リリカルなのか?   作:コカ・と栗鼠

21 / 30
第十九話:Interval

 あの心踊るような決闘の翌日。

 妾はベッドに拘束されていた。

 あのあと、血溜まりで揃って倒れていた妾とセツナは青い顔した美少女二人に泣きながら怒られた。

 美少女二人とは引き分けたらしいなのはとフェイトであり、泣かれたのは危ない戦いをするなとかなんとかそんな感じだ。ぶっちゃけ血が足りないせいで意識が朦朧としていてよく覚えていない。

 そうして気がつけば高町家の妾に与えられた部屋で寝ていたらしく、起きたら起きたで今度は高町家の全員に怒られた。

 そしてなのはは魔法のことがバレた。

 妾の怪我を治すために魔法を使わざるを得ず、白いいつもの服が尋常ではない程に赤く染まっている上、明らかに血液不足なのに外傷がないことに対して詰め寄られ、正直に吐かざるを得なかったらしい。

 妾の惨状を見た恭也さんや桃子さんが危ないことならやめろと言ったらしいが、そこはユーノの説明となのはの説得でとりあえずはどうにかなったそうな。

 で。何故妾がこんなことになっているかと言えば、無断で帰宅をせずにいたかと思えば、帰ってきたら帰ってきたで今度は瀕死。

 病院につれて行こうとするも妾は無意識下で必死に病院を拒否したらしい。それならばと、熟練の剣士である士郎さんから診て大丈夫と言うまでは絶対安静となったのだ。

 ……正直暇である。

 三兄妹は学校。大人二人は喫茶翠屋で仕事中。

 家に誰もいないのだから、こんなあってないような拘束はさっさと解いてしまってもいいのだが、士郎さんと桃子さんが仕事の合間に交代で看病という名の確認をしに帰宅するので却下。

 流石の妾だって、良心の呵責を感じたりするのだ。

 何より、この状況は明日には終わる筈だ。なにせユーノの治癒魔法で傷自体はある程度回復している。加えて現在進行形で魔力付与による傷の修復力――つまりは細胞活性をブーストしている。相応に魔力も食うし疲労も溜まるが、それこそ安静にしていれば勝手に回復するのだから問題ない。

 とは言えやはり暇だ。魔力付与も魔術であり、寝ながら魔術行使なんて器用な真似は出来ない。そんなわけで寝ることも出来ず、天井の木目を数える簡単なお仕事でもしてみるか、と自棄っぱちに考えていると、ケータイがバイブし始めた。

 現代っ子だったはずなのに、ケータイを使って暇潰しという発想がなかったことに若干の悔しさを感じながらサイドテーブルに置いてあるケータイを取る。

 メールを受信していたらしく、ディスプレイを見れば二件の受信を知らせるポップアップが。

 差出人は今受信したのがスザクで、もう一件がセツナだ。受信時刻は夜の三時。いったい彼奴は何を思ってこんな深夜に……。

 とりあえずはスザクのメールから確認することにした。

 件名のない用件のみの簡素な文章。だが、そこにあるのは読み飛ばして良いものではなかった。

 

『今回発生するはずの管理局介入イベントが生じていない。

 プレシアに頼み地球周辺の時空間も簡単に探査したが、それらしい艦はなかった。

 これまでで最大のイレギュラーだ。注意しろ。そろそろ本当に原作のタイムスケジュールの崩壊も有り得る 』

 

 テキストメモを開き確認すると、確かに現在のジュエルシードの発見個数的に管理局が介入していないとおかしい。

 しかし注意しろ、と言われてもどうしろと言うのか。

 とりあえずこの件は一度脇に置き、もう一件のセツナからのメールを開く。

 こちらにはヘッダーに件名が記載されていた。曰く、ヤバイ。

 さて。どうにも嫌な予感がする。額面通りの意味ではなく、このまま開かず削除しても良いのではないかという意味で。

 とは言え本当に何か重大な案件なら笑えない。先のスザクからのメールの件もある。一応は彼奴もスザク同様【リリカルなのは】を知っているのだ。もしかしたらスザクの失念している何らかの情報があるのかもしれない、と自分を騙してメールオープン。

