「ワッハッハッハッァ、最初からこうしていれば良かったのだぁ~!!」
爆炎の中現われたのは、強化外骨格を纏った市長だった。
「役に立たない憲兵も、強欲な用心棒もいらんっ!!」
「コイツの前ではヒューマノイドタイフーンも強盗団も取るに足らんっ!!」
強化外骨格の左マニピュレーターに保持されたレールガンの銃口が帯電する。
「やばいっ!?全員、伏せろっ!!」
ヴァッシュが大声を上げて、呼びかける。
稲光が走り、都市の建築物をまとめて貫通していく。
「―――何つうもん使うんや、あのオッサン」
ウルフウッドがサングラスを抑えながら、呟く。
「そうだっ!!ワシはこの都市の市長じゃ。この都市で一番偉いのだ。逆らうものはコイツで黙らせればいいのだ!!」
高笑いを上げながら、両肩のミサイルポッドを起動させる。
計12連のミサイルが乱射される。狙いもロクに定まれていないミサイルが、周囲の建物の爆破していく。
「もうメチャクチャや。あのオッサン、目が血走っておる……」
「おい、トンガリ。ずらかるで……」
ヴァッシュに視線を向けるが、その姿はすでになかった。
「またかいなぁっ~!!」
ピコピコ、と擬音を立てながら憤慨するウルフウッド。
ヴァッシュはこれ以上被害が広がらないよう、市長の前に現れる。
「ミ・ツ・ケ・タ……」
ヴァッシュを目にした途端、レールガンを向けてチャージする。しかし――。
発射する直前、銃口の狙いが逸れる。
ヴァッシュの手にある大口径のリボルバーから硝煙が昇っていた。
早撃ち(クイックドロー)で射線をずらしたのだ。
「―――くぅぅぅ、ならこれじゃ!!」
再び、両肩のミサイルが放たれるが――。
弾幕の雨が降り注ぎ、すべてのミサイルを誘爆させる。
「ウルフウッドっ!?」
そこには、パニッシャーを構えたウルフウッドが立っていた。
「おんどれ!! いい加減にせいやっ!!」
「いやぁ~、でもこれ以上被害を広げるわけには……」
「アホかっ!! おんどれが関わるから被害が広がるんやろがっ!!」
「ワシを無視するなぁっ―――!!」
「「あっ……」」
二人の声が綺麗に重なる。
「どいつもこいつもワシを馬鹿にしおってっ!! 目にもの見せてやるっ!!」
右のマニピュレーターが動き、付属されてるプラズマカッターが起動する。
本来なら船外作業用に溶接や切断に使用されるものだが戦闘用に改造され、出力リミッターが解除されたことで馬鹿馬鹿しい規模の光刃が発生する。
「やばいぞ、ウルフウッド!? かすっただけで蒸発だっ!!」
「はぁぁぁっ!? あんなもん振り回されたら逃げ場なんてないでっ!!」
「ひゃはっはっはっ!! 押し潰してやるぅ~!!」
極太のプラズマカッター、いやプラズマブレードが縦に振り降ろされた。
二人は各々、左右に跳び躱す。
それと同時にヴァッシュが転がりながら銃撃を放つが―――。
外骨格の堅固なフレームに阻まれる。
間髪入れず、ウルフウッドがパニッシャーの掃射するが、それさえもプラズマブレードで切り払われる。
「なんや、あのオッサン!? ハンドル握ったら性格変わるタイプかっ!? あの超反応!?」
「嘘だろっ!? 外骨格であんな挙動ができるなんて!?」
「ハハハハハっ!! 甘く見たな若造どもっ!! ワシはこれでも昔は名うての賞金稼ぎだったのだ!!」
「多くの死線を潜り抜け、身体は衰えても、ワシにはコイツがあるのだからなっ!!」
「そうだっ!! 他者など信用できぬっ!! 信用できるのは己の力のみよっ!!」
「あのオッサン、別の方向で拗らせ始めたで……」
プラズマブレードの勢いが弱くなり、光刃が消失する。
「オーバーヒートだっ! そりゃあ、あんな出力で維持できるはずない!」
