ステッキを拾った。魔法少女になった(30代男性)。 作:稲荷竜
第24話 変化
モンスターが出た。
出ると同時に頭の中にレーダーマップが出現するこの感じにももう慣れた。
我が名は魔法少女ディメンション・ウィッチ。
魔法少女なのに魔女呼ばわりされている、何かヤバそうな正体の者だ。
モンスターの出現が生活圏内ばっかりなのはわりと助かる。
相手にも『拠点』がある以上は、その拠点からあんま離れた場所で騒ぎを起こしにくいっていうのはあると思う。……つまり近所にまだあるんだなー、拠点……『魔術工房』だったか。
魔法少女がご近所住まいなのもたぶん、『魔術工房のある地点から逆算して、その近辺にいる魔法少女適性のある人が、ステッキ拾って変身した』っていうのなんだろう。
じゃあ誰だよステッキ落として回ってるの。
まさかRPGの宝箱補充要員さん!? 実在したのか!?
わからない、何も。
お供妖精とかいてもいいんだけど、魔法少女も別に引き連れてねえし、いないのかもわからんね。
俺の魔法少女観は古い。古いっていうか、深夜枠。
昼のビジネス街。
俺の職場があった場所。
辞める前だったら『モンスター出たついでに俺の職場もぶち壊してくれねえかな』って感じだけど、今は『壊されたら面倒な騒ぎ方しそうな集団だからなるべく離れたところで戦ってくれてありがとう』と思う。
でも道とか建物とかにそこそこの被害は出るんだよな。
保障とかどうなってるんだろう。そんなことを考えながら、モンスターを倒した。
本日のやつはスライム。ただしクソでかいスライム。近場のオフィスビルの半分ぐらいのデカさだった。
青みがかった半透明のゲル体の中に、いかにも『ここが弱点だぜ』みたいな赤い塊があった。
核の大きさはだいたい人間の頭部ぐらい。ゲル体の体積に比べて小さすぎると思いました。
そいつが都会のビジネス街でビルを巻き込みながらうごめいてるもんだからさすがに俺も青ざめたよ。
……なんかなー。
レーティングが変わってる感じは、廃病院から感じてた。
どうにかこうにか見える範囲の人は全員助けたけど、俺に人を癒す力とかはない。
自分の体は変身前後で治る仕様らしい。プリエステスの怪我が治ってたのでそうだろうなとは思ったけど、右肩と左前腕怪我治らなかったらどうしようかと思ってた。
けど一般の人はそうもいかない。巻き込まれて怪我でもしたらそのまんまだ。
……いや、確か、
「ウィッチ!」
ちょうど、俺がスライムを処理し終えてぼんやりしてたところに、ブレイブとプリエステスが来た。
俺はひとまとめに寝かせておいた『スライムに巻き込まれた人たち』を指さして、
「治しておいて。それじゃ」
と去った。
引き留めるような声が聞こえたけれど無視する。
俺は敵か味方か!? 積極的敵対はする必要はないけど警戒は失ってはならないミステリアス魔法少女! を目指しているので、しゃべればしゃべるほどボロが出るなら、しゃべる前に退散する作戦でいかせてもらう。
あと疲労が限界。
だいぶ活動時間伸びた気がするけど、それでも変身解けそうになると眠気がヤバいからな。
いやーしかし……
いったん少女形態を挟むとはいえ、元の姿に戻れるのは本当にありがたい。
一生少女の体のままとか本当に深刻に困るからな。
着るもんもねえよ。おじさんモードの服さえ学生時代の着まわしてる有様なのに。
本当に『戻る』って素晴らしいな。
◆
「………………戻らない」
ぶっ倒れるように寝て、それからまた寝た。
これまでの経験だと、目覚めたころにはおじさん状態に戻ってるはずなんだが……
戻らない、ね。
推定十歳の全裸少女が姿見の前で自分のほっぺたとかむにむにしてる。
戻らない。
………………まあ、当然、ないな。下の方の。男子必携アイテム。
戻らない、な。
うん。
…………俺、女の子になっちゃった。