兄が愛を知ってしまった件 作:匿名みー
授業が終わった後、俺達はカラオケに行くことになった。
目的は歌じゃなくて密談。
話が終わったら歌う流れになるといいな。俺は友達とカラオケに行ったことないから、純粋に興味があるのだ。あと、
「みんなごべんっ! 俺、嘘つき野郎だって言われるのが怖くてっ、こんなだいぶぃなことを今までッ」
絵になりそうだなー、と楽しい想像をしていると、聞き苦しい音が耳に飛び込んでくる。山内だ。
「山内君、山内君。おい山内、それはもういいから、そのきたな……流れてる液体を止めろ」
俺は山内を叱った。
この男はなぜか隣に座っているんだけど、なんで君が隣に来るんだよ。
入口から見て左右にソファーがふたつ。
左側の手前から平田、みんなのアイドル
右側に俺、山内、
「おい山内って……
平田君が正面から苦笑いを向けてくる。
俺の口調の話はどうでもいいから、その澄んだ瞳で山内の鼻水を見てくれよ。きっと俺の気持ちが分かるはずだ。
「平田君、そりゃ口調も変わるさ。男子の涙が飛んできたらこうもなるって」
しかも、真ん中がいいとか言って
「あはは……とりあえず山内君、ティッシュあるから使いなよ」
「おおっ! 桔梗ちゃんマジ天使!」
山内は涙を飛ばして笑顔を浮かべた。
「うーん、ポイントは評価によって決まる……かぁ。たしかにありそうだよね。思い返してみると、10万円は入学した私たちに対する評価だ、って言ってたし。評価が下がったらポイントも下がる。そう考えたら納得かも」
櫛田は唇に指を押し当て、
うん、そうだね。評価は変わっていくものだ。良くも悪くも。
「山内君の先輩は他には何か言ってなかった? たとえばクラスポイントを増やす方法とか。評価が上がれば増えるって考えるのが自然だけど、具体的に何が評価対象なのかと思ってさ」
平田君は真っさらなノートを開いて、第一回作戦会議と記入した。いいねこういうの。俺、協力プレイって好きなんだよね。ワクワクする。
ここに来たメンバーは皆、山内の話を信じてくれた。主に平田君のおかげだ。
「えーっと、平田ごめん。そこまでは聞いてないんだ。あと、先輩っていうか近所のお姉さんな。高育を卒業したばっかで、俺は昔からよく遊んでもらってた。めっちゃ綺麗な人なんだぜ」
へぇそうなんだ。
山内の表情、声のトーンからは少しも嘘の香りがしない。もしかしたら鮮明に想像できているのかもしれないな。その近所のお姉さんと遊んでもらったという、在りし日の情景が。うんごめん山内。
もし約束を破って本当のことを話したとしても、俺は君を許すよ。それでミカの正体がバレてたら、その時はその時。茶柱先生から追求を受けることになったら、先輩が話していたのを盗み聞きした、とでも言ってやるつもりだ。そんなわけがない嘘だと指摘されるかもしれないけど、ゴリ押してやる。完全に目をつけられたら諦める。
なんとかなるさの精神は大切だ。
バレたところで致命傷にはならないから、山内がどうするのか笑いながら見てようと思う。
「山内、そのお姉さんが綺麗なのはどうでもいいから…… 先にポイントについて話をしておこうよ。軽井沢さん達には詳しく説明しないと。計算方法は覚えてるよね?」
俺は山内の顔を見つめた。なぜか『豊臣秀吉』の姿が頭の中に浮かんだが、山内に
「あっ、それ私も聞きたい! ポイント足りなくなりそうだから、計算方法くらいはちゃんと覚えとかないとね!」
ここで、リアル軽井沢ちゃんが発言をする。リアルだとやっぱ可愛さが増してるな。高いレベルで透明感のあるギャルって感じだ。こんなのがゴロゴロいるんだから高育はほんと恐ろしい。
でも軽井沢ちゃん。計算方法がわかったところで増やす方法は不明だぞ? だから足りなくなりそうなら節約しなさい。俺は君を養うつもりは今のところはないから、困ってても見て見ぬふりするからね。
