ステッキを拾った。魔法少女になった(30代男性)。 作:稲荷竜
あれからもう一回変身する機会があったんだけど、やっぱ女の子時間が長くなってるな。
しかしモンスター出現頻度は上がるばかり。
とはいえ苦戦するほどの強敵とか物量とかは出ない。
最近で一番苦戦したのはアレだな。
フードコートからダッシュで逃げたあと超速度でうちに来た魔法少女二人に『ウィッチちゃんはどこですか!?』『二人の関係は!?』とかガン詰めされたことぐらいだ。
なんも答えられんのでだいだい全部『よく知らない』『たまにうちに来て勝手にリラックスしていなくなるみたい』とか答えたけど、今度は『合鍵渡したの!?』っていう問題が発生してびびったな……
まあ確かに三十代無職男性が女児に合鍵渡しておくの、いろんな背景が想像されてヤバいなって感じだったんで、『知らない。渡してない。謎の力で入ってくる』で押し切った。魔法ってすごいよね。
ブレイブが魔法少女だって発覚した時に全然驚いてなかった理由の一つとして『もともと魔法少女(ウィッチ)と知り合いだった』っていうのが生えてきて、俺が驚かなかった理由が補強されたのは、嬉しい誤算ではあった。
今のところ正体バレはしてないってことだ。
まあ、あと二人も正体を外には漏らしてない子らっぽいし、普通、魔法少女の正体ってばらさないもんだよな。
そもそもにして常識改変? 侵略? まあそんなのに対応してるタイプの魔法少女だから、そりゃあ正体バレは避けるよな──
──って思ってたんだよな。
本日の現場は学校などもある区画で、時間は……授業は終わってるかな。夕方四時。二十四時間表記では十六時。部活動の子とかが学校にいるぐらいか? そういう時間。
八月もまだ半ばなので全然明るい時間帯、『スクールゾーン速度落とせ』の表記の上に、学生のそばにいたらいけない感じの見た目のモンスターが出現している。
クラゲみたいなモンスターだ。
全身が透明度が高くて、夏の日差しの下できらきら輝いているからかろうじて見えるものの、少し角度が変わったら透けてしまって全然見えなくなる。
で、クラゲなので『傘の下に触手』という構造なんだけど……
触手の先端付近だけピンク色になってるんだよな。
でさあ……
あの先端付近の形状……
なんか奇妙にくびれてるっていうか……
なんだろう、ちん…………
いや、まあ、うん。
気のせいだな。
とにかくさっさと討伐してしまおう度はかなり高いモンスターだ。
でもここで、問題があった。
周囲には下校中とおぼしき学生がたくさんいて、しかも、学校前の広くもない一本道なもんで、隠れる場所がない。
今回は『頭にレーダーマップが表示されたので現場に急行した』わけじゃなくて、ちょっとこの先にある大学(母校)で用事があった帰り、つまり『不意の遭遇』なので、まだ変身してない。
可能な限り正体バレは避けたいのが魔法少女の常識。特に中身がおじさんの場合はそう。
なのでどこか隠れた場所で変身したい──が。
……まあ、学生が巻き込まれかけてるのに、そんなことグダグダ言ってる場合じゃねえよな。
「魔杖──」
「七つ道具、
──変身するぞ、と思って行動したんだけど。
俺より先に真横で変身を開始した魔法少女がいた。
それは、
知らない子だ。
『変身』のイメージが流し込まれる。
実時間にして一瞬だろう。でも、俺は確かに見た。彼女の全身が紫がかった光に包まれ、その姿がだんだんと変わっていくのを。
元の服装はセーラー服だったように思う。
それが光の中で消えて、チューブトップ、ベスト、それからホットパンツにブーツという格好へ変わっていく。
色は紫を基調としていた。でも、黒に近い濃さだった。
最後に両手に籠手みたいなものがついて、腰にナイフと鍵束がつく。
その格好は今まで出会った魔法少女たち(自分含む)とは趣が全然違っていた。
今までの魔法少女たちはフリルだったり、パニエ(スカートの下のふわふわをこう呼ぶようだ)だったり、あと袖がふくらんでいたり、布地が多めでかわいい系だった。
でも今、横にいる子は、露出が多めで、クールとかパンクとか、そっち系……
……というか、盗賊系?
プリエステスとブレイブ、たぶん教皇とか聖女、それから勇者ベースだろ。聖剣って言ってたしな。
で、俺がウィッチで魔法使い扱いされてるおじさん。
ジャンル的には、出てくるモンスター(初期)の姿も含めて、たぶんRPG系。
そこから考えると、今、横で変身した子は、
「どいてろ
……どうやら、新しい魔法少女が現れたようだ。
いろいろと、これまでの魔法少女たちと、毛色が違う、というか──
──
あのフードの魔術師に俺、そう呼ばれたし。
……いや、マジでいろいろ違うな。
どうしたもんだろ、これ。