その隙を逃さず、ウルフウッドがパニッシャーを反転させる。
ロケットランチャー形態へ変更させ、放つ。
「これで往生せいやっ!!」
ロケット弾が火を噴き、市長の方へ迫る。
ロケット弾が外骨格のフレームに接触し、起爆する。凄まじい爆炎が包み込み、周囲に爆音が轟いた。
噴煙が辺りを覆い尽くす。
ヴァッシュもウルフウッドも構えを解かず、煙が晴れるのを待つ。
その中から、不気味な黒いシルエットが浮かび上がった。
現れたのは、火花を散らしながらも佇む半壊の強化外骨格だった。
「まだじゃっ!!まだ終わらんぞ!!」
コックピットを保護する強化ガラスが割れ、そこから顔を覗かせながらも、市長の戦意は揺らぐことなく益々燃え上がっていた。
「……おい、オッサン。いい加減にしいや。これ以上やると――」
ウルフウッドが煙草に火をつけ、一服しながら嗜めるように言う。
「……ウルフウッド」
ヴァッシュが手で制する。
妄執と狂気に取り憑かれた市長を止めるには、ただ倒すだけでは駄目だ。
本人が納得する形にしなければ、真に止まることはない。
「なんのつもりじゃ……。まさか、一騎打ちでもしようというのか?」
「いやぁ~、僕も柄じゃないんだけど。そうしないと、納得してくれそうにないからさ」
「それに……そっちはボロボロだし、そんな有り様なら通るだろ? 45口径の弾丸」
「……よかろう。受けて立つぞ、ヒューマノイドタイフーン!」
唯一、無事な兵装であるレールガンを構える。
「……アホらしい、勝手にせい」
背中を向け、手をプラプラさせるウルフウッド。
これ以上は手を出さないという、明確な意思表示だった。
「コイツが合図だ」
市長が取り出したのは、自身の横顔が刻まれた記念硬貨だった。それを指で高く弾く。
コインが空高く舞い、一瞬、静止する。
そのまま重力に引かれ、地へと堕ちていく。
まるで、その栄華の終わりを告げるかのように、地面へ吸い込まれていく。
コインが地面に落ち、跳ねる音が響いた。
両者が同時に動き出す。
市長の持つレールガンの銃口から、激しい紫電が舞う。収束から連射モードへと切り替えられたソレは、細かい狙いなど構うこともない、狂気に満ちた連射を繰り出してきた。
対するヴァッシュは、側転しながらレールガンの射線を外すと同時に、自身の銃の引き金を引く。
4 5口径の弾丸が、機体を支える足の関節部に寸分の狂うことなく着弾し、破壊する。
機体が傾くこともお構いなしにレールガンを乱射するが、周囲に無駄に破壊するだけで終わる。続け様に強化外骨格の左肩を撃ち抜き、攻撃手段を奪う。
「ぐぉっ!?」
コックピットの操縦桿が帯電しながら火花を散らす。
壊れた関節が機体の自重に耐え切れず、激しく転倒した。
その勢いでコックピットから市長が飛び出し、地面へと放り投げられる。
そのまま、顔面から地面に叩きつけられた。
市長が頭を上げると、目の前にヴァッシュのリボルバーの銃口があった。
ヴァッシュが困ったような顔を向ける。
「さて、どうする? 僕はまだ一発残ってるんだけど、続けるかい?」
「ぐぐぐぐっ………ま、参った」
市長は悔しさに顔を歪め、うなだれるように呟いた。
「……よう分かったな、あのオッサンが一騎打ちを受けるって」
「自尊心が肥大化した相手は、こちらが譲歩すれば嬉々として乗ってくるからね」
「自分で決めたことだから、それを覆すことはプライドが許さない。だから、負けたら折れるしかないんだよね」
「さよか。おんどれ、意外とエグいこと考えるな」
―――後日。
「また、これかいっ!?」
「いいから黙ってワーキング!!」
せっせと都市の修繕工事に従事する二人の姿があったとさ。めでたし、めでたし♪