滅びを回避したい魔法少年   作:紺南

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リリカルなのはの二次創作を書いてたら思いつきました


第1話

 

青い空が黒に染まっていく様を見た。

天に伸びる光の柱。生きとし生ける全てのエネルギーを費やされた魔法。

それを打ち砕いて地球を覆っていく次元の狭間。

雲が弾け飛んで見えなくなった。瞬く間に太陽は消えた。希望と共に。

 

ビルは崩れ、文明の遺構は塵と化していく。

地面がめくれて瓦礫を飲み込む。

 

目の当たりにした光景に膝をついて嗚咽を漏らす。

 

《終わりだよ》

 

否定はできない。戦いは終わった。人類は負けた。

 

この日、世界が滅んだ。

遠くない未来の話だった。

 

◇ ◇ ◇

 

朝日奈日向(あさひなひなた)。五歳。保育園に通ってます。

昔、世界が滅びました。滅んじゃったので、タイムリープすることにしました。

忌々しい小動物の助けを借りて過去に跳びました。五歳でした。五歳なので保護者同伴です。家から出ることも出来ません。なんも出来ません。

 

「舐めてんのか?」

 

《僕に言わないでほしいなあ》

 

念話で会話する。

小動物、もとい精霊。姿を消して顔の横に浮いている。言ってしまえば、世界が滅んだ元凶。

 

《具体的な日時の指定はできないって言ったよね?》

 

「聞いた気がする」

 

《成功するかどうかも分からないって言ったよね?》

 

「聞き流した気がする」

 

《だから、僕に言わないでくれるかな?》

 

「言わずにはいられない。だって、お前のせいだもん」

 

《僕だけのせいじゃないよ》

 

「そうだね。お前らのせいだったね。死ね」

 

園庭の中ほどを歩きながら話をする。

記憶よりもちゃちな遊具に五歳児たちが群がっていた。

日光を避けて木陰に移動する。植えられている大きな木の根元にしゃがみこむ。足元で蟻がうごめいていた。足を動かして踏まないようにする。よじ登られたくもなかった。

 

「魔法少女たちに会いに行きたいのに、行けねえじゃねえか」

 

《行ったところで意味もないよ。何が出来るの? 大体君と同い年じゃないか》

 

「信頼を得ておくのは大事だと思うんだよね。それに子供だから、いくらでも洗脳できるじゃん」

 

《さすがだね。反吐が出る》

 

「ありがとう」

 

溜め息を吐く。あまり吐きすぎると不幸を呼ぶと聞いたことがある。だから世界は滅んだのだろうか。強烈過ぎる。

 

「親の目って言うのはどこにもあるんだなあ。どこにも行けないもんなあ。まいっちゃうなぁ」

 

《果たして、君の親は過保護なのか。そこから突き詰めていく必要があるね》

 

「突き詰めた先には何がある?」

 

《知らないの? 大人の目があるんだよ》

 

五歳児が一人で歩いていたら保護されるだろうか。

少なくとも迷子の疑いは付きまとう。電車なんて乗ってたら親切な人に声をかけられそうだ。そう言うのって大体人の良さそうなおばあちゃんの印象がある。

 

《世界が滅びる瀬戸際だって言うのに、悠長なもんだよねえ》

 

「まだ誰も知らねえからな」

 

《あと八年だよ》

 

「まだ時間はある」

 

《何も出来ずに過ぎていきそうだけど》

 

「それなあ……」

 

四年後に精霊が現れる。そうして魔法少女が生まれ、奴らが来る。

三年の戦いの後、世界は滅ぶ。

 

「大人を味方につけたい……」

 

《諦めろん》

 

「このくそったれな小動物を捧げれば信じてくれるだろうか」

 

《やめてくれ》

 

結局、事態が動き始めるまで出来ることはほぼない。

魔法はありまぁす、なんて主張しても五歳児の妄想でしかない。それを覆すための力を、今の俺は持っていない。

 

「ろくに魔法も使えないのはどういう理由ですか?」

 

《タイムリープで力を使い果たしましたからね。完全回復まで四年ほどお待ちください》

 

「まじでくその役にも立たねえじゃねえか、ゴミくそがよっ!」

 