「あ、ああ……そうだよな。クラスポイントは初期値が1000なんだ。平田、ちょっとノートとペン貸して。あと、緊張しすぎて喉乾いたから……」
「さすが山内君。飲み物のおかわりは僕が取ってくるから、詳細の記入をお願いするね」
平田君は優しげな笑みを浮かべ、山内のおかわりのために腰を上げた。いや、図々しいわ。ちょっとキリッとした顔になったかと思えば、しれっと他人を顎で使おうとするな。
「平田君は座ってなさい。リーダーなんだから。山内の飲み物は俺が取ってくるから」
「雛見沢くん、僕はリーダーじゃないんだけど……」
「現時点でみんなのことを考えてる時点で十分にリーダーだよ。じゃあそういうことで」
俺は平田君の代わりに部屋を出て、山内のおかわりを取りに向かった。
そうだ、コーラとメロンソーダ混ぜてやろう。
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部屋に戻るなり、俺は山内を移動させて
山内に真ん中はまだ早い。
「クラスポイントが1000で、そこに100をかけて10万円だ。どこまで減ってるかはわからないから、慎重にことを進める必要があるな……」
山内は席変更をあっさりと受け入れ、神妙な顔で皆を見渡す。
「こういうのはパニックを起こさないことがカンヨーだから、平田。頼むぞ。慎重に検討することがカンヨーでもあるし、お前の行動はとっても大切だと思うんだ」
そして、それっぽい顔でそれっぽいことを言って、リーダーっぽく振る舞い始める山内。
喋ってる内容はよくわからん。
「え、えーっと……いきなり公表するとみんなパニックになるから、どう伝えるかは慎重に考えた方がいい。それを平田君に頼みたいってことかな?」
櫛田が──おそらく的確な──翻訳をして、こてんと首をかしげる。
「いやいや桔梗ちゃん。平田一人に押し付けたりはしないよ。だって俺らはみんな、友達だろ? 一人でなんでも背負うなんて、お天道様が許してもこの俺が許さねえ……!」
山内は机から身を乗り出し、ぐっと拳を握りしめて見せた。少し前まで泣きじゃくっていたのが嘘のようだ。
「あ、あはは……そっか! うん! その意気だよ山内くん! 友達は大切だからね!」
「ああ! 桔梗ちゃん、これからほんとよろしくな!」
「えっ?」
山内は机に乗り上げ、ぐーっと斜め前に手を伸ばす。有無を言わさず櫛田の手を握った。
あれは、握手だ……! 悪手でもある。君、あんまり調子乗ってるぞ消されるぞ。櫛田に。
「桔梗ちゃん、これから頑張っていこうな!」
「うんっ、がんばろーね」
「ああ! 友情っていいよな! 俺、こんなあったかい気分になったのはじめてだよ! うんうん、やっぱ持つべきものは心の友だ!」
あれはまさに熱血系。信頼と友情とか大切にしてそうな熱血漢が爆誕した。
完全に舞い上がってるな。原作の山内はここまでアレなイメージはないんだけど……物語の主人公になったような気分なのかもしれない。
「あ、あのっ……」
「どうしたみーちゃん! 何かあるなら遠慮しないで話してくれ! 意見を合体させるっていうのは、会議でとっても重要なことだからな! みーちゃんは頭が良さそうだし、気づいたことがあったらドンドン言ってくれよな!」
山内はみーちゃんにマイクを向けた。キーン! という嫌な音が部屋の中に響き渡る。
「うえっ、うるさ! ちょっと山内君、マイクの電源切って! 別にマイク使う必要ないでしょ!」
「えっと、みーちゃん。遮っちゃってごめんね。なにか気づいたこととかあった?」
「なんでお前が謝るんだよ平田。遮ったのは俺だぞ。みーちゃん、なんでもいいから話してくれよ。俺はどんなことでも聞くからよ!」
さすが山内。素晴らしい自己主張と勢いだ。ところで、軽井沢ちゃんに睨まれてるの気付いてる? 多分、櫛田はお前に殺意を抱いているぞ。
