「「──。些か私達には、コミュニケーション方法に問題があるようだね」」
「些か──?」
「「……沢山」」
「宜しい」
私の死体×2に拳骨をぶちかまし、大人しくさせた所から再開です。
全くもう、かなりシリアスな展開に加えブラおじが死んで、更には生き返ったとしても異人絶対ぶち殺しマンが出待ちしている状況だってのに気が抜けてしまった。
「「死に瀕したにしてはかなり余裕があるね、コバナ」」
「…──」
「「心を読むなって?円滑なコミュニケーションを行うには必須だと、君自身が一番強く願っているからこそ、その望みを叶えているだけだよ」」
「────」
「「君は面倒を省きたがる性格だ。会話においても、ゲームにおいても、人生において無駄な手間を悉く避けてきた。人の死を、そして自分の死を前にしても揺らがない心は決して強さ故じゃない」」
「「弱さ故だ。目を背ける事が、君の得意とする闘い方」」
「「ブラウ・タバタの献身、ルゥナ・フライの狂気を前にして…RPだったかな、別人格の形成で──」」
「そろそろ利のある話をしない?」
「「おっと」」
──。
滅茶苦茶言い返してやりたい。でもコイツを説き伏せる時間なんか使ってられない、無駄無駄、視座の違う奴と言い争っても無駄なんだ。今回の場合、神と人だし。
「自分の事を神つったよね。私のイメージだと全知全能だったりするけど、まずは貴方の出来る事を教えて欲しい」
「「ん~。もしも君の冒険に手を貸すことを期待しているなら、私からは最低限の知識を与える程度かな」」
「それは…どうして?」
「「他ならない、君自身のポリシーに反しているからさ。私は君だけの神様、君が居なければ存在していない虚ろな神、故に君が不幸になる事は話せない」」
「不幸になる事──って、じゃあさっきの罵倒は」
「「───?」」
「…なんでもない」
さて、『最低限の知識』と来たか。
確かに転移後、ある程度の情報収集は行ったが、それでも今回の死因は『異人』周辺の知識不足が原因だとも言える。
そして詰みへと差し掛かっているのも、序盤の無体が尾を引きすぎた。挽回するにしたって、最早私一人の力ではどうしようもない状況。むかっ腹が立ってもコイツを利用するしかない。
特に揚げ物野郎から逃れる手段だね、明確にこっちの命を狙ってる上に、戦闘力も明らか上位。初手から私専用の処刑人が追尾してくるとはとんだクソゲーである。
「取り合えず、今抱えてる問題を解決する事ってできません?」
「「ふぅむ」」
「できればこの国から逃げたい。足がつかないように」
「「出来なくはない。でもいいのかい?全てを投げ出して逃げるだなんて、君らしくない」」
「外の状況がこんなに追い詰められてなかったら頑張ってましたよ。でもっ………」
……ブラおじが死んじゃったし。
胸を剣で貫かれているところを見た。アレは無理、即死。それがはっきりわかると、なんだかモチベも無くなっちゃって…。
昔からよく、関わる人間を不幸の渦中へと落としてましたから、異世界でもそうなるとは思ってもいなかった。疫病神の体質が変わってない以上、最初の方針である『完全なソロプレイ』に戻るだけ。
「「──。なるほど、NPCを復活させたいと」」
「「出来るよ?君になら」」
「……はぁ?」
「「言葉を借りるならここは『セーブ地点』であり、ノベルゲームの反省室であり、放置ゲームの拠点であり、インクリメンタルゲームの周回場所。君ならもっと早く思い当たるかと思ったけど、流石に回数が少なすぎたか」」
「────」
頭が痛くなってきた。元から死体になった私と顔を合わせていると頭痛がして堪らなかったけど、余計に痛い。白と赤の点滅が瞳の奥でぶつかり合って、その衝撃が伝わってくる感じ。
一度空を見上げ、相も変わらずプロジェクターの映像の様なドラゴンを見て一呼吸置き、抑えきれなくなった感情を思うが儘に吐き出す。
「はよ言わんかァァァァァ──!!!!」
「「身体があったら言いたかったよ!?」」
「なにそれ!?めっちゃチートじゃん!クソチートじゃん!!?」
「「おまけに私という心強い味方も付いている」」
「クーリングオフで」
セーブ地点。その単語だけで、血液が沸騰しそうなほど興奮する。どんな失敗もどんな失態も、そしてどんな結末をも覆せる最強最悪の能力。セーブ&ロードに対し言及したゲームもあったが、その無法さは巻き込まれる側が語ってくれた。
しかも口ぶりから想像するに、単なるセーブ地点でもなさそうなのが更に興奮を湧き上がらせる。なんだかんだ、転移特典が何もなかった事に私は不満があったみたいだ。
「「──君が望むなら『巻き戻し』は可能だ。だが一つだけ忠告しておこう」」
「忠告?」
「「因果という言葉を知っているね。因果をさかのぼるには膨大なエネルギーが求められる。君の選択に対して、必ず『代償』は要求される。供物、そう言い換えても良い」」
「代償って……ブラおじを助けるのに必要なやつ?それとも巻き戻した事実が悪いって感じかな?」
「「後者だね。私に供物足り得るものを差し出せば、君がここで死んだタイミングからやり直せる」」
──死体をそのまま残してるのってそういう事!?
死んだタイミングとな?つまり、今『セーブ』されてるのは私が最初に目を覚ました瞬間と、無謀にも二回目の突撃を行って帰ってきた時、という事か。
実にお有難い!これで詰み状況からもやり直せる!