《しょうがないでしょ。まだ次元が繋がってないんだ。魔力がないんだよ、この世界》

 

別次元から漏れ出してきた魔力でもって、人間は魔法を扱うことが出来るようになった。

ただし、新エネルギーの利用方法は一から確立していく他ない。だからより簡単な方法として、精霊と契約するというものが選ばれた。唯一の難点は、契約には相性があり、大体は十歳前後の女の子が選ばれると言うこと。

なぜ十歳前後の女の子かと言うと、精霊の琴線にドストライクだからだ。

 

「ロリコンが……」

 

《その辺の感覚が分からないんだよねえ。可愛い子に力を分け与えて何が悪いの? いいじゃん。かわいいよ。人間の女の子。まだ穢れを知らなくてさあ。穢れを知っていく過程を間近で味わえるって言うのがさあ》

 

「薄汚い精霊どもは全部俺と契約すればいいんだよ。そうすれば世界救えるから」

 

《僕もそれが一番だとは思うけど。でも、皆さんにも自由意思って言うのがあるからさ》

 

「ロリコンに自由と意思が必要ですか?」

 

《必要だと思います》

 

「必要ありませんね」

 

断言できます。必要ありません。

 

「俺に出来ることは何がある?」

 

《ない》

 

「おいおい、足搔いて行こうぜ。みんな死んじまうよ」

 

《魔力がないからなあ》

 

「宝くじの当たり番号知らねえか?」

 

《しらないね。万馬券は知ってるかい?》

 

「知らねえ。となると株かあ?」

 

《目指すはおくりびとか。わくわくするじゃないか》

 

「八年後には全部消えるんだけどな」

 

《まるで花火みたいな人生だなあ》

 

「たーまやー」

 

《かーぎやー》

 

溜め息を吐いて立ち上がる。

 

「ま、足搔くしかないわな」

 

《頑張れ頑張れ。マジ応援してるから。なんとかできたら感謝するから。マジ感謝》

 

「貴様の息の根を止めるその日まで、俺は足搔くことをやめない」

 

《人間如きに後れを取る僕じゃないんだなあ》

 

「OK。じゃあ今から自殺するから。お前も一緒に来てもらうと言うことで」

 

《落ち着けよ相棒。一蓮托生じゃないか。命を粗末にするなよ。僕の命でもあるんだぞ》

 

「他人の物は大事にするけど、お前の物だと思うと途端に汚損したくなる」

 

《まあ、君はそう言う奴だ》

 

園庭にチャイムが鳴り響く。

昼休みが終わった。保育士のおばさんが園児を室内に呼んでいる。

 

《目標は将来の魔法少女と接触する。大人の助けを借りる。その二つでいいのかな?》

 

「主に前者。後者はおいおい考えよう。魔法少女も今のうちに接触と言うか、助けとかないといけない奴がいるから、そいつをなんとかする」

 

《北海道だぞ、そいつ》

 

「ここは関東です。どうすればいいんだ……」

 

前途多難すぎて泣けてくる。

五歳児に出来ることがない。まじでない。

切実なほどに協力者が欲しい。誰か一人ぐらい連れて来れなかったのか? あ、全員死んでたわ。

 

「なんとかならないかなあ。誰かの家族がさあ、このタイミングで死んじゃうからさあ、それを予見して助けて恩を売るとかさあ。誰でもいいから財力のある奴隷が欲しいんだよねえ」

 

《そう言うところが好みなんだよなあ。なんで女の子じゃないかなあ。惜しいなあ》

 

昼休みが終われば室内で工作を行う。

折り紙でなんか作れってさ。得意です。

 

「なんも思いつかねえ」

 

《焦っても仕方がない。ゆっくり考えていこう》

 

手を動かしながら頭も動かす。

何も浮かばないが、考えるのを止めたらそこで命も終わる。

出来た花を隣にいた女の子に渡したら、凄く喜んで先生に見せびらかしに行った。

 

《かわいいなあ……》

 

「あれを見てると頑張ろうって思えるから、人間って言うのは不思議な生き物だ」

 

《これからどんどん汚れていくんだろうなあ。たまらないなあ》

 

朝日奈日向。五歳。

不愉快な小動物と一緒に、世界を救うべく一生懸命頑張ります。

 

 

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