「で、では……ええと、ポイント……クラスポイントをこれ以上減らさないようにするには、やっぱり生活態度は大切だと思うんです。その、普通にやって当たり前のことなので、プラスにはならないかもしれませんが……。うちのクラスは荒れている、とまではいかないですけど、ルール違反をしている人は結構いると思うので」
みーちゃんは控え目な少女だ。クラス内での発言はあまり多い印象はないけど、頭良さそうだと思ったから連れてきた。平田君に頼んで連れて来てもらった。
きっと力になってくれると思うし、ただのマスコットで終わったとしてもオッケーだ。みんなから愛されるマスコット系は大切な存在だからね。そこにいるだけで価値がある。
「だよなー、俺もそう思ってたんだ。だからさ、とりあえずみんなに呼びかけようぜ。ポイントなくなるから真面目にやろうって」
「問題は呼びかけ方だね。それと、先生を問い詰めるのは……」
平田君はちらりとこちらを見た。
今言ったことは、ここに来る前に少しだけ話してある。
「やめといた方がいいと思うよ」
俺はオレンジジュースを飲み干してから、皆の顔を見ながら言った。
「ひなりん、なんで? 先生を捕まえて問い詰めるべきじゃない? 嘘つかれたわけだし」
「嘘はついてないよ。意図的に伝えなかっただけ」
「それはそうだけど、真偽を確かめるためにも確認しといた方が良くない? 入学前に卒業生から聞いたって言えば、諦めて話してくれるんじゃないかな?」
まあ、そうしてもいいっちゃいいんだけど、デメリットの方が多いように思えるんだよね。
認めたとしても別に余計なこと言いそうだ。
それに、デマカセだとしらばっくれられたらそれまでだろ。一時的にではあるけど半信半疑に逆戻りになるし、そうなったら山内の立場もなくなる。
「む……なんだよ長谷部。俺が信用できないって言うのかよ」
「そうは言ってないでしょ。何事も確認できるならその方が良くないって話。なんでイラッとしてるの?」
「イラッとはしてねえよ。俺達は仲間じゃんか。なんでそんな事言うんだよ。おかしいって」
山内は明らかにムッとしたが、すぐに悲しそうな表情を作った。目を伏せて哀愁を漂わせているけど俺にはわかるぞ。イライラしてるだろ、君。もうちょっと煽り耐性も頑張ろうね。
「別にー」
「あ、あはは……山内君、確認は大切だから、私も長谷部さんと同じ考えだよ」
「えっ、桔梗ちゃん?」
「でも、友達が悲しむのは嫌だから、私は確認しないに一票! どうせ本当のことなんだから、誰かを悲しませてまで確認しなくてもいいよね? 長谷部さんも山内君のことは信じてるでしょ? それなら、今回はそこまでしなくてもいいんじゃないかな?」
空気が悪くなりかけた。というか明らかに悪くなったけど、ここはさすがの櫛田桔梗だ。持ち前の明るいオーラと表現力で、見事に黒い空気を中和する。
「まあ、きょーちゃんがそこまで言うなら。ていうか、今のは山内君の考えすぎだって……」
「ところで、ひなりん……ってかみんなはどう思うの? 今の流れで言いにくいかもだけど、一応、意見は言っといた方が良くない?」
「俺も確認には反対で。平田君は? いや、その前に軽井沢さんとみーちゃんの方がいいか。どう思う?」
「え、あたし? あたしは、そーだなー……山内君のことは置いておいても、ここまでの流れだと……あの先生はなんか信用できないよね。隠されてたのはムカつくし、うん。相談とかしなくていいんじゃない? こっちには平田君がいるんだし」
「私も……」
軽井沢ちゃんは先生はスルーの方向で。みーちゃんは少し言い淀んだ後、山内の顔をチラチラと見て、それから言葉を続けた。
「……山内君を信じているので、確認はしてもしなくてもいいと思います。ごめんなさい、なんだかあやふやな答えなんですけど」
みーちゃんは山内に気を使ったようだ。あの感じは確認するに一票って考えてたかな?
