すばらしい新世界、終焉   作:ひねもす@HAMELN

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BNWE-047.分析

エキシビション・マッチ。ここまでの概況。

 

マゴダユウはレスリング・スタイル。

指先から電流を放出し相手にショックを与えられるらしい。

金属バットの打撃にも耐えられる装甲は備えているが動作はやや緩慢。

フィールド中央のサークルより外で攻撃することを禁じられている。

 

対戦者イスケ。

重武装で臨む。手には金属バット。

フィールド全域での戦闘を許可されている。それだけマゴダユウよりスペックで劣ると思われる。

慎重に立ち回り、マゴダユウの隙を窺っているところ。

 

マゴダユウの武器が電気ショックだけであれば、攻撃ポイントは限られる。

イスケの首筋、ヘッドギアから覗いている目の周辺、あるいは防具をひっぺがして露出させた肌を狙う。

もちろん、サークルより内側で。

 

序盤戦ではイスケの方が俊敏に動いていた。

マゴダユウがあれ以上速く身を躱(かわ)せないなら、突進してリーチを詰め頭へ一撃という戦法も可能であろう。

マゴダユウの電流は、先程のがマックスであろうか。

だとすれば、とどめをさすのは難しいかもしれない。

しかしレギュレーションが公平に設定されているならば、もっと強い攻撃が可能だろうという推測はできる。

観覧場では黒装束たちが小声で感想を述べあっている。

 

男E(ソウエモン):ヤソエモン、君はどちらが勝つと思う。

 

男C(ヤソエモン):イスケでしょう。

 

ソウエモン:なぜ?

 

ヤソエモン:マゴダユウは最初のチャンスで全力を出しきるべきだった。

手の内を知られてからじゃ分が悪い。

 

ソウエモン:次、君とイスケとのカードが組まれたら、どうする?

 

ヤソエモン:さあ。その場になってみないと。

せいぜい甘いレギュレーションを設定してもらえるよう、ビビリまくっておこうかな。

 

イスケはサークル外周を行きつ戻りつ、出たり入ったりを繰り返した。

マゴダユウは中心点から動かず、常にイスケの方を向いて、構えのポーズを崩さない。

 

誰もがじりじりしてきた頃、咄嗟にイスケが突進。

不意を衝かれたマゴダユウ、頭を庇い、姿勢を低くする。

イスケ、迷わずマゴダユウの太腿めがけてバットを叩きつける。

マゴダユウ転倒。

続けざま強打の嵐。

城健三朗がコールし、ゲームセット。

 

サークルには血溜まりが広がっていた。

観戦中の黒装束から数名が立ち上がり、フィールドへ出ていく。

負傷者の搬出とモップ清掃を開始。

勝者イスケは悠々とゲートへ向かい、去っていった。

観覧場での興奮をしばらく放置してから、健三朗が静粛を求めた。

 

健三朗:今の解説をできる者。

 

「マゴダユウは油断した」

「一撃で決着つけられるものと慢心していた」

「他に特技を持っていたのかもしれないが使うつもりもなかったようだ」などの意見が出た。

 

健三朗:マゴダユウ側に立った分析が多いな。

イスケ視点で語れるやつはおらんか。

ヤソエモン、どうかね。

 

ヤソエモン、指名されたので渋々立ち上がる。

 

ヤソエモン:粘り強く相手を観察し、挑発し、攻撃の手順を頭の中で完成させてから勝負に出ました。実に見事だと感じます。

 

健三朗:イスケは改造後だろうか。まだ生身だろうか。

 

黒装束たち、軽くざわめく。

 

ヤソエモン:わかりません。ただ、わからせないよう意識していたことはわかりました。

だから、手強いサムライになれるのじゃないかと想像します。

 

黒装束たち、感嘆の溜め息を漏らす。

 

健三朗:いいコメントだ。ありがとう。

 

ヤソエモン、座る。

 

健三朗:それでは本日のエキシビション、全プログラム終了。

先生、なにかありますか。

 

鬼庭良直は立ったまま、気取らない態度で語りだす。

 

鬼庭:御苦労。大事な点はすべて出たから特に付け足すことはない。

マゴダユウは薄衣の実験台だ。新機能を搭載されてよこされたばかりで、その能力をまだ使いこなせていない。

しかし自信過剰のようだったからイスケをぶつけてみた。

双方に良い経験となったものと願いたい。

薄衣では人体実験を盛んにやっている。成功すればこちらへ送ってよこす。だから今後も、異種格闘技戦のようなマッチングが増えていくだろう。

儂は、やれやれだと思うておるがな。

 

軽い哄笑。

 

健三朗:レギュレーション設定は私に一任されているが、相手の特徴を知らない同士の場合は互いに探り合うという段階が加わる。

これは、実戦においてはむしろ極めて大切な要素だ。軽んじるべからず。

むしろ公式戦では取り入れられない。エキシビションならではの楽しみともいえるな。

 

ソウエモンとヤソエモンは、複雑な表情を浮かべる。

 

ヤソエモン:マゴダユウはまっすぐ薄衣へ戻されるんだろう。

次は何を足されてくるかわかったものじゃない。

おれたちには迷惑な話だ。

 

ソウエモン:そうだな。君でもいつかは黒星を刻む日がくるかもしれない。

新型は侮れないからなあ。

 

ヤソエモン:狩りなら楽しめるが、こんなゲームじゃモチベーションも上がらない。

芸をさせられてるだけじゃないか。

まったく好きじゃないね、こういうのは。

 

健三朗:先生、締めますよ。

じゃあ皆、おつかれ。解散!

 

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