 

『フェイトが超かわいい!』

 

 死なぬかな、アイツ。

 シリアスになりかけた空気をブチ壊す一文だ。

 とりあえずうつけ者に返信をしてやろう。

 

『なのはのが可愛い。そしてそれを超越するのがすずかである』

 

 ――よし。

 好敵手からの看過できぬ案件に反撃を放ちケータイを閉じる。

 さて。やることもないし、少し情報整理でもしてみるか。

 

 まずは今後のことを考えると能力方面か。

 スザクが自称カミサマから訊き出した説明によれば、上限は二つ。それ以上は存在の器に収まらないらしい。

 存在の器が何かは明かされなかったらしいが、器の絶対値以上の能力や、能力そのものが存在に依存するものは選択不可。さらに全く別の由来となる二つを選択することは出来ない。

 例えば、セツナならば【境界線上のホライゾン】を由来とする“蜻蛉切”を選択した以上、もう一つも由来を同じくしないといけない。セツナが言うには当初“蜻蛉切”という攻撃力に加え、【お・り・が・み】の“黒龍(ミッペルテルト)”の無敵性を備えようとしたが、これは却下されたらしい。そこで“重力作成”を選択するわけだが、ここで疑問が生じる。

【境界線上のホライゾン】には“重力操作系術式”は存在しても“重力作成”は存在しない。しかし選択出来てしまっている事実がある。

 能力の拡大解釈なのかあるいは……。

 次に能力は事前にある程度の改良が可能。

 とは言え、条件が存在する。

 ――それ自体を大きく変容出来ない。

 妾の場合ならば、クトゥルー神話を元にした【デモンベイン】の“獣の咆哮の書”そのものにある精神汚染は削除出来ないが、耐性を備えることは出来た。

 だがやはりここにも疑問が生じる。

“獣の咆哮の書”には先代たちの記録など記載されていない。にも関わらず、それらが妾には在ること。

 これは“獣の咆哮の書”を魔導書

ではなく、[アル・アジフ]という一人の少女と解釈したならば、記された知識として妾が得ていることにも一応説明がつく…………のだろうか。

 そして、これが重要だが。

 妾たちが選んだ能力の原点となる存在は、この世界での発生確率が消失する。

 妾の選んだ【デモンベイン】。

 スザクの選んだ【Fate系列】。

 セツナの選んだ【境界線上のホライゾン】。

 これらは今後永遠にこの世界では如何なる形でも生じ得なくなったということらしい。

 つまり、妾たちが持つものを除き、精神を侵し鬼械神(デウス・マキナ)を召喚可能な魔導書は存在しないし、聖杯戦争は起こり得ないし、アーサー王の性別は諸説あるままで、この世界の未来では極東以外に知的生命体が住める場所がなくなるなんてことにはなりえない。

 だがやっぱりここにも疑問が発生。

 スザクの“皇帝特権”により魔術スキルを得ると魔術が使えるようになる。【Fate】世界では魔術を使うためにはその世界に『魔術基盤』がないと意味がない。スザクが言うにはこの地球には確かに魔術基盤が存在するというのだ。まぁ使われた形跡がなく独占状態らしいので、これも能力の改良の範疇……というには無理がないだろうか?

 他に能力関係の情報は……。

 記憶を漁り、考えるが現状ではこれが全ての筈だ。

 これらを踏まえ、未だ現れない四人目について考えてみる。

 あの自称カミサマに曰く、有り得ない変身能力を選んだらしい人物。

 変身と言われ思い付くのは、やはりライダーやマン、戦隊系だ。しかしこれらは在り来たりと言うか、有り得ない訳じゃない。ではなんだろうか、と思考の網を広げると、天恵のように閃くものがあった。