「あの、平田君は?」
「うん。僕も山内君を信じるよ」
平田君も確認しない意向を示した。
山内は鼻の下を伸ばして喜んでいる。よかったね、皆は君を信じているんだ。これはとても幸せなことなんだから、光栄に思おう。
「ありがとうみんな! ほら、みんな俺を信じてくれるってさ! だからお前も信じてくれよ、長谷部!」
「だから、信じてるって言ってるじゃん……山内君、声大きいからちょっと抑えて」
「なんだよー、こういう時は力強くいかないとだろ。辛気臭いと運気が逃げていくんだぜ?」
さて、方針は決定。
先生には内緒でポイントのことを共有し、今月はできるだけ減点を防ぐ。
「あのさぁ、さっきから会話が」
「
俺は
うん、やわい。
「ひゃいっ!」
普段はまず出さないような上擦った声がカラオケルームに響く。皆、驚いた顔をしてこちらを見た。軽井沢ちゃんとみーちゃんは手で口を覆い、なぜか興味津々な様子だ。
「これははっきり言っときたいんだけど、俺はあの人を信用してないんだよ。というかこの学校自体を信頼してない。そりゃあ問い詰めれば何かしら話はしてくれるだろうけどね。その代償として山内が悲しい思いをするわけだ。あー、やっぱ信用されてないのかってなられるくらいなら、先生は完全に抜きで話を進めたいと思ってる。今回はね」
俺は
「わかったけど、なんでつまむわけ!?」
「俺を見ろってことだよ」
「い、意味わかんない! 二度としないでよ! 次はマジで怒るからね!」
今も結構怒っているように見えるけど、後で餌付けすれば大丈夫だろう。ダメだったらしばらく全力で奉仕して、それで許してもらえばいいや。
「あ、あのさ。二人はその、あれなの?」
「軽井沢さん。そういうんじゃないって。ほら、俺達は席が隣だし、スキンシップだよスキンシップ」
軽井沢ちゃんは想像力が豊かだ。
仮に俺達があれなんだとしたら、俺はとっくに次なるステージに進んでいるよ。魔法使いになるのは避けたいな。
「ただのセクハラじゃん……引いたわ。引いたからねっ」
「じゃあもう長話できないな。俺は悲しいよ」
「はぁ? そんなこと言ってないでしょ……なんか今日のひなりん酷くない……?」
「ごめんって。謝るから蹴らないで」
膝をぶつけられて少し痛いが、近いのは幸せな気分になるね。軽井沢ちゃんがあからさまにジロジロ見てきてるけど、やましいことは何もないよ?
「ひなりん、信じてくれるのは嬉しいけどさ……お前、不公平だよ」
「山内、ひなりんって呼ぶな」
「えっ」
山内はなぜかモジモジと手を絡ませた後、キッと俺を睨んできた。よくわからない動きなのはどーでもいいけど、ひなりんと呼ぶな。それは禁止だ。
「ただでさえファンシーなニックネームなのに、男から呼ばれたら気持ち悪くなるだろ。誤解がないように言っておくと、山内が嫌いとかじゃないから。むしろ親友だけど。親友だからこそ、山内にはひなりんと呼んで欲しくないんだよ」
俺は嘘偽りのない気持ちを述べた。きっとこの時、俺の目は澄み渡っていたことだろう。
「な、なんかよくわかんねえけど、親友……か。なんかいい響きだな。俺、嬉しいぜ! これからもよろし」
「ねえねえ雛見沢くん、あたしは? ひなりんって呼んでいい?」
「軽井沢さんは、まあ、いいよ」
「あれっ、なんか妥協されてない? 気のせい? いや妥協って何を妥協するのかはわかんないけど、なんか複雑な気持ち。なにこれ」
「ははは。よくわからないけど、話を進めない?」
兎にも角にも、方針は決まった。
「山内。聞きたいんだけど、皆にはどうやって伝えよっか?」
「そ、そうだな……やっぱ、セーシンセーイは大切だと思うんだ。だから俺、身振り手振りも使って、心が伝わるように……平田、
山内はなぜか立ち上がり、決意の眼差しでテレビを睨んだ。画面の中では、某アイドルグループが華麗な踊りを披露している。
