゃめちゃ興奮しているようです。これでもかと工具をリュックに詰め込んでいます。それに比べて私達三人は白けた顔をしてそれを眺めています。
「どうでもいいけど、そのリュックは帰りに持てよ。そんな重いもん持って戦えねえだろ」
現実的な話をするなめこさん。
「あーあ。やっぱりレアリティの高い物資が出るんだ。●天堂の鍵とか出てこないかな」
自分の興味ない分野の高レアリティ物資が出てがっかりしているこむぎさん。
「あ……ごめん。興奮しすぎた」
シュンとなって反省しているくるみさん。
一同が微妙なテンションになって探索を再開します。トイレなどは見ても仕方がないのでスルーします。巨大な作業機械なども持って帰れないのでスルーします。本当に見るものがないです。レアリティの高い物資があるだけなので、この工場はガチ勢のためのエンドコンテンツな気がしてきました。
曲がり角の一本道の通路奥に、一つだけ金属製の豪華なドアがありました。そのドアの前に全員集合します。そこには工場長室と書かれていました。
「ここが最後かな。開けるよ」
「さっさと済ませて帰ろうぜ」
「思ったよりつまんなかったー」
くるみさんがゆっくりドアを開けます。
そこには一体のゾンビが鎮座していました。ただ普通のゾンビではありません。筋肉モリモリで二メートル近い身長がありました。顔には溶接用の面を付けて、スレッジハンマーを手に持っています。
「失礼しました」
そう言ってくるみさんがゆっくりドアを閉めます。
全員が数秒黙りました。
「……見間違いじゃないよね?」
くるみさんが確認するように言います。
「見間違いじゃねえ」
「マッシブあずきちゃ……いやボスだね」
「ボスですね」
嫌なところだけ意見が一致しました。
その瞬間でした。
ドンという轟音と共に工場長室のドアが内側から大きく膨らみます。
「うわっ!?」
そしてもう一度ドンという轟音。蝶番が悲鳴を上げます。
「逃げろ!」
なめこさんが叫んだ直後でした。
ものすごい音とともにドアが吹き飛びます。
破片を撒き散らしながら、巨大なゾンビが姿を現しました。溶接面の奥から低いうなり声が響きます。
両手で握られたスレッジハンマーがゆっくり持ち上がりました。
「でっか!」
「感想言ってる場合か!」
なめこさんが釘バットで頭を殴ります。鈍い音。
しかし。ボスは首すら動きませんでした。
「は?」
そのままスレッジハンマーが横薙ぎに振られます。
「伏せろ!」
全員が床へ飛び込みます。頭上を通過したハンマーが鉄骨へ直撃しました。耳が痛くなるような金属音。鉄骨が少し曲がっています。
「嘘だろ……」
なめこさんが青ざめました。
「スーパーアーマー持ちだ!」
こむぎさんが叫びます。
「スーパーアーマー?」
私も青ざめながら尋ねます。
「攻撃しても怯まないボス!」
「ゲーム用語で説明しないでください!」
「今は逃げるよ!」
くるみさんが全員を誘導します。四人は工場の通路を全力で走りました。
後ろから。ドン。ドン。ドン。と重たい足音が追い掛けてきます。速くはありません。ですが一定の速度で、決して諦める様子はありません。
「ホラーゲームじゃないですかぁ!」
私は走りながら絶叫するように言います。
「ゾンビはもとからホラーだろ! 振り返るな! 走れ!」
角を曲がったところで、くるみさんが立ち止まりました。
「少し時間頂戴!」
「何やってんだ先輩!?」
「罠!」
腰のツールポケットから工具を取り出します。ワイヤー。予備バッテリー。そして改造ネイルガン。一体何をするつもりでしょうか。
「そこにあるの貸して!」
くるみさんが叫びながら指さします。
「そこにあるのってこれか!?」
なめこさんは地面に落ちていた電動の丸ノコギリをくるみさんに手渡しました。
「よかった! 同じ規格のバッテリー式だ!」
そう言ってくるみさんは壁に向かって改造ネイルガンと廃材を使い、充電式の電ノコを横向きに固定します。予備バッテリーを差し込み、最後にトリガーへワイヤーを結び付け、その反対側を通路の反対側まで張りました。
「よし完成!」
「早っ!」
くるみさんの早業にこむぎさんが驚きます。
「逃げるよ!」
再び全力疾走します。数秒後。ボスが角を曲がりました。胸でワイヤーを引っ掛けます。
その瞬間、電動ノコギリが高速回転を始めました。脇腹の辺りに当たったのかそこから血しぶきが飛び散ります。さすがのボスも足を止めました。拳で即席の罠を破壊すると脇腹を押さえながら膝をつきました。
「今だ! 後頭部に集中攻撃!」
くるみさんの合図とともにこむぎさんとなめこさんが攻撃し始めました。後頭部が少しずつダメージを負っていきますが、決定打となり得る様子はありません。
ここは私がどうにかしなければなりません。
私は辺りを見回してボスの頭上に鉄骨の足場があることに気づきました。あそこからの攻撃なら私の力でもどうにかなるかもしれません。
私は急いで近くの作業台へ登ります。さらに巨大な工作機械の上に飛び乗り、そして鉄骨の上を走ります。無我夢中で駆け回り、気付けばボスの真上まで来ていました。
心臓がうるさいくらい鳴っています。落ち着け我が心臓。
「しぐれちゃん!? なんでそんなとこに!?」
こむぎさんの声が聞こえます。
ボスがゆっくりとこちらを見上げました。
溶接面の奥。真っ黒な穴のような視線。思わず身体が震えます。しかし、今更後には引けません。
私は槍を強く握り、飛び降りました。
重力に任せて。全体重を乗せて。槍を真下へ突き出しました。
穂先が溶接面を突き破ります。そのまま脳天を貫け。深く。もっと深く。
ボスの身体が一度だけ震えます。
そして、ゆっくりと前へ倒れました。工場中に衝撃が響き、埃が舞い上がります。
「しぐれ!」
投げ出された私をなめこさんがキャッチしてくれました。あ。飛び降りたあとのことを考えていませんでした。なめこさんに「あ、ありがとうございます」と感謝します。
工場ボス、撃破です。
♢
工場の外。持てるだけの工具や機材を持ち出した私達はその場に座り込みました。再び工場のドアが勝手に閉まります。カチャンと施錠された音がしました。くるみさんがドアを確認しますがやっぱり鍵がかかっています。今頃、ボスや物資がリポップしているのかもしれません。
「これって鍵が出る限り何度でも挑戦できるタイプのダンジョンだよね」
「もう行きたくねえよクソが」
「僕ももういいかな……疲れた」
「私も二度とあんなことはしたくありません」
皆が精根尽き果てた様子で座り込んでいます。今思えば私はなんて無謀な攻撃をしたのでしょうか。あの時はアドレナリンとか脳内物質が出まくっていたのでしょう。今になって震えが止まりません。
「今回の功労者はしぐれちゃんだね」
「あーそうだな、間違いない」
「そうだね。あれはすごかった」
三人が私のことを口々に褒めちぎります。
「そ、そんなこと言ってないで帰りますよ! 帰るまでが遠征です!」
むず痒くなった私は照れ隠しで三人を急かしながら引き起こします。
「あー! 照れてる照れてる! 可愛い!」
そういってこむぎさんが抱きついてきます。抜け出そうとしても腕力の差で抜け出すことができません。うぎぎ。
「照れてません!」
町外れに私の大声が響きました。