「イヒヒヒヒ…今回は最高に良い回だ」
──私の手の中で光る赤色の水晶玉と、色とりどりの宝石達。
いい子いい子と撫でながら、棚ぼたによって手に入れた戦利品の数々、この子達の輝きに心を奪われてしまう。
ああそうだな、一通り攻略が進めば増殖させたこの子達を贅沢にお風呂にしてしまおう。牛乳風呂ならぬ宝石風呂だ、但し街一つ吹き飛ばす危険物入りのお風呂だけど。
導きの赤い糸は見えない内に絡まっているもの!都合の良さは不幸な運命の清算で──まぁどっちにしろ虱潰しに探索する以上いつかは巡り会っていただろうけれど、最終ダンジョンのアイテムを序盤で不正にゲットした気分っ!
「ふふふっ…急に上手くいきすぎて笑い転げそうだぜ…」
「……転げたら焼け野原だけどね!!」
経緯は単純。『あまりにも危険が過ぎるので、良ければ私の家の方で引き取りましょうか?』と激烈なパチをこき、すると引き取ってくれたお礼といって魔石をタダで頂いてしまったのだ、これこそ一石二鳥。
──顔の火傷跡に、声帯を炎で焼かれた様な声。更には譲り受けたなんて噓も方便で誤魔化していたが、『竜』からこんな代物を譲り受けていたあのお兄さんの過去回想で、一冊の小説が書けそうな事は置いておいておこう。
厄介事には踏み込まないが吉。竜との決闘で手に入れたは良いものの、竜語的な文字が彼に伝わらず倉庫番なんて予想を出来たりしなくもないが、やはり首を突っ込まないのがとても吉。
早速複製と洒落込みたい。が、色々と複製における前提が崩れたので改めて手順を思索する。特に『外』で死んだ時は手持ちがリセットされるのは中々に辛い。
『中』での死は単なるセーブと巻き戻しの同時発動だ。ブラおじの指輪を託された時は、ギリギリ『中』で死ねたのかな。身に着けていたものがそのまま過去に持っていけた。
「──効率よく増殖だけさせたい場合ってどうしよう」
今までは初期のセーブデータをロードしていただけだった。故に目覚めはいつもあの酒場だったが、次以降はどの場所がリスポーン地点に──…。
「…………」
「ん。待った、今保存してある二つ目のセーブってどうなってるの?」
「ブラおじが刺されて死んで、私はギリギリ『中』で死んだ。そこに巻き戻るなら……っ、まさか、揚げ物野郎からのヘイトは消えてる…!?」
「そっ…か。そうだよな、セーブ&ロードって…世界線の保存だもん。……やっぱりあの邪神、神を自称するだけはあって化け物だな…。うーん。でも、結局『予言』がある以上誤魔化すのは絶対無理だもんね」
「──。よし、取り合えずっ、帰宅ッ!!」
■
「んで、そこん所どうなのよ」
「なんだか段々と遠慮が無くなってきてないかい?最初は敬語も使ってくれていたのに……」
「素を見せてる事に喜びな、ほらほら早く質問に答える」
雑に扱うのも愛と信頼の一種さ。敬ってはいないけど、適当な相談役がいるのはメンタル面で有難い。
幼い自分の姿をした邪神のおでこを、人差し指でソフトクリック。ちょちょいと突いて、幼さに似合わないしかめっ面をする邪神を急かす。
「………リスポーン地点は、私にも分からないかな。どの場所に復元された身体が現れるのかは、やはり最も色濃く因果が結びついた場所だと思う」
「色濃く因果──ってなると、二回目だったら…」
「「ブラウの家」」
「………おい」
「ふふっ。忘れたのかい?既に『私』は『君』で、『君』は『私』だ。記憶の完全なる共有は、魂の同一性を含む」
「ならそのめんどくさい口振りはどっから来たんだよ…神様だからか?」
「さぁ?」
「さぁ?って何だよ、さぁ?って」
ともかく、今この状態で二回目のセーブ地点に戻れば──ブラおじ家のベッドで目を覚ますという事か。しかもとんでもない爆弾を持ち込んで。
──やりたい事が出来た。察するに容易い外道な腹いせが。
その為にも、一刻も早く爆弾の量産体制に入ろう。最終的には国ごと滅ぼしてえなぁ~!!!
流石に百個ぐらい爆発させれば揚げ物野郎も死ぬだろうけど…。生き残っても『お前が今まで血で染めてきた両手は!結局何も守れず!犠牲も献身も何もかも、守るモノと一緒に全部焼けて消えちまったよギャハハハハッ!!』って焼け野原で膝をつくアイツに突き付けてやりてぇなぁ~~~~!!!