 ゴジラやガメラのような怪獣系とかどうだ? これは中々有り得ないだろう。

 更に思考の網を拡げる。

 怪獣はかなりの脅威だ。何せデカイ。強い=デカイではないが、デカイのは基本的に強い。

 この世界には次元世界とやらが数多存在するという。もし四人目が地球ではなく、他の世界、それも時空管理局のお膝元で発生し大暴れしていたとしたら。

 そこで更なるインスピレーションが妾の脳裏を駆け抜ける。

 ゴジラやガメラならばまだ良い。もし、もしもデストロイアやレギオンだったなら……。

 これはヤバイ。

 デストロイアは完全体になれば陸海空を単独制覇し、しかも光線吐いて分裂可能でエネルギー吸収能力まで持つ最強使用。

 レギオンはその名の通りの群体タイプ。それだけでもヤバイのに、しかも他の星へ繁殖版図を拡げるし普通に強い。

 こんなのに変身できる者が時空管理局のお膝元でヒャッハーしてたら流石にこっちは後回しにならざるを得ないだろう。

 ――という妾の閃きをスザクにメールしてみたところ、

 

『一考の余地はあるかもしれんが、ほぼ有り得ないだろう。

 そもそも怪獣に変身して何をするんだ? 精々が暴れてお仕舞いだろう。

 それに今までのケース――つまり俺たちを見るに、あの自称カミサマたちは人格面も考慮して転生させている帰来がある。お前も知っているかもしれないが、今のところこういう状況(転生モノ)特有の踏み台が存在しないのが良い例だ。とりあえず、今後イレギュラーは高い確率で発生するだろう。下手に考えて雁字搦めになるより、その時その場で臨機応変に対応出来るよう備えてくれ』

 

 という返事がきた。

 うむ、まぁ、なんだ。

 下手な考え休むに似たり、という事だな。

 思わず謎テンションのまま思考が活性化したが、冷静に考えると結構恥ずかしい考えじゃないかこれ。

 怪獣変身とか、完全に子供の考えじゃないか。

 そう思うと転生前年齢二十歳超えの身としてはなんとも言えない感覚が襲来してくる。ふとした時に思い出す黒歴史めいたそれに顔が熱くなる。

 よかった、誰もいなくて……

 そう思ったのも束の間。カタンと物音的SEが。

 発生源を見ると「やべっ」というような顔をした白い小動物が、水が入っていたのだろう皿を押さえていた。大方皿を蹴るか何かしてしまったのだろう。

 しかし問題はそこではなく。

 

「……えーと、なのはに君の様子を見ておくように言われてね」

「何時から?」

「え、えええーと、何がだい? 僕今まで寝てたから!」

「……ほう。つまり、何もみていないと」

 

 コクコク頭を上下させる小動物。おいおいどうした? なにやら必死っぽいが、ただお話しいてるだけであろう?

 おお、そうだ。丁度良い。ここらでそれとなく情報収集といこう。

 

「ところでユーノよ、次元世界とやらでは最近何か大きい事件があったりしないだろうか?」

「え? どうしたのさ突然」

「なに、暇潰しだ。これこの通り動けんしな。それに妾にとって世界とは地球と宇宙のみだったのだ。多少は気になりもする」

 

 これは事実だ。幼いころは夜空を見上げて宇宙に思いを馳せ、宇宙人の存在を本気で信じていたのだ。それは知らない場所への憧れであり、ロマンだ。宇宙ではなく次元世界というファンタジーだが、それはそれで良い。喋るフェレットが居るのだから、きっと竜とかそういうファンタジー御用達のお歴々が居るだろうし、可能ならば一度見てみたい。その時は、是非ともすずかも一緒に。きっと楽しい筈だ。

 ところで、プールの翌日の一件以降微妙な距離感を保っていた妾とユーノだが、実は和解している。例の温泉の時に女性陣に女風呂へ連行されかけ、必死に抗った同士として。

 そんな同士はやや思案顔。いや、フェレットの表情とかよくわからんが。

 少々不自然だったか?

 

「妾としてもな、一応はこの惑星の守護者の端くれ。今後万が一にも今回のような事件や、そちら側の犯罪者が流れてきた時に備え多少なりとも情報がほしいのだ」

「……わかった。でも次元犯罪もピンキリだよ?」

「ならば直近のもので良い。汝が地球へ来る前にでも耳にしたものを、まずは聞かせてくれ」

「ここに来る前か…………えっと、じゃあ。これは他の遺跡発掘隊の人から聞いたんだけど――――」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。