同窓会、つづき。
小野寺:哉子くん。失明した少年たちのケアを、OTとして担当している話を、もっと聴きたい。
守秘義務でがんじがらめだとは思うが、酒の勢いでつい、ということにしてお願いできないだろうか。
乙宗:先生。私を舐めてもらっちゃ困りますわ。
どれだけ酔っれれを、ひゃんと、隠ふへきほころわ、はふひまふはら。
寺坂:水飲みたまえ。
1分くらい、少し頭の中をすっきりさせてから喋ろう。
乙宗:ふーい。へやんでえ。
茅野:乙宗がここまで酔うの初めて見たな。いつもこんななの?
寺坂:これが普通だよ。僕よりずっとストレスを溜めてるからさ。
小野寺:いかんなあ。今夜は全部吐き出させてから帰してやりたいな。
吉田:あれ。帰しちゃうんですか。
小野寺:吉田。彼氏くんがいる場だぞ。それ以上は言うな。
寺坂:聞き捨てならないけど、拾いたくもないなあ。
茅野:小野寺先生にお持ち帰りされるってのはな、寺坂。女子にも男子にも、それはそれは名誉な勲章だったのだ。
乙宗:茅野。あたしのいる場で他の女の話、しないでもらえる?
寺坂:やあ、おはよう。
乙宗:うヒュん。はー。
では、僭越ながら一席。
少年A。最初の犠牲者です。いちばんショックは大きかったです。
それまでは学校でも塾でも皆の尊敬を集めてたのに、一人では階段も降りられなくなって、泣いてました。
両親は学校を休ませ、勉強も求めなくなりましたが、もともと愛情をもって傍にいてやるという生活習慣を持たなかった家庭のため、Aくんは孤独の只中へ突き放されることとなります。
こんな子に、どう接してあげるのが正解だと思いますか。
あ、ノブは答えを知ってるから黙ってて。
茅野:教本には「会うたびに何でもいいから語りかけて心を開いてやれ」って書いてある気がする。
吉田:それは
小野寺、ニコニコしながら聴いている。
乙宗:でも初期はあたしの担当じゃなかったから、会議で決まった方針通りに続けられてました。
Aくんは、大人たちを満足させる返事のしかたを覚え、その通りにつぶやけば後の時間はひとりにしておいてもらえるんだと学習します。なんたって頭がよかったので。
茅野:思考停止術を鍛えさせるためのプログラムだな。
吉田:頭がいい子なら、どこかでガス抜きをするはずだ。必然的に隠れた残忍性が尖鋭化されてしまう危険があるぞ。
乙宗:その兆候を感じたので、第2・第3の少年が入ってきたタイミングで、あたしが一括で引き受けますと部門長に申し出ました。みんな疲れ果ててたから、どうぞどうぞと譲ってくれました。
茅野:よかった。悲劇は回避された。
吉田:さて、ここからが問題か。乙宗はどんなアプローチで少年たちをケアしたかということだな。
茅野:基本は放置と観察だろ?
同じ境遇の被害者が集まってきたんなら、自動的に相互干渉と情報交換が始まるはずだ。それをこっそり聴くだけに徹して、舞台を整えておいてあげるんだよ。
乙宗:まさしくそう。
で、先生。ここでM県ならではの要素を含むんですけど、幼少期の右目失明っていうのは貞山公の重要なエピソードなんですね。
少年たちは
全員が梵天丸。
クローンだったり転生だったり、試行錯誤を重ねるうちに各々のキャラクターが差別化されていって、なんだか戦国時代の奥州に何人もの伊達政宗が同時出現したみたいなストーリーを紡ぎ始めたんです。
あたしは主に怪獣役で、その芝居につきあってあげました。
小野寺:最高じゃないか。よくやった。
乙宗:ありがとうございます!
茅野:そのミニ政宗たちは、いずれ退院していくんだろう?
外の世界とどう渡りあっていくものだろうな。
乙宗:瞬間最大政宗は7人だったかな。はじめから通いの子もいるし、出たり戻ったりも様々だけど、長期滞在政宗はいないねえ。
とりあえず一回放出して、くたびれたらいつでも遊びにおいでって言ってあげる。
そんな先輩は外の世界で生きる心構えを誰よりも親身に力説できるからさ。自分自身を同時に励ましてるんだろうけど。
たくましくて、もはやオトコだよ。
そのうち一人くらいホンモノの政宗を超えて天下を獲ってくれたら、あたしも報われるってもんさ。
吉田:夢を見すぎだぞ、乙宗。そろそろ王子様に連れて帰ってもらえ。
乙宗:白馬の王子様?こいつが?
あは、そういえば政宗たちが言ってた。
片目では馬も自転車だって危ないぞと。
だから外で戦うためには絶対の信頼をおける仲間づくりが不可欠で、初代貞山公にもそんな味方が大勢、傍にいてくれたはずだよねって。