「コバナ、顔」
「はッ…美少女にあるまじき堕落を見せてしまった…」
「自認美少女だったんだね。ぞれと君の最悪の妄想はちゃんと聞こえていたよ」
「公認ですけど???──ちなみにコレの正体分かる?というか魔力篭った物を持ち込んでもなんともないんだね」
「前者は本で調べるといい。後者は特に問題は無い、君の死体を使わせてもらっている内は影響されないみたいだ」
やはりネタバレはあまりしてくれない様子。私らしく地道に知識を深めろと言われているようで、実際私もダメもとで聞いただけ。
ファーストアプローチが早々に、魔石の力で解決しそうなので寄り道していこうか。まずは手持ちの魔石を試験的に使うのと、
それでは──自死であり、自死でない不可思議な『死』を味合わせてもらおうかな。
「私のハジメテ、受け取ってくれる?」
「良い言い回しだが、君には似合わないね」
「私もそう思う」
「それじゃ、いくよ」
「どんとこいっ!準備万端……じゃないけど、怖いけど!あ、やっぱカウントしてゼロのタイミングで──」
──パンッ。
と、弾けたのは眼前の少女のリップ音か。
それとも、私の頭蓋だったか。
■
──竜種。
有翼種の中でも源流とされる種族。正確には『竜』とされた生き物の子孫が枝分かれ派生し、『有翼種』と呼称された為、竜種は竜種として有翼種に含めない事が多い。
与えられし獣が切り分けた力。その中でも永劫と不朽を司り、竜種は体内に存在する魔力炉によって老いず朽ちない。繁殖とみられる行為は確認できず、竜種自体も姿を現す事は殆ど無い故に未確認の竜種は未だ世界各地に点在していると考えられる。
魔力炉が損傷する様な傷を負った場合は、魔力炉ごと身体を再生し、古い炉は排泄される。『永久なる神の炎』とも呼ばれる竜の炉心は、その身を離れて尚稼働し続ける原初の神の権能に等しく、手に入れたものに権能を分け与えると言われている。炉の外殻を破壊し炎を解き放てば国を呑み込む災害となり、完全な破壊を試みた結果、地図から街が一つ消失した。
炉心を手にしたと語られているのは以下の六名。
──『王剣』ルゥナ・フライ。
──『竜断ち』イノウエ・リョウスケ。
──『神殺しの魔獣』ロスト。
──『ポイント・ネモ』アイ・ウエオ。
──『傾世』アルマ・グランドルド・マリア
──『魔術神』アブラカタブラ。
中でも竜種を討伐したとされるのは、『王剣』と『竜断ち』のみである。不滅を語る竜種の死は魔力論理そのものを揺らがしたものの、一片の魔力組織すら残さない滅却が可能であれば竜種の殺害は可能とされ、今に至るまで『王剣』は七体の竜種を滅ぼしている。
竜種はその在り方故に、研究が進むにつれ『生命』や『個』、『魂の入れ物』として持続する為の頭部や生命を保つ臓器を破壊されても存続可能な事から、魔力そのものが主体となる精霊種に近しい、もしくは同一と思われ『竜種』の名称を改める案も一時期は議題に出されていた。
「…………………」
「…………」
「んーと…………」
「……。えーっと……」
「六分の三が地球人でごめんなさい、あいうえおとアブラカタブラはふざけ過ぎだろ。それにアイ・ウエオさんは二つ名自分で付けたの?……とかは置いといて……」
「………」
「────」
「──……」
「うん、全部忘れよっと」
足早に駆け込んだ図書館、無償で知識を得られる文化レベルと教育レベルの高さに感謝しつつ、大切に服の内側へ隠し持ったドラゴンのたまたまの使い方を調べようと書物を漁ったのだが、
「…………はぁ」
──。
一旦は、何も考えたくなくなってしまった。
「なんッ、なんだよあの人っ──!?!?」
「なになんなの、私はいつまで外れくじというか、初手で外れ値を引き当てればいいの?てか揚げ物野郎強すぎるだろ、なんで七体ぶち殺してんの」
手元に置いた本数冊。ある程度の知識はブラウから借りた本で備えたが、アレらはやけに専門的な内容が多く実利的。対してこちらは模範的教科書と呼ぶべきか。
載っていた情報はどれもこれも、ギャグマンガの様に目玉を飛び出させるものばかりであり、今現在コバナの前ポケットの中でお休み中のたまたまこと『炉心』は厄ネタで済む話では無くなってしまった。
──簡単に、国を、滅ぼすな。
「……引き取らなきゃよかったかな」
「返しに行く?無理、もうあの人に会いたくない」
「本に載ってない名無しの英雄って事?『壮絶な戦いを終えた勇者は辺境の街でスローライフを始めます』って事?リアルなろうされてる──??」
「あー、もう知らん!知らん知らん知らん!知らないったら──」
「申し訳ありません。あまり騒がしくなされるのなら、貸出を中断し当館を立ち入り禁止とさせて頂きます」
「……アッハイ、スミマセンデシタ」
──タグの要素を回収できるのっていつ頃になるんですか?…色々と一段落したら…。