「いよいよ本当にゲームっぽくなってきたなぁ…それで?その供物って?」
「「君の記憶、そして経験さ」」
「………なーんかやな感じ」
「「そう嫌がらないで、それに巻き戻しにはもう一つ素晴らしい力がある。またまた君の言葉を借りるのならば、そうだね…」」
「「──アイテムの増殖。どうだい?そそられるだろう?」」
「そ、そそ、そそるぅ~!!」
マジか、マジかよ。本気で言ってんのソレ!
クソっ……目の前にいる奴がとんでもない邪神だと分かっているのに、胸の高鳴りが止められない。
少しは察していた、口の中に詰めた土と草が外に持ち出せる事と、邪神が『周回』という単語を使った事。巻き戻ることに更なるメリットがあるのではないかと。
「「この場所は完全な異空間だ、時間軸を超越した神の居場所。故、巻き戻りに際し君が身に着けているものも以前の『因』に持っていける」」
「「更にはこの場所へ持ち込んだものなら、巻き戻しの適用外さ。私なら街から高級品でもパクって貯め込んでしまうだろう」」
「…本当に何でもありじゃん」
「「そうだとも!何でもあり、何でもできる!この場所の使い方次第じゃ、君に敵なんて存在しない!」」
「………」
剣と魔法の世界で、剣も魔法も使えない代わりと思えばいっか。釣り合ってるかは知らん。
──にしても、話して欲しい事も離して欲しくないことも、べらべらべらべら流れるように話してくれたものだ。先バレ野郎もネタバレ野郎も匂わせ野郎も、私は全員大嫌いなのに。
「私を敵と思ってる人は多分、沢山いるだろうけど…私にとっての敵が『外』の世界に存在する、そんな風に聞こえるけど?」
「「いるさ、沢山。君の行く手を阻む存在全てが君の敵だ」」
「違うね。私の敵は私だけ、向き合うのも私だけだし、私は私以外に興味が無い」
「「───」」
「お前が話してることは面白そうだし、実利もあるし、手を借りない選択肢はないけれど…別に私はお前の代わりに楽しんでる訳じゃないんだわ。私は、私の為に、この
「私だけの神様なら、それぐらい分かっとけよ」
乱暴に言い放つ私の言葉にもまるで傷ついた様子もなく、ただ静かに口角を上げて、『死体の私』は両方とも満面の笑みを浮かべる。
人間味が欠如した笑みだ。時に、知性が身についていない赤子は自らが行う残虐な行為にも笑みを浮かべるものだが、正にそんな赤子の笑みに似た笑い方をしていた。
私がゲームを通じて『知性』を愉しむように、コイツもまた同じく私を通じて別の感情を湧き上がらせているのだろう。そう予測できる気持ち悪さが伝わってくる。
「正直、あんまりにも信用できないから、ここでお互い一緒に骨を埋めるってのも選択肢だけど?」
「「はは。それはない」」
「「君がもっとも無駄だと思っているものを、君自身諦めていないからこそ君は巻き戻るんだよ、必ず」」
「「下らない感情を、下らないままに飲み干すんだ。そうして得た味わいが、君を歪に、そして愚かに仕立て上げる」」
「──。あっそ」
自分を益虫だと信じている、滑稽極まる害虫はよく自分の巣を好きなだけ広げているけれど、忌み嫌われ避けられ掃けられ、身に受ける苦痛の数々の理由さえ知らない。
理由を知らないから繰り返す。燃やされた巣を何度でも作り直す。
今日も今日とて、自分のためではなく、自分ではない誰かの為に。
「……詰みを解消するには、仕方ないか」
「分かった。次はもっと上手くやる、だから力を貸せ」
「「ふふっ、そうこなくちゃ」」
「──でも忘れんな。プレイヤーは私で、お前はただのお助けキャラ。神でもなんでもなくて、私を助ける為だけに存在してるNPCだ」
「「私を定義できるのは君だけだからね、勿論従うとも」」
「ならいい、それじゃ巻き戻しよろしくー」
「「……その前に一ついいかな」」
『私』が手をかざせば、大気がひび割れるように震え、視界の端から順に世界の色は剥がれ落ちていく。巻き戻しの予兆が確実に空間を侵食している中で、『私』は私へと、質問を投げかけてきた。
「「君は全てを奪われてここに居る。手に入れたものを、幸福を、立場を。転移後は理不尽に命を奪われもした。その全てがこの世界の住民のせいだとして、君は赦せるかい」」
「──許すもなにも、私に人を裁く権利はないけど?」
「「…──」」
「自分だけの世界で生きる。自分の為に自分を使い倒す──私は私だけの世界で、死んでいきたい。その想いが変わらない限り、私の
「「…凄いね、君は」」
「無様だと言ってよ、神様」
さぁ、プレステージだ。
賢くなってニューゲーム、同じ轍は二度踏まない。
ブラおじとの約束を果たして、自由気ままに生活しよう。私を縛れるのも私だけしかいないのだ。──だからまぁ、別に?ブラおじから渡された指輪のせいじゃないもんねー?
地球で引きこもってた時もそうだけど、私を苦しめているのは私以外に居ないんだから、神だろうが何だろうが、難易度の上げ下げは私が管理する。NPCを見捨てるかどうかも、私が判断するんだ。
──つくづく、ゲームは私を悩ませてくれる。
光が世界を、否、私の瞳を満たしていく。
ゲームをプレイする上で、主人公には大切な要素がある。誰かの物語に組み込まれる事も、誰かの正義に従う事も、どんな事だって『選択できるか』どうかだ。
勿論強制されているものもあるけれど、私が望む形で、私の速度で、私の遊び方で前に進めるなら文句はない。
いつだって大切なのは、自分が納得できるエンディングを迎える事なのだから。
「レッツゴー!強くてニューゲーム!!」