ニートがふたり。それぞれの自室から電話中。
ニートN:来月、栗駒いく?
ニートИ:え、もしかして山狩り?
ニートN:さっき派遣会社の担当から連絡きた。んで、即OKした。
そっちはまだか。
とにかく人手が欲しいらしい。時給も平均より高いぞ。
ニートИ:危険手当込みなんじゃねえの。
機動隊とか、地元の猟友会だって出てくるんだろ?
ニートN:さすがに銃は射たせてもらえないだろうけど、弾薬やら装備やら運んだりな。
ポーターみたいなことをやらされるらしい。
面白そうだろ。
ニートИ:12月だから仕事抱えてて行けないやつも多そうだ。
少し待たせとけば時給釣り上がるんじゃね?
ニートN:すぐ欲を掻く。そんなだから電話も後回しにされんだぞ。
仕事は、ノリの良さで掴んでいくもんだ。
ニートИ:おれは堅実派なのさ。
で、契約はいつまでだ。
ニートN:2週間。さすがに雪が降ったらできないだろ。
ニートИ:そうかあ?
雪山の遭難で臨時収入とか、やったことあるぞ。
ニートN:マジか。山の仕事ってそんなによくあるのか。
ニートИ:タイミング次第かな。
心中とか、死体遺棄とか。ニュースで話題になるほどだったら予算も出るからさ。
ニートN:栗駒は条件を満たしてる。キツさでいったらどうかな。
ニートИ:広すぎるんじゃないか。
事件現場周辺に範囲を絞って潰していくんだろうけど。
ニートN:お宝が出てくると思うかい?
ニートИ:おまえ自分が襲われる可能性、考えてないだろ。
ニートN:おいおい、おどかすな。
ニートИ:テロリストのアジトなんだろ?
あんな連中を追い詰めたら何をされても不思議じゃないぞ。
ニートN:うーん。早まったかな。
ニートИ:せいぜい楽しいハイキングをしてこい。オレは仕事の条件をもっとよく聞いてから決める。
ニートN:でも全体指揮は警察がやるんだ。一般市民の安全は配慮してくれるんじゃないかな。
ニートИ:テロリストが同じルールを守ってくれりゃいいけどな。
ニートN:キャンセルしたくなってきた。でも時給いいんだよなあ。
場面かわって電巧堂。午後のひととき。
ひっそりした1階食堂で大石が自販機のコーヒーを飲みながら、電話中。
大石良雄:あーども俺です。
派遣業界がざわめいてるって聞こえてきたんですが、なにか知ってたら教えてください。
岩城親隆:栗駒のことかな?
警察が、山狩りを始めるそうだよ。
大石:へー。なんか見つかればいいですね。
岩城:それで師走だというのに予定もない男手を掻き集めてるって展開だ。
大石:大館からも派遣してやるんですか。
岩城:ウチみたいな零細には募集要請もこないね。
組合に入ってないから存在すら知られてないのかもしれない。
大石:レギオンの一人でも忍びこませてやれば面白いのに。
岩城:潜入工作ができるスタッフはまだ数が少なくてね。
新米のうちは目つきや身のこなしでバレてしまうから。
大石:山狩りは勝手にやらせて、こちらは特にリアクションしないってことでいいですか。
岩城:かまってやりたいのかね。
三春にだって余裕は無いはずだろう?
大石:あっはは。自転車操業ですねえ。
社員10人まで減らしちゃうと、さすがにきつい。
岩城:君のところから来た何人かは、順調に育っているよ。
来年になれば、もっと本格的に、外で働く者を増やしたいと思う。
大石:やっぱりまだ駒が足りませんか。
岩城:絶対数の問題ではなく、特殊スキルを磨かせられる環境を整えたいんだ。
そのためには母数がある程度大きくないと。
大石:最近はどこから集めてるんですか?
岩城:田村があちこちから拾ってきてくれてるよ。
大石:白石の人材も大館で育成してるんでしたっけ。
岩城:いや、白石と北目はうちを経由しない。
そもそも片倉は助手なんて使わないだろ。
大石:そうなんだ。
寺坂を引き抜かれないかと時々ヒヤッとしてるんですが。
岩城:ハッカーは群れない。
寺坂くんだってそうじゃないか?
大石:なるほど。まあ、たしかに。
岩城:心配しなくていいよ。三春から人を移すことは誰も考えてないはずだ。
大石:ありがとうございます、スッキリしました。
岩城:栗駒だけどね。
あんなところに我々の拠点なんて無いから、せいぜい県警の踊りっぷりを眺めて楽しんでいたまえ。
じゃあ。