ステッキを拾った。魔法少女になった(30代男性)。 作:稲荷竜
整理しよう。
俺が、どのように魔法少女たちとかかわるか、スタンスについて。
協力というか情報は欲しい。
戦いは──子供に、戦いはさせたくない。でも、『全部の戦いを俺が代わる』と言えるほど、俺の継続戦闘能力は高くないし、敵も弱くないことがわかってしまった。
現実と理想をすり合わせていこう。ある程度、戦いはしてもらわないとならない。でも、罪と責任は、俺が背負う。怪我も、させない。これが現実と折り合いをつけたうえでの目標。
だから『戦いをやめろ』とはもう言わない。
そうなると……どうなる?
『あなたたちの仲間になります。今後は協調していきましょう。
あ、ちなみに俺の正体です。三十代男性ですが仲良くしましょう♡』
……ねえな。なさすぎる。
あとさー。
俺の体、セミオートなんだよね、動作が。
しかもなんかめちゃくちゃ気になること言われちゃったんだよな、フードの人に。
我らが神?
俺ですか?
たぶん、この姿のことなんだろう。
あとブレイブには『ウィッチ』とか呼ばれたな。
俺の世代だと、魔法少女を
俺、最終的に魔法少女の敵に回らないか?
ということはだ。えーと、協力はしたい。情報は欲しい。
でも、俺に対して油断してほしくない。
一定の警戒をさせたうえで情報面での協力を取り付ける。
これが理想的な第一目標。ただし、こちらから提供できる情報は一切ないとする。
……条件が厳しいなオイ!
二度と変身せずこの子らに全部戦いを任せたら、まあ俺が裏切って敵に回る可能性も減る、か?
……クソ! 俺はなんなんだ!? 俺の正体を俺が一番知りたい!
あのフードの人生かしておいて尋問とかすべきだった!?
いやそんな余裕はなかった。ブレイブが間に合ってしまったらあの男とブレイブとの戦いにはなったはずだ。だって転移トラップ前の引き寄せ、めちゃくちゃブレイブの首狙ってたから。
どーしよどーしよマジでどーしよ。
敵対をする意思はないけど適度に油断せず警戒をもって仲良くしてください。情報ください。これを満たす距離感と関係性は……
「一般人を巻き込んだ」
……『一般人への被害は抑えようとするが、魔法少女との戦力的協力をする気はないムーブ』。
これでいこう。
「…………
「傷を治して離脱させた」
「……」
「あなたは弱い。だから、人を守り切れない」
俺が勝手についていって、勝手に怪我しただけなんですよね。
もう少しこう……柔らかい言い回しとか……したいな!
これじゃ人が傷ついた罪悪感をあおっちゃってるじゃん!
コミュニケーションど下手系魔法少女がよ!!!
「ウィッチ、あなたは──」
「──ウィッチというのは、私?」
「──え。そ、そうだけど……」
なんだろう、この子が思いついた呼称ってわけじゃない態度だな。
どっかに名簿とかあって、そこに俺が『ウィッチ』って名前で登録されてんのかな?
「……なら、ウィッチでいい」
「私は……」
「知ってる。ブレイブ」
「……そう。ウィッチ、あなたは……何が目的で、戦っているの?」
「悪者を倒す」
「え?」
情報がないからふんわりした大目標になっちゃったな……
いやマジで悪者を倒すぐらいしかねえんだ、指標が。なんのために倒すかって言ったら、これ以上、
「わ、悪者っていうのは、
そうそう、そうだと思います。
名詞をありがとう。次回から使うね。
相変わらずなんも知らん系ミステリアス魔法少女だな俺。
……ただ。
俺の口は、俺の意思にない言葉を、紡ぐ。
「──使役?」
「……っ……!」
もともと冷たいしゃべり方をする俺の声は、これまでにない明確な『冷たさ』があった。
それは怒りに根差すものだった。でも、その怒りの理由が、声を発しているはずの俺にもわからない。
「あんな迷惑なクズどもが、神を使役していると、本当に思っているの?」
「……で、でも、あいつらが
「あんな
「…………」
「私は私の欠片を取り戻す。そのついでに……」
「……」
「悪者を倒す」
「…………えっと、はい。そ、そうなのね」
体の行動決定権が戻った感じがする。
でも今、確実に出てたよな、『自我』。俺のじゃなくて、この体の自我みたいなやつが。
これさあ、めちゃくちゃ神じゃん。
あの泥の大本の神様じゃね、
だから、つまり、えーっと……
……行動決定のための判断材料が足りないよ!
全体的な図が見えてこない。
そして会話も変な雰囲気で途切れてしまった。
こういう時は帰ろう。それがいい。
「帰る」
「え」
「さようなら」
「あ、うん、さようなら」
もう少しミステリアス系に徹した言葉遣いとかなさった方がよろしいのではないでしょうか。
いまいち締まらない……
ともあれ、悪の組織の幹部っぽいやつを一人倒した。
誰かあと幹部が何人いるとか、魔法少女と俺と悪の組織の相関図とか、ください。
マジで何もわからん。助けてくれ。