「ヒィーーーーホゥッ!!」強盗団が所有する無数のバギーが砂漠を疾走する。各々が手にした武器を掲げて威嚇しながら、都市へと突き進んでいた。
「狙いはプラントだぁ!! くれぐれも壊すなよぉ!!」首領格であるサイボーグの男が、怒鳴るように言った。
「ボスっ、憲兵共ですっ!!」
街の入り口にはバリケードが築かれ、憲兵たちが待ち構えていた。
「構わん、突っ込め!!」
首領が吠えると同時に、憲兵たちがバリケード越しにライフルを射撃していく。
構築された塹壕が強盗団のバギーの侵入を阻み、嵌まった車体が次々と横転していく。
「チィ、あの耄碌ジジイめっ!! 多少なりともやるじゃねーか!」
一方、市長に雇われた用心棒たちも動き出していた。彼らは憲兵たちが取りこぼした強盗団に狙いを定め、激しい銃撃戦を開始する。
「なんや、意外と善戦しとるやないかい」
街の高台から望遠鏡で防衛戦を見守るウルフウッド。
「この分やったら、ワイらの出番なんて回ってこんやないか。トンガリ」
隣にいるヴァッシュに視線をやるが、やはりその姿はない。
「……あんの阿呆」
パニッシャーを背負い直し、ウルフウッドはヴァッシュの行方を捜し始めた。
用心棒の固定砲台であるガトリングガンが唸りを上げ、無数の弾幕を張る。
あろうことか、敵味方の区別なく――。
「バカヤロ―――!! 味方がいるんだぞぉっ!?」
憲兵の一人が塹壕から顔を出し、怒鳴る。しかし、ガトリングガンの流れ弾が容赦なく降り注ぎ、慌てて頭を引っ込めた。
「今だ!! グレネードを投げろぉっ!!」
防衛側の統制が乱れていることを視認した首領が、即座に部下へ命じる。無数のハンドグレネードが、手薄になった塹壕やバリケードへと一斉に投げ込まれた。
あちこちで爆発が起きると思われたが、その一部が不自然に空中で爆発した。
「なぁぁぁにぃ!?」
あまりの出来事に首領が絶句する。撃ち抜かれたのは、どれもが防衛線の致命的な箇所へと投げ込まれたものだったからだ。
最戦線はまさに無法者の楽園と化していた。頭に血が上っているのか、あるいは最初から巻き込むつもりだったのかは定かではないが、用心棒たちの暴走は止まらない。
街や住人のことなどお構いなしに、破壊力の高い重火器を乱射していく。
「どっちが無法者かわかんねぇーな!?」
強盗団の一人が呻くように呟いた。
幸いなことに、住民の避難はすでに完了しているようだった。
ヴァッシュは戦場と化した街中を駆けながら、最悪の事態に陥らないよう介入していく。
「無茶苦茶だぁ~!? 僕が一体、何をしたっていうの!?」
「……ぐぬぬぬっ!? あの役立たずどもめっ、ワシの街をよくも!!」
街の中心部にある豪邸の一室。市長は怒りに震えていた。
「市長、早く避難しないと……」
秘書の一人が進言するが、
「逃げるじゃと!? このワシがっ!?」
「ただの寄合だったこの街を一から築き上げた、このワシに逃げろと言うかっ!?」
「ひぃ……!?」
市長の血走った目が、秘書を鋭く睨みつける。
「あれを出すぞっ!!」
狂気的な笑みを浮かべ、市長はその場から退室する。
暗い一室。鈍い光を放ちながら、巨大な人型が鎮座していた。
「これでも喰らいやがれっ!!」
用心棒の一人がロケット砲を担ぎ、首領を狙うが……。
「馬鹿がっ!?」
首領の腕が変形し、砲身と化す。用心棒が放つよりも先にそれは火を吹いた。
用心棒に直撃するはずだったその一撃は、しかし突如狙いが逸れ、真横を横切るようにして後方の建物を爆砕した。
用心棒は慌ててロケット砲を放り投げ、命からがら逃げ出していく。
「……チィ!」
自分の射線を弾き、睨みつけるように介入してきた『誰か』を、首領は鋭い目で見つめた。
「てめぇか、さっきからちょっかい出してくるやつは……」
そこには、リボルバーを構えたヴァッシュが佇んでいた。
その銃口から昇る硝煙が、さっきの介入が彼によるものだと如実に物語っている。
「ここまでにしない? お互い、痛み分けってコトで」
「できるわけねぇだろ!! ここまで収穫ゼロだぞっ!!」
「メチャクチャやな……。アイツが関わるとロクなコトがおきへん」
そうぼやくウルフウッドは、懐からハンドガンを抜き、自分を狙おうとした強盗団のサブマシンガンを的確に弾く。
「悪いなぁ。ワイ、トンガリみたいに甘くないねん」
首領がレバー式ショットガンを放つ。広がる散弾がヴァッシュの移動を制限し、そこへ本命である腕に内蔵されたグレネードランチャーが火を吹いた。
ヴァッシュは地面を転がると同時に引き金を引く。
正確な射撃で砲身を逸らし、時には放たれたグレネード自体を直接狙撃して空中爆破していった。
「在り得ねぇ!?」
どんなに腕の立つガンマンであろうと、常に動き回りながら弾を必中させるなんて――。
「ド派手な赤いコートに、金髪のツンツン頭……。まさか!?」
「……単なる与太話じゃなかったのかよ」
リボルバーを構えたまま、微動だにしないヴァッシュ。
それが首領の逆鱗に触れた。
「待ってくれてるってかいっ!? 舐めんのもいい加減にしろぉっ!!」
レバー式ショットガンを片手で回転させながら装填する。
首領がショットガンの引き金に指をかける瞬間―――。
無数の弾幕の雨が降り注ぎ、その掃射は首領の機械化された部位のみをピンポイントで破壊していった。
「トンガリ、おんどれは本当に悪党の扱い方がなっておらんなぁ?」
「……ウルフウッド」
「そんな顔せんでも、殺してへんで。まぁ、ギリギリやけどな」
タバコに火をつけ、一服するウルフウッド。
「市内を見回したが、ほぼ沈静化しとるで。ここに来る途中で幾人かふん縛っておいたからな」
ウルフウッドの報告に、ヴァッシュはホッと一息吐く。
その時、前方の暗闇から凄まじい稲光が走り、建物をまとめて貫通、破壊していく。その凶悪な余波によってあちこちで大爆発が巻き起こり、街を巻き込んで激しく誘爆していった。