すばらしい新世界、終焉   作:ひねもす@HAMELN

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BNWE-065.燃えよペン

M県警本部内、記者クラブ。

 

記者J:本日よりこちらへ配属となりました!よろしくお願いいたします。

 

記者一同:よろしく。

 

記者O:そんなに畏まらなくていいよ。

というより挨拶も控えめに。

もっと小声で。

 

J:はっ。

あの、先輩からも、うっすら聞いているんですが、体制がずいぶん変わったとのことで。

 

記者U:どんな風に聞いてる?

 

J:ジャーナリストたる矜持は、ひとまず隠しておけ。とか。

 

記者R:漠然としすぎてるな。

 

記者N:Jくん。むしろこれまで、県警記者クラブってどんなところだと思っていましたか。

 

J:はっ。

事件報道は注目度が高く、緊急性やプライバシーへも最大級の配慮をせねばならない。

捜査の全権を実質的に握る警察組織には威圧感と隠蔽体質も強固にまとわりつくから、我々は善良なる市民の味方という立場でかれらの逸脱行為を阻止すべく監視するため、陣中に拠点をつくらせているのだ。

というようなことを。

 

記者R:マニュアル通りだな。優秀だ。

 

N:で、具体的にはどう気をつけるべきと?

 

J:クラブ内で揉め事を起こすな。

序列には敬意を払え。

内通者にできる警察官を育成することは必須業務であるが、独占しようとせず他社とも協定を結び情報を分かち合え。

我々は束になって初めて、警察権力に対峙できるのだから。と。

 

O:うむ。まあ、建前はそうなんだけどなあ。

 

J:すみません。若輩者ゆえ、実績を伴った言葉にしきれておりませんのであります。

 

A:実績を伴う前だからこそ、そこまで真面目でいられるんだと思う。

ところで必須業務と言っていた内通者づくりは、当分、厳禁になったから。

 

J:は?

 

A:新しい県警本部長が来てから、大量の配置転換が断行された。

本部内で我々に協力的だったエスは軒並み挙げられて、交番勤務へ降格だ。

この粛清が効いたせいで、たちまち、我々と目を合わせてくれる者すらいなくなった。

 

U:トイレでも、俺たちが入った瞬間に、シーンと静まりかえる。

 

N:ただ、まだ隠しカメラや盗聴器なんかは仕掛けられてなさそうだ。

 

R:よせやい。

 

U:でも用心はしておいた方がいいぞ。あいつらはプロだから、その気になればなんだってやる。

 

J:あのー。我々だって監視対象でしょう。まっさきに取りつけるのは、この部屋では?

 

室内、一瞬で静まりかえる。

 

O:警察は、神聖なる正義の執行者だ。決して、間違ったことなど、するわけがない。

 

A:そうとも。そして、我々の使命は、警察官の方々が日々奮闘されているお姿を国民へ周知し、犯罪の撲滅に貢献することだ。

 

U:もちろん異存はありません。凶悪で狡知に長けたテロリストこそが、人類共通の敵なのだ。そいつらを叩くためにこそ、我々はペンの力を奮う。

 

N:これまでの私たちは、愚かにも、大衆に媚びるあまり、最も尊敬されるべき方々へ批判の刃を向けるような態度さえ、とることもありました。悔い改めます。過ちは繰返しません。

 

R:あれ、長老。おめざめになられてましたか。

 

部屋の隅で窓際を向いて座っていたLが、その声に反応してゆっくりと立ち上がり、中央のテーブルへ歩み寄る。

かしこまる者達を前に、穏やかな声で訓示を垂れる。

 

L:諸君。この世は今また、戦国時代だ。

元禄文化は過ぎ去った。祐筆たる者、常に一寸先は闇と心得よ。

ただ、ね。

沈黙すべき時もある。攻撃だけが華じゃない。

為すべき場所で全力を投じなさい。

私はもう少し、休む。

 

長老が席へ戻りかけたとき、ノックも無く反対側のドアが開いた。

 

今村安長(警視正):よォ、ブンヤども。暇か。

ひいふうみ……全員いるな?

 

J:はっ。あの、本日より配属されま

 

今村:聞いてる。受付で採取した指紋も受理した。座れ。

さて、と。諸君に仕事をやる。

M県に隣接する、YAFI各県との境界紛争について調べ、事例ごとにレポートをまとめて、出せ。時代はいくら遡っても構わん。

 

O:それ……警察様のお仕事なんですか。なにか新しい事件に絡むものですか。

 

今村:余計なことは考えず、キビキビと動け。

おまえたちの専門じゃないというなら社内で適任の記者に回せ。

 

A:提出数に応じて報酬はいただけるものでありましょうか。多少でも評価していただけるのであれば、励みになります。

 

J:期日は決まっておられますか?

 

今村:そこまで考えてなかったなあ。

じゃあ、おまえら一人ずつ今週中に一本書いて出せ。

その中で有能そうなやつに、継続的なギャラを与えてやる。

 

今村は言い捨てると出ていった。

記者たちは、ただちに戦略会議を始める。

言われるがまま競い合うことはない。一致団結して、ようやく連中と対峙できるのだ。

 

L:すぐ書けそうなのは、I県との境だね。一関(いちのせき)市だ。

あそこは明治期からコロコロ管轄が移り変わった。

今はどっちの県に属するんだったかな?

 

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