「わ、わあっ! もちろんです! もちろんお手伝いは頑張りますから、大丈夫ですよ!」
みーちゃんは笑顔で拍手をした。なんて優しい子なんだろうか。それに比べて、見てみろ
「みーちゃん! マジで優しいな! 天使かよ! はははは! ありがとな、みーちゃん! この恩は絶対に返すから、期待しててくれよ! ははははは!」
山内が高笑いを響かせる中、笑顔で口を開くのは平田だ。
「山内くん、場所はどうしようか? 伝える時はもちろん僕も隣に立つよ」
「平田! ありがとう! 場所は教室でいいだろ! 後はそうだな……雛見沢、お前には見張りを頼みたいんだけど、頼めるか!?」
俺も笑顔で口を開いた。無言で。
見張り? まさか教室の外に立てと? 何を理解不能なことをほざいているんだろうか。
「長谷部も必要なら連れてっていいからさ、情報漏洩は対策しなきゃだし……頼む! あっ、俺のことは心配しなくていいからな! 桔梗ちゃんと平田とみーちゃんがいるから、こっちの戦力はバッチリだ!」
山内はドンッ、と自分の胸を叩いてみせる。
安心して任せてくれってことかぁ。オッケーわかった。もし何かしらミスったとしても、全てを任せ続けてあげよう。ところでなんで軽井沢ちゃんハブいたの?
「
「えー……ポッキーだけ? それは安すぎない?」
「昼飯も奢るから。なんでも定食」
「おー。いいねいいね。よーし、乗った。その言葉、忘れないからね」
この後は普通にカラオケして帰った。
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オレは改めて確信した。
ひよりは運命の友人であると。
趣味が合って会話のテンポも心地良く、おしとやかで美人で、とても好ましい性格をしている。
そんな素敵な相手が第一号の友人だなんて、これは運命としか思えない。恐らく、オレはひよりと出会うために生まれてきたんだ──アホみたいな考えが頭に浮かんでしまうほどの奇跡だ。凄まじい奇跡だ。
オレは今、生まれて初めて、真の幸福感というものを味わっているような気がする。大切にしなければいけない。心からそう思う。
これからの高校生活においては、ひよりとの穏やかな日々を何があっても守り抜く。
それにしても、ああ……スクールライフって、こんなに素晴らしいものだったんだな。
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翌日。
山内は平田と肩を並べて、Dクラスのリーダー的な存在になった。迫真の大演説に何人かは感動していたらしいが、俺は見てないので知らん。
積極的に甘やかしていこうと思う。
「そんじゃ帰ろっか」
「あ、会計」
「払ったから帰るよ」
「え、いや割り勘でしょ普通に。悪いって」
クラスでは引き続き会議。
そんな大層なものじゃなくて、明日から真面目に授業受けよう。ルール違反は可能な限り避けて、まずは5月を迎えよう、っては話し合いをしているらしい。
山内、ではなく森さんっていう女子がメッセージで教えてくれた。ありがと森さん。今度パイン飴あげよっかな。
「どうせ昼もタダ食いしたんだから、最後まで奢られとけって。また今度ポッキーくれればいいから」
「えー……」
俺は
なお、店を出る前に試したことがひとつ。
ささっと会計を済ませて様子を見てみたんだけど、満更でもなさそうだった。本気で嫌がってたらやめとこうと思ったけど、こういう特別扱いはアリみたいだ。
「じゃあお言葉に甘えちゃうけど、私に貢いでも何も出ないぞー?」
「ほんとに? お褒めの言葉くらい出ないの?」
「よっ、大富豪!」
「大富豪か、いいな。3億くらい貯めたら養ったげるよ」
「えっ」
「無理だけどな、3億とか」
「だよねー」
ここから、更なる信頼を獲得していこうと思う。
何かにつけて大切にされている。そんな風に感じて貰えるように頑張るよ。当面の目標はそれが当たり前になって、